みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1373「告白返し」

2023-03-31 17:28:29 | ブログ短編

 彼女はある男性から告白(こくはく)された。仕事(しごと)で顔を合わせている知り合いではあるのだが、彼女は恋愛対象(れんあいたいしょう)としては見ていなかった。まさかその男性が、自分のことを好(す)きになっていたなんて、思ってもみなかった。
 今、彼女は好きな人がいるわけでもなく、かといってずっと一人でいたいとも思っていない。彼女は、「付き合っちゃおうかなぁ」と思い始めていた。しかし、彼女はふと考えた。
「この人、あたしのどこが好きなのかな?」
 彼女はごく普通(ふつう)の女の子。美人(びじん)というわけでもなく、仕事のスキルも人並(ひとな)みだ。そんな彼女のどこに惹(ひ)かれたのか? 彼女の頭の中にはクエスチョンが増殖(ぞうしょく)を始めていた。それを加速(かそく)するように、別の考えが膨(ふく)らみだした。
「あたし、この人のこと何も知らないわ。仕事の話ししかしてないし、プライベートのことなんかまったく…。それに、この人、あたしの何を知ってるっていうの?」
 彼女のもやもやは、もはや彼女の中に押(お)し止(と)めることができなくなっていた。ついに、彼女の口からこぼれ始めた。彼女は目の前の男性に向かって言った。
「質問(しつもん)、いいですか? あなたは、あたしのどこが好きなんですか? 他(ほか)の女性じゃなくて、何であたしを選(えら)んだのか教(おし)えて下さい」
 男性は意表(いひょう)をつかれたようだ。何も答(こた)えられずに立ちつくしていた。
<つぶやき>この人は、そんなに深(ふか)く考えてないと思うよ。とりあえず、友だちからで…。
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1372「ぬれぎぬ」

2023-03-28 17:27:07 | ブログ短編

 男はベッドの中で目を覚(さ)ました。隣(となり)には行(ゆ)きずりの女が気持ちよさそうに寝息(ねいき)をたてている。男は、昨夜(ゆうべ)の激(はげ)しさを思い起(お)こしてニヤついた。そして、女のしっとりとした吸(す)い付くような肌(はだ)に触(ふ)れようとして、思い止(とど)まった。
 時計(とけい)を見ると、早朝(そうちょう)の四時過(す)ぎ…。ここを引き揚(あ)げるにはちょうどいい頃合(ころあい)いだ。男はベッドからそっと抜(ぬ)け出すと、手早(てばや)く服(ふく)を着た。女が目を覚ます気配(けはい)はなかった。男は薄暗(うすぐら)い部屋(へや)から出ようと玄関(げんかん)に向かった。その時だ。流(なが)しの前の窓(まど)に人影(ひとかげ)が見えた。
 男はギョッとして立ち止まった。外(そと)は明るくなっている。人影は部屋の中をうかがうように動き回っていた。男は息(いき)をひそめて立ちつくす。この女には、男がいたのかもしれない。鉢合(はちあ)わせなんてごめんだなぁ。男は、そんなことを思っていた。しばらくすると、人影はどこかへ立ち去(さ)ったようだ。あきらめたのか…? 少し時間をおいて、男は足早(あしばや)に女のアパートを後(あと)にした。
 その日の昼(ひる)のこと。ニュースで女が絞殺(こうさつ)されたと報道(ほうどう)が流(なが)れた。男はそれを見て驚(おどろ)いた。それは、今朝(けさ)までベッドを共(とも)にした女だった。男はひどく動揺(どうよう)した。これは、どういうことなんだ!? いったい何があったんだ。
 それから間(ま)もなく、男が勤(つと)めている会社(かいしゃ)に刑事(けいじ)たちがやって来た。どうやって男の身許(みもと)をつかんだのか? 男は、刑事たちに囲(かこ)まれて連行(れんこう)されてしまった。
<つぶやき>真犯人(しんはんにん)は誰(だれ)なのか? 真実(しんじつ)は、この女との出会(であ)いに隠(かく)されているのかもね。
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1371「許される」

2023-03-25 17:26:46 | ブログ短編

 男の前に見知(みし)らぬ女が現れた。その女は男に言った。「迎(むか)えに来ました。戻(もど)りましょう」
 男は何を言っているのか分からず訊(き)き返した。すると女は、「あなたの罪(つみ)は許(ゆる)されました。元(もと)の世界(せかい)に戻ることができるんです。あたしと一緒(いっしょ)に行きましょう」
 男はますます訳(わけ)が分からなくなって、「元の世界って…。あなたは何を言ってるんだ?」
「まさか、以前(いぜん)の記憶(きおく)が…。あたしのことも思い出せませんか?」
 男は首(くび)を傾(かし)げた。女は男を安心(あんしん)させるように、「心配(しんぱい)ないわ。戻って検査(けんさ)をしましょう。きっと思い出せるはずよ。今、あたしたちの世界は滅(ほろ)びようとしてるの。それを止(と)められるのは、あなただけです。あなたの頭脳(ずのう)が必要(ひつよう)なんです。あたしたちを助(たす)けて下さい」
 男はあまりにも突拍子(とっぴょうし)もない話しなので、「そんなこと言われても…。あなたの言ってる世界がどんなものなのか知りませんが…、私は普通(ふつう)のサラリーマンです。私にあなたたちを助けることなんかできるはずがない。きっと、あなたは人違(ひとちが)いをしてるんですよ」
 女は必死(ひっし)に懇願(こんがん)して、「もう時間がないんです。すぐに戻ってください」
「どこに戻れと言うんですか? 私には妻(つま)も子供(こども)もいます。私には関係(かんけい)ないことだ!」
 女は意(い)を決(けっ)したように、「残念(ざんねん)です。こんなことは、したくはなかった」
 女は銃(じゅう)のようなものを男に向けると、男をめがけて光(ひかり)が発射(はっしゃ)された。すると、男の姿(すがた)は一瞬(いっしゅん)にして消(き)えてしまった。女はそれを確認(かくにん)すると、何処(いずこ)ともなく姿を消(け)した。
<つぶやき>男はどうなっちゃったのよ。本当に、別の世界からやって来てたのかなぁ?
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1370「しずく189~潜入」

2023-03-22 17:34:23 | ブログ連載~しずく

 しばらくすると貴志(たかし)は目を覚(さ)ました。ちょうどその時、神崎(かんざき)つくねが心配(しんぱい)して覗(のぞ)き込んでいたので、貴志は思わず声を上げてしまった。つくねは納得(なっとく)できないみたいで、
「えっ、そんなに驚(おどろ)かなくてもいいじゃない。あたしは、心配して…」
 貴志は、つくねの顔があまりにも近くにあったので動揺(どうよう)してしまったのだ。貴志は顔を赤くしてまごまごしながら答(こた)えた。「ご、ごめんなさい。そ、そういう…あれじゃ…」
 つくねは安心(あんしん)したようで、「もういいわよ。でも、どうして戻(もど)って来たのよ」
 貴志は起き上がると、「そ、それは…。父さんが…助(たす)けに行けって…」
 柊(ひいらぎ)あずみが口を挟(はさ)んだ。「その話は戻ってからにしましょう。初音(はつね)たちは先に行ってるから、みんなで状況(じょうきょう)を確認(かくにん)して次の作戦(さくせん)を考えましょう」
 みんなは貴志を連れてあの場所(ばしょ)に戻ることにした。その頃(ころ)、初音と琴音(ことね)は烏山(からすやま)のふもとにある検問所(けんもんじょ)の近くまで来ていた。そこへトラックがゆっくりと近づいて来る。一般道路(いっぱんどうろ)から外(はず)れた舗装(ほそう)もされていないでこぼこ道なのでスピードを出せないのだ。
 二人はトラックの後ろに飛(と)びついた。そして、幌(ほろ)の隙間(すきま)から中を覗いた。荷台(にだい)には木箱(きばこ)などが積(つ)まれているだけで人の気配(けはい)はなかった。検問所に着く頃には、二人は木箱の隙間に身体(からだ)を忍(しの)ばせていた。検問はかなりゆるいものだった。ここまで侵入(しんにゅう)するものはいないとでも思っているのだろう。トラックは検問を通り、あの大きな鉄(てつ)の扉(とびら)を入って行った。
<つぶやき>鉄の扉の中には何があるのでしょうか? 貴志はしずくと再会(さいかい)できるのか。
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1369「妄想彼女」

2023-03-19 17:28:30 | ブログ短編

 僕(ぼく)には彼女がいる。といっても、妄想(もうそう)の中での話しなのだが…。しかし、僕の妄想はとてもリアルだ。リアルすぎて実際(じっさい)に目の前にいる感じすらある。
 僕の妄想彼女はいつも同じ娘(こ)なんだけど、とっても可愛(かわい)い顔をしている。僕好(ごの)みと言ってもいい。でも、性格(せいかく)はそのたびに違(ちが)っている。ある時は、おとなしくて控(ひか)え目な感じ。またある時は、まるで男みたいに高飛車(たかびしゃ)で…。まぁ、僕はどちらも嫌(きら)いじゃない。
 そんな妄想を楽しんでいる僕の前に、とんでもない娘(こ)が現れた。その娘は、僕の妄想彼女とそっくりなのだ。まるで双子(ふたご)のように…。僕は混乱(こんらん)した。妄想と現実(げんじつ)がごっちゃになって、もうどっちがどっちなのか分かんなくなってしまった。そして、ついにやらかした。
 ここで言っておくが、妄想の彼女は基本的(きほんてき)に僕のことが好(す)きだという前提(ぜんてい)がある。まぁ、当たり前のことなのだが…。でも、現実の彼女は僕のことなんか好きでも何でもない。まして、彼女が何を考えているのかブラックボックス状態(じょうたい)なのだ。
 僕は、いつも細心(さいしん)の注意(ちゅうい)を払(はら)っていた。でも、不覚(ふかく)にも僕は間違(まちが)いを犯(おか)してしまった。仕事(しごと)が忙(いそが)しくて寝不足(ねぶそく)だったということもあるのだが…。僕は、現実の彼女を妄想彼女と思い込んでしまったのだ。そして、癒(い)やしを求(もと)めて、現実の彼女を抱(だ)きしめてしまったのだ。僕は、現実の彼女に力一杯(ちからいっぱい)ひっぱたかれてしまった。
 僕は思った。これって、性格も妄想彼女とそっくりなのか…。だとしたら、脈(みゃく)ありかも?
<つぶやき>そんなわけないと思いますよ。ちゃんと謝(あやま)って、友だちから始(はじ)めてみましょ。
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