みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0915「しずく98~試合」

2020-06-29 18:06:34 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)は、川相初音(かわいはつね)が言ったことに顔色(かおいろ)ひとつ変えなかった。むしろ嬉(うれ)しそうに答(こた)えた。
「そう…、そうなんだ。じゃあ、もしかしたら初音も…、同じってことかなぁ」
「さぁ、どうでしょう…。あたしの提案(ていあん)、受(う)けていただけるかしら?」
 涼はしばらく考えてから、「どうしようかなぁ。試(ため)してみてからでもいいかな」
 涼が手をかざすと床(ゆか)に置かれていた竹刀(しない)が飛(と)んできて、涼の手の中におさまった。そして、初音に竹刀を向けて言った。
「あなたにどんな能力(ちから)があるのか知らないけど、私に勝(か)つことができたら考えてあげてもいいわ。私…、自分の能力(ちから)を試してみたくて仕方(しかた)なかったの」
 涼は、初音に打ち込んだ。だが、竹刀は空(くう)を切った。初音は瞬間移動(しゅんかんいどう)して涼の後ろに現れた。涼は、初音の方に振り返ると、また嬉しそうに言った。
「やるじゃない。これで、少しは楽しめそうだわ」
 初音は身構(みがま)えて、「やめた方がいいわよ。あなたには、あたしは倒(たお)せない」
 初音が手を小さく振(ふ)ると、どうしたことか涼は竹刀を床に落とした。初音は微笑(ほほえ)んで、
「これで分かったでしょ。あなたの身体(からだ)は、もうあたしのものよ。さぁ、どうしようかなぁ?」
 涼は自信(じしん)たっぷりに、「この程度(ていど)で私に勝ったつもり? 勝負(しょうぶ)はこれからよ」
 次の瞬間(しゅんかん)、隅(すみ)に置かれていたボールカゴからバスケットボールが飛び出した。
<つぶやき>この闘(たたか)いの行方(ゆくえ)はどうなるのでしょう。初音は誰(だれ)の命令(めいれい)で動いているのか?
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0914「第三勢力」

2020-06-27 18:14:22 | ブログ短編

「なあ、お前はどっちにつくんだ? もちろん俺(おれ)の方だよな?」
 彼は友だちから迫(せま)られた。彼は、決断(けつだん)に迷(まよ)っていた。すると、別の側(がわ)から、
「ダメよ。あたしはこっち側よ。ねえ、だからこっち側にきてよ。お願い」
 彼女は、彼が好意(こうい)を抱(いだ)いていた女性だ。また反対側(はんたいがわ)から声が上がった。
「なに言ってるんだ。君(きみ)は、こいつが告白(こくはく)したのに断(ことわ)ったじゃないか。そんなヤツの言うことなんか聞く必要(ひつよう)はない。俺たちは、ずっと友だちだ。だから――」
 彼の心は、一瞬(いっしゅん)そっち側へ向(む)かいそうになった。しかし――。
「それとこれとは話しが違(ちが)うわ。あたしは、あなたとは付き合うことはできないけど、友だちよ。あたしたち、友だちだよね。あたしはそう思ってるよ」
 彼は頭(あたま)をかかえて呻(うめ)き声をあげて叫(さけ)んだ。「僕(ぼく)は、僕は決(き)められないよ。どっちか選(えら)ぶなんてできない。だから、だから僕は、どっちにもつかない」
 周(まわ)りからどよめきがおこった。そして、誰(だれ)からともなくささやきあった。
「おいおい、選択肢(せんたくし)を増(ふ)やすのかよ。まいったなぁ」
「どうする? 第三勢力(だいさんせいりょく)の誕生(たんじょう)か…。これで、また分からなくなったぞ」
「わたしは、こっちに行こうかなぁ。そういう選択もありよねぇ」
「えっ、そうなの? ああっ、迷うなぁ。どうすればいいんだよ」
 ますます混沌(こんとん)とした状態(じょうたい)になってしまった。果(は)たして、どっちへ転(ころ)がるのか?
<つぶやき>そもそも、何を決めてるんだ? まぁ、どっちにつくかは各自(かくじ)の判断(はんだん)で…。
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0913「住民登録」

2020-06-25 18:18:25 | ブログ短編

「あの…、こんなに書くんですか?」
 村役場(むらやくば)で引っ越(こ)しの手続(てつづ)きに来た男が言った。対応(たいおう)していた役場の女性は、
「はい。当(あ)てはまるところへマルをつけていくだけですから。ご家族(かぞく)全員(ぜんいん)分ですので、ちょっと量(りょう)が多いかもしれませんね」
 男はパラパラと書類(しょるい)に目を通(とお)した。そこには名前(なまえ)、性別(せいべつ)、年齢(ねんれい)はもちろんのこと、職歴(しょくれき)、資格(しかく)、趣味(しゅみ)、嗜好(しこう)にいたるまで。それに、病歴(びょうれき)や健康状態(けんこうじょうたい)に関(かん)すること。さらに、好(この)みのタイプの異性(いせい)についての質問(しつもん)まで――。男は唖然(あぜん)として、
「こんな細(こま)かいことまで書かないといけないんですか?」
「はい。これらはすべて住民(じゅうみん)サービス向上(こうじょう)のために必要(ひつよう)なデータなんです。例(たと)えば、病歴なんかは村立病院(そんりつびょういん)の維持運営(いじうんえい)に利用(りよう)させていただきます。それに、この村では結婚相談所(けっこんそうだんしょ)も運営しておりまして、最適(さいてき)なお相手(あいて)をご紹介(しょうかい)できます」
「す、すごいですね。でも、そこまでほんとに必要なんですか?」
「はい。データは毎年更新(こうしん)していただきます。あの、ご理解(りかい)いただけましたか?」
「はぁ、分かりました。じゃあ、これ持ち帰っても…」
「もちろんです。あの、ご存(ぞん)じとは思いますが、引っ越して一週間が過ぎますと、電気(でんき)ガス水道(すいどう)が使えなくなってしまいます。早めにお手続き下さい」
<つぶやき>こんなに至(いた)れり尽(つ)くせりのサービスはありがたいのですが…。どうなのよ?
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0912「神頼み」

2020-06-23 18:07:09 | ブログ短編

 若(わか)い女性の前に神様(かみさま)が現れた。その神様の言うことには、
「いつもおがんでくれてありがとさん。そやけどなぁ、今回のあんたの頼(たの)みは聞けへんで」
「なんで? あなたが、彼と結婚(けっこん)させてくれたんでしょ。責任(せきにん)とってよ」
「そりゃ、わしは縁結(えんむす)びの神さんやけど…。わしの仕事(しごと)は縁を結ぶことで、その先(さき)のことは自己責任(じこせきにん)やで」
「だって…」彼女は悲(かな)しそうに、「彼ったら、あたしのことなんか…」
「夫婦喧嘩(ふうふげんか)なんて誰(だれ)でもするもんや。気にしたらあかん。夫婦なんてしょせん赤の他人(たにん)や。考えてることも違(ちが)うやろうし、少しずつ分かり合えばええんとちゃうか」
「そりゃ、そうかもしれないけど…。あたし、どうしたらいいかわかんない」
「こりゃ重症(じゅうしょう)やなぁ。ほな、胸(むね)の中にたまってるもん吐(は)き出したらええがな。全部(ぜんぶ)ぶちまけて、彼にぶつけてやりなはれ」
「そ、そんなことしたら…、離婚(りこん)ってことになっちゃうでしょ。もう、最悪(さいあく)…」
「そうなったら、それまでの縁だったってことで、あきらめがつくんとちゃうか」
「はぁ? もう、他人事(ひとごと)だと思って、簡単(かんたん)に言わないでよ」
「そやなぁ。わしにしてみれば、どっちゃでもええことなんやけど…。まぁ、ゆっくり考えればええがな。あんたの人生(じんせい)やからなぁ」
<つぶやき>人生いろいろあるってことです。どう生きるかは、あなた次第(しだい)なのかもね。
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0911「どういう状況?」

2020-06-21 18:02:49 | ブログ短編

「えっ? いま、なんて…」彼女は目(め)を丸(まる)くして、「あたしのこと、スキって…」
「ああ…、まあ…、そんな感(かん)じ…かな」彼は目をそらして答(こた)えた。
「いやいや…、このタイミング? いま、こういう状況(じょうきょう)なのにそんなこと言うの?」
 彼女は、なんだか不機嫌(ふきげん)みたいで、「えっ、おかしくない? こんなときに…」
 彼も、言っちゃった手前(てまえ)、「悪(わる)いかよ。別(べつ)に、いいだろ…」
「いや、良い悪いの問題(もんだい)じゃないでしょ。ねぇ、言うんだったら――。ああっ、分かった。じゃあ、もう一度、言って。ちゃんと、あたしを見て」
「バカか? そ、そんなこと…。二度も言えるかよ。俺(おれ)は、言わないぞ。ちゃんと言ったんだから。お前だって、聞こえてたはずだ」
「聞こえてたけど…。ちゃんと言ってほしいの。いいじゃない、それくらい…」
「じゃあ、俺とは付き合わないってことか?」
「誰(だれ)もそんなこと言ってないでしょ。ほんと、ずるい人なんだから…。分かったわ。じゃあ、もう一度、言ってくれたら、考えてもいいわ」
「はぁ? 何でそうなるんだよ。もういいよ。だったら、今のは…なしだ」
「あっ、そう。そんなこと言っていいのかなぁ。じゃあ、あたしも他(ほか)の人と――」
<つぶやき>まったく、勝手(かって)にやってって感じ。でも、どんなタイミングで言ったのよ。
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