みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0831「無人島」

2020-03-12 18:24:22 | ブログ短編

 この島(しま)にたどり着いて、一年が過(す)ぎようとしていた。幸(さいわ)いなことに、ここには水と食料(しょくりょう)になるものがふんだんにあったので、今まで生き延(の)びることができた。住む場所(ばしょ)も、こつこつと小さな小屋(こや)を建(た)てた。今では、快適(かいてき)に暮(く)らせるようになっている。
 私は、何ものにも縛(しば)られないこの生活(せいかつ)が気に入っていた。これほどの自由(じゆう)を感じたことはない。私だけの時間が、ここにはあった。
 そんな時だ。文明人(ぶんめいじん)たちが船(ふね)でやって来たのは――。彼らは探検(たんけん)と称(しょう)し、私の島を我(わ)が物顔(ものがお)に歩き回った。そして、私の小屋を見つけた時は大騒(おおさわ)ぎだった。彼らは言った。
「こんなところに人が住んでいるなんて…。遭難(そうなん)でもしたんですか? 私たちと一緒(いっしょ)に帰りましょう。私たちは、あなたを歓迎(かんげい)します」
 冗談(じょうだん)じゃない。私は、今の暮らしに満足(まんぞく)している。いまさら戻(もど)りたくもない。私の家族(かぞく)だって、もう死んだと思っているはずだ。きっと、清々(せいせい)しているに決まっている。私も、口うるさい妻(つま)の喚(わめ)き声を聞きたくもない。私はきっぱりと断(ことわ)った。
 彼らが帰るとき、私は彼らの船にあった予備(よび)の通信機材(つうしんきざい)を譲(ゆず)り受(う)けた。これさえあれば、ネットで必要(ひつよう)なものが注文(ちゅうもん)できるはずだ。ここでの生活がますます快適になるだろう。
 彼らが去(さ)った後、私は気がついた。私には、お金(かね)というものがないことを――。
<つぶやき>彼は何で無人島に来たんでしょうか? でも、ちょっとだけ憧(あこが)れちゃいます。
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