みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0232「招き猫パワー」

2018-06-17 18:42:55 | ブログ短編

 私の実家(じっか)には、古ぼけた招(まね)き猫(ねこ)が床(とこ)の間(ま)の端(はし)に飾(かざ)られている。たぶんおじいちゃんが手に入れたのだろう。私が物心(ものごころ)ついた頃(ころ)には、その場所にちょこんと座っていた。
 小さい頃、その招き猫をオモチャがわりに遊(あそ)んでいた、微(かす)かな記憶(きおく)が残っている。今思えば、何でそんなことをしていたのか全く分からない。おじいちゃんという人はおおらかな人で、怒(おこ)ることもなく私のことを笑(わら)いながら見ていた、と後(あと)で母に聞かされた。そのおじいちゃんも今は亡(な)く、何だか招き猫も寂(さび)しそうだ。
 右手を挙(あ)げているのが金運(きんうん)を、左手は人を招く。と、いつの頃からか私の脳裏(のうり)に焼きついていた。だぶん、おじいちゃんに教えてもらったのかもしれない。私は招き猫の埃(ほこり)をはらいながら、昔(むかし)に思いをはせていた。きっとこの子のおかげで、今まで無事(ぶじ)に過(す)ごせていたんだわ。右手を挙げているから、ずっと金運を呼び寄せてくれていたに違(ちが)いない。
 今、私の部屋(へや)には小さな招き猫の貯金箱(ちょきんばこ)が鎮座(ちんざ)している。いろんなものを招き寄せてもらおうと思って、両手を挙げている可愛(かわい)いのにした。お金も欲しいし、素敵(すてき)な彼だって私には必要(ひつよう)よ。これは、別に欲張(よくば)ってとか、そういうことじゃないからね。
 でも、招き猫にお願いするだけじゃダメだってことは分かってる。それなりの、努力(どりょく)はしないといけない。そこが一番の問題(もんだい)よね。なまけてちゃ、絶対に前には進めない。この子に手を合わせながら、自分を叱咤激励(しったげきれい)している毎日です。
<つぶやき>神頼みも、努力があってこそなのです。そこのところを、お忘れなきように。
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0231「醜い顔」

2018-06-16 18:49:32 | ブログ短編

「あたしの顔(かお)、変えて下さい」時子(ときこ)は医者(いしゃ)に哀願(あいがん)した。
 彼女の前に座っていた医者は、黙(だま)って彼女を見つめるだけ。彼女はたまらず、
「あたし、先生の噂(うわさ)を聴(き)きました。凄(すご)く腕(うで)のいいお医者さんだって。だから…」
「どういう噂をお聞きになったのか知りませんが、どうもその必要(ひつよう)はないようです」
 時子はキョトンとして、なぜそんなことを言うのか理解(りかい)できなかった。医者は続けた。
「ちゃんと、鼻(はな)も目も口もある。何も不足(ふそく)していない。手を加(くわ)える必要(ひつよう)など…」
「そんな…。あたしは、この顔のせいで苦(くる)しんでいるんです。こんな醜(みにく)い顔…」
「そうですか? 私にはそうは見えませんが。まあ、美人(びじん)とは言えないまでも、そこそこの顔をしておられると思いますよ」
「あなたは、それでも医者ですか? あたしは、この顔のせいで彼氏(かれし)もできないし、仕事(しごと)も他の娘(こ)に持っていかれて。あたし、やりたい仕事もやらせてもらえないんです」
「しかし、それはあなたの顔のせいでしょうか。原因(げんいん)はもっと他にあるかもしれません」
「あたしのこと何も知らないくせに、何でそんなことが言えるんですか?」
「私はいろんな人を見てきましたから。ちょっと目先(めさき)を変えただけで、活(い)き活きと生活(せいかつ)なさっている方を何人も知っています。あなたも生き方を変えてみたらいかがですか?」
<つぶやき>思い込みは視野(しや)を狭(せば)めてしまいます。少し立ち止まって周(まわ)りを見てみましょ。
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0230「耳の虫」

2018-06-15 18:49:23 | ブログ短編

「私の話し、聞いてる?」頼子(よりこ)は不機嫌(ふきげん)そうに言った。
 あかりはキョトンとして、「えっ、なに?」
「もう、ひとが真剣(しんけん)に話してるのに、何で聞いてくれないの?」
「ごめん」あかりは手を合わせると言った。「きっと虫(むし)のせいよ」
 頼子は、またかと思った。あかりはたまに変なことを口走(くちばし)る。今度だって、きっとそうだ。
「ねえ、知ってる」あかりはかまわずに続けた。「耳(みみ)の穴(あな)には、小さな小さな虫が住んでいるの。そいつらのせいで、人の話が聞こえなくなったり、空耳(そらみみ)がしたりするのよ」
「そんなわけないでしょ。絶対(ぜったい)、他のこと考えてただけじゃない」
「そ、そんなことないわよ。別にあたし、彼のことなんか…」
「ほら、やっぱり。どうせ、私より彼の方が大切(たいせつ)なんでしょ」
「もう、そんなことないって。――でもね、耳の虫は本当(ほんとう)にいるのよ」
「いるわけないわ。また、そんな作り話して」
「いるわよ。だって、その虫が教えてくれたのよ。彼と初めて会ったとき、こいつを捕(つか)まえろって聞こえたんだから。あたしは、その言葉通りに彼を捕まえて、今は幸せいっぱい」
「はいはい。もういいわよ。どうせ私は、別れ話でグチャグチャよ」
<つぶやき>身体(からだ)にまつわるいろんな不思議(ふしぎ)、きっといっぱいあるんじゃないでしょうか。
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0229「鏡のない部屋」

2018-06-14 18:54:55 | ブログ短編

 刑事(けいじ)たちが部屋(へや)に入ると、中はガランとしていて女性の部屋とは思えなかった。年配(ねんぱい)の刑事が部屋を見回して呟(つぶや)いた。「何で無いんだ」
 まだ新米(しんまい)の女刑事が訊(き)き返した。「何がです?」
「鏡(かがみ)だよ。普通(ふつう)、女性の部屋にはあるもんだろ。ほんとにここに住(す)んでたのかな?」
「私、聞き込みに行ってきます」新米刑事はそのまま部屋を飛び出した。
 年配の刑事が一通(ひととお)り部屋の中を確認(かくにん)していると、別の刑事が入って来た。
「女の身元(みもと)が分かりました」その刑事は信じられないという顔をして、「それが、すでに亡(な)くなっているんです。先月、変死体(へんしたい)で発見(はっけん)されたそうです」
「死んでる? じゃ、ここにいたのは誰(だれ)なんだ」年配の刑事は唸(うな)り声を上げて、「変死体って言ったな。どんな状態(じょうたい)で発見されたんだ」
「それが、血(ち)が無くなっていたと。それに、傷口(きずぐち)から血が流れた跡(あと)もなかったそうです」
 その頃(ころ)、女刑事は路上(ろじょう)で声をかけられた。彼女は振り向くと、恐怖(きょうふ)で目を見開(みひら)いた。
 数日後のこと、山中(さんちゅう)で行方不明(ゆくえふめい)になっていた新米刑事の変死体が発見された。
「ほんとにここでいいんですか? もっと良い部屋があるのに」
 不動産屋(ふどうさんや)の若い男が言った。借(か)り手の女は軽(かる)く微笑(ほほえ)んで肯(うなず)いた。その顔は、あの女刑事とそっくりだった。女は鍵(かぎ)を受け取ると、そのまま部屋の中へ消えていった。
<つぶやき>一体何があったのか。この女の正体は? 謎(なぞ)が謎を呼び、その先の結末(けつまつ)は…。
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0228「とんだシェア」

2018-06-13 18:59:03 | ブログ短編

 部屋(へや)の中は、いろんなものが散乱(さんらん)していた。その中で、女の子が二人、髪(かみ)を振(ふ)り乱(みだ)し息(いき)も絶(た)え絶(だ)えに座り込んでいる。この様子(ようす)を見ていた別の女の子が言った。
「もう気がすんだでしょ。このへんで、仲直(なかなお)りしたら」
「何で手を出したのよ。拓也(たくや)はあたしのものなんだから」
「私のほうが先(さき)でしょ。横(よこ)から割(わ)り込んできたくせに」
「あなたこそ。拓也は、あたしを好きだって言ってくれたの」
「バカなこと言わないで。私は愛してるって言われたわ」
 二人はまた取っ組み合いになる。別の女の子はため息をついて、二人を引き離(はな)す。
「もういい加減(かげん)にしてよ。二人とも振られたんだから。それでいいじゃない」
「よくないわよ」
「そうよ。あなたにそんなこと言われる筋合(すじあ)いはないわ」
「そう。じゃあ、勝手(かって)にしなさい。あたし、拓也が待ってるからもう行くね。ちゃんと、この部屋片(かた)づけといてよ。あたしたちの共同(きょうどう)の場所(ばしょ)なんだから」
 別の女の子はいそいそと出て行った。それを見送った二人、顔を見合わせて、
「あたし、ここから出て行くわ。あの子といると彼氏(かれし)なんてできないもん」
「私も、そうする。――ねえ、私たち、またシェアしない? 一人は寂(さび)しいし…」
<つぶやき>もっと誠実(せいじつ)な男性を見つけましょう。今度は、同じ人を好きにならないでね。
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