みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

ホームページで再公開しました。

2024-10-26 16:49:06 | お知らせ

読切物語0066「欲望の罠」を再公開しました。

<みけの物語カフェ>ホームページ版もお立ち寄りください。

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1476「悪魔の子2」

2024-10-25 16:48:28 | ブログ短編

 他人(ひと)が何を考(かんが)えているのか手に取(と)るように分かってしまう。そんな能力(のうりょく)をサキは持っていた。これは生(う)まれつきのもののようだ。だからサキは、子供(こども)の頃(ころ)は誰(だれ)もがみなそうなんだと思っていた。他人(ひと)の考えていることを口に出してはいけないと、暗黙(あんもく)のルールがあると思い込(こ)んでいた。
 サキは他人(ひと)との接触(せっしょく)を避(さ)けるようになった。自分(じぶん)の心(こころ)の中を覗(のぞ)かれたくないというのもあったが、母親(ははおや)との関係(かんけい)がぎくしゃくしていたというのもある。母親が思っていることを何度(なんど)も口にしてしまったので、気味悪(きみわる)がられたのかもしれない。
 サキは身体(からだ)が弱(よわ)かったので入院(にゅういん)することが多かった。そこに研修(けんしゅう)で来ていた先生(せんせい)と仲良(なかよ)しになった。その先生は心の中もとっても暖(あたた)かかった。だからこの人なら自分を受(う)け止めてくれるかもしれないと思った。自分の心の中にある妬(ねた)みや嫉妬(しっと)、欲望(よくぼう)をさらけ出せると…。でも、話しているうちに、これは自分だけの能力だと気がついた。
 サキはホッとした。もう他人(ひと)を避けなくてもいいんだ。何を考えていても気づかれることはないし、自由(じゆう)なんだと…。サキは今まで自分を押(お)さえ付けていたものがなくなったので、世界(せかい)が広(ひろ)がったような感覚(かんかく)を覚(おぼ)えた。
 サキは病院を抜(ぬ)け出した。もう彼女を引き止めるものは何もなかった。それから数年間、サキがどこでどんな暮(く)らしをしていたのか…。誰も知(し)る人はいないようだ。そしていま、サキは中央公園(ちゅうおうこうえん)にその姿(すがた)を現(あらわ)していた。
<つぶやき>誰か信頼(しんらい)できる人がそばにいたら、彼女は別(べつ)の人生(じんせい)を歩(あゆ)んでいたのかも…。
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0009「運命の赤い糸」

2024-10-21 16:38:45 | 読切物語

「まだそんなこと信じてるのか?」と英太は呆れ顔で言った。
「いいでしょ」さよりは口をとがらせて、「私の子供の頃からの夢なんだから」
「おい!」と後ろから突然声がして、哲也が二人の間に割って入った。「おまえらな、さっきから呼んでるのに、気づけよな。で、なに楽しそうに話してたんだよ」
「別にたいしたことじゃないけどさ」英太はにやにやしながら、「こいつが…」
「ちょっと」すかさずさよりが話を断ち切り、「余計なこと言わないで。もし、しゃべったら、ほんとに怒るからね」そう言って、さよりはぷいっと走り去った。
 さよりを見送った英太は、ちょっとした悪戯を思いついた。それは、さよりの夢をかなえてやること。哲也を巻き込んで、極秘作戦がスタートした。
 日曜の朝。鳥かごを抱えた哲也は、英太の部屋に入るなりつぶやいた。
「なあ、ほんとにまずいよ。もし、姉ちゃんにばれたら、俺、殺されるから…」
「心配すんなって。どうせ姉ちゃん、仕事でいつ帰ってくるかわかんないんだろ。大丈夫だって。ちょっと、塗るだけだよ」そう言うと、英太は青いマジックを取り出した。
「ちょっ、待てよ!」驚いた哲也は英太の腕をつかんで、「マジックじゃ、消えないだろ」
「だって、白い文鳥じゃ意味ないじゃん。この作戦には青い鳥が必要なんだ」
「いや、そう言うことじゃなくて…。もし、ピー子に何かあったら…」
 哲也の心配をよそに、英太はピー子をまだらな青い鳥に塗り替えた。
 その日のうちに、英太はさよりを近くの海岸に呼び出した。砂浜は人もまばらで、さよりを見つけるのは簡単だった。岩陰で待ち伏せしていた二人は、速やかに作戦を実行した。
「ねえ、こんなとこに呼び出して、話ってなによ?」さよりはわざと迷惑そうに言った。でも、急に呼び出されたのに、しっかりおしゃれをして来たことは誰が見てもわかった。
「あの、実は…」英太はそう言いながら、後ろ手で哲也に合図を送った。哲也は赤い糸を鳥の足に結びつけるのに手間取ったが、慌ててピー子を放した。ところが、逆の方向に飛んで行ったピー子を見て、哲也は思わず立ち上がり、「ああっ!」と叫んでしまった。
 ピー子はぐるりと旋回すると、さよりに向かって飛んできた。さよりはそれを見てすべてを理解した。哲也は慌ててピー子を追いかける。赤い糸がひらひらと宙を舞っていた。
 三人はピー子を捕まえようと、砂浜を走り回った。ピー子は英太の手をすり抜けて、さよりの肩に止まった。英太の腕には赤い糸が絡みついていた。
 その時、突然女性の叫び声が聞こえた。その女性の姿を見た哲也は、震え上がり腰を抜かした。さよりの肩に止まっていたピー子は、赤い糸を器用にほどいて飼い主の方へ飛んで行った。そして、それを追いかけるように、鳥かごを抱えた哲也も走り去った。
 砂浜に残された英太とさよりは、しばし見つめ合い…。さよりは赤い糸を巻き取りながら英太に近づいて、にっこり微笑んだ。次の瞬間、さよりの平手が空を切った。
 次の日。哲也の顔には何枚も絆創膏が貼られていた。英太とさよりは、昨日のことが嘘のようにいつも通りだ。でも、さよりの筆箱には、昨日の赤い糸が大切に入れられていた。
<つぶやき>子供の頃のたわいない夢。でも、その夢を忘れなかった人は、幸せかもね。
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1475「悪魔の子1」

2024-10-16 16:18:43 | ブログ短編

 警察(けいさつ)の取調室(とりしらべしつ)。刑事(けいじ)を前にして、憔悴(しょうすい)しきった男は誰(だれ)に言うでもなく呟(つぶや)いた。
「俺(おれ)がやった。あいつは悪魔(あくま)だったんだ。俺が止(と)めなきゃとんでもないことに…」
「どういうことだ?」刑事は柔(やわ)らかな口調(くちょう)で話しを促(うなが)した。男は俯(うつむ)いた顔をあげると、
「あいつは…山木早紀(やまきさき)って言うんだが…。本名(ほんみょう)かどうかは分からない。でも、あの女は…人の心(こころ)が読(よ)めるんだ。今まで何人もの男を死(し)に追(お)いやった。俺は…手を貸(か)すしかなかった」
「人の心が読めるって…。それはどういう…」
「相手(あいて)が何を考(かんが)えてるのか分かるんだよ。だから俺は…、偶然(ぐうぜん)に任(まか)せたんだ」
 刑事はため息(いき)をついて、「どうも、お前の言ってることは…。分かるように説明(せつめい)してくれ」
「そうだな。俺も最初(さいしょ)はそうだった。あいつと出会(であ)ったのは、中央公園(ちゅうおうこうえん)だった。あいつはひとりでベンチに座(す)って通り過(す)ぎて行く人を眺(なが)めていた。俺は職(しょく)を失(うしな)って金(かね)もなかったから、そいつの鞄(かばん)を盗(ぬす)んでやろうとしたんだ。だが、あいつは俺の手をつかんで言ったんだ。<お金が欲(ほ)しいんなら、あたしと手を組(く)まない>ってな…。最初は小銭(こぜに)を稼(かせ)ぐ程度(ていど)だったんだ。それが、どんどんエスカレートして、いらない人間(にんげん)を消(け)してしまおうって…」
「現場(げんば)にあった毒薬(どくやく)はそのためのものだったんだな。どこで手に入れた?」
「あいつが用意(ようい)したんだ。俺は、あいつが飲(の)んでいた薬(くすり)の中に紛(まぎ)れ込ませた。いつ死ぬかは神(かみ)のみぞ知(し)るだ。二、三日して戻(もど)ってみると……。安(やす)らかな死に顔(がお)だっただろ」
<つぶやき>彼女はほんとうに悪魔だったのか? 他(ほか)の生き方はなかったのでしょうか。
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0012「いつか、あの場所で…」

2024-10-12 17:24:57 | 連載物語

 「雨のち晴、いつか思い出」3
 おばあちゃんはいっぱい勉強して大きな夢をつかんだんだ。学校の先生っていう夢を。でも、先生になって一年もたたないある日、お父さんが突然倒れて亡くなったんだって。まるでおばあちゃんが独り立ちするのを待ってたように…。おばあちゃんはいっぱい泣いたって言ってた。あの約束があったから今まで頑張ってこれたのに、これから何を頼りに生きていけばいいの…。
「おばあちゃんはね、そのとき気づいたんだ。とっても大切なことに…」
「大切なことって?」お姉ちゃんが悲しそうな顔で聞く。
「それはね、今まで沢山の人に助けられていたんだってこと。病気のときもそうだったし、元気になってからもいっぱい助けてもらった。家族や、先生や、友達にね」
「そんなにいっぱい?」「そうよ」
 僕にはよく分からなかった。この時は…。
「おばあちゃんは、それを返さなくちゃいけないってそう思ったの。沢山もらったものをみんなにも分けてあげなくちゃって。おばあちゃんね、それから頑張ったわよ。泣いてる暇なんてなかった。あなたたちも沢山の人に助けられているの。それを忘れないでね」
「ごめんなさい」素直に言えた。
 なんか変な感じだ。お姉ちゃんもそうなのかな? 僕はおばあちゃんがこんな思いをしていたなんて…。僕には想像もつかなかった。
「おばあちゃんはどうやって夢を見つけたの?」お姉ちゃんが聞いた。僕も聞きたかった、どうやったのか。
「さあ、どうだったかな? 気がついたら、いつの間にか先生になってたね」
「私にも見つかるかな?」「どうかな?」「私、頑張るから…」
「ふふ、大丈夫だよ。私の孫だからね。きっと見つかるよ」
「僕も?」
「ああ。今すぐは見つからないかもしれないけど、いつかきっと見つかるさ」
「ほんとに?」
 おばあちゃんは笑っていた。いつもの笑顔だ。
「でもね、これだけは忘れないでね。夢をつかむための心得」
 えっ? 何だろう。二人して真剣に聞いている。いつもこんな風に引き込まれていくんだ。おばあちゃんの世界に…。
「それはね、のびのびとした想像力と、どんな事にも立ち向かう勇気。そして、これが大切よ。人を思いやる優しい心。…忘れないでね、約束よ」
 この時は、おばあちゃんの言ったことがよく分からなかった。でも、今は分かる気がする。たぶん…。おばあちゃん。おばあちゃんとした約束、ちゃんと守るからね。僕もいつか大きな夢を見つけるんだ。おばあちゃんに負けないくらい大きな夢。お姉ちゃんも、絶対そう思ってる。ずっとずーっと、おばあちゃんのことは忘れない。
<つぶやき>大切な思い出は、そっと心にしまっておきましょう。明日の幸せのために。
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