みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0608「あなた」

2019-07-22 18:29:19 | ブログ短編

 手を伸(の)ばせば、そこにある。ほんの少し勇気(ゆうき)をだして…。そうすれば手に入るの。わたしの欲(ほ)しいもの。それは…、あなた。
 わたしは、あなたを自分(じぶん)のものにしたいって衝動(しょうどう)にかられている。これが恋(こい)というものなのか、わたしには分からない。でも、日に日にその衝動が抑(おさ)えきれなくなって…。自分でもどうすることもできない。あなたを見るたびに、わたしの胸(むね)はしめつけられた。
 何度、あなたから目をそらそうとしたか。でも、そのたびにあなたの姿(すがた)がちらついて…。あなたのことを探(さが)してしまう。もうあたし、あなたなしでは生きてゆけないかも。こんな苦(くる)しい思い、いつまで続くんでしょ…。
 でも、それももう終わりよ。わたし、決(き)めたわ。明日、あなたを手に入れる。そのために、今まで我慢(がまん)してきたんだもん。やっとその日が来たの。わたしは、あなたのもとへ走ったわ。そして、あなたの姿を見たとき――。
 だめ、だめよ。…どうして? あなたの横にいるのは――。あたしは、何てことを考えてるの。あたし、あなたのことは好きよ。でも、あなたの隣(となり)にはもっと素敵(すてき)な――。いけないわ、そんなこと…。わたしは、浮気(うわき)な女じゃないはずよ。わたしの一途(いちず)な思いは、こんなことで砕(くだ)けたりなんか…。でも、女心(おんなごころ)って……。
<つぶやき>あなたって、何なんでしょうね。いろんなもので想像(そうぞう)を膨(ふく)らませてみると…。
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0607「思うまま」

2019-07-21 18:54:16 | ブログ短編

 若者(わかもの)が、道端(みちばた)で占(うらな)いの看板(かんばん)を掲(かか)げている男に声をかけられた。
「あんさん、何か悩(なや)みごとでもあるんでっか? よかったら、見てあげまひょか?」
 若者はきょろきょろ辺(あた)りを見回(みまわ)して、「いや、僕(ぼく)は、そういうんじゃ…」
「遠慮(えんりょ)せんでもよろしいがな。寄(よ)って行きなはれ」
 若者は言われるままに近づくと、男は半(なか)ば強引(ごういん)に座らせて、若者の顔をまじまじと見つめて言った。「ははーん、分かった。――恋(こい)の悩(なや)みやないですか?」
 若者は首(くび)を大きく振(ふ)ったが、男は確信(かくしん)したようにささやいた。
「ここだけの話ですけど…。好きな人を思いのままに操(あやつ)れる薬(くすり)がおます。よかったら…」
「えっ!」若者は思わす声をあげた。「そ、そんな薬が…、あるんですか?」
「はい。ただし、あんさんがその手で飲ませんとあきまへん」
「そ、そんな…。どうすればいいんですか? 僕は、彼女に告白(こくはく)もしてないのに…。まともに話すらしたことないんですよ」
「あきまへんな。なら、声をかけなさい。で、これをこっそり飲ませば、思うままに…」
「それ、ほんとですか? ほんとに、僕の…、思うままに…」
「はい。――では、ここは勉強(べんきょう)させていただいて、三万円で、どうですか?」
「さ、三万! ちょっと高くないですか? これ、一粒(ひとつぶ)ですよね」
「なに言うてはりますの。これで、あんさんの人生(じんせい)がバラ色になるんでっせ。安(やす)い、安い」
<つぶやき>男の性(さが)と言いますか…、そんなことして恋人(こいびと)を作るなんて。絶対(ぜったい)ダメです。
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0606「お嬢さま」

2019-07-20 18:25:47 | ブログ短編

 私には好(す)きな人がいる。好きといっても私の片思(かたおも)いだけど。彼は同じクラスで、どちらかというと目立(めだ)たない人。格好(かっこ)良くもないし、クラスの人気者(にんきもの)でもない。でも、とっても優(やさ)しいの。こんな私にも、気づかってくれて…。
 私、思い切って告白(こくはく)しようと思った。でも、なかなか彼と二人っきりになれなくて…。それが、その機会(きかい)がやっと来た。放課後(ほうかご)、先生(せんせい)に呼(よ)ばれた私は職員室(しょくいんしつ)から戻(もど)ってみると、教室(きょうしつ)には彼が一人だけ残(のこ)っていて。私は、思わず彼に話しかけた。
「あの、矢野(やの)君。私、話したいことがあるの。聞いてくれる?」
 彼が、私を見た。私は、顔が熱(あつ)くなって、胸(むね)がドキドキしてきた。私が告白しようとしたその瞬間(しゅんかん)、私の後ろから声がした。「あら、二人で何してるの?」
 それは、金城由依(かねしろゆい)。お嬢(じょう)さまと、みんなから呼ばれていた。家はお金持ちで、学校で一番の美人(びじん)。そしてとんでもない勘違(かんちが)い女だ。クラスの男子(だんし)、いや学校中の男子に好かれていると思い込んでいた。まあ、彼女に話しかけられた男子は、舞(ま)い上がってしまうのは事実(じじつ)だけど…。そんな彼女が、何で矢野君に目をつけるのよ。彼女は私を見て言った。
「ひどい、矢野君を一人占(じ)めするなんて。三田(みた)さん、矢野君はあたしを待ってたのよ」
 矢野君は、お嬢さまに言った。「違(ちが)うよ。僕(ぼく)が待ってたのは…」
 ――彼は、私を見た。やっと理解(りかい)したのか、お嬢さまは何も言わずに教室を出て行った。
<つぶやき>これって両思(りょうおも)いなのかな? でも、お嬢さまがこのまま黙(だま)っているかしら。
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0605「しずく36~盟友」

2019-07-19 18:28:24 | ブログ連載~しずく

 神崎(かんざき)つくねは、柊(ひいらぎ)あずみの意外(いがい)な面(めん)を見てしまって、このことをどう理解(りかい)すればいいのか戸惑(とまど)っていた。あずみは、そんなことまったく気にしない様子(ようす)で、
「なに? 何か問題(もんだい)でもあるの?」
「いえ、そう言うわけじゃ…。でも、どうして…」
「ああ…」あずみは携帯(けいたい)をつくねに見せて、「これね。私たちと同じ能力者(のうりょくしゃ)よ。千里眼(せんりがん)の能力(ちから)があって、とっても頼(たよ)りになる人よ。…性格(せいかく)には、問題あるけどね」
 あずみの言い方に、ちょっと刺(とげ)があるように感じたつくねは、これ以上訊(き)かない方がいいのかと思った。あずみは、つくねの心中(しんちゅう)を察(さっ)したのか、
「イヤだ、そういうんじゃないのよ。この人とは腐(くさ)れ縁(えん)でね。ちょうど、あなたとしずくみたいなもんよ。出会ったときからいろんな……。もう止めましょ。今は、昔(むかし)の話をしてる時じゃないから。しずくが待ってるわ」
 つくねは肯(うなず)くと、窓(まど)の方へ向かった。そこから外へ出ようとしたのだ。でも、あずみはつくねの肩(かた)に手を置(お)いて、自分の方へ引き寄(よ)せると言った。
「時間が無いわ。飛(と)ぶわよ。いい、私にしっかりつかまってて」
 つくねがあずみの身体(からだ)に手を回すと、二人の姿(すがた)は忽然(こつぜん)と消えた。後に残(のこ)されたのは、窓の外に転(ころ)がっているつくねの靴(くつ)だけだった。
<つぶやき>どうでもいいことなんですが、この靴ってどうなっちゃうの? 気になる。
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0604「雪山」

2019-07-18 18:32:18 | ブログ短編

「もう少しだ。ほら、頂上(ちょうじょう)が見えるだろ。がんばれ!」
 男は後ろを向いて、女に言った。だが、女は雪(ゆき)の斜面(しゃめん)に座(すわ)り込んでしまって身動(みうご)きできない。男を見上げると苦(くる)しそうに言った。
「もう無理(むり)よ。あなただけでも、行ってちょうだい。私、ここで待ってるから…」
「なに言ってるんだ。お前をおいて行けるわけないだろ。それに、お前と一緒(いっしょ)じゃないと意味(いみ)ないんだ。二人で頂上に立つって約束(やくそく)したじゃないか」
「ほんとに無理なの。もう一歩も歩けないわ。だから、行って!」
「分かった。じゃ、山を降(お)りよう。……無理をさせて、すまなかった」
「ダメ、そんなのダメよ。この山を征服(せいふく)するのが、あなたの夢(ゆめ)だったじゃない。今までしてきたことが、無駄(むだ)になっちゃう」
「いいんだ。またいつでも登(のぼ)れるさ。次は、必(かなら)ず二人で成功(せいこう)させよう」
 その時、下の方から坊主頭(ぼうずあたま)の白髭(しろひげ)を長く伸(の)ばした老人(ろうじん)が、ひょうひょうと登って来た。二人の姿(すがた)を見て、老人は言った。
「こんな雪の日に登らんでもいいのに。大変(たいへん)だろ? 明日になればきれいに溶(と)けちまうから、また来なさい。この山は逃(に)げやせんからな。ハッハッハッ」
 老人はそう言うと、軽々(かるがる)とした足取(あしど)りで頂上へと向かって行った。二人は老人を見送(みおく)ると、信じられないとうい顔で見つめ合った。
<つぶやき>この老人は何者(なにもの)なのでしょう。仙人(せんにん)、それとも偉(えら)い修行僧(しゅぎょうそう)なのかもしれない。
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