みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0407「ど真ん中」

2018-12-12 18:41:39 | ブログ短編

 このレストランで働(はたら)き始めて二年。新しい出会(であ)いを求(もと)めて始めたのだが、期待(きたい)どおりにはいかなかった。客層(きゃくそう)はおっさんばっかだし、たまに格好(かっこ)いいのが来ても女連(おんなづ)れ。若い男が一人で来る時もあるけど、どれもこれもカスばっかで…。
 どうして私の周(まわ)りには、そんなのしかいないんだろう。こんなんじゃ、ここで働いてる意味(いみ)ないじゃん。私は、転職(てんしょく)を考え始めていた。
 そんな時だ。私にとって、ど真(ま)ん中のストライク男が現(あらわ)れた。他のウエイトレスが見とれている間(ま)に、私はフライング気味(ぎみ)に素早(すばや)く水を持って行く。彼が席(せき)に着(つ)くのと同時(どうじ)にコップを彼の前に置いた。間近(まぢか)で見ると、もう、うっとりするような…。私は危(あや)うく注文(ちゅうもん)を聞き漏(も)らすところだった。私は、自分では最高(さいこう)の笑顔を彼に振(ふ)りまいた。
 オーダーを通す時の優越感(ゆうえつかん)といったら…。他のウエイトレス達は、口をあんぐり開けちゃって。恨(うら)めしそうな視線(しせん)を私に向ける。もう彼は私のものよ。誰(だれ)にも渡(わた)さないからね。この件(けん)に関(かん)しては、先輩(せんぱい)も後輩(こうはい)もないんだから。早い者勝ちよ。
 オーダーが出来上がって、私は背筋(せすじ)を伸(の)ばして颯爽(さっそう)と彼のもとへ急いだ。あとは彼の連絡先(れんらくさき)を聞き出して…。私の中でいろんな妄想(もうそう)が膨(ふく)らんだ。だが、世の中そう甘(あま)いもんじゃなかった。どこからともなく一人の女が現れて、何のためらいもなく彼と同じ席に…。
 私は思わず足を止めて、心の中で叫(さけ)んだ。「ウソだ~ぁ! そんなのアリ~ぃ!」
<つぶやき>お店の裏側(うらがわ)では、こんな攻防(こうぼう)が続いているのかもしれません。ホントかな?
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0406「そばにいさせて」

2018-12-11 18:25:07 | ブログ短編

 深夜(しんや)の公園(こうえん)。ベンチで酔(よ)いつぶれている男がいた。そこへ女がやって来る。男を見つけると、「あっ、やっと見つけた。もう、捜(さが)したんだからね」
 男は眠(ねむ)っているのか、うなだれたまま動かない。女は男の横に座(すわ)り、独り言(ひとりごと)のように、
「何で私じゃダメなの? こんなに、あなたのこと、好きなのに…。あの娘(こ)はいないの。もう帰ってこないのよ。あなただって、分かってるはずよ」
 男は顔を上げ、虚(うつ)ろな目で女を見つめる。そして、「あすか…」と呟(つぶや)いて、女を抱(だ)き寄せた。女はされるがままに男を抱きしめる。
「いいよ。私が、あの娘(こ)の代(か)わりになってあげる。だから、だから…」
 男はやっと正気(しょうき)を取り戻(もど)したのか、抱きしめていた女から離(はな)れると、
「ダメだ。今、君(きみ)を抱いたら、俺(おれ)は、君を傷(きず)つけてしまう。それだけはしたくないんだ」
 男は両手で顔を覆(おお)った。女は男の背中(せなか)にもたれかかるようにして、
「私は、それでもいいよ。あなたのそばにいたいの。――もう、あなたの苦(くる)しむ姿(すがた)は見たくない。私が、あんな女のことなんか忘(わす)れさせてあげる。だから…」
 男は突然(とつぜん)立ち上がり、フラフラとした足取(あしど)りで歩きだした。女は男の背中に向かって、
「何でよ! 私のことは好きにならなくてもいいから。そばにいさせてよ」
<つぶやき>男と女の間には、越(こ)えられない何かがある。でも、思いは必(かなら)ず伝わります。
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0405「霊界からの誘い」

2018-12-10 18:27:59 | ブログ短編

「ねえ、どこ行くのよ」彼女はイヤな胸騒(むなさわ)ぎを覚(おぼ)えて彼に訊(き)いた。
 今日は、彼から夜のドライブに誘(さそ)われたのだ。車は人気(ひとけ)のない山道へ入ろうとしていた。彼女の質問(しつもん)に、彼は薄笑(うすわら)いを浮(う)かべるだけで何も答えない。そんなに遅(おそ)くない時間なのに、道路(どうろ)を走る車も無(な)く、辺りには転々(てんてん)と小さな外灯(がいとう)が申(もう)し訳程度(ていど)に点(つ)いているだけ。
 彼女は彼の腕(うで)をつかみ、強い口調(くちょう)で言った。「停(と)めて! いいから、停めなさいよ!」
 車はタイヤを軋(きし)ませながら停まった。彼女は彼の手を強く握(にぎ)りしめて言った。
「どこへ行くのか教えて。教えてくれなきゃ、あたし帰るから」
 彼は彼女の顔を見て、何の感情(かんじょう)も見せずに言った。「面白(おもしろ)いところがあるんだ。心霊(しんれい)スポットだよ。君(きみ)にも見せてあげたいんだ。きっと気に入ると思うよ」
 彼女は全身(ぜんしん)に鳥肌(とりはだ)がたった。彼女には霊感(れいかん)があり、見えてしまうのだ。彼女は言った。
「行っちゃダメ。帰ろう。――あたし、そんなとこ行きたくない!」
 彼女は必死(ひっし)に訴(うった)えたが、彼は何の表情も見せない。彼は車を発車させようとした。彼女はシートベルトを外し、「ダメ!」と叫(さけ)んで彼の身体(からだ)にしがみついた。
 その時だ。彼女は思わず息(いき)を呑(の)んだ。車のガラスに、若い女の顔が写っていたのだ。恨(うら)めしそうにこっちを見ている。彼女は大声で叫(さけ)んだ。
「消(き)えて! 来ないで! あたしたちは行かないわよ!」
 後から聞いた話だが、数日前、彼は友達(ともだち)と一緒(いっしょ)にその心霊スポットに行っていたそうだ。
<つぶやき>浮(うわ)ついた気持ちで行くと、いろんなものが憑(つ)いてきてしまいます。ご注意(ちゅうい)を。
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0404「彼氏に求めるもの」

2018-12-09 18:43:45 | ブログ短編

「なあ。前に、何とかっていうモデルみたいになりたいって言ってなかった?」
 古橋(ふるはし)くんは圭子(けいこ)の食べっぷりを見ながら言った。圭子は口をモグモグさせながら、
「なに言ってるのよ。今は丸(まる)ぽちゃじゃない。ぽっちゃりしてる子のほうが人気(にんき)なのよ」
「えっ? だからって、ちょっと食べ過(す)ぎなんじゃない?」
「もう、私はあなたのために頑張(がんば)ってるのよ。そんな言い方しないで」
「俺(おれ)は、そんな流行(はやり)より、今のままの君(きみ)が好きなんだけど…」
 圭子は怒(おこ)った顔をして、「私がモテれば、あなただってやる気が出るでしょ」
「やる気って…。何だよそれ?」古橋くんは困惑(こんわく)の表情(ひょうじょう)を浮(う)かべて言った。
「だから、別に私は、他の男性の気を引こうとか、そういうこと考えてんじゃないの。イケメンの男子が私に話しかけるようになれば、あなただって、〈よし、もっと格好(かっこ)良くなるぞ〉って思うでしょ。あなたのモチベーションを高めるためにしてるんじゃない」
「でも、それはちょっと違(ちが)うんじゃないかなぁ。そんなことしなくても…」
 圭子は大きなため息(いき)をついて、古橋くんをしばらく見つめていたが、
「私は、私にふさわしい彼氏(かれし)になってほしいだけ。あなたにその気がないのなら別れましょ」
「ちょっと待てよ。今の俺の、何がいけないって言うんだ? 全然(ぜんぜん)、分かんねえよ」
<つぶやき>あなたが彼氏に求(もと)めるのはなに? 目に見える形で現れないとダメなもの?
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0403「何でこんな…」

2018-12-08 18:14:56 | ブログ短編

 あさみは下校途中(とちゅう)で見知(みし)らぬ男の子に声をかけられた。
「ねえ、俺(おれ)と付き合わない? キミ、めちゃタイプなんだけど」
 あさみは呆(あき)れてしまった。学校の制服(せいふく)を着てナンパするなんて、なに考えてんのよ。あさみは無視(むし)して行こうとする。すると、男の子はあさみの前へ回り込み、
「なあ、いいだろ? 俺、転校(てんこう)して来たばっかでさ、いろいろ教えてもらいたいんだよね」
「何であたしが? もう、話しかけないで」あさみは男の子を睨(にら)みつける。
「お前、2組の森口(もりぐち)あさみだろ? 俺、3組の山田圭介(やまだけいすけ)」
 男の子はあさみの顔を見て微笑(ほほえ)みかける。だが、あさみの方はプイッとそっぽを向く。
 男の子はちょっとガッカリした顔を見せたが、あさみの耳元(みみもと)まで来て囁(ささや)いた。
「みどり幼稚園(ようちえん)のガキ大将(だいしょう)で、男子のパンツを脱(ぬ)がせまくった――」
 あさみは顔を真っ赤にして叫(さけ)んだ。「ちょっと! 何で、何でそんなこと知ってるのよ?」
「だって、俺、その場にいたから。覚(おぼ)えてないかな? 俺だって。ケイスケ」
「ケイスケ?」あさみはハッと気づいて、「えっ! ケイちゃん? あの、おとなしくて、全然(ぜんぜん)しゃべんなかった? ウソ…。何で、こっ、こんなになっちゃったの?」
「あの頃(ころ)は、俺、いじめられてて、よく助けてもらったよね。これでも感謝(かんしゃ)してんだぜ」
「信じられない。何で、こんなチャラい男になっちゃったのよ」
<つぶやき>再会(さいかい)した相手(あいて)にガッカリしたことはありませんか? でも、向こうでも…。
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