ブログ短編0775「しずく70~試合」を再公開しました。
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それは、どうやら僕(ぼく)の妄想(もうそう)から始(はじ)まったようだ。どうしてそんなことが起(お)きたのか、僕(ぼく)には分(わ)からない。でも、それは間違(まちが)いなく僕(ぼく)の妄想(もうそう)が生(う)み出(だ)したものだった。
彼女(かのじょ)が目(め)の前(まえ)に現(あらわ)れたとき、僕(ぼく)は思(おも)わず目(め)を奪(うば)われてしまった。今(いま)まで何十回(なんじゅっかい)、何百回(なんびゃっかい)も思(おも)い描(えが)いてきた女性(じょせい)がそこにいたのだ。容姿(ようし)もそうだが、物腰(ものごし)も、すべてが僕(ぼく)の妄想通(もうそうどお)りなのだ。これは、怖(こわ)いくらいだ。こんなことが、あっていいのか…。
彼女(かのじょ)が何(なに)かしゃべっている。でも、僕(ぼく)は…何(なに)も耳(みみ)に入(はい)ってこなかった。僕(ぼく)は、僕(ぼく)は、彼女(かのじょ)の手(て)をつかんで走(はし)り出(だ)していた。だって、彼女(かのじょ)は実在(じつざい)の女性(じょせい)ではない。人目(ひとめ)にさらしてはいけないのだ。どこをどう走(はし)ったのか、気(き)がつくとラブホの一室(いっしつ)にいた。これは、別(べつ)にあれではない。ただ、ひとりになって冷静(れいせい)に考(かんが)えたかったのだ。これから、どうすればいいのか…。どうしたら、彼女(かのじょ)を消(け)すことができるのか…。
消(け)す…、消(け)してしまっていいのか? 僕(ぼく)は自問自答(じもんじとう)する。僕(ぼく)は彼女(かのじょ)を見(み)た。
彼女(かのじょ)は何(なに)か言(い)いたげだった。僕(ぼく)は、どうしたらいいんだ。彼女(かのじょ)は僕(ぼく)に近(ちか)づいて言(い)った。
「おにいちゃん。あたしと、したいんですか?」
お、おにいちゃんって…何(なん)だ。僕(ぼく)に妹(いもうと)なんかいない。僕(ぼく)は首(くび)を振(ふ)る。すると、
「あたしのこと覚(おぼ)えてないの? ひどい。子供(こども)のころ、遊(あそ)んでくれたじゃないですか。久(ひさ)しぶりに会(あ)ったのに、いきなりこれはないと思(おも)いますけど…」
<つぶやき>これは、実在(じつざい)の女性(じょせい)だったんですね。いったいどういう関係(かんけい)だったのかなぁ。
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「夏休(なつやす)みのこわーいお話(はなし)」3
「じゃ、高太郎(こうたろう)。帰(かえ)ろう」ゆかりが妙(みょう)に明(あか)るく言(い)った。えっ、帰(かえ)るの? 僕(ぼく)は、ほっとした。この程度(ていど)だったら、さくらも…。僕(ぼく)たちがさくらの部屋(へや)を出(で)ようとしたとき…。
「ちょっと待(ま)って。あの、信(しん)じてる訳(わけ)じゃないんだけど…。もう少(すこ)しだけ聞(き)いときたいかなって…」さくらがすがるような目(め)で僕(ぼく)たちを見(み)る。ゆかりのあの笑顔(えがお)が…。
「良(い)いわよ。何(なん)でも聞(き)いて。全部(ぜんぶ)、教(おし)えてあげるから」満面(まんめん)の笑顔(えがお)だ。いちばん恐(おそ)れていた展開(てんかい)になってしまった。僕(ぼく)にはもうどうすることも出来(でき)ない。ごめん、さくら…。
「あのね…、学校(がっこう)なのにどうして落(お)ち武者(むしゃ)が現(あらわ)れるの?」真剣(しんけん)に聞(き)いてくるさくら。
「そうね、そこから話(はな)した方(ほう)が良(い)いわね」ゆかりの目(め)が、さくらを捕(とら)らえた。
「昔(むかし)、この近(ちか)くで戦(いくさ)があったの。けっこう大(おお)きな戦(たたか)いだったんだって。その戦(たたか)いで負(ま)けた侍(さむらい)たちがここまで落(お)ち延(の)びてきて。それも、大将(たいしょう)と部下(ぶか)の侍(さむらい)が数人(すうにん)。村(むら)にあった小(ちい)さなお寺(てら)に逃(に)げ込(こ)んで来(き)たそうよ。そのお寺(てら)のあった場所(ばしょ)っていうのが、私(わたし)たちの学校(がっこう)が建(た)っている所(ところ)なんだって」
ゆかりが得意(とくい)げに話(はな)してる。毎年(まいとし)のことだけど、よくそんなでたらめが言(い)えるよな。ゆかりは怖(こわ)い話(はな)しが大好(だいす)きで、夏(なつ)になると誰(だれ)かを捕(つか)まえては脅(おど)かして楽(たの)しんでいる。何処(どこ)で調(しら)べてくるのか知(し)らないけど、すごくリアルに話(はな)しをする。肝(きも)だめしで脅(おど)かせないからって、何(なに)もここでしなくても…。
「村人(むらびと)たちは襲(おそ)われるんじゃないかって、びくびくしてたんだって。このままじゃいけない、俺(おれ)たちの手(て)で村(むら)を守(まも)るんだ。村(むら)の勇敢(ゆうかん)な男(おとこ)たちが、そこで立(た)ち上(あ)がった。そして夜(よる)の闇(やみ)に紛(まぎ)れて近(ちか)づき、お寺(てら)にいた落(お)ち武者(むしゃ)の寝込(ねこ)みを襲(おそ)って殺(ころ)してしまったの。その争(あらそ)いの時(とき)に、灯火(とうか)を倒(たお)してしまって火(ひ)の手(て)が上(あ)がった。村人(むらびと)たちはなんとか消(け)そうとしたんだけど、そのお寺(てら)はすべて燃(も)えてしまったの。落(お)ち武者(むしゃ)たちの死体(したい)も一緒(いっしょ)にね」
「えっ、そんな…」さくらの顔色(かおいろ)が変(か)わった気(き)がした。…怖(こわ)がってるよ。
「その焼(や)け跡(あと)にね、またお寺(てら)を建(た)てようとしたんだけど、そのたびに事故(じこ)が起(お)きて何人(なんにん)も死(し)んだそうよ。村人(むらびと)たちは落(お)ち武者(むしゃ)の祟(たた)りだと思(おも)って、そこに塚(つか)を作(つく)って供養(くよう)した。でも、そんなことでは成仏出来(じょうぶつでき)なかったみたい。たびたびその場所(ばしょ)に現(あらわ)れては、村人(むらびと)たちに襲(おそ)いかかった!」
「きゃーっ!」とさくらは叫(さけ)んで、僕(ぼく)にしがみついてきた。
やりすぎだよ。震(ふる)えてるよ、さくら。僕(ぼく)は、「大丈夫(だいじょうぶ)だよ。今(いま)はそんなことないから…」
「でも、それがまだ出(で)るんでしょう? が、学校(がっこう)に…」完全(かんぜん)に怯(おび)えてしまった。
「さくら、心配(しんぱい)ないって。御札(おふだ)をちゃんと貼(は)っておけば大丈夫(だいじょうぶ)」「でも、ゆかり…」
「肝(きも)だめし、楽(たの)しみだねぇ」なんで僕(ぼく)のほう見(み)て笑(わら)うんだよ。まだ、何(なに)かあるのかよ。
「私(わたし)、行(い)かない。肝(きも)だめし、休(やす)むから…。せ、先生(せんせい)には後(あと)で…」
「さくら、駄目(だめ)よそれは。肝(きも)だめしの決(き)まり事(ごと)にこういうのがあるの。必(かなら)ず全員(ぜんいん)が参加(さんか)すること。怖(こわ)がって参加(さんか)しなかった者(もの)には、恐(おそ)ろしいしっぺ返(がえ)しが待(ま)っている」
「いやだーっ!」
<つぶやき>昔(むかし)の話(はな)しには真実(しんじつ)が隠(かく)れていることもあるみたいです。気(き)をつけましょう。
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目(め)が覚(さ)めると、俺(おれ)は猫(ねこ)の姿(すがた)になっていた。なぜこんなことに…。そこのところの記憶(きおく)がまったくない。何(なに)が原因(げんいん)だったんだ? 俺(おれ)、元(もと)に戻(もど)れるんだろうか…。
俺(おれ)は街(まち)をさまよっていた。ふと気(き)がつくと、見覚(みおぼ)えのある通(とお)りに出(で)た。ここは以前(いぜん)、よく来(き)ていた場所(ばしょ)だ。あの頃(ころ)はバンドに熱中(ねっちゅう)していて、行(い)きつけの楽器店(がっきてん)で練習(れんしゅう)に明(あ)け暮(く)れていた。確(たし)か、この先(さき)にあったはずだ。まだ、店(みせ)はあるんだろうか?
その店(みせ)は、まだあった。外(そと)から店内(てんない)を覗(のぞ)いて見(み)ると、前(まえ)とちっとも変(か)わらない。店員(てんいん)の女(おんな)の子(こ)が目(め)に入(はい)った。その店員(てんいん)の顔(かお)を見(み)て驚(おどろ)いた。ユキだ。一緒(いっしょ)にバンドをやっていた。あいつ、この店(みせ)で働(はたら)いてるんだ。バンドを解散(かいさん)したのは、三年前(さんねんまえ)か…。
そのとき、店内(てんない)から客(きゃく)が出(で)てきた。すかさず、俺(おれ)は店内(てんない)に潜(もぐ)り込(こ)んだ。そして、ユキを目指(めざ)して走(はし)った。ユキは俺(おれ)を見(み)つけて、にっこり微笑(ほほえ)んだ。こいつ、笑顔(えがお)だけは可愛(かわい)かったよなぁ。と、俺(おれ)は思(おも)い出(だ)した。
でも、ユキは俺(おれ)の首根(くびね)っこを押(お)さえ込(こ)んで抱(だ)きあげると、
「ここは、あなたの来(く)るところじゃないでしょ。どっから入(はい)ってきたのよ」
ユキは怒(おこ)っていた。前(まえ)は、あんなに優(やさ)しかったのに…。何(なん)だ、この変(か)わりようは…。俺(おれ)は、為(な)す術(すべ)もなく店(みせ)の外(そと)に放(ほう)り出(だ)された。でも、俺(おれ)はあきらめないぞ。ユキに気(き)に入(い)ってもらうんだ。そして、今夜(こんや)の食事(しょくじ)とねぐらを確保(かくほ)しなくてはならない。
<つぶやき>彼女(かのじょ)が猫好(ねこず)きだといいですね。さて、ユキちゃんのお家(うち)に潜(もぐ)り込(こ)めるかな?
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居酒屋(いざかや)で会社(かいしゃ)の飲(の)み会(かい)が開(ひら)かれていた。そろそろお開(ひら)きという感(かん)じ。テーブルの隅(すみ)の方(ほう)で、芳恵(よしえ)が新入社員(しんにゅうしゃいん)の圭太(けいた)にからんでいた。
芳恵「ちょっと、ちゃんと私(わたし)の話(はな)し聞(き)いてる!」
圭太「もちろん、聞(き)いてますよ、先輩(せんぱい)。でも、あの、そろそろ…」
芳恵「なんで、あの女(おんな)に任(まか)せるのよ。私(わたし)の方(ほう)が、きっちりと、この…」
圭太「あの、先輩(せんぱい)。もう、みんな、帰(かえ)ろうって…」
圭太(けいた)は立(た)ち上(あ)がろうとする。芳恵(よしえ)、彼(かれ)の腕(うで)をつかんで引(ひ)っぱる。
芳恵「まだ、話(はな)し終(お)わってないでしょ。人(ひと)の話(はなし)は、ちゃんと最後(さいご)まで聞(き)きなさい」
圭太「ちゃんと聞(き)いてますって…」
芳恵「私(わたし)はね、この会社(かいしゃ)で、一生懸命(いっしょうけんめい)働(はたら)いてきてるの。もう、七年(しちねん)よ。七年(しちねん)」
圭太「ああ、そうなんですか」
芳恵「あの女(おんな)より、私(わたし)の方(ほう)が優秀(ゆうしゅう)なんだから。ちょっと私(わたし)より美人(びじん)なだけなのに、なんでいい仕事(しごと)は向(む)こうへ行(い)っちゃうわけ」
圭太「いや、そんなことないですよ。先輩(せんぱい)の仕事(しごと)だって…」
芳恵「フフフ…。ねえ、あの女(おんな)の昔(むかし)のあだ名(な)、教(おし)えてあげようか? どん亀(がめ)って言(い)うの。フフフ…。小学校(しょうがっこう)の運動会(うんどうかい)で、いつもびり走(はし)ってて…」
圭太「何(なん)で、そんなこと…」
芳恵「だから、こんなちっちゃい頃(ころ)から知(し)ってるの。ほんと、いやな奴(やつ)だったわよ」
圭太「それって、幼(おさな)なじみとか…」
芳恵「幼稚園(ようちえん)のときなんか、私(わたし)のおもちゃでかってに遊(あそ)ぶのよ。自分(じぶん)のことしか考(かんが)えてないの。今(いま)も、そういうとこあるじゃない。そう思(おも)わない…」
圭太「いや、そうかな…」
芳恵(よしえ)は圭太(けいた)の腕(うで)をつかんだまま酔(よ)いつぶれてしまう。
係長「じゃあ、さきに帰(かえ)るな。君(きみ)たちの分(ぶん)は、立(た)て替(か)えといたから」
圭太「そんな、係長(かかりちょう)…」
明日香「じゃあね、芳恵(よしえ)のこと頼(たの)んだわよ。ちゃんと、送(おく)ってあげてね」
圭太「いや、待(ま)って下(くだ)さいよ。僕(ぼく)も…」
寛子「大丈夫(だいじょうぶ)よ。君(きみ)は草食系(そうしょくけい)だから、きっと無事(ぶじ)に帰(かえ)れるわよ」
圭太「えっ? どういうことですか」
吾朗「(圭太(けいた)の耳元(みみもと)で)お前(まえ)、変(へん)な気(き)おこすなよ。へたすると、怪我(けが)だけじゃすまないぞ」
圭太「なに言(い)ってるんですか、先輩(せんぱい)」
芳恵「(突然目(とつぜんめ)をさまし)こら、新人(しんじん)。まだ、話(はな)し終(お)わってないだろ(また寝(ね)る)」
圭太「あの、僕(ぼく)はどうすれば…」
時江「彼女(かのじょ)、合気道(あいきどう)やってるのよ。だから、反射的(はんしゃてき)に身体(からだ)が動(うご)いちゃうこともあるみたい。取扱(とりあつかい)には細心(さいしん)の注意(ちゅうい)を払(はら)いなさい。私(わたし)が言(い)えることは、それだけよ」
みんなは出(で)て行(い)く。圭太(けいた)は、気持(きも)ちよさそうに寝(ね)ている芳恵(よしえ)を見(み)て、途方(とほう)にくれた。
<つぶやき>翌日(よくじつ)、きっと彼女(かのじょ)は何事(なにごと)もなく出社(しゅっしゃ)することでしょう。すべてを忘(わす)れて…。
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