みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0761「検証」

2019-12-30 18:09:37 | ブログ短編

 私はこの病院(びょういん)で看護師(かんごし)として働(はたら)くようになって一年。やっと仕事(しごと)にも慣(な)れてきて遣(や)り甲斐(がい)というものを感じはじめていた。そんな時、女子高生の患者(かんじゃ)さんが入院(にゅういん)してきた。初めてその娘(こ)と会ったとき、私は彼女が口にした言葉(ことば)にちょっと驚(おどろ)かされた。
「ねえ、この病院って出るんじゃない? 毎日、不可思議(ふかしぎ)なこと起きてるよね」
 私はそれを受け流(なが)して、「この後、検査(けんさ)がありますから。呼(よ)びに来ますね」
 彼女は私の言ってることなど耳(みみ)に入らないのか、病室(びょうしつ)を見回して妙(みょう)なテンションで呟(つぶや)いた。「何かわくわくしちゃう。今夜は眠(ねむ)れそうにないわ。どうしよう――」
 私が呆気(あっけ)にとられていると、彼女は私に向かってささやいた。「ねえ、お姉(ねえ)さんは不思議(ふしぎ)な体験(たいけん)とかした? 例(たと)えば、誰(だれ)もいないはずの病室で物音(ものおと)がしたりとか――」
「そんなこと…。ここはお化(ば)け屋敷(やしき)じゃないんだからね。あなたは病気(びょうき)を治(なお)すことを――」
「はい、はい。じゃあ、ここで一番長く働いている人、教えてくれない? その人から、いろいろ訊(き)きたいことがあるんだ。退院(たいいん)するまでに、霊体験(れいたいけん)の検証(けんしょう)をしたいの」
 私は曖昧(あいまい)に返事(へんじ)をすると病室を出た。こんな娘(こ)は初めてだ。私は看護師長(かんごしちょう)にそのことを話した。すると、師長は小さな溜息(ためいき)をついて私に言った。
「分かったわ。あなたにも伝(つた)えるときがきたようね。実(じつ)は――」
 それ以来(いらい)、私の身(み)の回りでもいろんなことが起き始めた。この時の女子高生の彼女は、どういうわけか後輩(こうはい)の看護師として働いている。今でも検証を続けているようだ。
<つぶやき>病院での不思議な体験談(たいけんだん)はいろいろあるみたい。私は、恐(こわ)いのはちょっと…。
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0760「しずく67~帰還」

2019-12-29 18:30:51 | ブログ連載~しずく

 まったく何も見えない世界(せかい)。どっちが上なのか下なのか、それすら分からなくなっていた。姉妹(しまい)は不安(ふあん)になって声をかけ合った。そんな時、目の前にかすかな光が見えた。
「見つけたわ。きっとあれよ」ハルが言った。アキは握(にぎ)った手に力を込めた。
 二人は、その光を目当(めあ)てに進(すす)んで行った。近くまで来ると、光の中にしずくの姿(すがた)があった。光に包(つつ)まれて眠(ねむ)っているようだ。胸(むね)にあるペンダントが淡(あわ)い光を放(はな)っている。二人は頷(うなず)きあうと、光の中へ手を伸(の)ばした。
 しずくに触(ふ)れるその瞬間(しゅんかん)、突然(とつぜん)、渦(うず)が巻(ま)き起こり、二人はそれに巻き込まれバランスを崩(くず)してしまった。凄(すご)いスピードで身体(からだ)が流(なが)されていく。まるで激流(げきりゅう)にもみくちゃにされているみたいだ。身体が回転(かいてん)しはじめ、しっかり握っていた手が離(はな)れてしまった。二人は、お互(たが)いの名前を叫(さけ)んだ。何度も、何度も――。
 ベッドの横で二人は意識(いしき)を取り戻した。握った手に力を込めて、お互いの無事(ぶじ)を確(たし)かめ合った。そして、お互いの名前を呼んだ。ホッとして、笑(え)みを浮かべる二人…。立ち上がろうとしたとき、どこからか声が聞こえた。「戻(もど)って来られてよかったわ」
 二人は驚(おどろ)いて声がした方を見た。そこには光に包まれた、見たことのない女性が立っている。姉妹はしずくをかばうように立ち上がった。
<つぶやき>新しい登場人物(とうじょうじんぶつ)なのでしょうか…。でも、無事(ぶじ)に戻って来られてよかった。
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0759「おとぎ話的な」

2019-12-28 18:19:14 | ブログ短編

 ネットで妙(みょう)なサイトを見つけた。〈あなたの望(のぞ)みかなえます〉的(てき)な、これって絶対(ぜったい)やばいやつでしょ、と思いながらも無料(むりょう)という言葉(ことば)につられてダウンロードしてしまった。
 すると、中東風(ちゅうとうふう)の音楽(おんがく)が流れてきて、砂漠(さばく)の中の遺跡(いせき)をバックにしてターバンを巻(ま)いた男が現れた。その男は面倒(めんど)くさそうに言うのだ。
「ご主人(しゅじん)さま、あなたの望みを三つだけかなえることができます」
 僕(ぼく)が戸惑(とまど)っていると、男はあからさまに嫌(いや)な顔をして、「あれだろ、あの、ほら、片思(かたおも)いの彼女が振(ふ)り向いてくれるようにとか、昨日(きのう)買った宝(たから)くじが当たりますようにとか、そんなチンケな願(ねが)いごとを考えてんだろ? 分かってんだよ」
 僕はおかしなゲームだと思って呟(つぶや)いた。「これって、魔法(まほう)のランプ的なやつなのかな?」
 男はそれを聞いて不機嫌(ふきげん)に答(こた)えた。「そうだよ。昔(むかし)はよかったよなぁ。お城(しろ)を出してくれとか、大金持(おおがねも)ちにしてくれとか…。こっちもやりがいってもんがあったんだよ。近頃(ちかごろ)の連中(れんちゅう)ときたら…。あ~ぁ、どうでもいいようなことばっかりだよ。で、決(き)まったのか? こっちも暇(ひま)じゃねえんだからさ。さっさと言ってくれないかなぁ」
「あの、そんなこと急に言われても…」僕には別に望みとか、考えたことなかった。
「分かったよ。じゃあ、次は呼(よ)び出す前に望みを決めといてくれないかな。もう、そんな奴(やつ)ばっかりだよ。まったく休む暇もありゃしない」
 突然(とつぜん)、電源(でんげん)が切れたように画面が真っ暗(くら)になった。これって、故障(こしょう)しちゃったの?
<つぶやき>おとぎ話の世界でも、生き残(のこ)りをかけて日々努力(どりょく)しているのかもしれません。
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0758「助けて」

2019-12-27 18:18:29 | ブログ短編

 最悪(さいあく)だ。僕(ぼく)はベッドの中で天井(てんじょう)を見上げて思った。昨夜(ゆうべ)から何だか熱(ねつ)っぽいなと思っていたが、こんなことになるなんて…。頭がぼーっとして、身体(からだ)が熱(あつ)い――。起き上がろうとしても、どうにも身体(からだ)がいうことをきかない。
 このまま死(し)ぬのか…。誰(だれ)か…、助(たす)けを呼(よ)ばないと。僕はスマホに手をのばした。誰(だれ)だ、誰に…。僕はアドレスを見ながら、ダメだ、こんな平日(へいじつ)の昼間(ひるま)に…。みんな仕事(しごと)してる時間じゃないか――。
 僕は、彼女のことが頭に浮(う)かんだ。そうだ、ユミちゃんなら、結婚(けっこん)して専業主婦(せんぎょうしゅふ)をしてるって……。待(ま)て、それはまずくないか? いくら旦那(だんな)が友だちだからって、一人暮(ぐ)らしの男のところへ――。僕は迷(まよ)いながら、メールの画面(がめん)を呼び出していた。
 僕の記憶(きおく)は、そこからぼやけていてはっきりしない。チャイムの音がして…、玄関(げんかん)まで行って鍵(かぎ)を開けて…、それから、名前(なまえ)を呼ばれて……。それから、誰かが僕の身体を拭(ふ)いてくれて、頭に冷(つめ)たいものが……。ユミちゃん……、あれはユミちゃんだったのか?
 何だか、いい匂(にお)いがしてきた。僕はキッチンの方へ目を向けると、そこにいたのは――。
「よかったわ。何ですぐに連絡(れんらく)しないのよ。ユミちゃんから聞いてびっくりしたわ」
「ばあちゃん…?! 何で…、どうして?」
 僕は何で思いつかなかったんだろう。近くに、祖母(そぼ)が住(す)んでいることを――。
<つぶやき>一人暮らしで困(こま)ることの一つだよね。普段(ふだん)から連絡(れんらく)するとこ決(き)めときましょ。
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0757「うなされる」

2019-12-26 18:04:46 | ブログ短編

 あたしは異様(いよう)な物音(ものおと)で目を覚(さ)ました。目覚(めざ)めて気づいたのだが、それは隣(となり)で寝ている主人(しゅじん)の呻(うめ)き声だった。びっしょり汗(あせ)をかいて、悪(わる)い夢(ゆめ)でも見ているのか苦(くる)しげにしていた。あたしは心配(しんぱい)になって、主人の肩(かた)を揺(ゆ)すって声をかけた。
 主人は突然(とつぜん)目を開けると、ふとんから飛(と)び起きた。荒(あら)い息(いき)をついて、目は虚(うつ)ろに正面(しょうめん)を見つめている。また声をかけると、主人はやっと我(われ)に返ったのかあたしを見つめて、
「どうした? …何かあったか?」
「何かじゃないわよ。大丈夫(だいじょうぶ)? イヤな夢でも見たの?」
 主人はしばらく無言(むごん)でいたが、あたしの方を見るでもなく、まるでひとり言のように、「ちょっと、汗を拭(ふ)いてくるよ。すぐ…、すぐ戻(もど)るから…」
 主人はベッドから下りると、そのまま寝室(しんしつ)を出て行った。あたしは、ますます心配になった。いつもと様子(ようす)が違(ちが)う。
 ――いつまで待っても、主人は戻って来なかった。あたしは寝室を出ると、主人を探しに階段(かいだん)を降(お)りた。階下(した)まで来ると、リビングに明かりが点(つ)いていて主人の声が聞こえた。
「ごめん、やっぱり無理(むり)だ。僕(ぼく)には、そんなことできないよ。だから…」
 あたしは、そっと戸(と)の隙間(すきま)から中の様子(ようす)をうかがった。主人は携帯電話(けいたいでんわ)で誰(だれ)かと話している。ひどく動揺(どうよう)して、手が震(ふる)えているのが分かった。主人は絞(しぼ)り出すように答えた。
「そ、そんなこと、あいつにばれたら、僕は…、僕はもう、お終(しま)いだ」
<つぶやき>どんな隠(かく)しごとをしているのでしょうか? 早く打ち明けちゃったほうが…。
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