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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0018「ブラックパンサー1」

2025-04-27 16:25:48 | 超短編戯曲

   探偵事務所。若い女がたたずんでいる。そこへ男が入って来る。
明菜「(驚いて)あっ、ごめんなさい。勝手に入ってしまって」
神崎「だれ? あっ、もしかして山岡の…。そうだよね! いつだったか、写真を…」
明菜「はい、妹の山岡明菜です。あなたは?」
神崎「俺は神崎。ここで一緒に働いてたんだ。あいつも、こんな可愛い妹を残して…」
明菜「生前は、兄がお世話になりました。今日は、私物を引き取りに来ました」
神崎「そうか。そこだよ。(机を指差す)几帳面だったから、きれいに片付いてるだろ」
      明菜は兄が使っていた机にふれる。ドアがノックされて男が入って来る。
稲垣「仕事を頼みたいんだが」
神崎「そうですか、どうぞ」
      古びたソファーに座るようにすすめる。座るやいなや、
稲垣「実は、ブラックパンサーの警備をお願いしたい」
神崎「(一瞬、驚くが平静をよそおって)ブラックパンサー?」
稲垣「ダイヤです。いま日本に来ていまして、明日のパーティでお披露目するんです」
明菜「それって、盗まれたんじゃ…」
      稲垣が鋭い眼差しを明菜に向ける。
明菜「あ、すいません。以前、兄から聞いたことがあるんです。怪盗に盗まれたって」
稲垣「盗まれたのはイミテーションです。本物じゃありません」
神崎「それで、どうしてここに。警備会社に頼めばいいじゃありませんか」
稲垣「予告状が届いたんです。怪盗ドラゴンからね」
神崎「そんなばかな、彼なら…。いや、ドラゴンは死んだと聞いていますが」
稲垣「それは噂です。死んだという証拠はどこにもない」
      稲垣はレトロな封筒を出す。受け取った神崎は封筒から予告状を取り出して読む。
稲垣「この探偵事務所は、ドラゴンと対決したことがあるとか。ぜひ、お願いした」
神崎「(しばらく考えて)わかりました。お引き受けしましょう」
      賑やかなパーティ会場。一角には、ガラスケースに入れられたダイヤが展示してある。
明菜「あの、どうして私まで…」
神崎「ごめんね。人手がなくてね。猫の手も借りたいっていうか…」
明菜「私は猫じゃありません。それに…」
神崎「(時計を見て)そろそろ予告の時間だ。君は、何があってもダイヤから離れるな」
明菜「わかりました。ここにいますけど…」
      神崎が離れると、突然停電になる。動揺する人々。しばらくすると灯りが戻る。
      ケースのそばにいた人がダイヤが消えているのに気づき騒ぎ出す。
      神崎が駆け込んでくる。ケースの横で茫然と立っている明菜を見て、
神崎「どうした。何があった?」
明菜「そんな…。(ゆっくり神崎を見て)兄が…、兄がいたんです。そこに(指差す)」
神崎「あいつが…」
<つぶやき>ダイヤはどこへ。そして、怪盗の正体とは。謎が謎を呼んで次回へ続く。
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0017「行き違い」

2025-03-30 16:17:41 | 超短編戯曲

   ビルの屋上。夕焼けが街を染めている。女がひとり、たたずんでいる。そこへ男が現れる。
男「どうしたんだ。こんなところへ呼び出して?」
女「あっ、ごめんね」
男「いいけどさ。なんかあった? また、ミスでもしたんだろ」
女「そんなんじゃないよ。……」
男「悩みごとか? まあ、恋愛のこと以外だったら、アドバイスしてやるよ」
女「……。何で、何でそんなこと言うの? 芳恵のことなんか、もう忘れてよ」
男「えっ? どうしたんだよ」
女「芳恵はあなたを捨てたのよ。それなのに、あなた…」
男「やめろよ。あいつのこと、悪く言うのは…」
女「もう一年よ。いなくなった人のことを…」
男「分かってるよ、そんなこと。でも…」
女「でも、何よ」
男「そんな話しだったら、俺、もう行くよ」(女から離れていく)
女「私、あなたのそばにいるわ、ずっと。だから…」
男「……」(ふり返る)
女「好きなの、あなたのこと。芳恵が好きになる前から、あなたのことが好きだった」
男「……」(困惑した顔つき)
女「あーあ。やっと、言えた!」(笑顔になる女)
男「えっ? どういうことだよ」
女「ああ、もういいのよ。忘れて、今のは」
男「(女に近づき)忘れてって…?」
女「私ね、あなたに初めて会った時から好きになっちゃって。ずっと、告白しようって思ってたの。でも、あなたは芳恵と付き合い始めて…。彼女と別れてからも、あなたは私のことなんかちっとも…」
男「だって、それは…。あいつの親友だし…」
女「私、もう悩むのに疲れちゃったの。それに、自分を変えないと、前には進めないって気づいたんだ。だから、こんな片思いからは、今日で卒業します」
男「何だよ、それ」
女「明日からは、会社の同僚として、よろしくお願いします」
男「あのさ、何かおかしくない? こんなこと聞かされたら、俺はどうすればいいんだよ」
女「別に、今まで通りでいいんじゃない。何も変わらないわ。そうでしょ」
男「いや、変わるだろ、普通。好きだって言われたら、こっちだって…」
女「もう、しょうがないな。じゃあ、ハグしましょうか? それなら…」
男「だから、そう言うことじゃなくて…。何か違うだろう? なんて言うかなあ…」
女「わかった。じゃあ、キスしてもいいわよ。それで、おしまい」
<つぶやき>女はしたたかな生き物です。注意して取り扱いましょう。優しくしてね。
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0016「謎の物体」

2025-03-05 16:22:01 | 超短編戯曲

   警察の遺失物係。担当者たちが机を囲んで、頭を抱えていた。
桜井「これ、何なんだ。ねえ、安藤さん。書類には何て書いてあります?」
陽子「えっと、<蛍光灯みたいな>」
桜井「はい? まったく、いい加減な…」
陽子「でも、ほんとに何でしょう。係長はどう思います?」
      係長は椅子にふんぞり返って座っている。まるで興味がないようだ。
係長「適当に処理しとけよ。どうせ、誰も探しに来ないさ」
桜井「(手に取り)確かに丸型の蛍光灯みたいだけど、プラグを差し込むところがないし。それに、蛍光灯にしては重すぎるなあ。書類にはほかに何か?」
陽子「はい。子供たちが持ち込んだと…」
係長「何だよ。子供の悪戯じゃねえか。そんなの捨てちまえよ」
陽子「でも、係長…」
桜井「どこで拾ったんです?」
陽子「それはですね、えっと、農道の脇の草むらの中です」
桜井「農機具でもないしな。何かの機械の部品かもしれない」
係長「そんな輪っかで、何ができるんだよ。せいぜい、輪投げの輪っかぐらいだろ」
桜井「係長、茶化さないで下さいよ。こっちは真剣に…」
係長「お前は、そんなんだから飛ばされたんだぞ。わかってるのかよ」
      輪っかに顔を近づけて、じっと見ていた陽子が突然叫んだ。
陽子「あっ! 桜井さん、ここの内側に何か書いてあります」
桜井「何かって?」
陽子「(目を皿のようにするが)うーん。ダメです。小さすぎてわかりません」
桜井「そうだ。確か、どっかの棚に大きな虫眼鏡が…」
係長「天眼鏡だったら、ここにあるぞ(机の抽出から取り出す)」
陽子「係長、かってに持ち出さないで下さい」
係長「わるいわるい。最近、新聞が読みにくくてさ」
      陽子は係長から天眼鏡を受け取り、桜井に手渡す。
陽子「何かわかりますか?」
桜井「(覗いて)うーん。日本語でも英語でもないなあ。こんな文字、見たことないよ」
陽子「(横から天眼鏡を覗き込んで)これって、アラビア語とかじゃありません?」
      いつの間にか、係長が陽子の後ろに立って覗き込み、
係長「というより、象形文字じゃないのか。これなんか、魚の形にそっくりだ」
桜井「ほんとだ。でも、何で…。ますます、分かんなくなってきたぞ」
係長「もう、いいからさ、帰ろうよ。とっくに閉店の時間だよ」
陽子「そうですね。もう、こんな時間だし、明日にしましょうか」
      三人は帰り支度をすませると、部屋から出て行く。薄暗い部屋の中。机の上の輪っかが、かすかに光を放つ。点滅する光。突然、輪っかが浮き上がり、静かに回り始める。
<つぶやき>よく分かんないものって、ありますよね。想像力を膨らませてみましょう。
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0015「突然の再会」

2025-02-02 16:39:14 | 超短編戯曲

   賑やかな居酒屋。会社の歓迎会で十数人が楽しく飲み食いしている。
係長「さあ、吉永さん。(ビールを注ごうとする)君は、いける口かね」
吉永「いえ、私は。(係長のビールを取り)どうぞ。これから、よろしくお願いします」
長田「あっ、係長! ずるいですよ。あの、僕にも注いでもらえませんか?」
吉永「はい。どうぞ(ビールを注ぐ)」
鈴木「吉永さん、そんなに気を使わなくてもいいから。まったく、うちの男どもは、ちょっと可愛い娘(こ)が来るとこれなんだから」
係長「いいじゃないの、鈴木さん。じゃあ、僕は鈴木さんに注いでもらおうかな?」
鈴木「はいはい。こんなおばさんで、すいませんねぇ」(ビールを注ぎに行く)
長田「それにしても、佐々木、遅いですね。何やってんだろうなぁ」
係長「なんか、向こうで引き止められたって言ってたな」
鈴木「佐々木さん、人がいいから。また、世間話に付き合わされたんじゃないの」
吉永「佐々木さんって?」
鈴木「あのね、一週間前から出張でね。あっちこっち、得意先を回ってるのよ」
係長「もう来ると思うんだけどねぇ」
      佐々木が大きな鞄を抱えて入って来る。
佐々木「すいません、遅くなっちゃって。あっ、係長。無事に戻ってまいりました」
係長「ご苦労さん。報告は明日、明日。さあ、まあ、一杯やりなさい(コップを渡す)」
吉永「あの、私が」(佐々木にビールを注ぐ)
      佐々木は吉永の顔を見て驚き、コップを落としてしまう。ビールがこぼれる。
長田「おい、佐々木。何やってんだよ!」
佐々木「あっ、すいません」(慌ててハンカチで拭こうとする)
      吉永がてきぱきとおしぼりで先に拭いてしまう。吉永の顔を見つめる佐々木。
長田「なに見つめてんだよ。こら、佐々木。おまえ、十年早い!」
佐々木「あ、いや…。別に、僕は…」(しどろもどろになっている)
      時間は過ぎて、歓迎会は終わった。最後に残ったのは佐々木と吉永の二人だけ。
佐々木「あの、吉永さん。えっと…、ご、ご出身はどちらですか?」
吉永「私は、ここが地元なんです。二年ぶりに戻って来たんですよ」
佐々木「二年ですか。あの、吉永さん…、えっと…、僕…、あなたに、似てる人…」
吉永「まったく、変わんないなぁ。はっきりしゃべりなよ!」
佐々木「えっ?」
吉永「まだ気づかないの。私よ、相沢真理。一年も付き合ってたのに、忘れるかぁ?」
佐々木「ま、まり! えっ、どうして…。だって、お前、二年前に急にいなくなって…」
吉永「いろいろあったのよ。両親が離婚してね。吉永って、母親の姓なの」
佐々木「でも、どうして僕の会社に…」
吉永「逢いたかったの。ずっと、ずーっと逢いたかったんだから」(佐々木を抱きしめる)
<つぶやき>男とは、いつも女に翻弄されるもの。それでも、男は女に惚れるのです。
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0014「会社の極秘事項」

2025-01-05 16:42:56 | 超短編戯曲

   とある大企業の給湯室。女子社員たちが立ち話をしている。
綾乃「昨日の合コン、どうだったの?」
安江「それがね、みずきが…」
綾乃「えっ、みずきをよんだの? それじゃ、最悪だったでしょ。なんで彼女なんか…」
安江「だって、メンバーが足りなくて、仕方なかったのよ」
綾乃「で、今回は何やらかしたの? 前はたしか、相手の男、殴りつけて…」
安江「それが、すっごくおとなしかったの。まるで別人だったわ」
綾乃「ウソ。じゃ、相手の男、合格点だったのね。それでそれで、どうなったの?」
安江「別になにも…。店を出たら、そのまま一人で帰っちゃったから」
理恵「あの、私、見ちゃいました」
綾乃「理恵ちゃん、あなたも合コンに参加してたの?」
理恵「はい。先輩に、どうしてもって言われて…」
綾乃「もう、安江。彼女、まだ新人なんだから」
安江「それで、何を見たの? 教えなさいよ」
理恵「それが…。私、別に後をつけたわけじゃないんですよ。たまたま、帰る方向が…」
安江「いいわよ、そんなこと。本題に入りなさいよ」
理恵「はい。それが、男の人が待ってて…」
安江「えっ、合コンの男?」
理恵「いえ。それが、別の…」
綾乃「付き合ってる人、いたのね。知らなかったわ」
安江「みずきって、私生活は謎だらけだからね。それで、どんな男だったの?」
理恵「あの…。でも、こんなこと言っちゃっていいのかな…」
安江「何よ。ここまで言ってやめるつもり。許さないわよ」
綾乃「もう、そうやって新人をいじめないの。それで、知ってる人なの?」
理恵「はい。実は…、部長でした」
安江「部長!(急に声をひそめて)まさか、あの部長が? あり得ないでしょ」
綾乃「そうね。みずきのタイプじゃないわよ。だって、あの、まどぎわ部長よ」
安江「理恵ちゃん。あなたの見間違いじゃないの?」
理恵「そうでしょうか? 私、何だか自信が…」
      年配の女子社員が入ってくる。
佐藤「あなたたちが知らないのも当然ね。今はまどぎわだけど、昔の部長はすごかったのよ。退社の時間になると、部長を目当てに女子社員がビルの外に集まったものよ」
安江「そんなことが…」
佐藤「このとこは、うち会社の伝説になっているから、覚えておきなさい。それと、みずきさん、部長の娘なのよ。でも、これは会社の極秘事項だから。もし誰かにしゃべったら、あなたたち会社から消されるわよ。気をつけなさい」
<つぶやき>会社には伝説や謎がつきものです。もしかしたら、あなたの会社にも…。
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