みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0008「不思議な体験」

2024-07-13 18:11:08 | 超短編戯曲

   森の中の小道。二人の兄妹が歩いていた。
あかね「お兄ちゃん、ほんとに近道なの? ねえ、戻ろうよぉ」
陽太「なに言ってるんだよ。あかねが寄り道するから遅くなったんだろ」
あかね「だって、ばあちゃんに、このお花、あげたかったんだもん。それに、お兄ちゃんだって…」
陽太「もう、いいから。早くしないと、暗くなっちゃうぞ」
あかね「でも…」
陽太「大丈夫だよ。この森を抜ければ、ばあちゃんの家につけるから」
あかね「うん」
      森の奥に入って行く二人。木々にさえぎられて、だんだん薄暗くなっていく。
あかね(立ち止まって)「お兄ちゃん」
陽太「なんだよ」
あかね「誰か…、後ろにいる」
陽太「えっ?(後ろの方を見る)誰もいないよ。もう、おどかすなよ」
あかね「だって、さっき足音がしたもん」
陽太「いいから。ほら、行くぞ」
あかね「待ってよ、お兄ちゃん」
      妹は兄の手をとって、再び歩き出す。しばらくして、後ろの方で奇妙な音がする。
あかね(驚いて立ち止まり)「ねえ、いまの聞いた?」
陽太「うん。なんの音かな?」
      二人して、後ろを振り向く。暗闇が迫ってくるように感じて、驚いて駆け出す二人。しばらく走ると、妹が転んでしまう。
陽太「あかね!」(妹に駆け寄る)
あかね「お兄ちゃん…」(泣き出してしまう)
陽太(後ろの方を見て)「もう大丈夫だ。誰もいないよ」
あかね(泣きながら)「もう、いやだ~ぁ」
      森の中から音がして、何かが飛び出してくる。驚いて身をこわばらせる二人。
ばあちゃん「おや、どうしたね。(二人を見て)なんだ、陽太にあかねじゃないか」
あかね(ばあちゃんに抱きついて)「ばあちゃん!」
ばあちゃん「どうした、どうした。たぬきにでも化かされたか?」
陽太「タヌキ?」
ばあちゃん「そうだよ。この森には昔からたぬきたちが棲んでいてね。人をおどかしたり、迷わせたりするのさ」
あかね「ばあちゃんも、化かされたことあるの?」
ばあちゃん「ああ。でも、時には人助けもするんだよ。ほら、この先に行けば、ばあちゃんの家がある。これからは、兄妹仲良くしないといけないよ」
      突然、一陣の風が吹き、目を閉じる二人。目を開けるとばあちゃんの姿は消えていた。
<つぶやき>こんな経験ありませんか? でも、気をつけて下さい。危険な場合も…。
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0007「専属天使」

2024-06-17 17:59:02 | 超短編戯曲

   一人暮らしの男の部屋。男はデートに出かけようとして急いでいた。
安田「財布も持ったし、ハンカチOK。プレゼントもあるし…」
      玄関のチャイムが鳴る。
安田「誰だよ、こんな時に…」
      男は玄関を開ける。白いワンピースの若い女性が立っていた。
安田「えっ、どなたですか?」
スージー「あなた、安田さん?」
安田「はい。そうですけど…」
スージー「あーっ、やっと見つけた。この住所、分かりづらい。迷っちゃったじゃない」
安田「えっ?」
スージー「今日から、あなたの担当になったから、よろしく」(部屋に上がり込んでいく)
安田「ちょっと待てよ。なに、担当って?」
スージー「だから…。(めんどくさそうに)神様の命令で、あなた専属の天使になったの」
安田「天使ってなに? 悪いけど、これから出かけるから、帰って来んないかな」
スージー「あの女はやめときなよ。運命の相手じゃないから」
安田「なに勝手なこと言ってるんだよ。僕が彼女と付き合うために、どれだけ努力を重ねてきたか。彼女はね、もう僕にはもったいないくらい、素晴らしい人で…」
      スージーはテーブルの上の箱からシュークリームを出して美味しそうに食べ始める。
スージー(食べながら)「そうよ、不釣り合いなの。分かってるじゃない」
安田(気づいて)「あっ! なに食べてんだよ。それは彼女のために買っておいた…」
スージー「これ、美味しいね。私、気に入っちゃった」
安田(箱を覗いて)「おまえ、全部食べたな。これを買うのに、何時間並んだと思ってんだよ。どうしてくれるんだ。今日、買っていくって約束して…」
スージー「もう、いいじゃん。どうせ、別れるんだから」
安田「おまえ、本当に天使か? 天使がこんなことしていいのかよ」
スージー「うーん、別にいいんじゃないの。天使にそんな決まりはないしぃ」
安田「嘘だ! おまえ、天使なんかじゃないだろう。誰に頼まれた? 言ってみろ!」
スージー「もう、うざい。そんなんだからモテないのよ」
安田「だったら、天使だっていう証拠を見せろ。天使の輪っかも羽根もないじゃないか」
スージー「そんなのあるわけないじゃん。それは、人間の作り話よ」
安田「もういい。出てってくれ。出てけよ!」
スージー「私も出て行きたいんだけど、これも仕事だしぃ。当分ここにいるから」
安田「当分って、なんだよ。まさか、ここに住みつくつもりか?」
スージー「しかたないじゃない。あなたが運命の人に出会って、幸せをつかむのを見届けなきゃいけないしぃ。いいじゃない、こんな可愛い天使と一緒にいられるのよ」
安田「あのな、どこが可愛いんだよ。だいたいな…」
スージー「ねえ。これ、毎日食べたい。でないと私、運命の人、教えてあげない」
<つぶやき>これは幸運なの、不幸なの。でも、運命の人が分かるんだよ。よくない?
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0006「人生の選択」

2024-05-22 17:57:11 | 超短編戯曲

   お洒落なバーで、若い男女が人生の大切な場面をむかえていた。
真理「ねえ、いつもの居酒屋でよかったのに。ここ、高いんじゃないの?」
貢 「あのさ、今日は…。静かなところがいいかなと思って」
真理「えっ? どうしたのよ。なんか、いつものみつぐじゃなぁい」
貢 「俺たち、もう付き合い始めて二年だろ。そろそろ…」
真理「もうそんなに。早いよね。私も、もうお肌の曲がり角かな。なんて」
貢 「だから、その…。ここらへんで、けじめというか…」
真理「なに? もしかして、他に好きな人できちゃったの?」
貢 「そうじゃなくて…。ぼ、僕と…。け、けっ…、結婚しよう!」
真理(結婚と聞いて、すぐに即答する)「無理」
貢 「えっ? なんで…」
真理「私たち、このままでいいじゃない。結婚なんて…」
貢 「だって、俺たち好きあってるんじゃ…」
真理「そうよ。私、みつぐのこと大好きよ。でも、結婚は無理なの」
貢 「わけ分かんないよ。大好きだったら、結婚ってことになるでしょう」
真理「オダマリ!」
貢 「えっ…」
真理「私、結婚したら尾田真理になるのよ。そんなの、ありえないでしょう」
貢 「はぁ? なに言ってるの。いい名前じゃない、尾田真理って」
真理「じゃあ、もし子供ができて、病院の待合室で<オダマリ!>を連呼されても平気でいられるの? 私は、無理。恥ずかしくて耐えられない」
貢 「そんなこと、こだわることじゃないでしょう。俺たちの愛にくらべたら…」
真理「だったら、みつぐが婿養子に来てよ。どうせ次男なんだから、いいでしょう」
貢 「それは…。その、養子は…」
真理「こっちはお姉ちゃんと二人だから、どっちかが継がないといけないんだから」
貢 「そんなこと言っても、俺も、無理だよ」
真理「なんでよ。私のこと愛してるんでしょう。だったら、それくらい…」
貢 「<タダのみつぐ>だよ。なんか、嫌なんだよなぁ」
真理「なによ。只野のどこが悪いのよ。只野家をバカにしてるの?」
貢 「だって、いままでさんざん君に貢いでるのに、それが名前になるんだよ」
真理「オダマリ! 私より名前にこだわるわけね。もういい、別れましょう」
貢 「えっ! なに言ってるんだよ。最初にこだわったのは君じゃないか」
   二人とも黙り込んでしまう。なんともいやな間。
二人で 「あの…」(ばつの悪い間)
真理「私…。やっぱり、別れたくない。みつぐのこと大好きだから…」
貢 「僕も、真理のとこ大好きだよ。もう一度、養子のこと考えてみるから…」
   二人、手を取り見つめ合う。この二人の未来は明るいのか?
<つぶやき>こんなことはそうあることでは…。でも、名字が変わるって変な感じかも。
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0005「SINOBI」

2024-04-28 18:12:29 | 超短編戯曲

○ 夕方のとある商店街
       閑散として人通りのない商店街。店主たちが不安そうに通りを見ていた。
ナレーション「突然現れたスーパーにお客を奪われ、存亡の危機に瀕した商店街。だが、ここには人知れず暮らす忍びの者たちがいた。これは現代に生きる忍びの物語である」
○ 質屋の藏の二階
       夜。音もなく集まってくる者たち。それぞれ仕事着を身につけ、道具を携えている。
八百屋「お頭、やっぱりあのスーパー、変ですよ。仕入れ先がまったくつかめない」
質屋の頭「運送屋の情報では、あちらこちらに出没して、荒稼ぎをしているようだ」
荒物屋「このままじゃ、この商店街も潰されちまいますよ。早く手を打たないと」
ミスド店員「えーっ、そんな。わたし、せっかくいいバイト見つけたのにぃ」
魚屋店員「お頭の前でなんて口のきき方するんだ。まったく、今どきの若いもんは…」
本屋「なに言ってんだ。お前とたいして違わねえだろう。お頭、これからどうします?」
質屋の頭「今夜、忍び込もう。いいか、どんな相手か分からんが、油断するんじゃないぞ」
   真剣な表情の面々。緊張が走る。
○ スーパーの店内
       非常灯がついている薄暗い店内。あちこちに散って調べていた忍びたちが集合する。
米屋「お頭、ここの米、事故米が混じってますよ」
肉屋「それに、冷凍肉のラベル、張り替えてますぜ。どう見ても産地偽装だ」
本屋「金庫の中には裏帳簿がありました。どうやら、盗品も扱ってますね」
   突然、照明がつき、男たちがまわりを取り囲んだ。手には武器を持っている。
スーパー社長「おやおや、こんな大きなネズミがいたとはな」
魚屋店員「お前らな、こんな商売していいと思ってんのか!」
スーパー社長「ばれちゃ仕方がない。(子分たちに)生かして返すんじゃねえぞ!」
       男たちは剣を振るい襲いかかる。忍びたちは、それぞれの道具で応戦する。菜箸やおたま、竹ぼうきなど。ミスド店員が男たちに囲まれる。魚屋店員が助け出す。
魚屋店員「お前、なにやってんだよ。ちゃんと修業してないだろう」
ミスド店員「うるさいなぁ。ちょっと、手元がくるっただけよ」
       ミスド店員はフォークの手裏剣を敵に投げつける。形勢は忍びたちに傾く。社長が合図をすると、いたるところで爆発が起き、店内に煙が充満していく。
○ スーパーを見下ろす丘の上
       忍びたちが炎上しているスーパーを見下ろしている。傷を負ったものもいる。
本屋「あいつらは、いったい何者だったんでしょう?」
質屋の頭「俺たちと同じ忍びだろう。また、現れるかもしれんな」
ミスド店員「そんときは、わたしがまたやっつけてやるわよ」
魚屋店員「よく言うよ。やられそうだったくせに」
       ミスド店員はふくれ顔で魚屋店員を追いかける。みんなは笑顔で二人を見つめる。
<つぶやき>影ながら働いている人たちがいるかもしれません。あなたの隣にも…。
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0004「優しい嘘」

2024-04-04 18:23:34 | 超短編戯曲

   結婚十数年目の夫婦。朝食の情景。
和子(お茶を出して)「ねえ、昨夜も遅かったみたいね」
孝夫(ちょっと動揺)「えっ…、そうだね」(ご飯を頬張る)
和子(夫の前に座り顔色をうかがいながら)「仕事、そんなに忙しいの?」
孝夫(ご飯をのみ込んで)「うん…、ちょっと忙しいかな」
和子「へーえ、そうなんだ」
孝夫「なに? なんか…」
和子「別に…。そうだ、昨夜、山田さんから電話があったわよ」
孝夫「えっ、山田から? なんて…」
和子「さぁ。でも、あなた、会社にいたのよね。なんで家に電話してきたのかな?」
孝夫「昨日はさ、外回りしてて、直帰するって言っといたから。たぶんそれで…」
和子「あれーぇ。でも、山田さん、あなたは定時で帰ったって言ってたわよ」
孝夫「あれっ、おかしいな…」
      中学生の娘・あずさがあわてて飛び込んで来て、食卓に座る。
あずさ「お母さん! 今日から朝練が始まるから早く起こしてって言ったじゃないの」
和子「そうだった?」
あずさ(食事を口いっぱいに入れて)「もう、遅れちゃうよ。先生に、怒られるんだから」
和子「遅くまで起きてるからでしょう。もっと早く寝なさいよ」
あずさ(食べながら)「いろいろやりたいことがあるのよ。一日、三十時間あったらなぁ」
孝夫(笑いながら)「それは、いくらなんでも無理だろう。(和子に)なあ…」
      和子は孝夫に冷たい目線を向ける。孝夫は、目をそらして食事をつづける。
あずさ(食べ終わって、口をもぐもぐさせながら)「もう、行く。やばいよ」
和子「はい、お弁当。残さないでよ」
あずさ「わかってるって。いつも、ありがとうね。行ってきまーす」
      あずさ、飛び出していく。和子は食卓に戻り、
和子「で、どこに行ってたの?」
孝夫「だから、仕事だよ。得意先を回ってて…」
和子「あなたのシャツ、いい匂いがしてたけど。誰かと、高級料理でも食べたのかな?」
孝夫「そんなことないよ。気のせいだって。ははは…」
和子「あなた! 家族のあいだで嘘はつかないって約束したよね」
孝夫「嘘なんか…。(間)わかったよ。実は…、篠原のところで料理を習ってるんだ」
和子「篠原…。あなたの親友で、あの高級レストランのオーナーシェフの…篠原さん?!」
孝夫「そうだよ。今度の結婚記念日、そのレストランで、僕が作った料理を食べてもらおうかなって…。もう、びっくりさせようと思ってたのになあ」
和子「えっ、ごめんなさい。私…。あーあ、そういうことは早く教えてよ。新しい服、買わないと。ねっ、いいでしょう? わぁ、楽しみだな。どんなドレスにしようかな…」
孝夫「いや、そこまでしなくても…。あずさも連れて行くんだし」(困った顔で見つめる)
<つぶやき>なんだかんだと言っても、家族円満が一番ですよね。うちは大丈夫かな?
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