みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1165「しずく148~集合」

2021-11-30 17:35:45 | ブログ連載~しずく

「そう、可哀想(かわいそう)に…。辛(つら)いわよね」千鶴(ちづる)が呟(つぶや)いた。隣(となり)には柊(ひいらぎ)あずみがいて、
「いつかは通る道よ。アキも大人(おとな)になろうとしてるんだわ」
 千鶴が不満(ふまん)そうに、「あなたはどうしてそんなに冷(つめ)たい言い方しかできないの?」
「はぁ? なに言ってるのよ。私は、そんなつもりじゃ――」
 いつもの口論(こうろん)が始まる前に、月島(つきしま)しずくが口を挟(はさ)んだ。「それで、見つかりました?」
 千鶴が答(こた)えて、「ええ。父親がいる研究所(けんきゅうしょ)に閉(と)じ込められているわ」
「でも、驚(おどろ)いたわ」あずみが言った。「姿(すがた)を変えられる能力者(のうりょくしゃ)がいたなんて…」
 水木涼(みずきりょう)が突然(とつぜん)声をあげた。「えっ! あれって、つくねじゃなかったのか?」
 しずくはそれに答えて、「ええ。匂(にお)いが違(ちが)ってたから、すぐに分かったわ」
「会ったのか? 何でその時、捕(つか)まえなかったんだよ。そしたら、こんなことには…」
「それは、そうなんだけど…」つくねは言葉(ことば)を濁(にご)して、「それで、偽者(にせもの)の方は?」
「それが…」千鶴は申し訳(わけ)なさそうに、「どこへ行ったのか、見つけられなかったわ」
「別の姿になったんじゃ…」今まで黙(だま)っていた日野(ひの)あまりが呟いた。
 あずみがそれを受(う)けて、「きっとそうだわ。神崎(かんざき)の研究所に戻(もど)ったんじゃないの?」
「違うと思うわ」突然、川相初音(かわいはつね)が現れた。「それらしいヤツ、見たわよ」
「あなた…」あずみは初音に詰(つ)め寄って、「学校休(やす)むんなら、ちゃんと連絡(れんらく)しなさい」
<つぶやき>無断欠席(むだんけっせき)はダメですからね。でも、初音はどこへ行っていたのでしょうか?
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1164「化けもの現る」

2021-11-28 17:35:19 | ブログ短編

 とある田舎(いなか)の寂(さび)れた村(むら)。その村に一軒(けん)だけある小さなお店(みせ)に、怪我(けが)をした若者(わかもの)が飛(と)び込んで来た。彼は喘(あえ)ぎながら言った。
「助(たす)けてくれ。化(ば)けものが…化けものが……」
 彼はそのまま意識(いしき)を失(うしな)った。すぐに警察(けいさつ)に連絡(れんらく)がいった。その若者は村の者ではなかった。何のためにこの村にやって来たのか? これは謎(なぞ)である。
 若者は店の奥(おく)の座敷(ざしき)に寝(ね)かされた。だが、救急車(きゅうきゅうしゃ)が到着(とうちゃく)すると、若者の姿(すがた)は消えていた。座敷には血(ち)の跡(あと)が筋(すじ)になって残(のこ)っていて、まるで引きずられたようだ。縁側(えんがわ)の戸(と)が開いていたので、そこから外へ出たのか? 縁側の外は山に続く林になっている。警察が村人の協力(きょうりょく)をえて周りを捜索(そうさく)したが、何の手掛(てが)かりも見つけられなかった。
 本当に化けものがいたのか? それとも、何かの犯罪(はんざい)に巻(ま)き込まれたのか…。こんな田舎の村で、こんな不可解(ふかかい)な事件(じけん)が発生(はっせい)すると誰(だれ)が想像(そうぞう)できただろうか。
 翌日。警察は村の周りに捜索範囲(はんい)を広げた。すると店から少し離れた場所で、それは見つかった。その異様(いよう)な光景(こうけい)は駆(か)けつけた人たちを震(ふる)え上がらせた。
 小さな小屋(こや)の裏手(うらて)、森に面(めん)したところに、掘(ほ)り返されたような跡(あと)があった。その中心辺りに、人間の手だけが土から突(つ)き出ていた。すぐに掘り返されたが、土の中にあったのは右腕(みぎうで)だけだった。他の部分(ぶぶん)はどこへいったのか。化けものに食べられてしまったのか?
 この事件は、今だに未解決(みかいけつ)である。それ以来(いらい)、同様(どうよう)の事件は起(お)きていない。
<つぶやき>めちゃくちゃ恐(こわ)いヤツじゃないですか。もう、こういうの止めてくださいよ。
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1163「骨董好き」

2021-11-26 17:45:37 | ブログ短編

 突然(とつぜん)、父が風呂敷包(ふろしきづつ)みを手に訪(たず)ねてきた。私は、イヤな予感(よかん)がした。父が風呂敷を広げると、桐(きり)の箱(はこ)が出てきて、箱の中には薄汚(うすよご)れた壺(つぼ)が入っていた。父は言った。
「これは、中国の景徳鎮(けいとくちん)で焼(や)かれた壺なんだ。なかなかの名品(めいひん)なんだぞ」
 私にそんなこと言われても…。父は、意(い)を決したように言った。
「これを、お前に預(あず)けるから…、金を用立(ようだ)ててくれないか? 五十万でいいんだ」
 ほら、きた。父の骨董(こっとう)集めに、母も頭を悩(なや)ませていた。まさか、私のところにまで…。
「実(じつ)はな、行きつけの古道具屋(ふるどうぐや)で楽茶碗(らくぢゃわん)を見つけたんだ。これがなぁ、いいんだ~ぁ。ぜひ、手に入れたくてな。そこの店主(てんしゅ)は目利(めき)きじゃないから、安く買えそうなんだ」
「そんな大金、あるわけないでしょ。この壺を売ればいいじゃない」
「そんなことできるわけないだろ。売ってしまったら、二度と眺(なが)められないんだぞ。お前のところに預ければ、いつでも見に来られるじゃないか」
「絶対(ぜったい)ムリだから。それに、私…、赤ちゃんができたし…」
「そ、そうなのか? いや、それはめでたいじゃないか。よくやった! うん」
「あっ…。これ、隆之(たかゆき)に一番に話そうと思ってたのに……」
「いやぁ、隆之君も喜(よろこ)ぶぞ。じゃあ、楽茶碗は出産祝(しゅっさんいわ)いとして、お前にやろう。それならいいだろ? やりくり上手(じょうず)のお前だから、出せない額(がく)じゃないと思うんだがなぁ」
<つぶやき>骨董にはまってしまったんですね。産(う)まれてくる孫(まご)のためにも止めた方が…。
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1162「鬼だった」

2021-11-24 17:40:02 | ブログ短編

 とある大学(だいがく)の教授(きょうじゅ)が、生徒(せいと)を前にして講義(こうぎ)をしていた。議題(ぎだい)は鬼(おに)についてだ。
「みなさんは鬼の話しは知っているかな? 古今東西(ここんとうざい)、いたるところで伝承(でんしょう)が残(のこ)っている。みなさんがよく知っているところでは、昔話(むかしばなし)にある桃太郎(ももたろう)の鬼退治(たいじ)ではないかな?」
 生徒の一人が答(こた)えた。「あたし、子供(こども)のころ絵本(えほん)で読みました」
 教授はうなずいて、「なるほど…。では、そのお話は、実際(じっさい)にあったことなのか?」
 別の生徒が、「そんなの作り話ですよ。鬼なんて存在(そんざい)するわけがない」
「本当(ほんとう)にそうなんだろうか? 田舎(いなか)の方のお寺(てら)とか神社(じんじゃ)では、実際に鬼が祀(まつ)られていることがある。そこでは、鬼のミイラとか角(つの)とかが受け継(つ)がれていると――」
「それって、作り物でしょ。それか、別のものなのに鬼のものと勘違(かんちが)いしたとか…」
「確(たし)かに、そういうことはあったかもしれない。では、鬼とはどういうものなのか? 実際に存在していないのか? ひょっとすると、鬼は人間(にんげん)の中に紛(まぎ)れ込んでいるのかも…」
「先生、それはないでしょ。鬼なんか見たことないですよ」
「私は、一度だけ見たことがあります。それは、私の妻(つま)を怒(おこ)らせてしまったとき…」
「それって、鬼嫁(おによめ)ってことですか? 笑(わら)えますけど、鬼とは関係(かんけい)ないと思います」
「いや。実際に、妻の頭(あたま)に角(つの)が生(は)えていたんだよ。それも、二本も…。これは、鬼族(ぞく)が存在している証拠(しょうこ)だと思うんだ。ここは、みんなで検証(けんしょう)したいと――」
<つぶやき>そんなことしたら、奥(おく)さんに怒られちゃいますよ。でも、鬼っているのかなぁ?
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1161「特技」

2021-11-22 17:44:39 | ブログ短編

 あなたは、今までにどれくらいの人と出会(であ)いましたか? そのすべての人の顔(かお)は覚(おぼ)えられませんよね。まして、すれ違(ちが)っただけの人は記憶(きおく)に残(のこ)ることなどないはずです。
 でも、彼女の場合(ばあい)は違っていました。彼女は、出会ったすべての人の顔を忘(わす)れることができないようで…。彼女にとって、それは苦痛(くつう)になっていました。
 ――ある日。彼女は、友達(ともだち)から付き合っている彼を紹介(しょうかい)されました。とっても優(やさ)しそうな顔をした男性――。でも、彼女はその顔に見覚えが…。ちょうど一週間前、ホテルのロビーですれ違ったのです。友達とは違う女性と部屋へ向かおうとしていました。
 彼女は思わず言ってしまいました。ホテルで美しい女性といたのを見てしまったと。その男性は驚(おどろ)いた顔をして、何とかその場を誤魔化(ごまか)そうと…。彼女は、そんな彼を見て、
「別に責(せ)めてるわけじゃないのよ。あなたと一緒(いっしょ)にいた女性、あたし会ったとこあるの。一ヶ月くらい前かなぁ。ある男性と会っていたわ。昨日(きのう)の昼間(ひるま)、あなたと会っていた人よ」
 男性は呟(つぶや)いた。「昨日、会ってた…? まさか、親父(おやじ)と……」
「あら、そうなの? でも、とっても親(した)しそうでした。腕(うで)を組(く)んだりして…」
 男性は急(きゅう)に駆(か)け出して行ってしまいました。残(のこ)された友達は、彼女を見て…。彼女は、
「ごめん。でも、あの人は止(や)めた方がいいかもよ。あなたにはふさわしくないと思う」
<つぶやき>もしこんな特技(とくぎ)があったら、何か役(やく)に立てることがあるのかもしれませんね。
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