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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1508「妄想からの…」

2025-08-25 18:48:40 | ブログ短編

 それは、どうやら僕(ぼく)の妄想(もうそう)から始(はじ)まったようだ。どうしてそんなことが起(お)きたのか、僕(ぼく)には分(わ)からない。でも、それは間違(まちが)いなく僕(ぼく)の妄想(もうそう)が生(う)み出(だ)したものだった。
 彼女(かのじょ)が目(め)の前(まえ)に現(あらわ)れたとき、僕(ぼく)は思(おも)わず目(め)を奪(うば)われてしまった。今(いま)まで何十回(なんじゅっかい)、何百回(なんびゃっかい)も思(おも)い描(えが)いてきた女性(じょせい)がそこにいたのだ。容姿(ようし)もそうだが、物腰(ものごし)も、すべてが僕(ぼく)の妄想通(もうそうどお)りなのだ。これは、怖(こわ)いくらいだ。こんなことが、あっていいのか…。
 彼女(かのじょ)が何(なに)かしゃべっている。でも、僕(ぼく)は…何(なに)も耳(みみ)に入(はい)ってこなかった。僕(ぼく)は、僕(ぼく)は、彼女(かのじょ)の手(て)をつかんで走(はし)り出(だ)していた。だって、彼女(かのじょ)は実在(じつざい)の女性(じょせい)ではない。人目(ひとめ)にさらしてはいけないのだ。どこをどう走(はし)ったのか、気(き)がつくとラブホの一室(いっしつ)にいた。これは、別(べつ)にあれではない。ただ、ひとりになって冷静(れいせい)に考(かんが)えたかったのだ。これから、どうすればいいのか…。どうしたら、彼女(かのじょ)を消(け)すことができるのか…。
 消(け)す…、消(け)してしまっていいのか? 僕(ぼく)は自問自答(じもんじとう)する。僕(ぼく)は彼女(かのじょ)を見(み)た。
 彼女(かのじょ)は何(なに)か言(い)いたげだった。僕(ぼく)は、どうしたらいいんだ。彼女(かのじょ)は僕(ぼく)に近(ちか)づいて言(い)った。
「おにいちゃん。あたしと、したいんですか?」
 お、おにいちゃんって…何(なん)だ。僕(ぼく)に妹(いもうと)なんかいない。僕(ぼく)は首(くび)を振(ふ)る。すると、
「あたしのこと覚(おぼ)えてないの? ひどい。子供(こども)のころ、遊(あそ)んでくれたじゃないですか。久(ひさ)しぶりに会(あ)ったのに、いきなりこれはないと思(おも)いますけど…」
<つぶやき>これは、実在(じつざい)の女性(じょせい)だったんですね。いったいどういう関係(かんけい)だったのかなぁ。
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1507「転生しちゃった」

2025-08-16 18:56:13 | ブログ短編

 目(め)が覚(さ)めると、俺(おれ)は猫(ねこ)の姿(すがた)になっていた。なぜこんなことに…。そこのところの記憶(きおく)がまったくない。何(なに)が原因(げんいん)だったんだ? 俺(おれ)、元(もと)に戻(もど)れるんだろうか…。
 俺(おれ)は街(まち)をさまよっていた。ふと気(き)がつくと、見覚(みおぼ)えのある通(とお)りに出(で)た。ここは以前(いぜん)、よく来(き)ていた場所(ばしょ)だ。あの頃(ころ)はバンドに熱中(ねっちゅう)していて、行(い)きつけの楽器店(がっきてん)で練習(れんしゅう)に明(あ)け暮(く)れていた。確(たし)か、この先(さき)にあったはずだ。まだ、店(みせ)はあるんだろうか?
 その店(みせ)は、まだあった。外(そと)から店内(てんない)を覗(のぞ)いて見(み)ると、前(まえ)とちっとも変(か)わらない。店員(てんいん)の女(おんな)の子(こ)が目(め)に入(はい)った。その店員(てんいん)の顔(かお)を見(み)て驚(おどろ)いた。ユキだ。一緒(いっしょ)にバンドをやっていた。あいつ、この店(みせ)で働(はたら)いてるんだ。バンドを解散(かいさん)したのは、三年前(さんねんまえ)か…。
 そのとき、店内(てんない)から客(きゃく)が出(で)てきた。すかさず、俺(おれ)は店内(てんない)に潜(もぐ)り込(こ)んだ。そして、ユキを目指(めざ)して走(はし)った。ユキは俺(おれ)を見(み)つけて、にっこり微笑(ほほえ)んだ。こいつ、笑顔(えがお)だけは可愛(かわい)かったよなぁ。と、俺(おれ)は思(おも)い出(だ)した。
 でも、ユキは俺(おれ)の首根(くびね)っこを押(お)さえ込(こ)んで抱(だ)きあげると、
「ここは、あなたの来(く)るところじゃないでしょ。どっから入(はい)ってきたのよ」
 ユキは怒(おこ)っていた。前(まえ)は、あんなに優(やさ)しかったのに…。何(なん)だ、この変(か)わりようは…。俺(おれ)は、為(な)す術(すべ)もなく店(みせ)の外(そと)に放(ほう)り出(だ)された。でも、俺(おれ)はあきらめないぞ。ユキに気(き)に入(い)ってもらうんだ。そして、今夜(こんや)の食事(しょくじ)とねぐらを確保(かくほ)しなくてはならない。
<つぶやき>彼女(かのじょ)が猫好(ねこず)きだといいですね。さて、ユキちゃんのお家(うち)に潜(もぐ)り込(こ)めるかな?
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1506「似てる人」

2025-08-07 18:48:26 | ブログ短編

 家(いえ)でくつろいでいるとき、宅配(たくはい)の人(ひと)がやって来(き)た。そういえば、あれを注文(ちゅうもん)してあったことを思(おも)い出(だ)した。今日(きょう)だったんだ。僕(ぼく)はウキウキになっていた。
 サインをして荷物(にもつ)を受(う)け取(と)る。そのときだ。宅配(たくはい)の人(ひと)が僕(ぼく)に言(い)った。
「どこかで、会(あ)ってませんか?」
 そして、期待(きたい)のまなざしを僕(ぼく)にむけた。いやいや、それは…。僕(ぼく)は有名人(ゆうめいじん)でも何(なん)でもない。それに、僕(ぼく)はどちらかというと友(とも)だちの少(すく)ない人間(にんげん)だ。そうそう知(し)り合(あ)いに出(で)くわすことなどないはずだ。それに、宅配(たくはい)の人(ひと)に見覚(みおぼ)えなどない…と思(おも)う。
 その人(ひと)はどう見(み)ても同年代(どうねんだい)には見(み)えない。同級生(どうきゅうせい)とかではなさそうだ。僕(ぼく)は、
「いや、それは…ないと思(おも)いますけど…」と、答(こた)えるしかない。
 宅配(たくはい)の人(ひと)は納得(なっとく)していない様子(ようす)で、「そうですか…。でも、どこかで…」
 まあ、僕(ぼく)みたいにぱっとしない人間(にんげん)はどこにでもいるはずだ。それに、世(よ)の中(なか)にはそっくりな人間(にんげん)が三人(さんにん)はいるらしい。そのうちの一人(ひとり)に出(で)くわしたのだろう。
 宅配(たくはい)の人(ひと)はちょっと残念(ざんねん)そうに、「やっぱり違(ちが)うのかなぁ。すいません」
 宅配(たくはい)の人(ひと)は会釈(えしゃく)をすると次(つぎ)の配達(はいたつ)へ向(む)かった。そういえば、前(まえ)にも似(に)たようなことが…。あれは、エアコンの修理(しゅうり)に来(き)たメーカーの人(ひと)で、やっぱり同(おな)じようなことを言(い)われた。これはどういうことなんだ? 僕(ぼく)に似(に)た人間(にんげん)が近(ちか)くにいるとでもいうのだろうか…。
<つぶやき>ひょっとしたら、出会(であ)うことができるかも。何(なん)だが、ワクワクしませんか?
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1505「じいさん」

2025-07-29 19:05:05 | ブログ短編

 彼女(かのじょ)は引(ひ)っ込(こ)み思案(じあん)の性格(せいかく)で、何(なに)かを頼(たの)まれると断(ことわ)ることができなかった。それもあってか、彼女(かのじょ)の部屋(へや)には居候(いそうろう)が絶(た)えることがなかった。そこで知(し)り合(あ)った男女(だんじょ)が付(つ)き合(あ)うことになっても、彼女(かのじょ)は何(なに)も言(い)えない。でも、部屋(へや)の中(なか)でいちゃついていたときは、さすがに止(や)めてよって言(い)いたかったのだが…。
 夜(よる)になって祖母(そぼ)の法事(ほうじ)から帰(かえ)ってくると、彼女(かのじょ)は疲(つか)れが出(で)たのかすぐに眠(ねむ)ってしまった。翌朝(よくあさ)、彼女(かのじょ)が目覚(めざ)めると、枕元(まくらもと)にそのいちゃつきカップルがいた。彼女(かのじょ)は驚(おどろ)いて飛(と)び起(お)きた。二人(ふたり)は彼女(かのじょ)に言(い)った。「夜中(よなか)にじいさんに叩(たた)き起(お)こされて説教(せっきょう)されたんだ」と…。
 じいさんって…、だれ? 私(わたし)がいない間(あいだ)に、誰(だれ)かが来(き)たの? 彼女(かのじょ)はため息(いき)をつく。
「あたしたち、出(で)ていくことにしたから。今(いま)までありがとね」
 そう言(い)うと、二人(ふたり)は荷物(にもつ)をかかえて出(で)て行(い)った。がらんとした部屋(へや)。この部屋(へや)でひとりだけになるのは久(ひさ)しぶりだ。何(なん)だが急(きゅう)に淋(さび)しくなった。でも、しばらくしたらそれも消(き)えてしまった。
 いつもなら入(い)れ替(か)わるように誰(だれ)かが転(ころ)がり込(こ)んでくるはずなのに、今(いま)のところ彼女(かのじょ)を訪(たず)ねてくる人(ひと)はいなかった。でも、どういうわけか、彼女(かのじょ)が部屋(へや)にいるとき誰(だれ)かの視線(しせん)を感(かん)じるようになった。彼女(かのじょ)は、ひとりになったせいだと思(おも)っているようだ。
 でも、ひとつ気(き)になることがある。二人(ふたり)が話(はな)していた“じいさん”って、いったい…。
<つぶやき>まさか、まさかですが、霊的(れいてき)なものが居着(いつ)いちゃったのかもしれないですよ。
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1504「ドラマのような恋」

2025-07-20 19:03:48 | ブログ短編

「で、どうなったのよ。それから…」明美(あけみ)は身(み)を乗(の)り出(だ)すように訊(き)き返(かえ)した。
「それからって…。なんにもないわよ。だって、初(はじ)めて会(あ)った人(ひと)だよ」
 裕子(ゆうこ)は、まるで他人事(ひとごと)のように答(こた)えた。明美(あけみ)は納得(なっとく)いかないようで、
「あのさ。そんな出会(であ)い方(かた)をして…。あんた分(わ)かってるの。これはもう、ドラマのような恋(こい)が始(はじ)まってもいいはずよ。それなのに、なにもないなんておかしいでしょ」
「おかしくないわよ。普通(ふつう)、そんなもんでしょ。ドラマじゃないんだから…」
「もちろん、連絡先(れんらくさき)とか交換(こうかん)したんでしょうね」
「しないわよ。だって、初(はじ)めての…」
「もう、あんたなにしてるのよ。そこは、がっつかなくてどうすんのよ。相手(あいて)は、すごくイケメンで優(やさ)しそうな人(ひと)なんでしょ。ここは、行(い)くしかないじゃない」
「そ、そんなのおかしいわよ。だって、初(はじ)めて会(あ)った人(ひと)なんだよ」
「それがなに? そんなこと言(い)ってたら良(い)い人(ひと)なんかできないからね。もちろん、確(たし)かめたんでしょうね。付(つ)き合(あ)ってる人(ひと)、いるのかどうか…」
「そんなこと訊(き)けないわ。初対面(しょたいめん)で、それはムリだよ」
「こりゃダメね。いいわ、あたしがなんとかしてあげる。で、どこへ行(い)けば会(あ)えるの? もちろん、隠(かく)し撮(ど)りとかしたんでしょ。見(み)せて。あたしに隠(かく)してもムダだからね」
<つぶやき>どんな出会(であ)いをしたのでしょ。ちょっと興味(きょうみ)ありますね。あたしにも見(み)せて。
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