みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1465「婚活」

2024-07-17 18:05:56 | ブログ短編

 まさか、この俺(おれ)が婚活(こんかつ)をすることになるなんて思ってもいなかった。付き合っていた彼女と結婚(けっこん)するとずっと思っていたし、そうなるはずだった。俺は何を間違(まちが)えたのか? 今だに何で彼女に振(ふ)られたのか分からないし、納得(なっとく)できるわけがない。
 でも、ここは吹(ふ)っ切らなくては…。いつまでも引きずるわけにはいかない。早く次(つぎ)の彼女を見つけて…。そうじゃないと、故郷(こきょう)の両親(りょうしん)や親戚(しんせき)のおばちゃんが縁談(えんだん)を勝手(かって)に進(すす)めて、田舎(いなか)に戻(もど)るはめになってしまう。それだけは何としてでも避(さ)けなければ…。
 俺は結婚相談所(そうだんじょ)で何人かの女性と会ってみた。でも、会うたびに結婚のハードルが高くなっていくのを感じた。俺にできるのか? 俺には女性の気持ちなど理解(りかい)できない。俺には、結婚なんかむいてないのかもしれない。不安(ふあん)が募(つの)るばかりだ。
 そんな時、次の相手(あいて)を紹介(しょうかい)された。写真(しゃしん)を見て驚(おどろ)いた。とても美(うつく)しい女性だ。俺は思わず呟(つぶや)いた。「何でこんな娘(こ)が婚活してるんだ? こんな可愛(かわい)いんだから必要(ひつよう)ないだろ」
 見合(みあ)いの当日(とうじつ)。彼女を前にして思ってしまった。写真通(どお)りの女性だ。修正(しゅうせい)とかしてなかったんだと…。これは掘(ほ)り出し物(もの)かもしれない。ここは正攻法(せいこうほう)でいくべきか?
 でも、彼女は挨拶(あいさつ)をかわしただけで、それ以上(いじょう)何もしゃべらなくなった。俺が何を話しても相(あい)づちを打(う)つだけだ。こんな女性は初めてだ。恥(は)ずかしがり屋(や)なのか…。それとも、これは作戦(さくせん)で…こっちのことを値踏(ねぶ)みしてるのか? これは…どうする?
<つぶやき>あのね、そんな気持ちで向き合ってはダメかもね。真摯(しんし)に取り組(く)みましょう。
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1464「遊ぼう」

2024-07-09 18:02:59 | ブログ短編

 彼は綿密(めんみつ)に計画(けいかく)を練(ね)った。金(かね)が集(あつ)まる日も確認(かくにん)し、逃走経路(とうそうけいろ)も頭(あたま)に入っている。だが、決行(けっこう)の日…。どういうわけか、予期(よき)せぬことばかりが起(お)きた。そして計画は失敗(しっぱい)し、彼は警察(けいさつ)に追(お)われる身(み)となった。逃走用(とうそうよう)に用意(ようい)した車(くるま)も、警察が盗難車(とうなんしゃ)と確認しレッカー移動(いどう)させられるところだった。
 ちょうど目の前にマンションがあった。彼はそこに潜(もぐ)り込(こ)むことにした。以前(いぜん)、宅配(たくはい)の仕事(しごと)をしたことがあるので、外観(がいかん)を見ればだいたい分かる。
「ここは単身(たんしん)用の賃貸(ちんたい)だなぁ。セキュリティーも甘(あま)そうだ」
 彼はマンションに入ると二階(かい)へ向かった。ちょうど部屋(へや)を出てきた若(わか)い女を見つけて捕(つか)まえると、その女の部屋へ引(ひ)きずり込んだ。女は抵抗(ていこう)はしなかった。部屋の中を見回(みまわ)す。独身(どくしん)女の部屋だとすぐに分かった。だが、部屋の奥(おく)から女の子の声がした。
 彼は、「ちょうどいいや。このガキは人質(ひとじち)だ。俺(おれ)の言うとおりにしろ」
 女は肯(うなず)くと、「これから買(か)い物(もの)に行くんです。もう…何もなくて…」
 女の子は微笑(ほほえ)んで、「もういいよ。よかったね、あなたの代(か)わりがきてくれて…」
 女は震(ふる)えていた。彼は女の子が何を言っているのか分からなかった。手を緩(ゆる)めたすきに、女は部屋を飛(と)び出して行った。彼は、女の子から目が離(はな)せなくなった。
 女の子は無邪気(むじゃき)に言った。「おじさん、何して遊(あそ)ぼうか?」
<つぶやき>これは、やばいことになるのかなぁ。女の子は…いや、彼は脱出(だっしゅつ)できるのか?
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1463「学校の不思議」

2024-07-01 18:13:21 | ブログ短編

 学校(がっこう)には異界(いかい)へつながる道(みち)があるという。今でも学校を舞台(ぶたい)にいろんな怪談(かいだん)が語(かた)られるのはそのためだ。そして、あたしが通(かよ)っている学校にも、どうやらそれはあるみたい。
 あたしのクラスにはちょっと変(か)わり者(もの)の男の子がいる。他(ほか)の子と雰囲気(ふんいき)が違(ちが)っていて、どこか近寄(ちかよ)りがたい感じがした。その子には友だちはいないみたいで、いつも窓(まど)から外(そと)を見つめていた。いったい何を見ているのか、あたしはちょっと気になっていた。
 ある日のこと。教室(きょうしつ)に忘(わす)れ物をしてしまい、あたしは学校へ戻(もど)ってきた。もう五時を過(す)ぎていて外はまだ明るいけど校舎(こうしゃ)の中は薄暗(うすぐら)く感じた。足早(あしばや)に教室に向(む)かい、忘れ物を手にしてホッと胸(むね)をなで下ろす。教室を出ると廊下(ろうか)を通(とお)り、そして階段(かいだん)を降(お)りて行く。
 そこで、あたしは足を緩(ゆる)めた。何か変だ。階段の下の方がだんだん暗(くら)くなっていく。そしてついに真(ま)っ暗になってしまった。まるで暗闇(くらやみ)の世界(せかい)へ向かって行くようだ。あたしは思わずバランスを崩(くず)して…。このまま下まで落(お)ちるのかと恐怖(きょうふ)で目を閉(と)じた。
 目を開けると、あたしは階段の前に座(すわ)っていた。隣(となり)にはあの男の子が立っている。
 あたしはさっきのことを訊(き)いてみた。あれはいったい何だったのか? でも、
「何でもないさ。お前が階段を踏(ふ)みはずしただけだろ。誰(だれ)にも言うなよ」
 その子が行こうとするので、「えっ、あなたは帰(かえ)らないの?」
「おれ…、ちょっとやることがあるから。お前は、早く帰れ」
 あたしはますます気になって…。その子のあとを追(お)いかけた。
<つぶやき>もしかしたら、この男の子は人間(にんげん)じゃないのかもね。彼女はどうなるのか?
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1462「はりこみ」

2024-06-22 18:05:21 | ブログ短編

 道路脇(どうろわき)に車(くるま)が停(と)まっていた。そこへ乗(の)り込んでいく若(わか)い女。助手席(じょしゅせき)に座(すわ)ると、鞄(かばん)から牛乳(ぎゅうにゅう)とパンを取り出して運転席(うんてんせき)の男に差(さ)し出した。男はそれを見て、
「牛乳とあんパンかよ。俺(おれ)さぁ、牛乳はダメなんだよ。お腹(なか)がなぁ…」
「す、すいません。はりこみには牛乳とあんパンが定番(ていばん)かと…」
「お前さぁ、刑事(けいじ)ドラマの見過(みす)ぎなんじゃないのか? そんなんで――」
 そこで男は、女が悲(かな)しそうな顔(かお)をしているのに気がついた。上司(じょうし)から言われていたのだ。くれぐれも言動(げんどう)には注意(ちゅうい)するようにと。新人(しんじん)の、しかも女性と組(く)んでいるのだ。パワハラととられるようなことは控(ひか)えなくてはならない。
 女性の方も配属(はいぞく)されたばかりなので、先輩(せんぱい)に気のきかないヤツだと思われたのではないかと不安(ふあん)になっていた。それに、この先輩は自分(じぶん)の父親(ちちおや)と同じくらいの…。彼女は父親のことが苦手(にがて)だった。いつも上から目線(めせん)で…。でも、彼女は気を取り直(なお)して、何か話(はな)しかけようとするが、何を話したらいいのか思いつかない。
 男の方も似(に)たようなものかもしれない。彼には年頃(としごろ)の娘(むすめ)がいて、最近(さいきん)はめったに口(くち)をきいてくれない。彼には、娘が何を考(かんが)えているのかさっぱりだ。
 そんな二人が、お互(たが)いの悩(なや)みを打(う)ち明けるのに時間(じかん)はかからなかった。いつしか、はりこみの時間は、お悩み相談(そうだん)の時間になっていた。もちろん、仕事(しごと)はきちんとこなして…。
<つぶやき>相手(あいて)を知るには、きっかけが必要(ひつよう)かもね。一歩(いっぽ)を踏(ふ)み出す勇気(ゆうき)があれば…。
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1461「見てはいけない」

2024-06-13 17:57:35 | ブログ短編

 いつから、誰(だれ)が言いだしたのか分からないが、この学校(がっこう)にはある噂(うわさ)がささやかれていた。それは、校舎(こうしゃ)の裏手(うらて)にある古(ふる)い倉庫(そうこ)を覗(のぞ)くと悪(わる)いことが起(お)きると…。
「なあ、俺(おれ)たちでその噂を確(たし)かめてみないか?」
 ある男子(だんし)が親友(しんゆう)を誘(さそ)っているようだ。こういう怖(こわ)いもの知らずはいつの時代(じだい)にもいるものだ。誘われた親友はどうやら尻込(しりご)みしているようだ。
「夏休(なつやす)みになったらあの倉庫、取(と)り壊(こわ)しになるんだってよ。だから今しかないんだよ」
 それでも親友は言葉(ことば)を濁(にご)す。言い出しっぺの男子は後へ引(ひ)けなくなって、
「じゃあ、俺、ひとりでも行くから…。もうお前(まえ)とは絶交(ぜっこう)だからなぁ」
 まったく、こんな無茶(むちゃ)を言う友(とも)だちは持ちたくないもんだ。親友はそう思ったに違(ちが)いない。親友は心を決(き)めたようだ。今度(こんど)の日曜日の朝(あさ)、決行(けっこう)と決まってしまった。古い倉庫なので、学校(がっこう)では立入禁止(たちいりきんし)となっている。だから先生(せんせい)とかがいる時間(じかん)はダメなのだ。
 決行の日の朝早(はや)く。親友は学校の門(もん)の前で待っていた。だが、約束(やくそく)の時間(じかん)になっても現(あらわ)れない。「まぁ、こんなことか…」と親友は呟(つぶや)いた。きっと、まだ寝(ね)ているに違いない。親友は仕方(しかた)なく古い倉庫へ向(む)かった。そして、立入禁止のロープが張(は)られているところへ来たとき、いきなり後から声(こえ)をかけられた。振(ふ)り返ると、そこには校長(こうちょう)先生が立っていた。
「君(きみ)も噂を確かめにきたのかい? 君で23人目だよ。でも、一人でくるなんてたいした度胸(どきょう)だね。感心(かんしん)するよ…と言いたいところだが――」
<つぶやき>この後、すごく怒(おこ)られたのかな? でも、探究(たんきゅう)する気持(きも)ちは忘(わす)れないでね。
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