みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0365「愛すること」

2018-10-31 18:38:57 | ブログ短編

「ねえ、知ってる? 恋(こい)には賞味期限(しょうみきげん)があるんだって」
 教子(のりこ)は、ゲームに夢中(むちゅう)になっている義人(よしひと)に言った。でも彼からは、「そうなの?」て、素(そ)っ気(け)ない返事(へんじ)しか返ってこない。教子は思った。こいつ、あたしのこと便利(べんり)な女としか思ってないのかしら。
 二人は付き合い始めて二年になる。恋人(こいびと)たちの別れる確率(かくりつ)が一番多くなる時期(じき)だ。例(たと)えここを無事(ぶじ)に乗り切ったとしても、後は惰性(だせい)でズルズルと行くだけかもしれない。この関係(かんけい)を続(つづ)けるか、それとも別の道へ進(すす)むか。教子は決断(けつだん)の時だと感じていた。
「あたしたちの恋って、そろそろ期限切れなのかな? どう思う?」
 ここまで言って何の反応(はんのう)もなかったら終(お)わりにしよう。教子はそう決(き)めた。だって、女はそんなに待てないの。彼は相変(あいか)わらずゲームを続けながら、気のない返事を繰(く)り返す。
 教子は小さなため息(いき)をついた。そして、彼に別れを切り出そうとしたとき、不意(ふい)に彼が言った。「結婚(けっこん)しよう」――教子はキョトンと彼を見つめる。
「俺(おれ)たちの恋は今日で終わりだ。明日から、俺は君のことをずっと愛(あい)することにするよ」
「えっ? それって…、どういう…」教子は頭の中が真っ白になっていた。
「だから、プロポーズしてるんだよ。俺と一緒(いっしょ)になってくれ。…ダメかな?」
「そ、そんな…。ダメじゃないけど…。――はい。よろしくお願いします」
<つぶやき>愛は動詞(どうし)だと誰(だれ)かが言った。愛は伝(つた)え続けなければ消(き)えてしまうものかもね。
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0364「妖怪雨ふらし」

2018-10-30 18:13:13 | ブログ短編

 それはおばあちゃんちへ泊(と)まることになった日のことです。私たち姉弟(きょうだい)は二人だけでお留守番(るすばん)をすることになりました。その日は夕方(ゆうがた)から雨が降(ふ)り出して、夜になっても雨は止(や)みそうもありませんでした。
 私たちは居間(いま)でテレビを見ていました。その時です。どこからかポタッポタッと音(おと)がします。おばあちゃんちは古い家なので、照明(しょうめい)も薄暗(うすぐら)く、私たちは顔を見合(みあ)わせましたが、確(たし)かめに行く勇気(ゆうき)はありません。私はテレビのボリュームを上げました。
 しばらくして、またポタッポタッと…。それが、こっちへ近づいて来るような、だんだん音が大きくなっていました。その時、隣(となり)にいた弟(おとうと)がワーッと叫(さけ)び声を上げました。私が振り返ると、ちょうど弟が座っていた真上(まうえ)の天井(てんじょう)から水がぽたぽたと落ちています。私はとっさに部屋にあったゴミ箱(ばこ)を下に置(お)きました。水は始めはぽたぽたでしたが、ゴミ箱を受(う)けたとたんに、バチャ、バチャ、ジャーッと勢(いきお)いよく落ちてきます。
 私たちは怖(こわ)くなって…。弟が私にしがみついてきました。私は、雨漏(あまも)りかと思いましたが、そうじゃないと思い直(なお)しました。だってこの家は二階建てで、上には別の部屋が…。
 私たちはおばあちゃんに起(お)こされて目を覚(さ)ましました。水が落ちた跡(あと)はどこにもありませんでした。おばあちゃんにそのことを話すと、また出たのかいって…。それ以後(いご)、同じ体験(たいけん)をすることはありませんでした。でも、今でもその時の記憶(きおく)が鮮明(せんめい)に残(のこ)っています。
<つぶやき>身近にはいろんな妖怪(ようかい)たちが存在(そんざい)します。子供たちと遊(あそ)びたかったのかもね。
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0363「嫉妬するほど」

2018-10-29 18:11:43 | ブログ短編

 由里(ゆり)は駆(か)け込んで来て言った。「拓也(たくや)! その女は誰(だれ)? こんなとこで何してんのよ!」
 振り向いた女の顔を見て、由里は驚(おどろ)いた。それは友だちの、「亜利沙(ありさ)? 何で拓也と…」
 亜利沙は困(こま)った顔をして、「由里…。あのね、これは…、別にそういう――」
「何なのよ。亜利沙、どういうことか説明(せつめい)して。――逃(に)げても無駄(むだ)よ!」
 こっそりと逃げようとしていた拓也は立ち止まった。友里の方にゆっくりと振り返ると、作り笑いをしながら、
「ちょっと待(ま)ってよ。俺(おれ)は別に、まだ、何もしてないから」
「まだ何も…? ということは、何かしようと思ってたってことよね。違(ちが)う!」
 見かねた亜利沙が、「由里、違うのよ。私たち、そういうあれじゃ…ないのよ」
「じゃあ、どういうあれなの? あたしに分かるように言ってみてよ」
 亜利沙と拓也は視線(しせん)を合わせる。何か隠(かく)し事(ごと)があることは間違(まちが)いなさそうだ。
「こんな人気(ひとけ)のない公園(こうえん)で、隠(かく)れるようにして会ってるなんて。どういうつもりよ」
「俺たち、別に隠れてなんかいないし。たまたま、他に人がいないだけで」
「屁理屈(へりくつ)言わないで。いつからよ。二人して、あたしのこと…」
 そこへ男が声をかけた。「由里ちゃん、びっくりパーティーの打ち合わせじゃないの?」
「ヒロシ、あなたも?」亜利沙は渋(しぶ)い顔をして、「もう、二人とも誕生日(たんじょうび)が同じなんだからさ。二人してサプライズしあっても無駄だと思うんだけど」
<つぶやき>誕生日が同じカップルなんて。別々の場所でパーティーはできませんよね。
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0362「普通の人」

2018-10-28 18:37:05 | ブログ短編

 マモル君は彼女から突然(とつぜん)別れを告(つ)げられた。その別れる理由(りゆう)を訊(き)いてみると、
「だって、普通(ふつう)すぎるんだもん。もっとさぁ、何かないの?」
「普通って何だよ。そりゃ、確(たし)かに僕(ぼく)は運動(うんどう)も苦手(にがて)だし、勉強(べんきょう)だってそんなに…」
「あたしさぁ、前(まえ)付き合ってた人が頭(あたま)良すぎたの。だから今度は普通がいいかなって」
「えっ? そんなんで、僕に告白(こくはく)したのかよ。僕のこと好きなんじゃ…」
「う~ん、好きになるかなって思ったんだけど。やっぱ、無理(むり)みたい」
「何でだよ。僕たち、付き合い始めて二日目だろ。まだ、僕のこと何にも――」
「あのね、あたし、よく考えてみたの。この先(さき)あなたと付き合って、何か楽しいことあるかなって。でもね、何にも思いつかなかったわ。だから、別れましょ」
 マモル君の中で何かが切(き)れた。彼はいきなり彼女の腕(うで)をつかむと、ぐいぐいと歩(ある)き始めた。彼女はされるがままに、引きずられるようについて行く。
「ねえ、どこに行くのよ。あたし、これから――」
「いいから、ついて来いよ。これから楽しいことするんだから」
「イヤよ。ちょっと離(はな)して。あたし、帰る」
 この後、二人の姿(すがた)は小さな農園(のうえん)にあった。意外(いがい)にも、彼女はとても楽しそうだ。大根(だいこん)を引きぬきながら、笑顔を見せてはしゃいでいた。
<つぶやき>普通って何でしょう。みんなそれぞれ違(ちが)って、いろんな人がいるから面白(おもしろ)い。
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0361「お前は天才だ」

2018-10-27 18:24:57 | ブログ短編

「お前は天才(てんさい)だなぁ。すごいじゃないか」父親(ちちおや)は息子(むすこ)の頭をなでながら言った。
「ありがとう、パパ」息子は得意気(とくいげ)な顔で満面(まんめん)の笑(え)みを浮(う)かべた。
 しかし、翌日(よくじつ)から息子は勉強(べんきょう)をさぼるようになった。宿題(しゅくだい)も手をつけようともしない。
 息子が言うには、「だって、僕は天才だから、勉強なんてバカらしくて…」
 父親はどうしたものかとヘラヘラと笑うばかり。でも、母親(ははおや)はそれを良(よ)しとはしなかった。息子の首根(くびね)っこをつかむと、「あんたは天才でもなんでもないの。何の努力(どりょく)もしないで、何ができるっていうのよ。そんなことしてると、パパみたいになっちゃうからね」
 母親のキツいひと言で、息子は自分の部屋へ引っ込んだ。父親は疑問(ぎもん)に思って訊(き)いた。
「ママ、今のって…、どういうことかな?」
「はぁ? そのまんまの意味(いみ)よ。あなた、勉強を見てくれるのはいいのよ。でも、天才とか、そういう余計(よけい)なことは言わないで。あの子、あなたと同じでお調子(ちょうし)もんなんだから」
「でも、あれは、あの子のやる気を引き出すために…」
「やる気ねぇ。あなたも、もっとやる気を出して出世(しゅっせ)とかしてよ。お願いだから」
「いや、それは…。あの、今はあの子の勉強の話を…」
「あなた、あの子の成績(せいせき)とか知ってるの? 仕事仕事って、今までそういうこと聞こうともしなかったくせに。あたしが、今までどれだけがんばって――」
<つぶやき>会社(かいしゃ)でも家庭(かてい)でも、人を育(そだ)てるのは大変(たいへん)です。長所(ちょうしょ)を伸(の)ばしてあげようね。
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