一戸建(いっこだ)てを手に入れたのを機(き)に、僕(ぼく)は壮大(そうだい)な計画(けいかく)を実行(じっこう)することにした。新しい家には小さいながらも庭(にわ)というものがある。そこに、一大(いちだい)ジオラマパークを造(つく)るのだ。今までは邪魔者扱(じゃまものあつか)いされて、小さなジオラマで我慢(がまん)するしかなかったが、今度こそ――。
だが、この計画には大きな難問(なんもん)が控(ひか)えていた。それは、妻(つま)の存在(そんざい)だ。彼女は、まったく僕(ぼく)の趣味(しゅみ)を理解(りかい)しようともしなかった。だから、庭には花壇(かだん)を作るつもりでいるようだ。
それを阻止(そし)するために、僕は子供(こども)たちを抱(だ)き込むことにした。上の男の子はまっ先(さき)に食(く)いついた。さすが、我(わ)が息子(むすこ)よ。しかし、下の娘(むすめ)は決(き)めかねているようだ。
こうなったら、先手必勝(せんてひっしょう)――。既成事実(きせいじじつ)をつくってしまえば、後はなし崩(くず)しに…。僕は資材(しざい)を買い込んで庭に運び込むことにした。
決行(けっこう)の日の朝。僕は、庭に出てみて驚(おどろ)いた。更地(さらち)だったはずなのに、小さな棒(ぼう)が杭(くい)のように何本も突(つ)き立ててあって、紐(ひも)で囲(かこ)いが作られていた。それは、庭の大部分を占(し)めている。いつの間にこんなものを…。これは妻の仕業(しわざ)に違(ちが)いない。
しかし…、近寄(ちかよ)ってみて、僕は感心(かんしん)してしまった。実(じつ)に、まったく良(よ)くできている。まるで、本物(ほんもの)のようだ。囲いの前には小さな小さな看板(かんばん)が立ててあり、そこには〈私有地(しゆうち)につき立入禁止(たちいりきんし)〉と書かれてあった。
<つぶやき>ここは話し合った方が良いかもね。きっと解決策(かいけつさく)が見つかるかもしれません。
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