みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0503「運命の人?」

2019-03-31 18:23:29 | ブログ短編

 ここ数日、毎晩(まいばん)のように同じ夢(ゆめ)を見た。女性と一緒(いっしょ)に暮(く)らしている夢だ。これが新婚生活(しんこんせいかつ)なのか?――僕(ぼく)は四十(しじゅう)に手が届(とど)くところまで来ている。今さら結婚なんか望(のぞ)まないし、一人でいる方が気楽(きらく)でいいと思っていた。それが何でこんな夢を…。
 原因(げんいん)は分かっている。先週、叔母(おば)がお見合(みあ)い話を持って来たのだ。僕は断(ことわ)りたかったが、強引(ごういん)にお見合いを設定(せってい)されてしまった。相手(あいて)の写真(しゃしん)も見せてもらえないし、「良い娘(こ)よ。年齢(とし)だってそんなに離(はな)れてないし」それだけのことしか教えてもらえなかった。
 お見合いの日。僕は大(たい)して期待(きたい)などしていなかった。一緒(いっしょ)に食事(しょくじ)をするだけだし、当(あ)たり障(さわ)りのない会話(かいわ)をして、それで叔母の顔も立つだろう。
 約束(やくそく)のレストランへ行ってみると、もう相手は来ていた。叔母の横で伏(ふ)し目がちに女性が座(すわ)っていた。これが、例(れい)の良い娘(こ)なのか。僕は席(せき)につくと、女性の顔をじっくりと観察(かんさつ)してみた。見れば見るほど、どこかで見覚(みおぼ)えのあるような…。自己紹介(じこしょうかい)で彼女が顔を上げたとき、僕ははっとして思わず声を上げた。その顔は、夢に出て来た女性とそっくりだ。
 それから一年後。僕は結婚(けっこん)した。でも、妻(つま)はお見合いの相手ではない。あの時は、運命(うんめい)の女性かと思ったが、すぐに相手からお断(ことわ)りの連絡(れんらく)が来た。さすがに、その時はヘコんだし、もうお見合いはしないぞと思ってしまった。でも、ひょんなことから別の女性とお付き合いすることになり、結婚へと…。不思議(ふしぎ)なことだが、最近、妻の顔が夢に出て来た女性の顔に似(に)てきた気がする。やっぱり、あれは正夢(まさゆめ)だったのだろうか?
<つぶやき>夢ほど不確(ふたし)かなものはないのかも。でも、まれに本当になってしまうことも。
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0502「ワンシーン」

2019-03-30 18:28:14 | ブログ短編

「ねえ、暑(あつ)いわ。あたしたち、どこまで歩けばいいのよ」
 女は照(て)りつける陽射(ひざ)しを気にしながら言った。男はただ黙々(もくもく)と歩いている。
「聞いてるの? あたし、日陰(ひかげ)が欲(ほ)しい。雲(くも)を出してよ。あなた何だってできるんでしょ」
 女は男に無理難題(むりなんだい)をふっかける。男はそれを聞き流(なが)し、女を励(はげ)ました。陽射しはどんどん強くなり、足元(あしもと)の砂(すな)を熱(ねっ)し続ける。まるでフライパンの上を歩いているようなものだ。
「ねえ、喉(のど)が渇(かわ)いたわ。水をちょうだい。水筒(すいとう)の中にまだ入ってるんでしょ」
 男は首(くび)を振り、水筒をカラカラと振った。女は立ち止まり、溜息(ためいき)をつく。男は女の手を取り、優(やさ)しく引き寄せた。そして、女の耳元(みみもと)で囁(ささや)いた。
「もう少しだ。もう少しでエンドロールが入るから。そしたら、二人でオアシスへ行こう」
 女は驚(おどろ)いて男を押(お)しやり、「何で! これで終わりなの? あたしたち、歩いてるだけじゃない。恋が始まるわけでもないし、アクションシーンだって何ひとつないじゃない。それに、カメラはどこよ。スタッフの影(かげ)すらないじゃない」
 男は女をグッと抱(だ)きしめて言った。「ダメだよ。短気(たんき)を起こしちゃ。ここまで歩いてきたことが無駄(むだ)になってしまう。――僕(ぼく)たちの恋はこれから始まるんだ。ここからがクライマックスだ。さあ、最高の笑顔を見せてくれ。カメラは一キロ先で君(きみ)を――」
<つぶやき>二人はなぜ砂漠(さばく)を歩いているのでしょう。本当に映画の撮影(さつえい)だったのかな?
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0501「再生のきざし」

2019-03-29 18:56:35 | ブログ短編

 私の家族(かぞく)には問題(もんだい)がある。父はリストラで、ただいま就活(しゅうかつ)中。毎朝出かけるのだが、どこへ行っているのか未(いま)だに仕事(しごと)は見つかっていないようだ。母はアイドルグループにはまり、家事(かじ)を放棄(ほうき)。追(お)っかけをやっているようで、家で顔を見ることは滅多(めった)にない。兄は仕事のストレスから、部屋に引きこもったまま出ようとしない。弟(おとうと)は彼女に夢中(むちゅう)で、バイト代の全(すべ)てを貢(みつ)いでいる。
 家族の中で、私だけだ。この家を守るために必死(ひっし)に働(はたら)いているのは。いくつものパートをかけ持ちし、なりふり構(かま)わず休みなしに――。でも、私がいくら働いても、この家の家計(かけい)はすでに破綻寸前(はたんすんぜん)まで来ていた。私も、もう限界(げんかい)。こんな生活(せいかつ)から逃(に)げ出したかった。
 彼に巡(めぐ)り合ったのは、そんな時だ。彼とは仕事場で出会い、彼のちょっとした優(やさ)しさに、私の心は癒(いや)された。彼と一緒(いっしょ)に働いている時間が、私にはとても大切(たいせつ)なものになった。
 私たちが恋(こい)に落ちるのに、さほど時間はかからなかった。いつしか二人で未来(みらい)を語り、幸せにみちた家庭(かてい)を夢(ゆめ)みていた。実現(じつげん)なんかするはずもないのに…。
 出会ってから一か月。彼は私にプロポーズした。……結婚(けっこん)。今の私には、一番縁(えん)の無い言葉だ。私は思わず、この甘(あま)い言葉にすがろうとした。でも、それはできない。そんなことをしたら、私の家族は崩壊(ほうかい)してしまう。私は、首(くび)を横に振った。涙(なみだ)で彼の顔が見えない。
 彼は私を優しく抱(だ)きしめて言った。「君(きみ)の荷物(にもつ)を、僕(ぼく)に分けてください。二人なら乗り切れるから。僕は、いつも君のそばにいるよ。君をちゃんと守るから」
<つぶやき>辛(つら)いときに優しく手を差しのべてくれる。そんな人がいてくれたらいいのに。
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0500「しずく15~食卓」

2019-03-28 18:31:12 | ブログ連載~しずく

 食卓(しょくたく)についた神崎(かんざき)つくねは、山盛(やまも)りの料理(りょうり)が並んでいるので驚(おどろ)いて目を丸(まる)くした。
 月島(つきしま)しずくは呆(あき)れて母親に囁(ささや)いた。「何なの、これ。こんなに作っちゃって…」
 母親はそんなこと気にもかけずに、「だって、あなたが友だちを連れて来るなんて考えてもみなかったんだもん。もっと早く連絡(れんらく)してくれれば、美味(おい)しいもの作ってあげたのに」
 父親がさり気なく口を挟(はさ)んだ。「まあまあ、いいじゃないか。で、神崎さんは、その…。そういう格好(かっこう)が、今の流行(はやり)なんですかね。おじさんには、どうも理解(りかい)できないが…」
 最初の出会いが寝巻(ねまき)姿である。疑問(ぎもん)を持つのは至極当然(しごくとうぜん)とは言える。つくねは、「ええ、まあ…」と曖昧(あいまい)に返事(へんじ)を返した。まさか、変な人に狙(ねら)われているとは、とても言えない。
 いつもならすぐに自分の部屋へ行ってしまう弟(おとうと)が、今日はやけに静(しず)かに座っている。彼の目は、つくねにくぎ付けになっているようだ。しずくは弟の頭をひっぱたくと、強い口調(くちょう)で言った。「変な目で見ないの。食べ終わったらさっさと行きなさいよ」
 それを見たつくねは、「ダメよ。そんなことしたら、可哀想(かわいそう)だわ」と、可愛(かわい)いキャラを全開(ぜんかい)にする。子供たちのやり取りを、微笑(ほほえ)ましく見ていた母親がつくねに声をかけた。
「今日はもう遅(おそ)いから、泊(と)まってらっしゃい。ねえ、いいでしょ?」
「でも、ご迷惑(めいわく)じゃ…」つくねは伏(ふ)し目がちに答えた。
「いいのよ。そんなこと気にしなくても」母親は優(やさ)しく微笑(ほほえ)んだ。
<つぶやき>月島家はとってもアットホームなんです。つくねはちょっと戸惑(とまど)ってます。
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0499「いちかばちか」

2019-03-27 19:15:28 | ブログ短編

 亜希(あき)が、教室(きょうしつ)にいた洋子(ようこ)を呼(よ)びに来た。洋子はちょうどお弁当(べんとう)を食べ終わったところで、キョトンとした顔で、「行くって、どこへ? あたし、これから――」
「今がチャンスなの」亜希は洋子の耳元(みみもと)で囁(ささや)いた。「山田(やまだ)くん、一人で屋上(おくじょう)にいるから」
 洋子は急に頬(ほお)を赤らめておどおどしながら、「山田くんって…。あたし、そんな…」
「もう、山田くんのこと好きなんでしょ。みんな知ってるわよ」
 洋子が顔を上げると、周(まわ)りにいた同級生(どうきゅうせい)たちみんな、一斉(いっせい)に頷(うなず)いた。洋子はますます恥(は)ずかしくなり、すっとんきょうな声を上げて、「ち、違(ちが)うわよ。あたし、あたしなんか…」
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。山田くん、今、誰(だれ)とも付き合ってないんだって。これは確(たし)かな情報(じょうほう)よ」
「でも、だからって…。あ、あたしのことなんか――」
「そんなこと、コクってみなきゃ分かんないでしょ。いちかばちかで、当たって砕(くだ)けちゃおうよ。そんなんだから誰とも付き合えないんだよ」
「でも、当たって砕けちゃったらダメでしょ。あたしは、別にこのままでも…」
 尻込(しりご)みしている洋子を、亜希は強引(ごういん)に引っ張って屋上へ向かった。屋上では山田くんがぼんやりと空を眺(なが)めていた。亜希は洋子の背中(せなか)を押(お)して山田くんの前へ行くと、
「山田くん、洋子が話があるんだって。聞いてあげてよ」
 洋子は山田くんに見つめられて、ますます顔を赤くしてうつむいてしまった。
<つぶやき>ちゃんと告白できるのかな。でも、どうして山田くんは屋上にいたのでしょ?
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