みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1150「しずく145~刺される」

2021-10-31 17:48:55 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)が神崎(かんざき)つくねに近寄(ちかよ)ろうとしたとき、日野(ひの)あまりが彼女の腕(うで)をつかんでささやいた。「ダメ。あの娘(こ)、変だわ。すごく悪意(あくい)を感(かん)じるの…」
 それを聞いたハルは、買い物袋(ぶくろ)を離(はな)してアキに駆(か)け寄った。素早(すばや)くアキの腕をつかんでつくねから引き離すと、涼たちの方へ押(お)しやった。面食(めんく)らったつくねは、ハルの首(くび)に腕を回して羽交(はが)い締(じ)めにする。そして、反対(はんたい)の手にはナイフを握(にぎ)りしめていた。
 涼は、ハルを助(たす)けようとするアキを引き戻(もど)して叫(さけ)んだ。
「何すんだ! 放(はな)せ! 放さないと――」涼は能力(ちから)を使おうと身構(みがま)えた。
 つくねは、ハルにナイフを突(つ)き立てると、「もし少しでも動いたら、この娘(こ)、死(し)ぬわよ。それでもいいの? この娘(こ)はもらっていくわ。利用価値(りようかち)がありそうだからね」
 つくねが飛(と)ぼうとしたとき、ハルがつくねの足を踏(ふ)みつけた。締めていた腕が緩(ゆる)むと、ハルはつくねにひじ打(う)ちをくらわせた。すかさず、涼が能力(ちから)を使ってつくねをはじき飛ばした。これで形勢逆転(けいせいぎゃくてん)と思いきや、つくねは実戦(じっせん)に長(た)けているようだ。一瞬(いっしゅん)にして、ハルの背後(はいご)に移動(いどう)して、後ろからハルの腹(はら)にナイフを突き刺(さ)した。
「バカな娘(こ)ね。大人(おとな)しくしてれば死ななくてすんだのに…」
 つくねは嘲笑(あざわら)うと、どこかへ姿(すがた)を消(け)してしまった。呆然(ぼうぜん)とする三人――。アキが、倒(たお)れたハルに駆け寄って叫んだ。「お姉(ねえ)ちゃん! ダメよ。あたしが…助けるから…」
<つぶやき>果たしてハルは助かるのでしょうか? 姉妹の運命が動き出したようです。
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1149「好きみたい」

2021-10-29 17:36:37 | ブログ短編

 彼女は同じ会社(かいしゃ)で働(はたら)く人に恋(こい)をした。と言っても、まだ彼女の片思(かたおも)いなのだが――。
 彼女はすこぶる奥手(おくて)で、今だに誰(だれ)とも付き合ったことがない。だから、恋の始め方がよく分からない。この、好きだという気持ちをどう伝(つた)えればいいのが悶々(もんもん)としていた。このままでは仕事(しごと)も手につかなくなりそうだ。
 そこで彼女は思い切った行動(こうどう)に出た。彼女は彼のデスクまで行くと、手にした領収書(りょうしゅうしょ)を突(つ)きつけた。でも、緊張(きんちょう)しすぎて言葉(ことば)が出てこない。
 彼は彼女を見て、「あっ、経理(けいり)の…。えっと、何か……」
 彼女はじっと彼を見つめて…、見つめて…。絞(しぼ)り出すように、「あっ…。これ、ダメです」
 彼は領収書を受(う)け取ると、「あっ、すいません。何か、問題(もんだい)でも……」
「こ、これは…。ちゃんと明細(めいさい)をつけて下さい。でないと…、処理(しょり)できません」
「そうですよねぇ。分かりました。やり直(なお)します。ほんとに、申(もう)し訳(わけ)ありません」
「いえ、いいんです。よ、よろしく、お願(ねが)いします。……それと、付き合って下さい」
 彼はきょとんとして彼女を見た。そして、「えっ、いま、何て…?」
「で、ですから…。わ、私と、その…、付き合ったり…しませんか?」
 彼は回りを気にして、声(こえ)をひそめた。「えっと…。それって、どういう…」
「ですから…。あなたのこと…、好(す)きみたいなんです。よろしくお願いします」
<つぶやき>これは、思い切っちゃいましたねぇ。社内(しゃない)で評判(ひょうばん)になること間違(まちが)いないです。
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1148「重いんだ」

2021-10-27 17:45:24 | ブログ短編

 彼女は、付(つ)き合っていた男から別れを告(つ)げられた。
「君(きみ)は、重(おも)いんだよ」それが、彼から言われた最後(さいご)の言葉(ことば)だ。
 彼女は納得(なっとく)がいかなかった。
「重いって何よ。あたしは、あなたのために尽(つ)くしてきたじゃない。あなたのために出来(でき)ることは何でもしてきた。仕事(しごと)で落ち込んでいたときも、あたしが励(はげ)ましてあげたじゃない。それなのに…、それなのに――」
 彼女は親(した)しい友達(ともだち)に愚痴(ぐち)をこぼした。友達はそれを聞いて呟(つぶや)いた。「何か…、分かるわぁ」
 彼女はますます憤慨(ふんがい)して、「もう、なに言ってるのよ。あたしが悪(わる)いって言うの?」
「あんたさぁ、思い込みが激(はげ)しすぎるのよ。そんでもって、相手(あいて)のことを分かった気になって、自分の考えを押(お)しつけてくる。いつものことじゃない。私の知ってる限(かぎ)りでは…」
 友達は、指(ゆび)を折(お)りながら数(かぞ)え始めた。彼女は、友達の手をとって止めさせると、
「なに数えてんのよ。何で、そうやってあたしのこと――」
「あんたの被害(ひがい)にあった人の数よ。その中には、私も入ってるからね」
「なに言ってるの…。あたしが、何をしたって言うの? そんなこと言わないで…」
「あんたさぁ。私のこと友達とか思ってるの? 私は、そんな風(ふう)に思ったことないから」
「えっ、そんな…。だって…、あたしたち…仲良(なかよ)しじゃない――」
<つぶやき>悪気(わるぎ)はないんだよね。彼女だって相手のことを…。どうしたらいいのか…?
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1147「純真な悪意」

2021-10-25 17:43:10 | ブログ短編

 彼女は同じ会社(かいしゃ)の人と付(つ)き合っていた。その人は、まるで子供(こども)のように純真(じゅんしん)だった。だが彼女の友人(ゆうじん)は、その人のことをよく思っていなかった。その友人は、彼女に忠告(ちゅうこく)した。
「あの人は、やめた方がいいよ。何を考えてるのか分からない目をしているわ」
 彼女には、そんな忠告は耳(みみ)に入らなかった。彼のことを愛(あい)していたのだ。彼女が、彼の部屋(へや)を初めて訪(おとづ)れたとき、それは起(お)こった。
 ――彼は、ぽつりと彼女に言った。
「ねぇ。君(きみ)は、どうして僕(ぼく)なんかと付き合ってるの?」
「どうしてって…。それは、あなたが、あたしのこと好(す)きだって言ってくれたから…」
「ああ…、そうだったね。君は、僕のこと、褒(ほ)めてくれたから。君だけだよ。僕のこと分かってくれるのは…。ねぇ、僕のこと褒めてよ。もっと褒めて欲(ほ)しいんだ」
 彼は彼女の手をつかんで言った。「僕のコレクションを見せてあげるよ。君も気に入ってくれるといいんだけど…。僕は、君に褒められたいから集(あつ)めたんだ」
 彼は、壁(かべ)に掛(か)かっていた布(ぬの)を剥(は)ぎ取った。壁一面(いちめん)に服(ふく)の切れ端(はし)と、傷(きず)だらけの女性の顔写真が貼(は)りつけてあった。その中の一枚に、彼女の友人の写真(しゃしん)もあった。彼は言った。
「ねぇ、すごいだろ。僕のこと褒めてよ。みんな、君のためにやったんだ」
 彼女は彼を見た。そこには、彼女が好きだった彼の顔はなかった。
 彼は狂気(きょうき)にみちた顔で、「褒めてよ。褒めてくれないと、君のこと嫌(きら)いになっちゃうぞ」
<つぶやき>やばいです。時に、人は別の顔を見せることもあるみたい。でも、これは…。
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1146「同級生」

2021-10-23 17:40:15 | ブログ短編

 突然(とつぜん)、女性から声をかけられた。だが、私にはそれが誰(だれ)なのか分からない。彼女が言うには、小学校(しょうがっこう)の同級生(どうきゅうせい)だという。もう十年以上も前の話だ。私には思い当たることは…。
 小学校の頃(ころ)の私は、親(した)しい友達(ともだち)もいなかったし…。そもそも私は、クラスの誰とも馴染(なじ)めなかった。そんな私のことを覚(おぼ)えているヤツがいるわけがない。
 彼女はどういうわけか、私に思い出させようと必死(ひっし)になっているようだ。あの頃のことをいろいろと話し出した。担任(たんにん)の先生(せんせい)のことや、他の同級生のエピソードなど支離滅裂(しりめつれつ)な話しが続いた。それでも私が思い出さないので、とうとう彼女は――。
「だったら、これはどう? あたしがいつもやってたやつ」
 彼女はいろんなポーズをしてみせた。あの頃、クラスで流行(はや)ってたのか…。でも、こんなところでやっちゃうなんて。彼女は、芸人(げいにん)なのか? それとも…。彼女は、私に何を期待(きたい)してるんだ? 私は、早くこの場から逃(に)げ出したかった。
 彼女は業(ごう)を煮(に)やして言った。「もうっ、早川(はやかわ)くん。わざとしてるでしょ」
 私はやっと納得(なっとく)した。私は、ため息(いき)まじりで彼女に言ってやった。
「すいませんが、私は早川じゃありません。人違(ひとちが)いしてるんじゃありませんか?」
「えっ、うそっ…。そうなの? もう、だったら、もっと早く言ってよ!」
 彼女は顔を赤らめて、足早に駆(か)けて行った。私はひとり呟(つぶや)いた。
「最初(さいしょ)に確認(かくにん)しろよ。まったく時間(じかん)の無駄(むだ)じゃないか…」
<つぶやき>小学校の同級生をどこまで覚えていますか? 私は、まったく自信(じしん)ないです。
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