みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1238「都市伝説同好会」

2022-04-27 17:44:49 | ブログ短編

 その同好会(どうこうかい)は誰(だれ)が始めたのか分からない。でも、もうずいぶん前から続いているようだ。今年もまた、新学期(しんがっき)の始まりとともに新入会員(しんにゅうかいいん)の募集(ぼしゅう)を開始(かいし)した。だがどういう訳(わけ)か、今年は入会(にゅうかい)する学生(がくせい)が皆無(かいむ)だった。会長(かいちょう)は、このままでは長年続く同好会の存続(そんぞく)が危(あや)うくなると思い悩(なや)んだ。
 そこで会長は、チラシを大量(たいりょう)に学内(がくない)でばらまいて、マイナーなイメージを払拭(ふっしょく)しようと考えた。だが、副会長(ふくかいちょう)がそれに異(い)を唱(とな)えた。そんなに会員を増(ふ)やすと、質(しつ)の低下(ていか)を招(まね)くというのだ。後輩(こうはい)の会員が意見(いけん)を述(の)べた。
「それは大丈夫(だいじょうぶ)でしょ。学内でばらまいても、五人も来ないと思いますよ」
 会長はため息(いき)をついて言った。「君(きみ)たちは気づいてないのかもしれないが…。参加人数(さんかにんずう)が五人以下になると、同好会として生徒会(せいとかい)に認(みと)めてもらえなくなる。解散(かいさん)だよ。部室(ぶしつ)も取り上げられてしまうんだ」
 別の後輩が言った。「じゃあ、今の三年生が卒業(そつぎょう)したら、同好会はなくなるんですか?」
 会長は意(い)を決(けっ)して言った。「こうなったら奥(おく)の手を使うしかないな。これは、かなり危険(きけん)なんだが、我々(われわれ)でこの学校の都市伝説(としでんせつ)をでっち上げるんだ。もう計画(けいかく)は出来(でき)上がっている」
 副会長は思わず言った。「いつの間(ま)に、そんなものを…。でも、そんなことをして…」
「これは、卒業した先輩(せんぱい)たちが練(ね)り上げたものだ。まさか、実行(じっこう)することになるとはな」
<つぶやき>どんだけ危険なんですか? いったいどんな計画なのか、ちょっと気になる。
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1237「見えないものが」

2022-04-25 17:35:02 | ブログ短編

 これはリモート会議中(かいぎちゅう)の出来事(できごと)だった。男性社員(だんせいしゃいん)の画面(がめん)に綺麗(きれい)な女性(じょせい)が映(うつ)り込んだのだ。それに気づいた上司(じょうし)の男性社員が指摘(してき)した。
「おい、山下(やました)。お前、付き合ってる娘(こ)いるんだなぁ。ちょっと紹介(しょうかい)しろよ」
 ちょうど会議が終わったところで、他(ほか)の人たちも興味津々(きょうみしんしん)のようだ。女性社員たちからは、残念(ざんねん)がる声も上がってきた。でも、当(とう)の山下は首(くび)を傾(かし)げて言った。
「えっ? なに言ってるんですか…。僕(ぼく)は、付き合ってる娘(こ)はいませんよ」
「隠(かく)すなよ。さっき、お前の後にいたじゃないか。出し惜(お)しみすんなよ」
「だから、誰(だれ)もいませんって。僕は、一人暮(ひとりぐ)らしだってみんな知ってるじゃないですか」
「じゃあ、証明(しょうめい)してみろよ。カメラで、部屋(へや)の中をぐるっと――」
 山下はしぶしぶ答(こた)えて、「分かりましたよ。これは、何かの罰(ばつ)ゲームですか?」
 山下はパソコンを持って、ゆっくりと部屋の中を写(うつ)していった。女性社員から、
「へぇ、けっこう片(かた)づいてるじゃないですか。これは、もしかして彼女(かのじょ)さんが――」
「違(ちが)いますって。もう、いい加減(かげん)にして下さい。どうです? 誰もいないでしょ」
 確(たし)かに誰の姿(すがた)も見えなかった。突然(とつぜん)、女性社員が声をあげた。
「そこ! いました。ほら、いま、姿見(すがたみ)に映ってましたよ」
 山下は、姿見にカメラを向けた。だが、そこには誰もいなかった。山下は震(ふる)える声で、
「ほんんとに…、いたんですか? あの…、最近(さいきん)、おかしなことが続(つづ)いてて……」
<つぶやき>これはどういうこと? まさか、幽的(ゆうてき)な美少女(びしょうじょ)が入り込んじゃったのかも…。
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1236「まだ会えてない」

2022-04-23 17:39:01 | ブログ短編

 僕(ぼく)は、まだその人に会ったことがない。同じ会社(かいしゃ)で働(はたら)いているのにだ。その人のデスクはいつも綺麗(きれい)に片(かた)づいている。きっと几帳面(きちょうめん)な人なのかもしれない。
 その人のことを同僚(どうりょう)たちに訊(き)いてみると、みんなバラバラな答(こた)えが返ってくる。
「ああ、彼女ね。あいつは大雑把(おおざっぱ)なヤツだよ。細(こま)かいこと気にしないみたいだ」
「あいつは、こだわりがすごくて、妥協(だきょう)しないんだよ。少しは回りのこと考えてほしいよ」
「彼女なら、昼休(ひるやす)みになるといつも会議室(かいぎしつ)で昼寝(ひるね)してるわよ。もう、爆睡(ばくすい)って感じ。あれで、よく寝過(ねす)ごさないわよね。感心(かんしん)しちゃうわ」
 僕は、ますますその人のことが分からなくなってきた。
 外回(そとまわ)りから帰って来ると、その人のデスクの上に分厚(ぶあつ)いファイルが置(お)かれてあった。あの人が戻(もど)っているのか? 僕は上司(じょうし)に報告(ほうこく)を済(す)ませると、その人のことを訊いてみた。すると上司は残念(ざんねん)そうに、
「そうか…。君(きみ)はまだ会ってなかったね。彼女…、さっき帰ってしまったよ。明日からまた出張(しゅっちょう)なんだ。でも、朝には会社に顔を出すって言ってたから――」
 また、あの人に会えないなんて…。でも、明日はきっと――。僕は、まるで遠距離恋愛(えんきょりれんあい)をしている恋人(こいびと)に会えるような…、そんな、わくわくドキドキの気分(きぶん)になっていた。
 上司が冗談(じょうだん)まじりに僕に言った。「彼女を見たら、君も恋(こい)に落ちるかもなぁ」
<つぶやき>いったいどんな人なんでしょう? きっと、できる女なのかもしれませんね。
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1235「しずく162~提案」

2022-04-21 17:38:04 | ブログ連載~しずく

 日野(ひの)あまりが拉致(らち)された頃(ころ)、月島(つきしま)しずくは神崎(かんざき)の研究所(けんきゅうじょ)に来ていた。神崎はしずくが来たことに驚(おどろ)いたが、彼女を丁重(ていちょう)に迎(むか)え入れた。応接室(おうせつしつ)で向かい合うと神崎は、
「君(きみ)から来てくれるとは思わなかったよ。連絡(れんらく)を取りたいと思っていたところだったんだ。単刀直入(たんとうちょくにゅう)にいくが、我々(われわれ)と手を組(く)まないかね? お互(たが)いにメリットはあると――」
「つくねのことは訊(き)かないのね」しずくは神崎の目を見つめて言った。
「ああ…。君のところへ戻(もど)ったんだろ。まさか記憶(きおく)が戻るとはなぁ。あの娘(こ)の能力(ちから)を見くびっていたよ。よろしく伝(つた)えてくれないか。まぁ、私を恨(うら)んでいるだろうが…」
「そうね。でも、結月(ゆづき)おばさんとのことは伝えた方がいいんじゃないかしら?」
「君は…どこまで知ってるんだ? 君の能力(ちから)を調(しら)べてみたいもんだ。だが、今は時間がない。どうかね、我々の提案(ていあん)を受(う)け入れてくれないか? 黒岩(くろいわ)が何か企(たくら)んでいるんだ。君もそのことは分かっているんだろ? 残念(ざんねん)ながら、我々には有能(ゆうのう)な能力者(のうりょくしゃ)がいないんだ。黒岩は何人も能力者を配下(はいか)に持っている。君の能力(ちから)が必要(ひつよう)なんだ。これは、この国のため、国民(こくみん)の安全(あんぜん)を守(まも)るためでもあるんだ」
 しずくは一呼吸(ひとこきゅう)おいて、「いいわよ。でも、その前に、スパイを捕(つか)まえましょ」
 神崎は呆気(あっけ)に取られて、「スパイだって…。我々の中にスパイがいると」
 しずくは、神崎のそばに立っている秘書(ひしょ)を指差(ゆびさ)した。
<つぶやき>神崎と手を組んでいいんでしょうか? しずくには何か考えがあるのかも…。
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1234「はけ口」

2022-04-19 17:43:14 | ブログ短編

 小さな公園(こうえん)のベンチで寝込(ねこ)んでしまっている彼女。どうやら酔(よ)っ払(ぱら)っているようだ。そこへ、一人の男が通(とお)りかかった。その男、悪(わる)い人ではなさそうだ。彼女に声をかけて揺(ゆ)り起こすと、「早く帰(かえ)った方がいいですよ」と忠告(ちゅうこく)した。
 彼女は起き上がると、支離滅裂(しりめつれつ)なことを言い出して男を罵倒(ばとう)した。でも、男は不機嫌(ふきげん)になることもなく、微笑(ほほえ)みさえ見せて彼女に言った。
「僕(ぼく)でよかったら、話し聞きますよ。ぜんぶ吐(は)き出してしまいましょう。溜(た)まっているものを吐き出せば、きっと楽(らく)になりますよ」
 彼女は、会社(かいしゃ)の上司(じょうし)からの理不尽(りふじん)な言動(げんどう)や、自分(じぶん)のことを理解(りかい)してくれない彼氏(かれし)への不満(ふまん)をぶちまけた。それはまるで激流(げきりゅう)のように、彼女の口から吹(ふ)き出してきた。男は嫌(いや)な顔ひとつ見せずに、彼女の言葉(ことば)を受け止めていく。まるで彼女の不満やストレス、イライラを吸(す)い取っているようだ。
 彼女は全部(ぜんぶ)ぶちまけると、酔いも覚(さ)めたようでスッキリした顔になった。彼女は頭を下げて男にお礼(れい)を言うと、自宅(じたく)へ帰って行った。男は彼女を見送(みおく)ると、膨(ふく)らんだお腹(なか)をさすってげっぷをひとつした。そして、誰(だれ)に言うでもなく呟(つぶや)いた。
「久(ひさ)しぶりに満腹(まんぷく)になったよ。これでしばらくは寝て暮(く)らせるなぁ」
 男の姿(すがた)は少しずつ霞(かす)んでいって、暗闇(くらやみ)の中に消(き)えてしまった。
<つぶやき>こんな人がいてくれたら…。誰もがそう思うわよね。でも人じゃないから。
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