みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0673「現金な彼女」

2019-09-30 18:26:46 | ブログ短編

「えっ、サヨナラしたって…。だって、付き合い始めたばかりだったじゃない」
「だって、欲(ほ)しかったバッグ、買ってもらったし。もういいかなって」
「ちょっと、なに言ってるの。好きだったんじゃなかったの? だから告白(こくはく)されて…」
「あの時はね。でも、よく考えたら、ちょっと違(ちが)うかなって」
「それで、相手(あいて)は、納得(なっとく)してくれたの?」
「なんで? 付き合ってもいいよ、なんて、あたしひと言(こと)も言ってないし」
「でも、デートの誘(さそ)いを受けたんでしょ? それは、付き合うってことじゃ…」
「あれは、デートじゃないわ。あたしのお買い物にくっついて来てただけよ。あたしはただ、その日はお買い物に行きたいなって言っただけだもん」
「あんたね、そんなことしてると、恨(うら)まれるわよ。もうやめなって」
「あたし、悪いことなんてしてないわ。向こうから言ってくるんだもん。付き合ってください、僕(ぼく)が買ってあげるから、美味(おい)しいディナーでも、ここは僕が――」
「もういい、分かったわ。あんたさ、私はまだ我慢(がまん)できるけど…。その、上から目線的(めせんてき)な言い方、ほかの娘(こ)に言わない方がいいわよ。友だち、なくすからね」
「えっ? あたし、そんな言い方してないと思うんだけど…」
「あんたは言ってるつもりはないかもしれない。でも、聞いてる方はね――」
「ごめん、ちょっといいかしら? あたし、次の人と約束(やくそく)があるの。これで失礼(しつれい)するわ」
<つぶやき>マイペースなのか…。どうしたらこんな娘ができてしまうんでしょ。謎(なぞ)です。
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0672「元彼」

2019-09-29 18:41:04 | ブログ短編

 行きつけの居酒屋(いざかや)で良樹(よしき)を前にして彼は言った。「何で話してくれなかったんだよ」
「だってさ、まさかお前のとこ行くなんて思わなかったし…。それに、別れた女のこと話しても、お前、気分悪(わる)いだけだろ。あんな別れ方したわけだし」
「そ、それはそうだけど…。一言(ひとこと)、言ってほしかったよ」
「悪かったよ。でもな、まさかお前を捨(す)てるとはなぁ、思わなかったぜ」
「別に、捨てられたわけじゃ…」
「なに言ってんだよ。<他に好きな男ができたからバイバイ>ってメールが来たんだろ。それ以来(いらい)、消(き)えちまって、連絡(れんらく)つかなかったじゃないか。そういうの、捨てられたって言うんだよ。お前は人が良すぎるんだ。何でガツンと言ってやんなかったんだよ」
 突然(とつぜん)、女の声がした。「何のはなし? ガツンって…」
 そこにいたのは、元カノだった。隣(となり)の席(せき)に座(すわ)ると、「やっぱりここだったのね。もう、相変(あいか)わらず行動範囲(こうどうはんい)が狭(せま)すぎ。すぐに分かっちゃったわよ」
 良樹は立ち上がると、「俺(おれ)、行くわ。ちょっと用事(ようじ)…思い出しちゃって。後は、なっ…」
 彼女は良樹が行ってしまうと、彼の隣(となり)の席に移(うつ)って言った。「あたしたちに気を使っちゃって…。前にもそんなことあったわよね」
 彼はコップのビールを飲み干(ほ)すと彼女に言った。「何で…、どういうつもりなんだよ」
<つぶやき>彼女は何を言うのかな。二人は元のサヤに戻(もど)ることができるんでしょうか?
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0671「元カノ」

2019-09-28 18:30:35 | ブログ短編

「えっ、いま、何て言ったの?」
「だから、あたしたち、やり直(なお)さない?」
 三年前に別れた彼女からの…、これは告白(こくはく)なのか? 僕(ぼく)は戸惑(とまど)った。だって、あのとき別れてから僕たちは一度も会うことはなかったのに。それなのに突然(とつぜん)僕の前に現れて、こんなことを言うなんて…。彼女は、僕が困(こま)った顔をしているのを見てくすくす笑った。僕は、この彼女の笑顔(えがお)にやられてしまったのを思いだした。彼女は言った。
「変わんないね。いま、付き合ってる人いないんでしょ?」
「いや、それは…。そんなことは…」
 僕は何で動揺(どうよう)してるんだ? 変だ…。もう彼女のことなんて、忘(わす)れてしまったはずなのに…。彼女は恋人(こいびと)だった頃(ころ)のように話しかけて来る。
「この間(あいだ)、久しぶりに良樹(よしき)と会ったの。あなたの話も出たのよ。そしたら、懐(なつ)かしくなっちゃって…。来ちゃった。あの頃は楽しかったわね」
 良樹というのは僕の幼(おさな)なじみで、彼女とも友だちだった。僕は、いまも暇(ひま)があると良樹と飲みに行ったりしている。彼女と会ったなんて、聞いてないぞ。
 彼女は僕の目をじっと見つめて微笑(ほほえ)んだ。僕は、僕はどうすればいいんだ? ここは、彼女の誘(さそ)いに乗(の)るべきなのか、それとも…。彼女は、僕の手にそっとふれると、
「考えといてね。あたし、あなたのこと忘れたことなんてなかったわ。また来るね」
<つぶやき>彼女には、何か他の目的(もくてき)があるのでしょうか? ここは…、どうするんだ!
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0670「しずく49~意識の海」

2019-09-27 18:30:16 | ブログ連載~しずく

 そこはしずくの意識(いしき)の中なのか――。まるで海のようにどこまでも青白(あおじろ)い空間(くうかん)が続いていた。その中で必死(ひっし)にもがいているアキ。上から射(さ)し込んでくる光の方へ戻(もど)ろうとしていた。足元(あしもと)の方からは底無(そこな)しの暗黒(あんこく)が迫(せま)って来ている。
 アキはいよいよ力つきたのか、もがくことをやめてしまった。アキの身体(からだ)は暗黒に吸(す)い寄(よ)せられるように、底の方へ落ちはじめた。その時、アキの手をつかむものがあった。ぐいぐいと力強く上へ引っ張り上げていく。
 ――しずくが寝かされているベッドの横で、アキは意識(いしき)を取り戻した。自分の手を握(にぎ)りしめているハルを見て、「ありがとう、助かったわ…」
 ハルは怒(おこ)った顔をして言った。「もう、何やってるのよ! 意識に触(ふ)れちゃダメって、いつも言われてるでしょ。これは遊(あそ)びじゃないのよ」
「分かってるわよ。でも、いつもとなんか違(ちが)うんだもん」
 泣(な)きそうな顔をしているアキを、ハルは思いっ切り抱(だ)きしめてささやいた。
「心配(しんぱい)させないで、あなたまでいなくなったら私…」
「…ごめんね。次はちゃんとやるから」アキはハルの顔を見て、「そんな顔しないで」
 ハルはアキの手を取って言った。「慎重(しんちょう)にいきましょ。二人でやればできるわ。この人を助(たす)けられるのは、私たちしかいないんだから」
<つぶやき>しずくは目覚(めざ)めることができるのでしょうか? この先、彼女の運命(うんめい)は…。
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0669「監視」

2019-09-26 18:59:09 | ブログ短編

「ねえ、どうしちゃったの? 非通知(ひつうち)でかけてくるから誰(だれ)かと思っちゃったわ」
 君江(きみえ)は喫茶店(きっさてん)の席(せき)につくなり、すず子に言った。すず子は顔を隠(かく)しながら、
「誰にもつけられてない? ほんとうに、一人で来てくれた?」
「もちろんよ」君江はすず子の様子(ようす)が変(へん)なのに気づいて…。前から変なとこがある娘(こ)ではあったのだが、「何かあったの? 私に話してみて」
 すず子は声をひそめて、「聞いちゃったの。聞いちゃいけないことをね。――あたし、監視(かんし)されてるのよ。だから、スマホも捨(す)てたし、それに…」
「ねえ、大丈夫(だいじょうぶ)? 何を聞いたの? 私にも教(おし)えて」
「……政府(せいふ)の陰謀(いんぼう)よ。詳(くわ)しいことは話せないわ。話したら、あなたまで…。普通(ふつう)にしてて。あたしたち、見られてるわ。まわりには、政府の人間(にんげん)がいるの。後ろの席(せき)の人とか、外(そと)で立ってるあの人もそうよ」
 君江はそっと後ろを振(ふ)り返ってみた。後ろの席には、ごく普通の老夫婦(ろうふうふ)が座(すわ)っているだけ。そんな危険(きけん)な人たちには見えなかった。君江は優(やさ)しく微笑(ほほえ)んで言った。
「ねえ、私の家に来ない? ゆっくりお話ししよ。あなたの好きなクッキーもあるわよ」
「でも、あなたに迷惑(めいわく)をかけちゃうわ。それでも、いいの?」
「かまわないわよ。あなたの知ってること、ぜんぶ私に聞かせて。さあ、行きましょ」
 すず子は先に席を立った。君江は立ち上がると、座っている老夫婦に目配(めくば)せした。
<つぶやき>まさか、君江さんも政府の回(まわ)し者なのかな。すず子は何を聞いちゃったの?
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