みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1023「巨大隕石」

2021-01-31 17:51:57 | ブログ短編

 朝のニュース番組(ばんぐみ)で巨大隕石(きょだいいんせき)が地球(ちきゅう)に接近(せっきん)していると報道(ほうどう)された。
 それを見ていた夫(おっと)は、妻(つま)に言った。「なぁ、今日はエイプリルフールか?」
 妻は、「なに言ってるのよ。そんなわけないでしょ。フェイクニュースじゃないの? 最近(さいきん)、面白(おもしろ)そうな事件(じけん)とかないもんだから――」
 テレビの中で、アナウンサーがとんでもないことを言い出した。隕石は、あと30日で地球に衝突(しょうとつ)すると――。そうなれば、人類(じんるい)は絶滅(ぜつめつ)してしまうかもしれない。
 テレビを食い入るように見ていた娘(むすめ)は興奮(こうふん)したように両親(りょうしん)に言った。
「これ、大変(たいへん)じゃない。どうしよう…。早く逃(に)げないとダメだよ」
 夫は娘をなだめるように、「落ち着きなさい。そんなこと、起こるわけないだろ」
「だって、隕石の衝突で恐竜(きょうりゅう)とか絶滅しちゃったんだよ。人間(にんげん)だってどうなるか…」
 妻はまったく関心(かんしん)がないのか、娘に言った。「早く食事(しょくじ)を済(す)ませないと、遅刻(ちこく)するわよ」
 娘は慌(あわ)てて食事を始めた。テレビでは専門家(せんもんか)の話を伝(つた)えていた。それによると、隕石は大西洋(たいせいよう)に落下(らっか)する確率(かくりつ)が高いそうだ。夫は安心(あんしん)したように、
「ほらみろ。地球の反対側(はんたいがわ)じゃないか。日本に被害(ひがい)はないんじゃないのか」
 娘は口をもぐもぐさせながら、「でも、まったく何もないわけないじゃん」
 妻は夫に言った。「帰りに買い物してきてよ。食料(しょくりょう)を備蓄(びちく)しておかないと――」
<つぶやき>妻は冷静(れいせい)ですよね。もしこんなことが起きちゃったら、あなたはどうします?
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1022「知っておいた方がいいこと」

2021-01-29 17:54:00 | ブログ短編

「ちょっと待(ま)って…」彼は立ち止まって言った。「なぁ、他(ほか)に知っておいた方がいいことないのかなぁ。初(はじ)めて会うわけだし、君(きみ)のお父(とう)さんには…」
 彼女は振(ふ)り返ると答(こた)えた。「そうねぇ、あとは…言葉(ことば)づかいかなぁ。ちゃんとした日本語(にほんご)を話さないと、機嫌悪(きげんわる)くなるかもねぇ。でも、ハル君だったら、きっと大丈夫(だいじょうぶ)じゃない」
「いやぁ、俺(おれ)…、どんどん自信(じしん)なくなってきちゃったよ。やっぱり今日は…」
「ダメよ。行くって言っちゃったし。それに、パパ、曲(まが)がったことが嫌(きら)いな人だから、約束(やくそく)を破(やぶ)ったら大変(たいへん)よ。それとねぇ、きっと、パパ、言うと思うんだ。〈娘(むすめ)を泣(な)かすようなことをしたら、ただじゃおかない〉ってね。――ここよ、私の家…」
 二人は家の中へ。そして、父親(ちちおや)が待っている座敷(ざしき)へ――。彼女は襖(ふすま)の前で座(すわ)ると居住(いず)まいを正(ただ)しておしとやかに、「小夜子(さよこ)です。ただ今戻(もど)りました」
 座敷の中からは、父親の威厳(いげん)のある声が聞こえた。「入りなさい」
 彼女は襖を開けて座敷の中へ入って行った。そして、父親の前に座り直すと頭を下げて、
「お父(とう)さま、こちらが、先日(せんじつ)、お話した〈小池春男(こいけはるお)〉さんです」
 突然(とつぜん)の紹介(しょうかい)で、彼は慌(あわ)ててしまった。だって、普段(ふだん)の彼女とまったく違(ちが)うのだ。彼女の立ち居(い)振る舞(ま)いに、思わず見とれていた。慌てたせいで、彼は敷居(しきい)に足をとられて転(ころ)んでしまった。父親は冷(つめ)たい目で彼を見た。彼女は、素知(そし)らぬ顔で彼を見ようともしなかった。
 彼は思った。「何だよ。もしものときは、助(たす)けてくれるって言ってたのに…」
<つぶやき>おっと、これは一大事(いちだいじ)です。でも、これって彼女の策略(さくりゃく)かもしれませんよ。
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1021「妻の性格」

2021-01-27 17:56:38 | ブログ短編

「ねぇ、あなた…」妻(つま)が意味深(いみしん)に声をかけてきた。
 今までの経験(けいけん)から、これは何かあるなと僕(ぼく)は思った。付き合い始めた頃(ころ)から、いや、付き合う前から妻の性格(せいかく)は変わっていないのだろう。妻は、自分(じぶん)のことは自分で決(き)めないと気がすまないようだ。それに、誰(だれ)が何と言おうと、自分で決めたことは曲(ま)げようとしない。とっても頑固(がんこ)なところがある。
 思えば、僕が告白(こくはく)しようとしたときも、プロポーズのときもそうだ。僕が言い出す前に、妻が先手(せんて)を打(う)ってきた。僕がその決意(けつい)をするのに何日もかかっているのに、妻はお構(かま)いなしだ。でも、妻は決して気づかいのできない人ではない。これは言っておかなくては…。
 妻は微笑(ほほえ)みながら、「今日は休(やす)みでしょ。一緒(いっしょ)に出かけない?」
 そんなことを言ってくるのは、何か久(ひさ)しぶりって感じだ。でも、これは夫婦関係(ふうふかんけい)が冷(ひ)えきっているとかじゃない。僕たちは、一人でいる時間も大切(たいせつ)にしようと話し合っていた。
 僕は、「ああ…。もちろん、いいけど…。で…、どこへ行くんだい?」
 妻は僕の返事(へんじ)を待ってはくれない。妻が口にしたことに変更(へんこう)はないのだ。妻は僕の質問(しつもん)など耳(みみ)に入らないようだ。すでに、そそくさと鏡(かがみ)の前に座(すわ)っていた。僕はいつものことながら、妻の行動の早さに感心するばかり…。
 さて、今日は何が起(お)こるのか…。ドキドキの休日が始まった。
<つぶやき>やっぱり、何年たっても夫婦にはドキドキが必要(ひつよう)なんじゃないでしょうか?
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1020「しずく119~再会」

2021-01-25 17:52:34 | ブログ連載~しずく

 長い通路(つうろ)を歩いて行く初音(はつね)と涼(りょう)。通路には照明器具(しょうめいきぐ)がないのに、天井(てんじょう)からまるで木漏(こも)れ日のような光が射(さ)し込んでいる。しばらく行くと、突然(とつぜん)、扉(とびら)が現れた。
 音も無(な)く扉が開くと、ハルとアキの姉妹(しまい)が飛(と)び出してきた。アキは初音の顔に傷(きず)があるのを見つけると、初音の腕(うで)を抱(だ)きかかえて言った。
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。あたしに任(まか)せて。これくらい何でもないわ。きれいに治(なお)してあげるね」
 アキは有無(うむ)も言わせず、初音を扉の中へ連れて行ってしまった。ハルは、
「ちょっと、待ちなさいってば…。もう、張(は)り切りすぎよ。あっ、お姉(ねえ)さんは大丈夫?」
 涼は、ちょっとまごつきながら、「ああ、大丈夫よ。これくらい、平気(へいき)だから…」
「じゃあ、行きましょ。食事(しょくじ)の準備(じゅんび)もできてるわ。それに…」
「私は…。いるんでしょ? 両親(りょうしん)に、会いたいんだけど…」
「分かったわ。じゃあ、ついて来て」
 ハルの案内(あんない)で涼は別の扉へ入って行った。その部屋(へや)はほのかな灯(あか)りに包(つつ)まれていた。そこに両親が寝(ね)かされていた。涼は二人に駆(か)け寄って、声をかけた。だが、二人とも眠(ねむ)っているのか、何の反応(はんのう)もしなかった。涼はハルに、
「ねぇ、大丈夫よね。死(し)んだりしないよね。……私のせいだ。私が…いたから…」
「それは違(ちが)うわよ」暗(くら)がりの中から声がした。暗がりから現れたのはしずくだった。
 涼は、彼女を見て言った。「あなた…、誰(だれ)なの?」
<つぶやき>涼はしずくの記憶(きおく)を消されたまま…。確(たし)か、そうだったと記憶してますが…。
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1019「猫づくし」

2021-01-23 17:58:57 | ブログ短編

 とある会社(かいしゃ)での会話(かいわ)である。上司(じょうし)が困(こま)り果(は)てた感じで若(わか)い部下(ぶか)に、
「私はね、君(きみ)に〈猫(ねこ)の首(くび)に鈴(すず)を…〉って頼(たの)んだだけなんだよ。あの社長(しゃちょう)の動向(どうこう)が分かれば、こっちも動きやすいからね。それなのに君は、なぜ? どうして〈窮鼠(きゅうそ)が猫を噛(か)んじゃう〉ってことになるんだよ」
「仕方(しかた)ないじゃないですか。僕(ぼく)だって頑張(がんば)ったんです。猫に鈴なんかつけられませんよ。僕にどうしろと言うんですか?」
「だからさぁ、もう少しあるだろ? こう、やんわりと話を進(すす)めていってだね…。〈猫にまたたび〉的(てき)なことをちらつかせても良(よ)かったんじゃないのかね? 何で君は、いきなり最終手段(さいしゅうしゅだん)を使うようなことをしたんだ」
「だって、どんな優遇(ゆうぐう)をしたって、あの社長には〈猫に小判(こばん)〉ですよ。無駄(むだ)な出費(しゅっぴ)になるだけです。それに、あの社長は〈猫に鰹節(かつおぶし)〉なんですよ。油断(ゆだん)できないんですから」
「そんなことは分かってるよ。しかし、困(こま)ったなぁ。あの社長に目をつけられたら、この先(さき)、仕事(しごと)がやりにくくなるかもしれないぞ」
「こうなったら、〈猫の手を〉借(か)りちゃいましょうよ。こっちは弱味(よわみ)を握(にぎ)ってるんですから」
「まさか、あの会社を買収(ばいしゅう)でもするつもりか? しかし…、それもありかもしれんなぁ」
「そうですよ。あの会社を呑(の)み込んで、僕たちが猫になるんです」
<つぶやき>この会話についていけたら、すごいかもしれません。私には訳分(わけわ)かんない。
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