みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0701「まじっ?」

2019-10-31 18:18:49 | ブログ短編

「もう、何なのよ」由香里(ゆかり)はプリプリしながら教室(きょうしつ)へ戻(もど)ってきた。
 教室で待っていた美幸(みゆき)は、「遅(おそ)かったじゃない。何かあったの?」
「聞いてよ、美幸。坂本(さかもと)のやつがね、付き合えってうるさいのよ。何で私が日直(にっちょく)の仕事(しごと)を手伝(てつだ)わなきゃいけないのよ。ひどいと思わない?」
「えっ? 坂本君って日直じゃないよ。それって…、もしかしてコクられたんじゃないの?」
 由香里は一瞬(いっしゅん)かたまったが、「…いやいや、ないない、それは、ないでしょ」
「でも坂本君って、いつも由香里のこと見てると思うんだけど。どんな感じで言われたの?」
「いや、どんなって…。えっと…、だから、俺(おれ)と付き合ってくれ…って」
「間違(まちが)いなく告白(こくはく)なんじゃない? ああっ、今ごろ、坂本君、落ち込んでるんだろうなぁ。あたし、ちょっと行ってくるね。慰(なぐさ)めてあげなきゃ、かわいそうだわ」
「ちょっと待ってよ。何で、美幸が慰めるのよ。おかしいでしょ」
「だって、あたし、坂本君のこと、ちょっと気になってたのよ。でも、由香里にその気がないんなら、あたしと付き合っても問題(もんだい)ないわよね」
「ええっ! だって、あんながさつで、どうしようもないやつよ。好きになるなんて…」
「そこがいいのよ。何だか、あたしの母性本能(ぼせいほんのう)をくすぐられちゃう感(かん)じ」
「待って、私も行く。だって、私にも責任(せきにん)があるから。美幸にだけ、そんなこと――」
<つぶやき>どこに恋(こい)がころがっているか分かりませんよ。ほら、あなたの目の前に…。
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0700「しずく55~エネルギー」

2019-10-30 18:25:17 | ブログ連載~しずく

「でもその前に…」あずみはお腹(なか)に手を当(あ)てて言った。「何か食べさせて。エネルギーを補給(ほきゅう)しないと、もう動けないわ」
 千鶴(ちづる)とつくねは、顔を見合わせて声を上げて笑(わら)った。千鶴はまるで母親にでもなったように、
「仕方(しかた)ないわね。じゃあ、私の特製(とくせい)カレーを食べさせてあげる。昔(むかし)より腕(うで)を上げてるから、あまりの美味(おい)しさにびっくりして奇声(きせい)をあげたりしないでね」
「なに言ってるのよ。カレーでしょ、私が、そんなことするわけないじゃない」
 ――千鶴はカレーを盛(も)り付けたお皿(さら)をテーブルの上に置いた。そこへ、あのハル、アキ姉妹(しまい)がやって来て、同時に声をあげた。「ワア、あたしも食べたい!」
 千鶴は嬉(うれ)しそうに言った。「あなたたちの分もちゃんとあるわよ。一緒(いっしょ)に食べなさい」
 その時だ、奇声(きせい)が上がったのは。「うわぁーっ、うまっ! ウソでしょ、何これ!」
 それはあずみの声だった。みんなに注目(ちゅうもく)されているのにも気づかないようで、一心不乱(いっしんふらん)にカレーを口の中に押(お)し込んだ。
 食事も終わり一息(ひといき)つくと、あずみはいつもの顔になっていた。そして千鶴に言った。
「私は戻(もど)るわ。学校の中に紛(まぎ)れ込んでいる敵(てき)を見つけ出さないと。二人のこと、お願(ねが)いね」
「それはいいけど…。あなた一人で大丈夫(だいじょうぶ)なの? 無茶(むちゃ)しないでよ」
<つぶやき>誰(だれ)でもエネルギーの補給は必要(ひつよう)です。でも、食べ過ぎには注意(ちゅうい)しましょうね。
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0699「恋愛相談」

2019-10-29 18:27:26 | ブログ短編

「本当(ほんとう)に好きなのか? そいつと、これから先(さき)の長い人生(じんせい)、一緒(いっしょ)に過(す)ごす覚悟(かくご)はあるのか?」
 男は、女を前にして言った。女は軽(かる)い気持(きも)ちで話したことなのに、まさかこんな反応(はんのう)が返ってくるとは思わず、戸惑(とまど)いを隠(かく)しきれずに言った。
「いや、あたしは、そこまではまだ…。だって、その人と付き合ってるわけでもないし…」
 男はこれみよがしにため息(いき)をつくと、「だったら、俺(おれ)にそんな話しをするな」
 女は反論(はんろん)するように、「別にあたしは、ちょっと気になる人がいるって言っただけで…」
「それならいい。同級生(どうきゅうせい)だったってだけで、恋愛相談(そうだん)をされても迷惑(めいわく)だ。だが、一つだけ忠告(ちゅうこく)しておこう。お前にはもう時間がない。この歳(とし)まで一人でいるということは、恋愛(れんあい)に臆病(おくびょう)で石橋(いしばし)を叩(たた)いても渡(わた)らないでいたんだろう。まったく、どこまでのろまなんだ」
「はぁ? あなたに、あたしの何が分かるって言うのよ。ほんと失礼(しつれい)ね!」
「分かるさ。気になる人がいるのに何もしようとしない。<ただ見てるだけで、あたしは満足(まんぞく)なの。告白(こくはく)して振(ふ)られるなんて、あたしには耐(た)えられない>。お前はどこまで甘(あま)ちゃんなんだ。もっと貪欲(どんよく)になれ。お前は今、崖(がけ)っぷちに立っていることを忘(わす)れるな」
 男は言い終わるとその場から離(はな)れて行った。女は怒(いか)りのやり場がなくなり茫然(ぼうぜん)と立ちつくした。そこへ、二人のやりとりを見ていた同級生の女友だちがやって来て言った。
「彼のこと悪(わる)く思わないで。あの人、好きだった人を亡(な)くしてるの。告白する前にね」
<つぶやき>それぞれ、いろんな人生(じんせい)をかかえているのです。人は見かけでは分からない。
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0698「絵空事」

2019-10-28 18:20:48 | ブログ短編

 私の姉(あね)は、未来設計(みらいせっけい)をするのが大好(だいす)きだ。彼女いわく、
「有名大学(ゆうめいだいがく)へ進学(しんがく)して、そこでいっぱい恋(こい)をするの。それで卒業(そつぎょう)したら、セレブな人とお付き合いして、夜景(やけい)の綺麗(きれい)なレストランでプロポーズされるの。結婚(けっこん)したら、子供(こども)は二人は欲(ほ)しいわ。それから、それからね――」
 まったく私に言わせたら、現実味(げんじつみ)がまったくない。ただ妄想(もうそう)に耽(ふけ)っているだけよ。現実逃避(げんじつとうひ)もいいとこだわ。それなのに私にこう言ってくるの。
「もしあたしがお金持(かねも)ちになったら、あなたに有名ブランドのバッグを買ってあげるね」
 私は言ってやったわ。「そんなのいらないわ。私にはこれで十分(じゅうぶん)だから」
「なに言ってるの? そんな汚(よご)れたリュックをいつまで使うつもり。ダメよ、あたしの妹(いもうと)なんだから、もっとちゃんとしてくれなきゃ」
 ちゃんとって…。その言葉(ことば)、そっくりそのままお返しするわ。私は現実に引き戻(もど)す言葉を吐(は)いてやった。「お姉ちゃん、そんなこと言ってていいの? 明日から試験(しけん)だよ」
 姉は一瞬(いっしゅん)、眉(まゆ)を上げたが、平気(へいき)をよそおって、「あら、そんなの分かってるわよ。前日になって慌(あわ)てて勉強(べんきょう)するなんておバカさんよ。あたしなら、勉強しなくたって…」
「そう、ならいいけど。でも、お姉ちゃんの今の成績(せいせき)で、入れる大学あるのかな?」
「あ…、あるわよ。あたしの実力(じつりょく)は、こんなんじゃないんだから。みてらっしゃい」
<つぶやき>努力(どりょく)を怠(おこた)ると、夢(ゆめ)の実現(じつげん)なんてできませんよ。まずはちゃんと勉強しましょ。
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0697「愛の攻防?」

2019-10-27 18:20:26 | ブログ短編

 僕(ぼく)の職場(しょくば)には、半月前に他(ほか)から転勤(てんきん)して来た女性がいる。僕より年下(としした)の彼女は、何かにつけて妙(みょう)に僕になれなれしく話しかけて来て――。まあ、僕には付き合っている彼女とかいないんで、別にかまわないんだけど…。
 こんなことを言うと誤解(ごかい)をまねくかもしれないが、僕は彼女に特別(とくべつ)な感情(かんじょう)などまったく無(な)く…。それは、けっして彼女に女性としての魅力(みりょく)が欠乏(けつぼう)しているというわけではなく、彼女は僕の好きなタイプじゃない、としか言いようがない。
 彼女の行動(こうどう)には、恋愛的(れんあいてき)なそういう感情(かんじょう)はないのかもしれない。彼女にとってはごく普通(ふつう)のことで、僕が勝手(かって)にそう感じているだけなのかも…。
 ――つまり、まだ彼女のことがよく分からないのだ。
 僕が今、一番頭(あたま)を悩(なや)ましているのはそのことではなく、先輩(せんぱい)の嫉妬(しっと)…。この先輩、彼女に一目惚(ひとめぼ)れというか、もろタイプだったらしく、先輩の僕に対する態度(たいど)がガラリと変わってしまった。先輩が彼女にいくら話しかけても素(そ)っ気(け)なくされるのに、僕とは楽しそうにおしゃべりをしているからなのだが――。僕が付き合う気はないといくら言っても、先輩は信じてくれなくて…。もう先輩の中では、付き合っていることになっていた。
 こうなったら、彼女がどう思っているのか訊(き)くしかない。僕はそう決心(けっしん)して彼女を喫茶店(きっさてん)に呼(よ)び出した。本当(ほんとう)に、これで良かったのか? 僕は彼女が来るのを待ちながら、これから先(さき)のことをあれこれ考えていた。店の奥(おく)の席(せき)では、先輩がこっちを睨(みら)みつけている。
<つぶやき>恋愛は時として奇々怪々(ききかいかい)なものに…。彼女はどう思っているのでしょうか?
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