みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1452「なにものでもない」

2024-03-31 18:15:32 | ブログ短編

 私は特別(とくべつ)な人間(にんげん)ではない。地位(ちい)や名誉(めいよ)を求(もと)めていないし、金持(かねも)ちになりたいとも思わない。子供(こども)の頃(ころ)、親(おや)や親戚(しんせき)、周(まわ)りの大人(おとな)たちは、将来(しょうらい)のために勉強(べんきょう)しろとか、何か目標(もくひょう)を持てとか言ってたけど、まだ子供だった私にはピンとこなかった。でも、夢(ゆめ)がなかったわけではないと思う。今となっては、もう忘却(ぼうきゃく)の彼方(かなた)に行ってしまっているが…。
 私は夢を否定(ひてい)しているわけではない。憧(あこが)れるものがあるのならそれを極(きわ)めればいい。どんどん夢に向かって突(つ)き進(すす)め。やりたいようにやればいい。でも、それは私とはまったく関係(かんけい)のない話しだ。私は何かになりたいとは思わなかった。
 私は怠(なま)けようとか思っているわけではない。普通(ふつう)に仕事(しごと)をしてお金を稼(かせ)いで、日々平穏(ひびへいおん)に暮(く)らすことができればそれでいいと思っている。その暮らしの中で、ちょっとした幸(しあわ)せを感じることができればそれで満足(まんぞく)だ。
 私にとってこれはごく普通の生き方だ。無理(むり)してなにものかにならなくてもいいじゃないか。私はそう思う。私はこういう人間でいたいのだ。誰(だれ)が何と言おうとも…。
 私は、自分の考えを誰かに押(お)しつけようとは思っていないし、これを声高(こわだか)に主張(しゅちょう)するつもりもない。人それぞれの生き方があるはずだ。誰かの真似(まね)をしてもつまらない。私は、私だけの生き方を貫(つらぬ)くつもりだ。それが正解(せいかい)かどうかは分からないけど…。
 さあ、今日も一日が始(はじ)まる。今日をせいいっぱい楽(たの)しもう。
<つぶやき>生きるということは難(むずか)しいことですね。楽しむことだけは忘(わす)れないように…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

0001「怪事件ファイル」

2024-03-27 18:06:01 | 短編物語

 「蜘蛛の糸」1
「いい加減に本当のことを言いなさいよ!」
 取調室に若い女刑事の声が響いた。容疑者とおぼしき男は困った顔をして、「だから、さっきから違うって言ってるじゃないですか」
 女刑事は机を叩き、「じゃあ、なんであんなところにいたの!」と男の顔を覗き込んだ。しかし、男はまったく動じる気配もなく、「刑事さん、化粧とかちゃんとした方がいいですよ。美人の顔立ちなんだから…」と優しい笑顔で答えた。
 女刑事の怒りが頂点に達したとき、ドアが開いて年配の刑事が顔を出した。
「おい、いちご。容疑者を捕まえたって、本当か?」
「はい、係長。この男です。現場をうろついていたので連行してきました」
「そうか」年配の刑事はそう言うと、容疑者の顔を見て驚きの声をあげた。
「山田さんじゃないですか! いつ日本に帰ってこられたんですか?」
「あっ、お久しぶりです。お元気でしたか?」男はにこやかに刑事と握手をかわした。
 女刑事は思いもよらない展開にうろたえて、「あの、係長。この人は…」
「ばかもん! この人はな、もと警視庁捜査一課の…」
「あの、その話は」山田は係長の話をさえぎり、「変死体が見つかったそうですね」
「そうなんですよ」係長は困り果てた様子で、「お知恵を拝借できませんかね」
「係長、なんでこんな人に…」女刑事は不服そうに抗議した。
 変死体が見つかったのは4日前で、河原の清掃をしていた近くの住民が発見した。被害者の身元は所持品からすぐに判明し、一週間前までの生存が確認された。係長が頭を悩ましている原因は、死体が普通の状態ではなく、ミイラ化していたからだ。一週間前まで生きていた人間が、ミイラになるはずがなかった。
 山田は捜査資料を一通り見終わると、「なるほど」とつぶやいて、「被害者の趣味は?」
「趣味!?」女刑事はあきれて聞き返したが、「そう言えば、山の写真とかありましたから、登山とか、ハイキングじゃないんですか」
「北陸の雲里(くもさと)村には行ってませんか?」
「趣味が事件に関係あるんですか?」女刑事はそう言うと、被害者のパソコンに残されていた日記を調べ始めた。すると、ちょうど一年前に訪れていることが記されていた。
「じゃあ、明日、そこへ行ってみましょう。きっと、何か分かるはずです」
「私も? いや、私は仕事がありますから、無理ですよ」
「そうですか…。では、僕はこれで」そう言って山田は部屋を出た。でもすぐに戻ってきて、「お名前をうかがってもいいですか? 僕は、山田太郎と言います。よく、偽名じゃないかとか言われますけど、本名なんですよ。よろしく」そう言うと山田は手を差し出した。
 女刑事はちょっと戸惑ったが、「私は、野原です」と挑戦的な態度で山田をにらみ返した。
「野原いちごさんですか。いいお名前ですね」と山田はにこやかに笑顔をむけた。
「どうして…」女刑事は驚きの声を上げた。そして、みるみる顔が赤くなり、
「バカにしないでよ!」と叫ぶと、そのまま部屋から飛び出して行た。
<つぶやき>新人のときは、張り切りすぎちゃうんです。失敗を恐れないでね。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1451「抑えきれない」

2024-03-23 17:48:34 | ブログ短編

 彼女はちょっとやっかいな人だ。平気(へいき)で嘘(うそ)をつく。でも、僕(ぼく)は知っている。そんな時の彼女は、人恋(ひとこい)しく思っているときなのだ。誰(だれ)かにそばにいて欲(ほ)しいから、人を困(こま)らせるようなことを言ってしまう。彼女と知りあったときから、僕はそのことに気づいていた。
 他の人たちはそんな彼女を悪(わる)く言うけど、僕はそんなこと思わないし彼女の味方(みかた)でいたいと決(き)めている。彼女は人付(ひとづ)き合いが苦手(にがて)なだけなんだ。思っていることの半分(はんぶん)も口(くち)に出せない。だから他の人から誤解(ごかい)されてしまうのだ。
 ある日のこと…。それは、僕が女友だちと一緒(いっしょ)にいたときだ。突然(とつぜん)、彼女がやって来て、僕に向かって怒(おこ)りだした。僕は彼女をなだめようとした。すると今度は隣(となり)にいた友だちに鉾先(ほこさき)を向けた。僕は止(や)めさせようとして、彼女を突(つ)き飛(と)ばしてしまった。尻餅(しりもち)をついた彼女は目に涙(なみだ)をためて、くしゃくしゃな顔で駆(か)け出して行った。
 それから、彼女と顔を合わすことがなくなった。どうやら僕のことを避(さ)けているようだ。僕は彼女に謝(あやま)りたいと思っているのに…。そこで僕は彼女のことを待ち伏(ぶ)せすることにした。彼女の行きそうなところは分かっている。そして、それはすぐに実現(じつげん)した。
 僕が謝ると、彼女は口をへの字に曲(ま)げて何か言いたそうにしていた。僕は彼女が言い出すのを待っていた。すると今度はぼろぼろと泣き出してしまった。僕は困った。こんなことは初めてなのだ。僕は、彼女に近づき…。そっと彼女を抱(だ)きしめた。
<つぶやき>彼女は、彼のことが好きになってしまったのか。彼に伝(つた)わるといいですね。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

0004「いつか、あの場所で…」

2024-03-19 17:57:41 | 連載物語

 「大空に舞え、鯉のぼり」1
 いつも引っ越してばかりで、私には故郷(ふるさと)と呼べるような場所はないんだ。転校したのだってこれで三回目。そのたびに友達を作り直さないといけない。これが結構大変なんだ。
 ママみたいにはなれない。ママはどこへ行ってもすぐに馴染んでしまう。これは才能の一つだわ。いつも感心しちゃう。私は不器用。それに…、みんなが思っているような良い子じゃない。可愛くもないし…。私は自分の顔が嫌いなんだ。この顔のせいでいつも苦労するの。もっとブスになりたい。本当の私は違うんだから。どこへ行ってもそうなんだ。いつも自分を装(よそお)って、みんなが思っているようになろうとしている。自分を誤魔化して…。
 今度だってそうなの。誰と友達になれば上手くやっていけるか。まず考えるのはこのことなの。これが今の私の唯一の才能なのかもしれない。ゆかりに近づいたのだって、彼女と友達になれば自分を守れると思ったから。…私はずるい子なのかもしれない。
 高太郎君の言ったことが、まだ私の中に突き刺さっている。自分の心の中を見抜かれてしまったような、そんな気がした。だから私も…。いつもならあんなことしないのに…。あれ以来、高太郎君とは気まずいままになってしまった。
 高太郎君は他の子とは違っていた。私を特別な目で見ないし、馴れ馴れしく話し掛けてくることもなかった。こんな子は初めてかもしれない。私もゆかりみたいになれたらいいのに。そしたらこんなカーテンなんか開けちゃって、彼に話し掛けることだって出来るのに…。もう一度やり直せたらどんなに良いか。…でも、私のこと嫌いだったら? もしそうだったらどうしよう。
 日曜日、ゆかりが突然やって来た。いつも元気だなぁ。悩み事なんかないみたい。
「よっ、さくら。何してるの? せっかくの休みなのに」
「別に…」
「何だよ、カーテン閉め切っちゃって。外、良い天気だぜ」
 ゆかりはカーテンを開けて、窓を全開にする。気持ちの良い風が吹き込んでくる。私の心のもやもやを晴らしてくれるように。
「あれ、あいつの部屋だ。こんなに近いんだ。ねっ、あいつと話したりしてる?」
「ううん…」
「いいなぁ、ここだったら夜遅くまで喋ってても怒られないよね」
 私はどう答えたらいいか分からなかった。ただ頷くだけ…。
「高太郎って良い奴だよ。ときどきバカやるけど。…あいつのこと嫌いになっちゃった?」
「そんなこと…」
「だったら、これから隣に行かない? 鯉のぼり、見に行こう」
 楽しそうにそう言って、私を強引に連れ出そうとする。私は突然のことに動転して…、
「行けないよ。私、嫌われてるもん」
「そんなことないって。いいわ、私が仲直りさせてあげる。もし高太郎がなんか言ったら、私がぶっ飛ばしてやるから」
<つぶやき>こんな頼もしい友達がいたら、頼ってしまうかもしれません。私は…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1450「しずく205~新しい能力」

2024-03-15 18:05:27 | ブログ連載~しずく

 人形(ひとがた)が川相初音(かわいはつね)に迫(せま)っていた。彼女の能力(ちから)はもうほとんど残(のこ)っていない。突然(とつぜん)、水木涼(みずきりょう)が目を覚(さ)ました。そして起き上がると感情(かんじょう)のない声で神崎(かんざき)つくねに言った。「私に任(まか)せて」
 涼は両手(りょうて)を前に突(つ)き出すと、彼女の目が青く輝(かがや)いた。次の瞬間(しゅんかん)、両手から光が放(はな)たれた。光は網(あみ)の目のように広がって、人形だけを切り裂(さ)いていく。
 つくねは思わず呟(つぶや)いた。「すごい。こんなことできるなんて…」
 初音は逃(に)げ出そうとするが足が思うように動かない。上空(じょうくう)にいた川相琴音(ことね)が助(たす)けに降(お)りて来た。二人はつくねたちがいる方へ向かった。その時、バラバラになった人形が変化(へんか)を始めた。キューブ状(じょう)だったのがまるで液体(えきたい)になったように床(ゆか)に広がり始めた。そして、一塊(ひとかたまり)になっていく。初音たちがたどり着いた頃(ころ)には巨大(きょだい)な人形になってしまった。
 その頃、柊(ひいらぎ)あずみと貴志(たかし)は地下(ちか)にある電力設備(でんりょくせつび)のある場所(ばしょ)に来ていた。途中(とちゅう)、人を包(つつ)み込んだ状態(じょうたい)で人形が固(かた)まって動かなくなっているのをいくつも見かけた。人形は敵味方(てきみかた)関係(かんけい)なく動いているようだ。あの巨大な装置(そうち)が暴走(ぼうそう)しているのか、それとも日野(ひの)あまりが抵抗(ていこう)しているからなのか? 二人には分からなかった。
 貴志が設備を調(しら)べているあいだ、あずみは付近(ふきん)を見て回った。どこにも人はいなかった。みんな逃げ出してしまったのだろう。貴志が声をあげた。
「見つけたよ。ここを破壊(はかい)すれば電源(でんげん)は落ちるはず」貴志は背負(せお)っていたリュックから小さな箱(はこ)を取り出して言った。「まさかこれを使うことになるとは思わなかった」
<つぶやき>それはいったい何なのでしょうか? 早くしないと巨大な人形が迫ってます。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする