みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1312「人生百年時代」

2022-09-29 17:32:40 | ブログ短編

 私の友だちに真面目(まじめ)を絵(え)に描(か)いたような…そんな娘(こ)がいる。この間(あいだ)、友だちと旅行(りょこう)の話をしていて、その彼女も誘(さそ)ってみたんだけど…。彼女は、こう返(かえ)してきた。
「せっかくバイトでお金を稼(かせ)いだんでしょ。貯蓄(ちょちく)にまわした方がいいわよ」
 みんなは彼女の言葉(ことば)に唖然(あぜん)とした。彼女はそんな私たちを見て、
「人生百年よ。今から人生設計(じんせいせっけい)を考えないと、大変(たいへん)なことになるかもね」
「なに言ってるの? 私たち、まだ女子高生よ。今からそんなこと――」
 彼女はため息(いき)をついて、理路整然(りろせいぜん)と私たちに説明(せつめい)を始めた。
「いい。65歳(さい)で定年退職(ていねんたいしょく)したとして、残(のこ)りは35年よ。老後(ろうご)が35年もあるの。その頃(ころ)、年金(ねんきん)がどれだけもらえるのかしら? 今よりも少なくなってるはずよ、確実(かくじつ)に。定年までにどれだけ貯蓄ができるかしら? 結婚(けっこん)して子供(こども)を育(そだ)てるとなったら――」
「ちょっと待ってよ。いま、そこまで考えなくてもいいんじゃねぇ」
「そうよ。だって、将来(しょうらい)どうなるかなんて分かんないでしょ。お金持(かねも)ちと結婚するかも…」
 彼女は強い口調(くちょう)で反論(はんろん)した。「甘(あま)いわ。そんな夢物語(ゆめものがたり)、あるわけないでしょ」
「そ、そんなに怒(おこ)んなくても…。将来(しょうらい)に、夢を持ったっていいじゃない」
「いいわよ、別に…。でもね、夢はしょせん夢よ。もしあなたがお金持ちと結婚したかったら、今から婚活(こんかつ)を始めなさい。何の努力(どりょく)もしないで、夢が実現(じつげん)できるわけないから」
 私たちは、何も言い返すことができなかった。私たちの将来は…、どうなるんだろう?
<つぶやき>人生は自分で切り開いて行かないと。どう生きるか、真剣(しんけん)に考えてみては…。
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1311「ひも付け」

2022-09-26 17:40:23 | ブログ短編

 彼女は、とある神社(じんじゃ)で短く切られた赤い毛糸(けいと)を拾(ひろ)った。なぜそんなことをしたのか彼女にも分からない。ほとんど無意識(むいしき)に、彼女はそれを鞄(かばん)に入れてしまった。それ以来(いらい)、彼女に不思議(ふしぎ)なことが起きた。あの運命(うんめい)の赤い糸が見えるようになったのだ。
 初めのうちは戸惑(とまど)ってしまった。そこら中に赤い糸が伸(の)びていて、歩きづらさを感じてしまった。まあ、赤い糸は身体(からだ)をすり抜(ぬ)けていくので何の問題(もんだい)もないのだが…。だんだん慣(な)れてくるとあることに気がついた。自分(じぶん)の意志(いし)で赤い糸を使(つか)えるのだ。彼女が赤い糸でひも付けすると、付けられた人は彼女の願(ねが)いを叶(かな)えてくれた。彼女は大いにそれを利用(りよう)した。仕事(しごと)の実績(じっせき)も上がり、彼女が気に入った男性とお付き合いも――。
 でも時には、期待外(きたいはず)れの人にひも付けしてしまったこともあった。その人は、彼女に付きまといストーカー行為(こうい)を繰(く)り返した。困(こま)った彼女は、思い切ってその人に付けた赤い糸をハサミで切ってみた。すると、その人は以前(いぜん)のように戻(もど)った。彼女に付きまとっていたことも忘(わす)れてしまったみたいだ。
 彼女は思った。「これ、いいじゃない。付き合った相手(あいて)が嫌(いや)になったら、簡単(かんたん)に別れることができるじゃない。それも、後腐(あとくさ)れがまったく無(な)いんだから…」
 彼女の赤い糸はどんどん増(ふ)えて、今では束(たば)になって彼女に重くのし掛(か)かっている。
<つぶやき>あまり欲張(よくば)りすぎてはいけませんよ。ほどほどがちょうどいいんですから。
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1310「しずく177~見えない敵」

2022-09-23 17:32:04 | ブログ連載~しずく

 男たちはアキを取り囲(かこ)んだ。もう逃(に)げ場はない。柊(ひいらぎ)あずみもエリスとの戦闘(せんとう)に手一杯(ていっぱい)で助(たす)けに行くことができない。アキはその場に倒(たお)れ込んでしまった。男たちがアキを捕(つか)まえようとした瞬間(しゅんかん)、その手を弾(はじ)くように神崎(かんざき)つくねが姿(すがた)を現した。男たちは獲物(えもの)が増(ふ)えたと思ったのか、不敵(ふてき)な笑(え)みを浮(う)かべてつくねに向かって行く。
 それは一瞬(いっしゅん)の出来事(できごと)だった。つくねの姿が消(き)えたと同時(どうじ)に、次々(つぎつぎ)と男たちが倒れていく。つくねが姿を現したときには勝負(しょうぶ)はついていた。つくねはアキに言った。
「アキはここにいて。あとは、あたしが――」
 エリスは男たちがやられたのを見て、声を上げた。
「カラス! いるんでしょ。見てないで、手を貸(か)しなさい」
 つくねは何かの気配(けはい)を感(かん)じたのか、よけるように身体(からだ)を回転(かいてん)させた。何かがそばを駆(か)け抜(ぬ)けたようだ。つくね服(ふく)の、腕(うで)のところが切断(せつだん)されていた。つくねは身構(みがま)えた。しかし、敵(てき)の姿を見つけることができない。相手(あいて)の攻撃(こうげき)をかわすことはできても、こちらから何もできないのでは体力(たいりょく)を消耗(しょうもう)するだけだ。つくねは窮地(きゅうち)に立たされた。
 その時だ。上の方から声がした。「苦戦(くせん)してるようね。助けてあげるわ」
 それは、川相琴音(かわいことね)だった。手にした石(いし)をつくねの後に投(な)げつけた。すると、そこから呻(うめ)き声が聞こえた。次は少し離(はな)れた場所(ばしょ)に石を投げつける。今度は外(はず)したようだ。
<つぶやき>見えない敵にどう立ち向かえばいいのでしょうか。琴音は目がいいのかな?
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1309「恋落ち」

2022-09-20 17:32:37 | ブログ短編

 彼は某大学(ぼうだいがく)の准教授(じゅんきょうじゅ)。今、証明不可能(しょうめいふかのう)な問題(もんだい)に向き合っていた。それは、ある特別(とくべつ)な瞬間(しゅんかん)にだけ、心の中に流(なが)れるというバックミュージックの解明(かいめい)だ。彼は真剣(しんけん)に研究(けんきゅう)していた。
 ある日、彼の研究室に女学生がやって来た。彼女は、彼の研究にはまったく興味(きょうみ)を示(しめ)さなかった。たまたま暇(ひま)つぶしに、目に入った研究室を覗(のぞ)いただけだったようだ。
 准教授は彼女の前まで来ると、まじまじと彼女の顔を見つめた。彼女は睨(にら)まれていると感じて、准教授を睨み返(かえ)した。
 しばらく顔をつき合わせていた准教授はため息(いき)をつくと、「ダメだ。君(きみ)は使えないなぁ」
 自分(じぶん)のことを否定(ひてい)されたと思った彼女は、「何なんですか? 失礼(しつれい)しちゃうわ」
 准教授は苦悶(くもん)の表情(ひょうじょう)を浮(う)かべて言った。「君は、恋(こい)に落ちたことはあるか?」
 突然(とつぜん)の質問(しつもん)に彼女は、「こ、恋って…。そ、そりゃ、それなりに…」
「答(こた)えになってない! 君は、付き合ってる男はいるのか? その男と――」
「そ、そんなこと…、何で答えなきゃいけないんですか? あたしは…、言えません」
「いないのか…。ならいい。とっとと出てってくれ。研究の邪魔(じゃま)だ」
「いないなんて言ってないでしょ。たまたま…、今は…、いないだけで…」
「そうか。なら、わしを手伝(てつだ)わんか? 今わしは、男女が見つめ合い、初めて恋に落ちる瞬間、どんな音楽(おんがく)が流れるのか研究してるんだ。君も、恋に落ちてみないか?」
<つぶやき>研究のために、彼女に恋をさせようというのかい? これは大変(たいへん)なことに…。
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1308「アクション」

2022-09-17 17:41:40 | ブログ短編

 彼女には好(す)きな男子(だんし)がいた。彼女は、その彼に親(した)しげに話しかけたり、微笑(ほほえ)みながら彼のこと見つめたりして、<好きだよ。好きなんだよ>ってアピールを繰(く)り返していた。それなのに…。彼は、まったくそのことに気づかない。どうしてよ? 普通(ふつう)、気づくでしょ。これだけしてるのに、気づかないなんて…変(へん)よ。
 彼女は決意(けつい)した。「こうなったら、告白(こくはく)しかないわ。でも…、そんな恥(は)ずかしいこと。ハードルが高すぎて、あたしにはムリだわ」
 しかし、彼女にはもう選択(せんたく)の余地(よち)はなさそうだ。だって、もうすぐ卒業(そつぎょう)だから。卒業したら、彼に会うことなんか…ないかもしれない。ここは、やるしかないわ。彼女は覚悟(かくご)を決めて学校(がっこう)へ向(む)かった。
 学校の玄関(げんかん)近くで彼がいるのを見つけた。彼女は、彼に近づこうとして足を止めた。彼の前に、他のクラスの女子(じょし)がいたからだ。その女子は、彼に手紙(てがみ)を渡(わた)そうとしていた。これは、まさか…。彼女は悔(くや)しそうに呟(つぶや)いた。「そういう手があったのか…!」
 彼が手紙を受(う)け取ると、女子は校舎(こうしゃ)に駆(か)け込んで行った。彼は手紙を鞄(かばん)に入れると、彼女がいることに気がついた。彼は彼女に手を上げて言った。
「おはよう。今日は早(はや)いじゃないか。どうしたんだよ?」
 彼女の決意は鈍(にぶ)っていた。このタイミングで、告白するのは…。どうなのよ?
<つぶやき>ここでひるんでちゃダメですよ。さっさと告白して、スッキリしちゃおう。
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