みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0900「しずく95~実験」

2020-05-30 18:09:54 | ブログ連載~しずく

 男は操作盤(そうさばん)の前に座(すわ)っている白衣(はくい)の部下(ぶか)たちに命令(めいれい)した。
「では、実験(じっけん)を開始(かいし)しよう。我々(われわれ)は、今度こそ成功(せいこう)させなければならない。もう失敗(しっぱい)は許(ゆる)されないのだ。これが最後(さいご)のチャンスだ。成功(せいこう)を祈(いの)っている。……始めてくれ」
 部下の一人がメインスイッチを押(お)すと、操作盤のランプが点灯(てんとう)して、装置(そうち)が低い唸(うな)り声のような音を立てて動きだした。神崎(かんざき)つくねは渾身(こんしん)の力をふりしぼりもがいてみるが、そこから逃(のが)れることはできそうになかった。男の声が聞こえた。
「心配(しんぱい)することはない。パパに任(まか)せておきなさい。お前が目を覚(さ)ましたとき、私のことが大好(だいす)きになっているはずだ。そして、私のために働(はたら)くことが、お前の喜(よろこ)びになる」
 男が目配(めくば)せすると、部下は次の操作に入った。すると装置の音が大きくなり、つくねの身体(からだ)が小刻(こきざ)みに震(ふる)えだして、苦しそうに喘(あえ)ぎはじめた。
 男は呟(つぶや)いた。「大丈夫(だいじょうぶ)だ。こいつは結月(ゆづき)の能力(ちから)を受け継(つ)いでいるはずだ。これでやっと、私の願(ねが)いがかなうことになる。ははははっ…」
 部下の一人が言った。「間もなく最大値(さいだいち)に達します。装置正常(せいじょう)。何の問題(もんだい)もありません」
 つくねは呻(うめ)き声を上げて、身体(からだ)を弓(ゆみ)なりに反(そ)らしはじめた。呻き声がますます大きくなると、つくねの身体から不思議(ふしぎ)な白い光りが現れはじめた。
<つぶやき>とうとう実験が始まってしまいました。どうしてしずくは助けに来ないの?
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0899「決めつける」

2020-05-28 18:08:03 | ブログ短編

「ご苦労(くろう)さん、ご苦労さん」と言いながら、警部(けいぶ)が立入禁止(たちいりきんし)のテープをくぐり抜(ぬ)けた。それを見た刑事(けいじ)たちは、突然(とつぜん)のことに唖然(あぜん)とするばかり。警部は構(かま)わずやって来て、
「ご苦労さん。いや、殺人事件(さつじんじけん)と聞いてね。ここは、わしが来なきゃダメだろ」
「いや、警部殿(どの)…。わざわざ、こんなところまで――」
「気にせんでもいいよ。こっちかい? 若(わか)い女性だって言うじゃないか…」
 警部はシートでおおわれた現場(げんば)に入った。すでに被害者(ひがいしゃ)は運び出されていたので、警部はちょっとがっかりしたような顔をした。それでも、警部は辺(あた)りをくまなく見回(みまわ)して、
「これは物盗(ものと)りだなぁ。間違(まちが)いない。犯人(はんにん)は抵抗(ていこう)されたんでブスッとやっちまったんだ」
 そばにいた刑事は、「いや、刺(さ)されては…。それに、財布(さいふ)も残(のこ)されたままで…」
「なんだ、違うの? じゃあ、別れ話のもつれだなぁ。被害者の恋人(こいびと)がだ、他の女性との結婚(けっこん)が決(き)まって、被害者が邪魔(じゃま)になった。それで、被害者の首(くび)をこう――」
「警部殿、絞殺(こうさつ)では…。それに、若い女性というわけでも…」
「ええっ、そうなの? 何だよ。若いって聞いたんだけどなぁ。違うの?」
「はい。三十代から四十代の女性で、まだ身許(みもと)の方は…」
「そりゃ、微妙(びみょう)だねぇ。で、美人(びじん)だったかい? ほら、ストーカーの線(せん)もあるわけだし」
「そ、それは、まだ、何とも…。今、聞き込みを始めたばかりで…」
「そうか。じゃ、何か分かったら連絡(れんらく)してよ。あっ、ひょっとして、夫(おっと)の線もあるかもなぁ」
<つぶやき>警部は何をしに来たのでしょ。こんな人がいたら現場は混乱(こんらん)してしまいます。
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0898「同姓同名」

2020-05-26 18:11:28 | ブログ短編

 彼女が昼休(ひるやす)みから戻(もど)ってくると、自分の机(つくえ)の上に大きな花束(はなたば)が置かれていた。彼女は驚(おどろ)いて教室(きょうしつ)を見回すと、クラスメイトたちはひそひそとささやき合っていた。その時、後ろから声をかけられた。彼女が振(ふ)り向くと、そこには御曹司(おんぞうし)が立っていて、
「気に入ってくれたかい? それは、僕(ぼく)からのプレゼントだよ」
「あ、あたしに…」彼女は目を丸(まる)くして、言葉(ことば)を詰(つ)まらせた。
「そうさ。ごめんね気づかなくて。君(きみ)には僕こそがふさわしい。僕と――」
「ちょっと待(ま)った!」別の男子(だんし)が飛(と)び込んで来た。彼は大地主(おおじぬし)の息子(むすこ)だった。
「そんな花束で欺(だま)されてはいけない。僕こそが君にふさわし男だ」
 彼はそう言うと、ポケットからダイヤの指輪(ゆびわ)を出して彼女に捧(ささ)げた。彼女には何が何だか分からない。そもそも、告白(こくはく)されたのも初めてなのだ。彼女は戸惑(とまど)って、
「ど、どういうことよ。あたしなんかに…。もしかして、からかってるの?」
 御曹司が答(こた)えた。「君が悩(なや)んでるのは分かるよ。数百億(すうひゃくおく)の遺産(いさん)を手にするんだからね」
 大地主の息子は、「ネットで見たよ。お爺様(じいさま)が亡(な)くなったんだろ。僕は君の味方(みかた)だよ」
 彼女は小さなため息(いき)をつくと、「あたしのじいちゃんは生きてます。もう、何なのよ」
 二人の男子は顔を見合わせて、がっかりしたように呟(つぶや)いた。
「なんだ。人違(ひとちが)いか…」「まぎらわしいなぁ。同姓同名(どうせいどうめい)か? おかしいと思ったんだよ」
 男子たちはそそくさと出て行った。残(のこ)された彼女は、失恋(しつれん)したような変な感じに――。
<つぶやき>これはめちゃくちゃでしょ。学生がダイヤの指輪って、絶対(ぜったい)ないと思います。
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0897「嫁自慢」

2020-05-24 18:07:25 | ブログ短編

 とある居酒屋(いざかや)で、会社の同僚(どうりょう)たちなのか、男たちが集まって飲み会を開いていた。いつものことなのだろうか、嫁(よめ)の話題(わだい)になっていた。
「俺(おれ)のは鬼嫁(おによめ)だからなぁ。たまに息抜(いきぬ)きしないと身(み)が持たないよ」
「お前のとこは、それでも美人(びじん)だからいいよ。目の保養(ほよう)ができるじゃないか。俺のなんか、デブって太(ふと)っちまってよ。これはもう、詐欺(さぎ)としか言えないね」
「なに言ってんだ。お前たちはまだいいじゃねぇか。俺んとこはな、口もきいてくれねぇんだぞ。最近(さいきん)は、娘(むすめ)にまで邪魔(じゃま)にされてさぁ。俺の居場所(いばしょ)なんてないんだよ」
 この愚痴(ぐち)の言い合いはいつまで続くのか…。たまりかねた独身(どくしん)の若い男が口を挟(はさ)んだ。
「家庭(かてい)を持つって大変(たいへん)なんですねぇ。僕(ぼく)、結婚(けっこん)なんかやめようかなぁ」
 この言葉(ことば)に、まわりの男たちはすぐに反応(はんのう)した。
「お前、なに言ってんだ。結婚はいいぞ。仕事(しごと)に張(は)り合いがもてるようになるんだから」
「そうだぞ。家庭を持って、男は初めて一人前(いちにんまえ)になれるんだ」
「そうだ、そうだ。そんな弱腰(よわごし)でどうすんだ。好きな女ひとり、幸(しあわ)せにできないなんて」
 若い男は面食(めんく)らって、「えっ、でも…。さっき言ってたことと――」
「あのなぁ、俺たちはこれでも幸せなんだよ。家に帰れば、家族(かぞく)が待ってるんだから」
「お前も、結婚すれば分かるよ。お前、彼女とかいないのか? 何なら、俺たちが――」
<つぶやき>これは、いい方にとればいいのかな? それとも、別の面があるのかもね。
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0896「トラップ」

2020-05-22 18:12:08 | ブログ短編

 男はベッドに横(よこ)たわっている女を見て驚(おどろ)いた。この女、とんでもない食(く)わせ物(もの)かもしれないぞ。素人(しろうと)女が金欲(かねほ)しさに誘(さそ)ってきたと思ったが、今は娼婦(しょうふ)の顔をしてやがる。
 女は服(ふく)の胸(むね)をはだけて物欲(ものほ)しげな目をしていた。男は身震(みぶる)いした。この男は何人もの女を食い物にしてきたが、こんなにそそられる女は初めてだった。男はまるで獣(けもの)のように女を抱(だ)きしめた。女は、男をたしなめるように優(やさ)しくささやく。
「ダメよ。慌(あわ)てないで。さぁ、服を脱(ぬ)いでちょうだい。全部(ぜんぶ)よ」
 男は女から離(はな)れると、勢(いきお)いよく服を脱いだ。女は、現れたたくましい身体(からだ)を見て呟(つぶや)く。
「まぁ、すごいわ。何てすてきな筋肉(きんにく)をしているの。とっても美味(おい)しそう」
 男には、そんな呟きなど耳に入らなかった。全裸(ぜんら)になると、女に取りついて服を脱がせ始めた。女は、また男にささやいた。
「ちょっと待って…。ねぇ、もっとよく見せてよ。あなたの身体…」
「なに言ってるんだ。勿体(もったい)ぶらないで、お前も裸(はだか)になって――」
 女は、男の口に吸(す)いついて黙(だま)らせると、男の身体をペロペロとなめまわした。そして、男の顔を間近(まぢか)で見つめるとにっこり微笑(ほほえ)んで、
「ありがとう。服を着てると、歯(は)に引っかかって食べにくいのよ」
 男に考える余裕(よゆう)などなかった。女はペロリと舌(した)なめずりをすると、口を大きく開いて、男を頭から呑(の)み込んでしまった。
<つぶやき>これは、うわばみだったのでしょうか? こ、こんなことって、恐(こわ)すぎます。
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