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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0023「いつか、あの場所で…」

2025-08-21 18:59:15 | 連載物語

 「夏休(なつやす)みのこわーいお話(はなし)」3
「じゃ、高太郎(こうたろう)。帰(かえ)ろう」ゆかりが妙(みょう)に明(あか)るく言(い)った。えっ、帰(かえ)るの? 僕(ぼく)は、ほっとした。この程度(ていど)だったら、さくらも…。僕(ぼく)たちがさくらの部屋(へや)を出(で)ようとしたとき…。
「ちょっと待(ま)って。あの、信(しん)じてる訳(わけ)じゃないんだけど…。もう少(すこ)しだけ聞(き)いときたいかなって…」さくらがすがるような目(め)で僕(ぼく)たちを見(み)る。ゆかりのあの笑顔(えがお)が…。
「良(い)いわよ。何(なん)でも聞(き)いて。全部(ぜんぶ)、教(おし)えてあげるから」満面(まんめん)の笑顔(えがお)だ。いちばん恐(おそ)れていた展開(てんかい)になってしまった。僕(ぼく)にはもうどうすることも出来(でき)ない。ごめん、さくら…。
「あのね…、学校(がっこう)なのにどうして落(お)ち武者(むしゃ)が現(あらわ)れるの?」真剣(しんけん)に聞(き)いてくるさくら。
「そうね、そこから話(はな)した方(ほう)が良(い)いわね」ゆかりの目(め)が、さくらを捕(とら)らえた。
「昔(むかし)、この近(ちか)くで戦(いくさ)があったの。けっこう大(おお)きな戦(たたか)いだったんだって。その戦(たたか)いで負(ま)けた侍(さむらい)たちがここまで落(お)ち延(の)びてきて。それも、大将(たいしょう)と部下(ぶか)の侍(さむらい)が数人(すうにん)。村(むら)にあった小(ちい)さなお寺(てら)に逃(に)げ込(こ)んで来(き)たそうよ。そのお寺(てら)のあった場所(ばしょ)っていうのが、私(わたし)たちの学校(がっこう)が建(た)っている所(ところ)なんだって」
 ゆかりが得意(とくい)げに話(はな)してる。毎年(まいとし)のことだけど、よくそんなでたらめが言(い)えるよな。ゆかりは怖(こわ)い話(はな)しが大好(だいす)きで、夏(なつ)になると誰(だれ)かを捕(つか)まえては脅(おど)かして楽(たの)しんでいる。何処(どこ)で調(しら)べてくるのか知(し)らないけど、すごくリアルに話(はな)しをする。肝(きも)だめしで脅(おど)かせないからって、何(なに)もここでしなくても…。
「村人(むらびと)たちは襲(おそ)われるんじゃないかって、びくびくしてたんだって。このままじゃいけない、俺(おれ)たちの手(て)で村(むら)を守(まも)るんだ。村(むら)の勇敢(ゆうかん)な男(おとこ)たちが、そこで立(た)ち上(あ)がった。そして夜(よる)の闇(やみ)に紛(まぎ)れて近(ちか)づき、お寺(てら)にいた落(お)ち武者(むしゃ)の寝込(ねこ)みを襲(おそ)って殺(ころ)してしまったの。その争(あらそ)いの時(とき)に、灯火(とうか)を倒(たお)してしまって火(ひ)の手(て)が上(あ)がった。村人(むらびと)たちはなんとか消(け)そうとしたんだけど、そのお寺(てら)はすべて燃(も)えてしまったの。落(お)ち武者(むしゃ)たちの死体(したい)も一緒(いっしょ)にね」
「えっ、そんな…」さくらの顔色(かおいろ)が変(か)わった気(き)がした。…怖(こわ)がってるよ。
「その焼(や)け跡(あと)にね、またお寺(てら)を建(た)てようとしたんだけど、そのたびに事故(じこ)が起(お)きて何人(なんにん)も死(し)んだそうよ。村人(むらびと)たちは落(お)ち武者(むしゃ)の祟(たた)りだと思(おも)って、そこに塚(つか)を作(つく)って供養(くよう)した。でも、そんなことでは成仏出来(じょうぶつでき)なかったみたい。たびたびその場所(ばしょ)に現(あらわ)れては、村人(むらびと)たちに襲(おそ)いかかった!」
「きゃーっ!」とさくらは叫(さけ)んで、僕(ぼく)にしがみついてきた。
 やりすぎだよ。震(ふる)えてるよ、さくら。僕(ぼく)は、「大丈夫(だいじょうぶ)だよ。今(いま)はそんなことないから…」
「でも、それがまだ出(で)るんでしょう? が、学校(がっこう)に…」完全(かんぜん)に怯(おび)えてしまった。
「さくら、心配(しんぱい)ないって。御札(おふだ)をちゃんと貼(は)っておけば大丈夫(だいじょうぶ)」「でも、ゆかり…」
「肝(きも)だめし、楽(たの)しみだねぇ」なんで僕(ぼく)のほう見(み)て笑(わら)うんだよ。まだ、何(なに)かあるのかよ。
「私(わたし)、行(い)かない。肝(きも)だめし、休(やす)むから…。せ、先生(せんせい)には後(あと)で…」
「さくら、駄目(だめ)よそれは。肝(きも)だめしの決(き)まり事(ごと)にこういうのがあるの。必(かなら)ず全員(ぜんいん)が参加(さんか)すること。怖(こわ)がって参加(さんか)しなかった者(もの)には、恐(おそ)ろしいしっぺ返(がえ)しが待(ま)っている」
「いやだーっ!」
<つぶやき>昔(むかし)の話(はな)しには真実(しんじつ)が隠(かく)れていることもあるみたいです。気(き)をつけましょう。
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