みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0150「超人サプリ」

2018-01-30 19:04:48 | ブログ短編

「さあ、いよいよ我々(われわれ)の研究(けんきゅう)も最終段階(さいしゅうだんかい)に入った」
 等々力(とどろき)教授は感慨深(かんがいぶか)げに言った。「これから人体実験(じんたいじっけん)を始めようと思う」
「でも…、誰(だれ)が実験台(じっけんだい)に…」助手(じょしゅ)の立花(たちばな)は不安(ふあん)な面持(おもも)ちで訊(き)いた。
「それはもちろん、君しかいないじゃないか。この研究を外部(がいぶ)にもらすわけにはいかん」
「でも、僕(ぼく)なんかじゃ。お役(やく)に立ちそうも…」
「何を言ってるんだ。前回(ぜんかい)のパワースーツは問題(もんだい)があったが、今度のはただ飲(の)み込めばいいだけだ。この小さな錠剤(じょうざい)をな。そうするだけで超人(ちょうじん)に変身(へんしん)できるんだ」
 教授(きょうじゅ)は尻込(しりご)みしている助手に薬(くすり)を手渡(てわた)し、
「いいか、どんな超人になりたいか、強く念(ねん)じるんだ。そして、これを飲み込む」
 助手は祈(いの)るような思いで錠剤を飲み込んだ。教授は目を大きく見開き、助手を見つめる。だが、いくら待っても何の変化(へんか)もしなかった。教授は訊いた。
「立花君。君はいったい、どんな超人になりたかったんだ?」
「それは、ちょっと言えません。でも、実験は成功(せいこう)したんじゃないかと…」
「どこが成功なんだ! 何も変わってやしないじゃないか」
「変わらなかったから成功なんです。だって…、変わるなって、念じてましたから」
<つぶやき>こりない教授の実験はいつまで続くのでしょう。果(は)たして、助手の運命(うんめい)は?
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0149「神頼み」

2018-01-29 19:06:34 | ブログ短編

 茜(あかね)は何かにつけて、近くの神社(じんじゃ)へお参(まい)りを欠(か)かさない。初詣(はつもうで)はもちろんのこと、高校や大学の入試(にゅうし)の前にも必(かなら)ずお参りをした。そのおかげかどうか、今までの願いはすべて叶(かな)えられてきた。今日も朝早くから、社殿(しゃでん)の前で熱心(ねっしん)に手を合わせる茜の姿(すがた)があった。
「神様、今日、神谷(かみや)先輩に告白(こくはく)をします。私の、人生(じんせい)初の告白です。どうか、先輩(せんぱい)と付き合うことができますように。お願いします」
 彼女は深々(ふかぶか)と頭を下げると社殿をあとにした。これだけ念入(ねんい)りにお参りをして、お賽銭(さいせん)だっていつもより奮発(ふんぱつ)した。これできっと願いはとどくはず。茜の心に、そんな確信(かくしん)が芽生(めば)えていた。これで先輩の前でも、ためらうことは絶対(ぜったい)にないわ。
 茜が参道(さんどう)を歩いていると、一人の老人(ろうじん)が彼女に会釈(えしやく)をした。茜も、たまに見かける人なので頭を下げる。いつもならそれだけなのに、今日は老人の方から話しかけてきた。
「いつもお参りをしてくれる感心(かんしん)な子じゃのう。だがな、今回ばかりは無理(むり)じゃ。なんせ、ここは五穀豊穣(ごこくほうじよう)、学業成就(がくぎょうじょうじゅ)、交通安全(こうつうあんぜん)が専門(せんもん)じゃからのう」
「はい…」茜はあいまいに返事(へんじ)を返す。
 老人は、「恋愛(れんあい)については、縁結(えんむす)びの神(かみ)さんへ行ってくれんか」
 老人はそのまま社殿の方へ歩いて行った。茜も、「変な人…」って思いながら歩き出す。でも、気になって彼女は後ろを振(ふ)り返った。すると、もうそこには老人の姿はなかった。
<つぶやき>神頼(かみだの)みでもいいんです。そうすることで、勇気(ゆうき)や自信(じしん)がわいてくるかもね。
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0148「鷺(さぎ)の恩返し」

2018-01-27 20:18:09 | ブログ短編

 ある日のこと。一人暮(ひとりぐ)らしのむさい男の部屋(へや)に、まっ白なワンピースに黄色い靴(くつ)を履(は)いた若い女が訪(たず)ねてきた。すらりと伸(の)びた足に均整(きんせい)のとれた体(からだ)つき、まだ幼(おさな)さが残(のこ)る顔だちは可憐(かれん)な花のようである。少女は男に言った。
「なにか困(こま)ってることはありませんか?」
「えっ?」男が驚(おどろ)くのも無理(むり)はない。彼がこんな美少女(びしょうじょ)と出会(であ)える機会(きかい)は皆無(かいむ)である。
「あたし…」少女はうつむき加減(かげん)で言った。「あなたのこと、助(たす)けたいんです」
「あの、どなたですか?」男はにやついた顔で彼女を見た。こんな娘(こ)と話せるなんて…。
「あたしのこと、覚(おぼ)えてませんか?」少女は寂(さび)しげな顔をみせたが、「そうですよね。あたし、こんな姿(すがた)だから…」
「いや…」男は必死(ひっし)に思い出そうとした。こんな可愛(かわい)い娘と会って忘(わす)れるはずがない。
「でも、いいんです」少女は愛くるしい笑顔で言った。「覚えてなくて当然(とうぜん)ですから」
「でも…。ごめんなさい」男はまったく思い出せない。「どこで会いました?」
「あの…、あたし、何でもしますから。恩返(おんがえ)ししたいんです」
「何でもって? それは、あの…」男の妄想(もうそう)は広がりつづける。
「とりあえず、欲(ほ)しいものを言ってください。すぐに買って来ますから」
 そう言って、少女は愛(あい)らしい手を差(さ)し出した。
<つぶやき>男性のみなさん。知らない美少女に話しかけられても、ついて行かないで。
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0147「したがる夫」

2018-01-26 19:04:46 | ブログ短編

 あたしの夫(おっと)はしたがりのところがある。会社(かいしゃ)の若(わか)い女子社員たちが、「家事(かじ)をする男子っていいよね」と話しているのを聞いてしまって…。俺(おれ)も実(じつ)はやってるんだと言いたくなっちゃったようで…。でも、実際(じっさい)にやっていないと話しにならないので、家で突然(とつぜん)ガチャガチャとやり始めた。
 別(べつ)にいいのよ。ちゃんとやってくれるんだったら、あたしもその方が助(たす)かるし。でも、彼のやり方は雑(ざつ)すぎて――。掃除(そうじ)をすれば部屋の中はめちゃくちゃになるし、勝手(かって)に洗濯(せんたく)をしてあたしのお気に入りの洋服(ようふく)をダメにしちゃうし…。言いたいことはいっぱいあるのよ。でも、彼のやる気を考(かんが)えて、あたしは優(やさ)しく、あくまでも優しくアドバイスをしてあげるの。なのに彼ったら、ぜんぜんあたしの話を聞こうともしない。
 昨夜(ゆうべ)だってそうよ。後輩(こうはい)が弁当(べんとう)男子になって女子社員の注目(ちゅうもく)を集(あつ)めたからって、明日から俺も弁当男子になるって宣言(せんげん)しなくても――。あたしはイヤな予感(よかん)がしたわ。
 今朝(けさ)、いつもの時間に目覚(めざ)めると、彼の姿(すがた)はベッドになかった。あたしは胸騒(むなさわ)ぎがして台所(だいどころ)に急(いそ)いだわ。そしたら、もうぐちゃぐちゃで…。あたしの予想(よそう)をはるかにこえた惨状(さんじょう)になっていた。なのに、彼ったらこう言うのよ。
「何か簡単(かんたん)なのでいいから、弁当のおかず作ってくれないか」
 あたしは、あいた口がふさがらなかったわ。いったい何を作ろうとして、こんな状態(じょうたい)になったのよ。あたしは訊(き)きたいのをグッとこらえた。
<つぶやき>彼も悪気(わるぎ)はないんです。忍耐強(にんたいづよ)く、あきらめないで指導(しどう)していきましょう。
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0146「何げないひとこと」

2018-01-24 19:19:03 | ブログ短編

「ちょっと太(ふと)ったんじゃない?」
 彼のこの不意打(ふいう)ちのひとことで、何の準備(じゅんび)も予想(よそう)もしていなかった私は言葉(ことば)を失(うしな)った。でも、ここで何か言っておかないと、認(みと)めてしまうってことになりかねない。
「そんなことないわよ」私は笑(わら)いながら答えた。でも、顔は引きつっていたかも…。
 ――絶対(ぜったい)違う。絶対違(ちが)うわよ。私は家に帰るまで、この言葉を呪文(じゅもん)のように唱(とな)えていた。家に帰ると、さっそく鏡(かがみ)の前に立ってみた。そこには、いつもと変わらない私が映(うつ)っている。ためしに、服(ふく)をまくり上げてお腹を出してみる。
「ほら、ぜんぜんじゃない。いつもと変わらないわ」
 私は、ホッと胸(むね)をなで下ろした。ふと、体重計(たいじゅうけい)が目に入った。そういえば、最近計(はか)ってなかったわ。私は、体重計に乗(の)ってみようと思いついた。でも…。
「そこまでしなくても――別にいいよね。大丈夫(だいじょうぶ)なんだから…」
 私は自分に甘(あま)いところがある。でも、今回はそれでは済(す)まされない。彼に太っているって思われたのは事実(じじつ)なんだから。私は目をつぶって体重計の上に…。そして、思い切って目を開ける。あーっ――。
「ぜんぜん大丈夫じゃない。あーっ、よかったーぁ」
<つぶやき>女の子は、ちょっとしたことで心を乱(みだ)してしまう。繊細(せんさい)な生き物なのです。
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