みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1037「見る目」

2021-02-28 17:53:55 | ブログ短編

 恋(こい)に悩(なや)んでいる彼女に、同じ職場(しょくば)の先輩(せんぱい)が苦言(くげん)を呈(てい)した。
「あの人とは別れなさい。あなたは見る目がなさすぎなのよ。あの人は、誰(だれ)にでも優(やさ)しい言葉(ことば)をかけるんだから」
「でも、あたし、好きになっちゃったんです。先輩には、この気持(きも)ち…」
「あんな口先(くちさき)だけの男、信用(しんよう)しちゃダメだって。他にも付き合ってる女いるんだから」
「何で、先輩にそんなことが分かるんですか? あの人は、そんな人じゃ…」
「もうっ…。じゃあ、言っちゃうけど…。あの人、私の元彼(もとかれ)なの。だから、分かるのよ」
 この言葉に、彼女は口をあんぐりとあけた。先輩は、
「もちろん、あなたが、ここへ来る前の話だからね。今は、まったく…、何にもないから」
「そうだったんですか? じゃあ、先輩…、振(ふ)られちゃったんですね」
「ち、違(ちが)うわよ。私から振ってやったのよ。他の女と付き合ってたくせに、私に嘘(うそ)までついて……。もう、私のことはいいから。今はあなたの話をしてるの」
「あたし、決(き)めました。あの人とは別れます。だって、先輩みたいな良い女を泣(な)かせるなんて、絶対(ぜったい)に許(ゆる)せません。あたし、先輩について行きますから」
「ちょっと待って…。私、別に泣いてないからね。それに、私について来られても…」
「大丈夫(だいじょうぶ)です。あたしたち、同じじゃないですかぁ。一緒(いっしょ)に幸(しあわ)せになりましょ」
<つぶやき>職場恋愛(しょくばれんあい)も大変(たいへん)なんでしょうねぇ。とにかく、見る目を養(やしな)っておきましょう。
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1036「いけない子」

2021-02-26 17:49:26 | ブログ短編

 僕(ぼく)は、十数年ぶりに故郷(ふるさと)へ戻(もど)ってきた。小学生の頃(ころ)、親(おや)の転勤(てんきん)で離(はな)れていたのだ。
 引っ越しをした翌日(よくじつ)、小学校のときの旧友(きゅうゆう)が訪(たず)ねてきた。そいつとは、昔(むかし)よく二人で遊(あそ)び回ったものだ。――酒(さけ)を飲みながら、子供の頃(ころ)を懐(なつ)かしみ、あれこれと話はつきなかった。旧友は、ある同級生(どうきゅうせい)の話をした。そいつは陰気(いんき)な感じのヤツで、よくからかったりして何度も泣(な)かせていた。
 ――僕は、ある光景(こうけい)が頭に浮(う)かんだ。そういえば…、引っ越しの前日(ぜんじつ)、そいつを廃屋(はいおく)の倉庫(そうこ)に閉(と)じ込めて……。その後、どうなったんだろう? 僕は旧友に、
「なぁ、そいつ、今はどうしてるか、知ってるか?」
「それがさぁ…。いなくなっちゃったんだよ。家出(いえで)したんじゃないかって、噂(うわさ)になって。結局(けっきょく)、学校にも来なくなったし、それっきりどうなったのか――」
 翌日、家に宅配(たくはい)が届(とど)いた。差出人(さしだしにん)の名前(なまえ)を見て、僕は驚(おどろ)いた。そいつだ、行方不明(ゆくえふめい)の…。
「なんだ、生きてるじゃないか…。でも、どうして僕に…」
 僕は、宅配の箱(はこ)を開けてみた。中に入っていたのは、薄汚(うすよご)れた子供服(こどもふく)だった。僕は思わず箱を投(な)げ捨(す)てた。その服に見覚(みおぼ)えがあったのだ。それは、そいつの…。あのとき着(き)ていた服に間違(まちが)いなかった。いったい誰(だれ)が…、何のためにこんなことを…。
 僕は、あの倉庫へ行ってみることにした。今も残(のこ)っているかどうか分からないけど――。
<つぶやき>これは、復習(ふくしゅう)の序章(じょしょう)かもね。彼はこの災難(さいなん)を乗(の)り越(こ)えることができるのか?
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1035「しずく122~別人?」

2021-02-24 17:51:08 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)は生徒(せいと)たちを押(お)しのけて、神崎(かんざき)つくねの手をつかんで言った。
「どこにいたんだ? あいつらに連れて行かれて…。みんな心配(しんぱい)してたんだぞ」
 つくねはちょっと驚(おどろ)いた顔をしたが、涼の手を両手で握(にぎ)り返して、「水木さん、何を言ってるの? あたし、誰(だれ)にも誘拐(ゆうかい)されてないから。もう、変なこと言わないで…」
「おい、どうしたんだ? お前…、そんなしゃべり方じゃ…」
 以前(いぜん)のつくねは、誰とも仲良(なかよ)くすることなどなかった。それに、他人(ひと)に笑顔(えがお)を見せることも…。それが、目の前にいるつくねはおしゃれをしていて、まるで別人(べつじん)のようだ。
 涼は、「お前、何かされたのか? それで――」
 川相初音(かわいはつね)が止めに入った。周(まわ)りの生徒が訝(いぶか)しい目で涼を見つめていた。
 つくねは微笑(ほほえ)みながら、「もう、みんなをびっくりさせようとしたでしょ」
「そうよ。だから止めなって言ったじゃない。ほら、もう行くよ」
 初音は涼を席(せき)へ押しやっておいて、つくねに訊(き)いた。
「ねぇ、あなた、お休みしてたじゃない。どこか、具合(ぐあい)でも悪(わる)かったの?」
「実(じつ)はね、ちょっと入院(にゅういん)してて…。でも、もう大丈夫(だいじょうぶ)よ。元気(げんき)になったから…。パパも、学校へ行ってもいいって許可(きょか)してくれたし」
「へぇ、それはよかったわね。あなたのお父さんって…」
「病院(びょういん)の院長(いんちょう)をしてて…。すっごく優(やさ)しいのよ。あたし、パパのこと大好きなんだ」
<つぶやき>これはもう、完全(かんぜん)に洗脳(せんのう)されてるんじゃ。これからどうなってしまうのか?
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1034「恋愛未満」

2021-02-22 17:48:56 | ブログ短編

 とある居酒屋(いざかや)の片隅(かたすみ)。二人にとってここは馴染(なじ)みのお店のようで、女の方は周(まわ)りを気にすることなく呟(つぶや)いていた。「あ~ぁ。何であたしには、誰(だれ)もいないのよ」
 男が相(あい)づちを打つように、「俺(おれ)がいるだろ。もう、あんまり飲(の)み過ぎるなよ」
「ねぇ、あたし、結婚(けっこん)したいの。どうして、あたしの周りには男がいないのよ」
「まぁ、仕方(しかた)ないんじゃないか。お前、面倒(めんど)くさそうだし…」
「それ、どういう意味(いみ)よ。あたしはね、面倒見(めんどうみ)がいいだけで、面倒くさくなんかないから」
「そこが、面倒くさいんだよ。あれかもな…。お前が必死(ひっし)すぎて、男の方がびびちゃうんじゃないのか?」
「何それ。――あっ、ここにも、男がいるじゃない。君(きみ)、独身(どくしん)だよね」
「止めろよ。俺は、お前に恋愛感情(れんあいかんじょう)なんかまったくない」
「何でよ。そんなにきっぱり言わなくても…。あなたには、思いやりってのはないの?」
「だから…、付き合ってやってるだろ。友(とも)だちとしてな」
「もう、いいわよ。あ~ぁ、どっかに…いないかな~ぁ。あたしと、結婚してくれる…」
「何で、俺を見ながら言うんだよ。俺は、お前と結婚するつもりはない」
「なんて意地悪(いじわる)なのよ。あたしと、こんなに親密(しんみつ)に付き合ってるくせに…」
「お前、飲み過ぎてるだろ? もう帰るぞ。送(おく)って行ってやるから――」
<つぶやき>ここを抜(ぬ)け出すには、きっかけが必要(ひつよう)かも。この男はどう思っているのか?
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1033「ワープ」

2021-02-20 17:51:28 | ブログ短編

 宇宙空間(うちゅうくうかん)の移動(いどう)に革新的(かくしんてき)な技術(ぎじゅつ)が開発(かいはつ)された。ワープ航法(こうほう)だ。ワープに耐(た)えられる宇宙船(うちゅうせん)も完成(かんせい)し、あとは航行試験(こうこうしけん)を待つだけだ。目的地(もくてきち)は4光年先の恒星(こうせい)に決定(けってい)した。
 宇宙基地(きち)からのゴーサインが出ると、宇宙船は座標(ざひょう)をセットしてワープに入った。――航行は順調(じゅんちょう)に進み、宇宙船はワープを抜(ぬ)けた。そして、目の前に現れたのは――。
 艦長(かんちょう)はモニター画面(がめん)を見て呟(つぶや)いた。「どうしてだ。何で、地球(ちきゅう)が…」
 どうやら船は元いた場所に戻(もど)ってしまったようだ。目の前には青い地球が浮(う)かんでいた。艦長は宇宙基地を呼(よ)び出すように命令(めいれい)したが、基地からの応答(おうとう)はなかった。
 宇宙船は宇宙基地へ針路(しんろ)を向けた。だが、あるべきはずの場所(ばしょ)に基地は存在(そんざい)しなかった。その時、地球から何がか飛(と)び出してきたのを検知(けんち)した。モニターに映(うつ)し出すと、それは旧式(きゅうしき)のロケットで、宇宙へ飛び出すと宇宙船が姿(すがた)を見せた。それを見た士官(しかん)の一人が言った。
「あれは…アポロ計画(けいかく)の宇宙船です。博物館(はくぶつかん)で見たことがあります」
 艦長は、すぐに地球から離(はな)れるように指示(しじ)を出した。タイムスリップしたとなると、過去(かこ)の世界に影響(えいきょう)を与(あた)えるわけにはいかない。
 ――艦長は士官たちを集めると、今後(こんご)の方針(ほうしん)を話し合った。だが、誰(だれ)からも解決案(かいけつあん)は出なかった。そこで艦長は、もう一度ワープをしようと提案(ていあん)した。艦長には確信(かくしん)はなかったが、試(ため)してみる価値(かち)はあるように思えたのだ。そして、宇宙船は再(ふたた)びワープに入った。
<つぶやき>はたして元の世界に戻れたのか。それとも別の時間に飛び込んでしまうのか。
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