「ありがとう。絶対(ぜったい)に、君(きみ)を幸(しあわ)せにするから…」
僕(ぼく)のプロポーズに彼女は、「はい」と答(こた)えてくれた。僕はもう、叫(さけ)び出しそうなくらい有頂天(うちょうてん)になっていた。でも、彼女の次の一言(ひとこと)で僕は現実(げんじつ)に戻(もど)された。
「結婚式(けっこんしき)はどうするの? 住(す)むところは? あなたの部屋(へや)じゃ狭(せま)いでしょ。あたしのところもそんなに変わらないから、二人で住むのは無理(むり)だわ」
「そ、それは…、これから二人で、ゆっくり話し合って決(き)めれば――」
「なに呑気(のんき)なこと言ってるの? それじゃ遅(おそ)いわよ」
「でも、君が、僕と一緒(いっしょ)になってくれるかどうか分からなかったし――」
「あなた、人生設計(じんせいせっけい)とかちゃんとしてる? 先(さき)のことまでしっかり考えて行動(こうどう)してよ。今のあなたの収入(しゅうにゅう)で暮(く)らしていけるの? 本当(ほんとう)にあたしのこと幸せにできる?」
「そ、それは、もちろんできるさ。絶対(ぜったい)に、君のこと幸せにするから。約束(やくそく)する」
「人生に、絶対なんてことないから。――しばらくは共稼(ともかせ)ぎでやっていけると思うけど、子供(こども)ができたらどうするの? あなただけの収入で、本当に大丈夫(だいじょうぶ)なのかしら?」
「それは、もちろん…。僕が、がんばって働(はたら)くから。心配(しんぱい)しなくても――」
「じゃあ、家事(かじ)とかも分担(ぶんたん)してくれるわよね。あなた、とっても優(やさ)しいから…」
「そりゃ、まかせてよ。僕で、できることは何でも…」
<つぶやき>家庭(かてい)での主導権争(しゅどうけんあらそ)いはもう始まってます。安請(やすう)け合いをすると大変(たいへん)なことに。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。