目(め)が覚(さ)めると、俺(おれ)は猫(ねこ)の姿(すがた)になっていた。なぜこんなことに…。そこのところの記憶(きおく)がまったくない。何(なに)が原因(げんいん)だったんだ? 俺(おれ)、元(もと)に戻(もど)れるんだろうか…。
俺(おれ)は街(まち)をさまよっていた。ふと気(き)がつくと、見覚(みおぼ)えのある通(とお)りに出(で)た。ここは以前(いぜん)、よく来(き)ていた場所(ばしょ)だ。あの頃(ころ)はバンドに熱中(ねっちゅう)していて、行(い)きつけの楽器店(がっきてん)で練習(れんしゅう)に明(あ)け暮(く)れていた。確(たし)か、この先(さき)にあったはずだ。まだ、店(みせ)はあるんだろうか?
その店(みせ)は、まだあった。外(そと)から店内(てんない)を覗(のぞ)いて見(み)ると、前(まえ)とちっとも変(か)わらない。店員(てんいん)の女(おんな)の子(こ)が目(め)に入(はい)った。その店員(てんいん)の顔(かお)を見(み)て驚(おどろ)いた。ユキだ。一緒(いっしょ)にバンドをやっていた。あいつ、この店(みせ)で働(はたら)いてるんだ。バンドを解散(かいさん)したのは、三年前(さんねんまえ)か…。
そのとき、店内(てんない)から客(きゃく)が出(で)てきた。すかさず、俺(おれ)は店内(てんない)に潜(もぐ)り込(こ)んだ。そして、ユキを目指(めざ)して走(はし)った。ユキは俺(おれ)を見(み)つけて、にっこり微笑(ほほえ)んだ。こいつ、笑顔(えがお)だけは可愛(かわい)かったよなぁ。と、俺(おれ)は思(おも)い出(だ)した。
でも、ユキは俺(おれ)の首根(くびね)っこを押(お)さえ込(こ)んで抱(だ)きあげると、
「ここは、あなたの来(く)るところじゃないでしょ。どっから入(はい)ってきたのよ」
ユキは怒(おこ)っていた。前(まえ)は、あんなに優(やさ)しかったのに…。何(なん)だ、この変(か)わりようは…。俺(おれ)は、為(な)す術(すべ)もなく店(みせ)の外(そと)に放(ほう)り出(だ)された。でも、俺(おれ)はあきらめないぞ。ユキに気(き)に入(い)ってもらうんだ。そして、今夜(こんや)の食事(しょくじ)とねぐらを確保(かくほ)しなくてはならない。
<つぶやき>彼女(かのじょ)が猫好(ねこず)きだといいですね。さて、ユキちゃんのお家(うち)に潜(もぐ)り込(こ)めるかな?
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