みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0306「間違えちゃった」

2018-08-31 19:00:36 | ブログ短編

「ねえ、お母さん。何でこんなに送(おく)ってくんのよ」
 娘(むすめ)は宅配(たくはい)の段(だん)ボール箱の中を覗(のぞ)きながら、携帯電話(けいたいでんわ)の向こうの母親の返事(へんじ)を待った。母親は何のことか分からず、訊(き)き返したようだ。娘は少し言葉(ことば)を強くして、
「だから、お餅(もち)よ。こんなに食べきれるわけないでしょ。私にどうしろっていうの」
 母親はやっと理解(りかい)したらしく、早口(はやくち)で何かをまくしたてた。娘は、
「ちょっと、何それ。叔父(おじ)さんとこへ送るやつだったの。もう、何やってんのよ」
 母親は、どうしたらいいのか混乱(こんらん)しているようだ。娘は落ち着かせるように、
「ちょっと、なに慌(あわ)ててんの。……えっ? 私の荷物(にもつ)が叔父(おじ)さんのとこへ…」
 母親はさらにまくしたてているようで、ところどころ聞きとれない。
「はぁ? なに? そんな。食べきれない分は、会社で配(くば)れって…。そんなこと、できないわよ。恥(は)ずかしい。……えっ? もっと恥ずかしいこと…、なにそれ?」
 どうやら、叔父さんの所へ送ってしまった荷物に問題(もんだい)があるようだ。娘は不安(ふあん)を感じて、
「何が入ってたの? まさか、また変なの入れてないでしょうね。やめてよ。私、そんなのいらないからね。ちょっと、聞いてんの? お母さん!」
 電話は途中(とちゅう)で切られてしまった。娘は、大きなため息(いき)をついた。
<つぶやき>間違いは誰(だれ)にだってあります。でも、箱(はこ)の中には何が入っていたんでしょう。
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0305「密会現場」

2018-08-30 18:53:02 | ブログ短編

 ベッドの中で女はささやいた。「ねえ、奥(おく)さんに気づかれない?」
「大丈夫(だいじょうぶ)さ」男は女と唇(くちびる)を重ねて、「あいつはプライドばっか高くて、俺(おれ)のことなんか気にもかけやしない。それに、明日まで地方(ちほう)へ出張(しゅっちょう)ってことになってるから」
「もう、いけない人ね」女は笑(え)みを浮(う)かべると、男の胸(むね)に手を当てた。
 その時、ドアをノックする音が響(ひび)いた。「誰(だれ)だよ。無粋(ぶすい)な奴(やつ)だなぁ」
 男はベッドから出るとガウンを羽織(はお)った。また、ノックの音。今度は少し強く叩(たた)いている。そして、ドアの向こうから女性の声が聞こえてきた。「ルームサービスです」
 男は首(くび)をかしげて呟(つぶや)いた。「そんなの頼(たの)んでないぞ」
 また外(そと)から、「当ホテルの二十周年記念(きねん)で、無料(むりょう)サービスになっております」
 男はドアを開けた。外にいたのは、ホテルの従業員(じゅうぎょういん)ではないようだ。その女は、男を押(お)しのけて部屋(へや)の中へずかずかと入って来た。男は慌(あわ)てて女を追(お)いかける。女はベッドの中の女性を見つけると、ほくそ笑んだ。
 ベッドの女は毛布(もうふ)で顔を隠(かく)しながら、「奥さん…、奥さんなの?」
 男は慌てて、「違(ちが)うよ。こんな女、俺は知らない。――君は、誰なんだ?」
 乱入(らんにゅう)した女は男を思いっきり引っぱたくと、「あなた、私の顔を忘(わす)れたの。私は、あなたの妻(つま)よ。私と結婚(けっこん)するって、あなた約束(やくそく)したじゃない!」
<つぶやき>これはどういうことかな? でも、修羅場(しゅらば)になることは間違(まちが)いないようです。
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0304「片思い」

2018-08-29 18:51:48 | ブログ短編

 橋(はし)の欄干(らんかん)に手をついて川面(かわも)を見つめる男。何となく淋(さび)しげな表情(ひょうじょう)を浮(う)かべていた。そんな男のそばに、ゆっくりと近づく女。女は男に寄(よ)り添(そ)うように並(なら)び、優(やさ)しく声をかけた。
「何してるの? こんなとこで」
 男は振(ふ)り向きもせず呟(つぶや)いた。「別に…。ちょっと、な…」
 女は同じように川面を見つめながら、「彼女には会えたの?」
「いや…。今さら俺(おれ)が行ったって仕方(しかた)ないだろ。それに、彼女の夢(ゆめ)を壊(こわ)したくないし」
「強がり言っちゃって。好きだったんでしょ。さっさと告白(こくはく)すればよかったのよ」
「いいんだよ。――今頃(いまごろ)は、空の上か…。もう俺には何もできないんだなぁ」
「もう、あんたなんか、さっさと振られちゃえばよかったのよ。彼女、友達の一人としか思ってなかったんだから」
「分かってるよ、そんなこと。でもな…。何かなぁ――」
「まったく意気地(いくじ)がないんだから。そんなんだからね……。もう、いいわ」
「何だよ。なに怒(おこ)ってんだ? お前には関係(かんけい)ないだろ」
「別に怒ってなんか。もう、彼女のことなんか忘(わす)れてさ、次の恋人(こいびと)でも探したら? 案外(あんがい)、すぐ近くにいるかもしれないじゃない。あんたのこと…、思ってる人が…」
<つぶやき>好きなのに好きと言えない。そんな思いをしている人は、沢山(たくさん)いるのかも…。
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0303「割り切れない女」

2018-08-28 18:45:33 | ブログ短編

 会社(かいしゃ)の仲間(なかま)との飲み会。これは職場(しょくば)の人間関係(にんげんかんけい)を良くするのには必要(ひつよう)なことよ。それに、私の得意技(とくいわざ)を見せることができるし。私、こう見えて暗算(あんざん)が得意なんです。会計(かいけい)の時、一人分の飲み代をパッとはじき出してしまうの。みんなから凄(すご)いねって、よく言われます。
 今日も飲み会で楽しく過(す)ごしていると、私の携帯(けいたい)の着(ちゃく)メロが鳴(な)り出した。あーぁ、また彼からだ。今度(こんど)は何よ。私は席(せき)を外(はず)して電話(でんわ)に出た。彼は甘(あま)えるような声で、
「なあ、今から行ってもいいか? 会いたいよ~ぉ」
 なに言ってるのよ。私はダメって言ってやった。彼がこういうしゃべり方をするときは、何かお願(ねが)いがあるときだけなんだから。私は、すでに彼の行動(こうどう)は見切(みき)っていた。
「いいじゃないかぁ。俺(おれ)のこと、嫌(きら)いになったのか? 俺は、お前のことこんなに――」
 もう、うざい。私は、どうして恋愛(れんあい)に関(かん)して割(わり)り切れないんだろう。こんなヤツ、早いとこ切り捨(す)てて、もっと良い男と――。
「遅(おそ)くなってもいいから。俺、表(おもて)で待ってるから。なあ、いいだろう? 頼(たの)むよ、なっ」
 もう、何なのよ。私はこういう時、どうしたらいいか迷(まよ)ってしまう。彼はそれを見透(みす)かしたように、「じゃあ、今から行くから。愛してるよ~っ!」
 彼は、私の返事(へんじ)も聞(き)かずに電話を切った。あーっ、もう。こうなったら、今日こそあいつと別れてやる。絶対(ぜったい)、絶対、絶対…。私は席に戻(もど)って、ビールをグッと飲み干(ほ)した。
<つぶやき>こういう人って、得(え)てしてズルズルといっちゃうんですよね。切っちゃえ!
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0302「食べてる君が好き」

2018-08-27 18:42:12 | ブログ短編

 彼と食事(しょくじ)をすると、ほんと食べ過(す)ぎちゃうのよね。だって、彼ったら、食べてる私を見てるのが、何よりも好きなんだって。私が、美味(おい)しそうに何でも食べるから――。
 でも、それってかなりまずいと思わない。この間、彼ったらこう言ったのよ。
「前は、可愛(かわい)かったのになぁ」て、ぼそっと。
 ――何よそれ。私に聞こえないように言ったつもりでも、私にはちゃんと聞こえてますから。もう信じられない。あなたが食べさせてるんじゃない。
 でも、私よりたくさん食べてるはずの彼、全然(ぜんぜん)体型(たいけい)が変わらないのは、なぜ? 私だけ体重(たいじゅう)増(ふ)えちゃって。何が違(ちが)うって言うのよ。
 私もいけないのよね。嬉(うれ)しそうにしてる彼を見たくって、つい……。私、ダイエットをする決心(けっしん)をしたわ。もう食べ過ぎない、絶対(ぜったい)に。
 彼と食事するときも、ちゃんと量(りょう)を減(へ)らして――。そしたら彼、言うのよ。
「今日は食べないの? 僕は、食べてる君が好きなんだよ。何か、残念(ざんねん)だなぁ」
 はぁ? はあ!! 何なのよ。私の気も知らないで…。よくそんなことが言えるわね。これ以上(いじょう)私を太(ふと)らせて、責任(せきにん)とってくれるんでしょうね。
 私は、彼の顔を食い入るように見つめて、ばくばくと食べてやった。
<つぶやき>会話(かいわ)を楽しみましょう。食事は量より質(しつ)です。食べ過ぎには注意(ちゅうい)しないと。
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