みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0076「もうひとりの自分2」

2017-09-29 19:00:59 | ブログ短編

 さおりはあの日からずっと、もうひとりの自分に付(つ)きまとわれていた。見られているだけでも落ち着かないのに、休む間(ま)もなくしゃべりかけてくるのだ。でも、さおりはその対処法(たいしょほう)を見つけた。自分の姿(すがた)が鏡(かがみ)やガラスに映(うつ)っているとき、彼女をそこに閉(と)じ込(こ)めることができるのだ。おしゃべりも止(や)めさせることができた。
 彼女の姿は他の人には見えないようだ。だから、人前(ひとまえ)では彼女を無視(むし)することにした。だって、一人でぶつぶつしゃべっていたら、変(へん)な人に思われてしまうから。会社にいるときは要注意(ようちゅうい)。もちろん、机(つくえ)の上には鏡を置いて、邪魔(じゃま)されないようにしていた。
 ある日、もうひとりの自分がある提案(ていあん)をした。
「ねえ。あなた、営業(えいぎょう)の神谷(かみや)さんのこと好きなんでしょ」
「何よ、急に」さおりは動揺(どうよう)をかくせなかった。「そんなことないわよ」
「分かってるわよ。だって、私はあなたなんだもん」
「あなたには関係(かんけい)ないでしょ」さおりはそう言うと手鏡(てかがみ)を手に取った。
「もう帰ってよ。あなたのいた場所(ばしょ)に。私の前から消(き)えてちょうだい」
「いやよ」そう言うと、もうひとりの自分は楽(たの)しそうに微笑(ほほえ)んだ。「わたしが、神谷さんと付き合えるようにしてあげる。簡単(かんたん)なことよ。ちょっと足を踏(ふ)み出せばいいんだから」
<つぶやき>この話、まだ続くのでしょうか? さおりの運命(うんめい)は、どうなっちゃうの…。
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0075「もうひとりの自分1」

2017-09-26 19:05:58 | ブログ短編

 さおりは初めて行った町で、古風(こふう)なアンティークの店を見つけた。何かに引きよせられるように店内(てんない)に入ってみると、きれいに装飾(そうしょく)された小さな手鏡(てかがみ)が目に止まった。
「わぁ、すてき…」さおりは思わずつぶやいた。
 それを見ていた店主(てんしゅ)の老婦人(ろうふじん)は優(やさ)しく微笑(ほほえ)み、「どうぞ。手にとってよく見て」
 さおりは手鏡を手に取ると、恐(おそ)る恐る値段(ねだん)を聞いてみた。年代物(ねんだいもの)の鏡のようで、高貴(こうき)な人が使っていたに違(ちが)いないと思ったからだ。さおりは今まで物欲(ぶつよく)というものを感じたことはなかった。でも、これだけはどうしても手に入れたいという衝動(しょうどう)を抑(おさ)えきれなかった。
「今月の給料日(きゅうりょうび)までは節約生活(せつやくせいかつ)ね」さおりは家に帰るとつぶやいた。でも、後悔(こうかい)はなかった。大切(たいせつ)に持って帰ってきた手鏡を箱(はこ)から出し、自分の顔を鏡に映(うつ)してみる。不思議(ふしぎ)と他の鏡よりも自分の顔がきれいに見えた。何だか嬉(うれ)しくなって笑(え)みがこぼれた。
 そのとき、突然(とつぜん)、鏡から閃光(せんこう)が走った。さおりはまぶしくて目を塞(ふさ)いだ。一瞬(いっしゅん)のことで、何がどうしたのか…。目を開けてみると、目の前に女が座(すわ)っていた。さおりは飛(と)び上がった。あまりのことに言葉(ことば)も出ない。それに、その女は双子(ふたご)のように自分とそっくりなのだ。
 その女は立ちあがり背伸(せの)びをすると、嬉しそうにつぶやいた。「やっぱり、外(そと)はいいわ」
「あなた、だれ?」さおりは何とか言葉を絞(しぼ)りだした。女はさおりの手を取ると、
「わたしは、あなたよ。あなたは、わたし」そう言って女は微笑んだ。
 さおりは混乱(こんらん)していた。何が起(お)きているのか分からず、不安(ふあん)な気持(きも)ちで一杯(いっぱい)になった。
<つぶやき>さおりはどうなちゃうの? この話の続きは…。次の機会(きかい)に。乞(こ)うご期待(きたい)?
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0074「大切な場所」

2017-09-23 20:01:53 | ブログ短編

「何でそうなるのよ」祐実(ゆみ)は怒(おこ)っていた。「勝手(かって)に決(き)めないでよ!」
「だって、祐実には仕事(しごと)があるだろ。ついて来いなんて言えないよ」
「そうよ。やっと今の仕事、面白(おもしろ)くなってきたのよ。これから…」
「だから、別(わか)れよう。その方がいいんだ。僕ひとりで田舎(いなか)に帰るから」
「もう、そうやっていつもひとりで決めちゃって。そういうところ、直(なお)しなさいよ」
「仕方(しかた)ないだろ。家の仕事、手伝(てつだ)わないといけなくなったんだから」
「だったら、何でついて来いって言わないのよ」
「そんなこと言ったって…。来てくれるのかよ」
「何で私が、田舎になんか…。私、虫(むし)とか大嫌(だいきら)いなんだから、行くわけないでしょ」
「もういいよ。別れた方がいいんだ」
「何で…、そんなに簡単(かんたん)にあきらめるのよ。やっぱり私のこと好きじゃなかったんだ」
「好きだよ。好きだから…。祐実には幸(しあわ)せになってほしいんだ!」
「じゃあ、ちゃんと言いなさいよ。私…、あなたと一緒(いっしょ)じゃないと幸せじゃないの。あなたのそばが、いちばん居心地(いごこち)がいいの。何があっても離(はな)れないから…」
「祐実…! 僕と…、僕について来い!」
「いいわよ。そのかわり、虫とか出たときは、すぐに助けに来てよ。約束(やくそく)だからね」
<つぶやき>何よりも大切(たいせつ)なもの。あなたにはありますか? 私は、御馳走(ごちそう)があれば…。
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0073「二人だけのサイン」

2017-09-20 19:16:16 | ブログ短編

 十年ぶりの高校(こうこう)の同窓会(どうそうかい)。そんなに集(あつ)まらないと思っていたのに…。僕(ぼく)はぐるりと辺(あた)りを見まわした。そのとき人だかりの中から、
「おい、田崎(たざき)!」嬉(うれ)しそうに男が駆(か)け寄(よ)ってきて、
「久(ひさ)し振(ぶ)りだなぁ。元気(げんき)だったか!」
「兼田(かねだ)か?」それは親友(しんゆう)だった男。卒業(そつぎょう)してからは会う機会(きかい)もなくなっていた。彼とはなぜか気があって、遊(あそ)び仲間(なかま)のうちで何でも話せる気の良い奴(やつ)だった。
「おまえ知ってるか?」兼田は僕の耳もとでつぶやいた。「マドンナ、結婚(けっこん)したみたいだぞ」
 マドンナ。クラスの中で飛(と)び抜(ぬ)けて可愛(かわい)い娘(こ)で、僕たちは密(ひそ)かにそう呼(よ)んでいた。
「あの頃(ころ)、おまえ好きだったもんな」兼田はニヤニヤして、「結局(けっきょく)、告白(こくはく)できなくて…」
「よせよ、もう昔(むかし)の話しだろ」僕は心がざわついた。
 実(じつ)は、マドンナと短い間だったけど付き合っていた。別に告白をしたわけではないのだが。ちょっとしたきっかけで話をし始めて、二人にしか分からないサインを交(か)わしたり。会うときも誰にも知られないように気を配(くば)り、わくわくする時間を共有(きょうゆう)していた。
 卒業の時、僕はマドンナと約束(やくそく)をした。今度(こんど)会ったとき、お互(たが)いにまだ好きでいたら、サインを交わそうねって。それから僕らは別々(べつべつ)の道(みち)へ進み、二人の絆(きずな)は途切(とぎ)れたまま。
 僕は会場(かいじょう)で、いつしかマドンナを捜(さが)していた。彼女は女子たちの輪(わ)の中にいた。彼女と目があったとき、僕はドキッとした。彼女は二人だけのサインを送(おく)っていたのだ。
<つぶやき>青春(せいしゅん)の淡(あわ)い恋(こい)。懐(なつ)かしくもあり、どこか危険(きけん)な香(かお)りもはらんでいそうです。
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0072「幸せの基準」

2017-09-17 19:22:09 | ブログ短編

 加代子(かよこ)は行き詰(づ)まっていた。人生(じんせい)の選択(せんたく)にことごとく失敗(しっぱい)して、生きる気力(きりょく)さえなくしていた。人づてによく当(あ)たる占(うらな)い師(し)のことを知って、彼女は訪(たず)ねてみた。
 その占い師は八十路(やそじ)を越(こ)えた老人(ろうじん)だった。温和(おんわ)な顔立(かおだ)ちの老人は、嫌(いや)な顔をするでもなく彼女を招(まね)き入れて、「私は、占い師じゃないんですよ。ただ、話をするだけです」
「そんな…」加代子は落胆(らくたん)の顔をして、「よく当たるって聞いてきたんですよ」
「こんな年寄(としよ)りですが、よろしければ、お話しをうかがいますが」老人は優(やさ)しく微笑(ほほえ)んだ。
 この老人からは不思議(ふしぎ)なオーラが出ていた。加代子は身(み)も心も軽(かる)くなるような、何か暖(あたた)かなものに包(つつ)まれているような気がして、心に溜(た)まっていたものを吐(は)き出した。
 老人は彼女の話を聞き終わると、「大変(たいへん)でしたね。よく、がんばりました。でも、あなたの選択は本当(ほんとう)に間違(まちが)っていたんでしょうか。あなたはまだお若(わか)い。そんなことを考えるのは、ずっと先でもいいんじゃないんですか。ご主人のことだってそうです。二人三脚(ににんさんきゃく)ですよ。お互(たが)いに助(たす)け合い、補(おぎな)い合って愛情(あいじょう)を育(そだ)てていくんです」
「でも、あの人は私のことなんか…。どうでもいいんです」
「あなたはどうですか? もう、愛せなくなってしまったのですか?」
「私は…。分からない。どうしたいのか分からないんです」
「今の気持(きも)ちをご主人(しゅじん)に話してみたらどうですか。何か変わるかもしれませんよ」
<つぶやき>人生は人それぞれ。失敗もありますよ。でも、人は学(まな)ぶことができるはず。
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