みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0451「素敵な体臭」

2019-01-31 19:08:17 | ブログ短編

 とあるお見合(みあ)いパーティーに誘(さそ)われた好恵(よしえ)。会場(かいじょう)に入って驚(おどろ)いた。こんなに大勢(おおぜい)の人が参加(さんか)しているとは思ってもいなかった。好恵は圧倒(あっとう)されるばかりだ。ふと気づくと、好恵を誘った貴子(たかこ)がいつの間にか消えていた。好恵は心細(こころぼそ)くなって貴子を探(さが)し回った。
 しばらくして、好恵は妙(みょう)な行動(こうどう)をしている貴子を見つけた。彼女は男性に近づいては、鼻(はな)を近づけてクンクンと臭(にお)いを嗅(か)いでいるようだ。好恵は貴子の腕(うで)をつかむと、会場の隅(すみ)の方へ引っぱってきて言った。
「何やってるのよ。そんな恥(は)ずかしいことしないで。みんな変な目で見てるじゃない」
「何よ、邪魔(じゃま)しないで。あたしは科学的(かがくてき)な見地(けんち)で最良(さいりょう)の男を見つけようとしてるだけよ」
「何が最良よ。どう見たって、おかしな女にしか見えないわ」
「あなた、本当(ほんと)に分かってないわね。異性(いせい)の臭いってとっても大切(たいせつ)なのよ。遺伝的(いでんてき)に見ても証明(しょうめい)されてるわ。あたしは人間の奥底(おくそこ)に潜(ひそ)む本能(ほんのう)をとぎすましてるの」
 貴子は理系(りけい)女子の典型(てんけい)である。妙(みょう)に理屈(りくつ)っぽいところはちっとも変わらない。
「あなたも試(ため)してみたら」貴子は好恵の耳元(みみもと)でささやいた。「うっとりするような体臭(たいしゅう)の男を見つけたら、それが遺伝的に最も遠(とお)い人よ。元気(げんき)な子供を授(さず)かることができるはず」
「あのね、遺伝的に遠くても幸せになれるとは限(かぎ)らないでしょ。ちゃんと人を見なさいよ」
<つぶやき>幸せって何でしょう。どうしたら幸せになれるのか…。これは難問(なんもん)かもね。
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0450「しずく5~転校生」

2019-01-30 18:37:44 | ブログ連載~しずく

 朝のホームルームの時間。担任(たんにん)の先生と一緒(いっしょ)に女の子が入って来た。転校生(てんこうせい)?
 教室(きょうしつ)がざわついた。特(とく)に男子。その女の子がけっこう可愛(かわい)かったので、かわい~ィとか、オレ惚(ほ)れちゃいそう、などなど。全(まった)く男子の頭の中はどうなってるのよ。
 しずくが呆(あき)れて見ていると、先生が声を上げた。「こら、静かにしろ!」
 朝の挨拶(あいさつ)をすませると、先生は黒板(こくばん)に転校生の名前を大きく書いた。神崎(かんざき)つくね。彼女はみんなの前に立つと、緊張(きんちょう)した面持(おもも)ちで頭を下げた。確(たし)かに可愛い。女子から見ても異論(いろん)が出ることはないだろう。この学校でも五本の指(ゆび)には入るはずだ。
「席(せき)は……月島(つきしま)の隣(となり)が空(あ)いてるな。じゃあ、そこへ座(すわ)りなさい」
 先生が彼女を促(うなが)した。しずくの席の隣。ずっと休んでいる子の席だ。しずくもどんな子なのか一度も顔を合わせたことがない。つくねは席のところまで来ると、しずくにちょこんと頭を下げた。何か、感じのいい娘(こ)だな、としずくは思った。
 授業中ずっと、しずくは隣のつくねのことが気になってしまった。物静(ものしず)かで、どこか謎(なぞ)めいたところがある。それに…、どこかで会ったことがあるような。しずくは不思議(ふしぎ)な感覚(かんかく)を味(あじ)わっていた。放課後(ほうかご)、しずくのところに涼(りょう)がやって来て、
「ねえ、これから初音(はつね)と三人で買い物に行かない? 私、買いたい物があるのよ」
 その時、ぽつりとつくねが言った。「今日はやめた方がいいよ。良くないことがあるから」
<つぶやき>つくねってどんな娘なんでしょう。ちょっと気になりません? この先は…。
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0449「振られる」

2019-01-29 18:42:44 | ブログ短編

「ねえ、隆夫(たかお)ってのりちゃんと別れたんだって?」
 香里(かおり)のこの言葉(ことば)に、隆夫はキョトンとした顔を向けた。香里は、
「だって、昨日(きのう)、のりに合ったとき言ってたわよ。…えっ? 違(ちが)うの?」
 隆夫は身(み)に覚(おぼ)えのないことで、「なに言ってるの? 別れてなんか…。だって、まえ会ったときも……。別れる理由(りゆう)なんか…。そんな話、全然(ぜんぜん)……」
 隆夫は心配(しんぱい)になってのりちゃんに電話をかけた。だが、着信拒否(きょひ)されているみたいでつながらない。隆夫は香里に詰(つ)め寄るようにして訊(き)いた。
「なあ、昨日、のりちゃん、他に何か言ってなかったか? 今、どこにいるんだよ!」
「そんなこと知らないわよ。昨日、たまたま駅(えき)で会って…」
「何でだよ。先月の彼女の誕生日(たんじょうび)のとき奮発(ふんぱつ)してプレゼント買って、俺(おれ)、プロポーズもしたんだぞ。俺たち、付き合ってから一度も喧嘩(けんか)してないし……。何でこうなるんだよ」
「あら…、そうなんだ。二人はそんなことになってたんだね」
 香里は慰(なぐさ)めるように、「のりのこと悪(わる)く言いたくないけど。彼女、他にも付き合ってる男(ひと)いたみたいよ。――もうさ、あんな女のことなんか忘(わす)れちゃいなよ」
「忘れられないよ。忘れられるわけないだろ。俺、ほんとに好きだったんだから…」
「もう、のりは戻(もど)って来ないよ。よし、今日は飲もう。私が愚痴(ぐち)聞いてあげるから」
<つぶやき>別れる時はちゃんと振(ふ)ってあげましょう。そうしないと次の恋に進めない。
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0448「丸山さん」

2019-01-28 18:26:01 | ブログ短編

 会社(かいしゃ)の昼休(ひるやす)み。女子(じょし)たちが集まって思い思いの昼食(ちゅうしょく)をとっていた。たわいのない話をしているうちに、同僚(どうりょう)の丸山(まるやま)さんの話になった。
「ねえ、丸山さんって、すっごく変(へん)な人じゃない? 仕事(しごと)は真面目(まじめ)なんだけど…」
「そうそう。しゃべり方は穏(おだ)やかで、いい人そうなんだけど。何かずれてるよね」
「ほら、昨日(きのう)の飲(の)み会でも、部長(ぶちょう)がオヤジギャグ連発(れんぱつ)したとき」
「ずれてたねぇ。他のみんなより反応(はんのう)おそっ。て言うか、ギャグが分かってないんだよ」
「私、この前、丸山さんがコピー機と話してること見ちゃいました」
「ウソ。何よそれ。どういうこと?」
「私もずっと見てたわけじゃないんですけど、何か、ご苦労(くろう)さんとか、頑張(がんば)れっとか…」
 さっきからずっと黙(だま)って聞いていた女子が、おもむろに口を開いた。
「あのさ、あたし、見ちゃったんだよね。近くの公園(こうえん)のベンチで、丸山さん、お弁当(べんとう)食べてて。別に覗(のぞ)いたわけじゃないのよ。見えちゃったの。その、お弁当がね、キャラ弁っていうか、男の人が食べるようなお弁当じゃなかったの」
「丸山さんってさ、結婚(けっこん)してたっけ? まだ、独身(どくしん)のはずよね」
「だったら、お弁当作ってくれる恋人(こいびと)がいるんじゃない? きっとそうよ」
「えーっ、あの丸山さんよ。あんな人好きになる物好(ものず)き、いるのかな?」
<つぶやき>おいおい、それは言いすぎですよ。でも、丸山さんってどんな人なんでしょ。
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0447「エキストラ」

2019-01-27 19:05:09 | ブログ短編

 彼はこの道50年、エキストラの頂点(ちょうてん)を極(きわ)めた男。今までに出演(しゅつえん)した、いや、映像(えいぞう)に映(うつ)り込んだ作品(さくひん)は数知(かずし)れず。もはや、彼の存在(そんざい)は伝説(でんせつ)になろうとしていた。
「すいません、監督(かんとく)。エキストラの男性が、どっかへ消(き)えちゃいました」
 助監督(じょかんとく)が駆(か)け回って捜(さが)したようで、汗(あせ)まみれになって息(いき)も切れ切れに報告(ほうこく)した。
 監督は穏(おだ)やかな口調(くちょう)で言った。「彼なら、もうスタンバイしてるよ。どこ見てるんだ」
 監督が指差(ゆびさ)す方に、確(たし)かに白髪頭(しらがあたま)の男性が座っていた。そのたたずまいは、完全(かんぜん)に景色(けしき)と同化(どうか)していて、エキストラの役目(やくめ)を完璧(かんぺき)に果(は)たしていた。助監督は呟(つぶや)いた。
「いつの間に…。全然(ぜんぜん)気づかなかったです」
「よく見ておけ。これが彼にとって最後(さいご)の作品になる」
 監督は悲(かな)しげな表情(ひょうじょう)で言った。「思い起(お)こせば、私が最初(さいしょ)の映画を撮(と)ったときも…」
 助監督は驚(おどろ)いた声で、「えっ、そんなに前からエキストラを」
「花束(はなたば)は用意(ようい)してあるな。これが最後のカットだ」
「えっ、あの人に花束ですか? でも、エキストラですよ」
「それがどうした。彼は立派(りっぱ)な映画人だ。彼に助けられた監督がどれだけいるか。彼の最後の作品に関われたことを、私は誇(ほこ)りに思ってる。彼のエキストラ魂(だましい)に、最後のはなむけを贈(おく)るんだ」
<つぶやき>何事(なにごと)もその道を究(きわ)めるのは大変(たいへん)なことです。日々、精進(しょうじん)を怠(おこた)らないように。
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