みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1412「無限の夢」

2023-08-30 17:36:55 | ブログ短編

 眠(ねむ)っているときに見る夢(ゆめ)。それはまさに、一番身近(みぢか)なバーチャル世界(せかい)なのかもしれない。
 ここに、夢に取り憑(つ)かれた男がいた。彼は毎朝、どっと疲(つか)れて目を覚(さ)ます。いろんな夢を見るようになってしまったからだ。でも、どんな夢を見ていたのかどうしても思い出せない。夢を見ていたのは確(たし)かなのだが、目覚(めざ)めるとすぐに忘(わす)れてしまうのだ。思い出そうと頑張(がんば)っても、断片的(だんぺんてき)なぼやけた情景(じょうけい)しか出てこない。
 ある日のこと。目覚めると彼はひとつだけ、夢の中のことをはっきり覚えていた。それは、夢の中に自分(じぶん)がいて、これは夢だと気づいてしまったことだ。その途端(とたん)に、今まで見た夢がまるで逆再生(ぎゃくさいせい)のように巻戻(まきもど)っていく。すべての夢の中の自分が、「これは夢だ!」と叫(さけ)んでいた。
 彼は目覚めた。そこは自分のベッドの中…。回りを見回しても、いつもと変わらない感じ。彼はゆっくりと起き上がると、ホッと息(いき)をついた。全身(ぜんしん)が、まるで全力疾走(ぜんりょくしっそう)した後(あと)のように疲れ果(は)てていた。彼は、ふと呟(つぶや)いた。
「また…夢を見たのか? ちゃんと寝(ね)てるはずなのに、どうして疲れがとれないんだよ」
 彼は両手を頬(ほお)にあてようとして愕然(がくぜん)とした。手が、汚(よご)れているのだ。
「これは…、土(つち)…なのか? どうして…?」
 彼は布団(ふとん)をめくってみた。するとそこには、大きな魚(さかな)の鱗(うろこ)のようなものがいくつもあった。それに混(ま)じって、動物(どうぶつ)の毛(け)のようなものまで――。
<つぶやき>どうやら彼は、混沌(こんとん)の世界に迷(まよ)い込だようです。どんな夢を見ていたのか?
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1411「父娘」

2023-08-26 18:01:46 | ブログ短編

 父親(ちちおや)が家に帰ると、娘(むすめ)の姿(すがた)はなかった。まだ帰って来ていないのか…。父親は心配(しんぱい)になってきた。こんな時間(じかん)までどこへ行っているのか?
 十時を過(す)ぎた頃(ころ)、娘が帰ってきた。父親はどこへ行っていたのかと訊(き)いてみた。
 すると娘は、父親の顔を見るでもなく、「どこでもいいでしょ。いちいち訊かないでよ」
 父親は、「もう十時だぞ」
「まだ、十時よ」と、言い返(かえ)してくる。父親は唖然(あぜん)とした。これは、もしかして…娘の反抗期(はんこうき)なのか? 父親はどうしたらいいのか分からなくなって、ついつい言ってしまうのだ。
「父さんは、お前をそんな子供(こども)に育(そだ)てた覚(おぼ)えはない」
 娘は平然(へいぜん)と言ってのける。「あたしは、父さんに育てられたわけじゃないわ」
 娘は、そのまま自分(じぶん)の部屋(へや)へ行ってしまった。父親は頭をかかえてしまう。妻(つま)と死別(しべつ)して三年。自分なりに懸命(けんめい)にやってきた。それなのに…。彼は、妻の写真(しゃしん)を見つめて、
「俺(おれ)は…どうすればいいんだ? なぁ、教(おし)えてくれよ。何がいけなかったんだ?」
 部屋着(へやぎ)に着替(きが)えた娘が戻(もど)ってくると、しょげ返っている父親を見て言った。
「もう、やめてよね。あたしは、子供じゃないんだから…。もし、あたしが結婚(けっこん)することになったらどうするのよ。いい加減(かげん)、子離(こばな)れしてよね」
「な、なんだと? おまえ…、結婚するのか? そんな相手(あいて)がいるなんて聞いてないぞ!」
<つぶやき>これは大変(たいへん)ね。結婚式で号泣(ごうきゅう)ってこともあるかも? 今のうちに対策(たいさく)を…。
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1410「しずく197~命がけ」

2023-08-21 17:39:52 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)はエリスと対峙(たいじ)した。涼は貴志(たかし)から受け取った武器(ぶき)のボタンを押(お)す。すると、青白い光が飛(と)び出した。でも、それはすぐに折(お)れそうな小枝(こえだ)のようだった。
 貴志が叫(さけ)んだ。「能力(ちから)を刀(かたな)に集中(しゅうちゅう)させて!」
 涼は肯(うなず)くと、能力を刀に向けた。すると光が強く、太(ふと)くなっていく。涼は刀を身構(みがま)えた。エリスは表情(ひょうじょう)ひとつ変(か)えずに、不敵(ふてき)な笑(え)みさえ浮(う)かべて言った。
「そんなんでいくら頑張(がんば)っても、私には勝(か)てないわよ。それでもいいの?」
「そんなこと…やってみなくちゃ分からないわよ」
 涼はエリスに向かって行った。エリスは涼の刀をかわしながら間合(まあ)いを詰(つ)めていく。そして、涼に一撃(いちげき)をくらわした。涼の身体(からだ)が宙(ちゅう)を飛び地面(じめん)に叩(たた)きつけられた。だが、涼はすぐに起(お)き上がると、また刀を構(かま)えた。涼の顔は、痛(いた)みをこらえているようだ。
 エリスはナイフを出すと、「お遊(あそ)びはここまでよ。どうする? もう次(つぎ)はないわよ」
 涼は考(かんが)えた。まともに戦(たたか)えばやられてしまう。こうなったら一か八(ばち)かよ。涼は片手(かたて)をかざした。すると、周(まわ)りにあるものが動き出した。そして宙に舞(ま)い上がった。
 エリスは息(いき)を吐(は)くと、「最後(さいご)のあがきね。そんなんで私を止(と)められると思ってるの?」
 浮(う)かび上がったものがエリスめがけて飛んで行く。同時(どうじ)に、涼も駆(か)け出した。
<つぶやき>涼は勝つことができるのか? ここは負(ま)けるわけにはいかないよね。頑張れ!
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1409「あなたの価値」

2023-08-17 17:44:31 | ブログ短編

 彼は仕事中(しごとちゅう)に突然(とつぜん)、睡魔(すいま)に襲(おそ)われた。彼が目覚(めざ)めると、そこはどこか見覚(みおぼ)えのある部屋(へや)…。彼は思い出した。ここは、子供(こども)の頃(ころ)の自分(じぶん)の部屋だ。姉(あね)と二人で使っていた。しかし、そんなはずはない。だって、この家はとっくに取り壊(こわ)されている。
 彼は子供部屋を出るとリビングへ…。確(たし)かに、ここは子供のとき家族(かぞく)と住(す)んでいた家だ。家には誰(だれ)もいないようだ。彼は外(そと)へ出ることにした。しかし玄関(げんかん)を開(あ)けると、また子供部屋に戻(もど)ってしまった。外へは出られないということか…。
 彼は部屋の窓(まど)から外を見た。昔(むかし)、見ていた住宅(じゅうたく)が並(なら)んでいる。何だか懐(なつ)かしくなってくる。いけない。こんな感傷(かんしょう)に浸(ひた)っている場合(ばあい)では…。彼は思い出したように呟(つぶや)いた。
「そうか、これは夢(ゆめ)なんだ。俺(おれ)は仕事中に眠(ねむ)ってしまったんだ。早く起(お)きないと…。でも、どうやったら目を覚(さ)ますことができるんだよ?」
 その時、彼のスマホが鳴(な)り出した。驚(おどろ)いてスマホを見ると、非通知(ひつうち)の着信(ちゃくしん)。彼は電話(でんわ)に出てみる。すると、冷(つめ)たい無表情(むひょうじょう)な声(こえ)が返(かえ)ってきた。
「あなたを誘拐(ゆうかい)しました。あなたの家族に身代金(みのしろきん)を要求(ようきゅう)したのですが、あなたのために払(はら)う金(かね)はないと断(ことわ)られてしまいました。残念(ざんねん)です。あなたに何の価値(かち)もないなんて…」
「待(ま)ってくれ。俺の妻(つま)が…そんなこと言うはずがない。これは、何かの間違(まちが)いだ!」
「では、あなたが身代金の額(がく)を決(き)めて下さい。あなたなら、いくらつけますか?」
 そこで彼は目を覚ました。ぐっしょりとイヤな汗(あせ)をかいていた。
<つぶやき>もし、奥(おく)さんがこんなことを思っていたら…。これは、どうしたらいいんだ!
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1408「審判の日」

2023-08-13 17:46:28 | ブログ短編

 ある日のこと。テレビのすべてのチャンネルで不思議(ふしぎ)な放送(ほうそう)が流(なが)れ出した。画面(がめん)に温和(おんわ)な感じの中年紳士(ちゅうねんしんし)が現れると、何とも心地(ここち)よく染(し)み渡(わた)る声でしゃべり始めた。
「すべてのみなさまにお知らせします。神(かみ)は、最後(さいご)の審判(しんぱん)の日を三日後とお決(き)めになりました。みなさまにおかれましては、それに向けての準備(じゅんび)を始めて下さい。時間はあとわずかです。では、また三日後にお目にかかりましょう」
 人々はいろんな場所(ばしょ)に集(あつ)まると、このことについて議論(ぎろん)が巻(ま)き起こった。ある人は、これはフェイクでテレビ局(きょく)の陰謀(いんぼう)だと叫(わめ)き散(ち)らし…。またある人は、ウチは仏教(ぶっきょう)だから関係(かんけい)ないわと無関心(むかんしん)をよそおった。中には、「審判ってなに?」って言ってる人も…。
 騒(さわ)ぎが大きくなったので警察(けいさつ)も重(おも)い腰(こし)を上げた。だが、いくら捜査(そうさ)しても電波(でんぱ)ジャックをされた痕跡(こんせき)が見つからない。驚(おどろ)くことに、世界中で同時(どうじ)放送されたことが分かった。これはもう警察の手に負(お)えない状態(じょうたい)だ。それでも人々は犯人捜(はんにんさが)しを止(や)めなかった。あの紳士とよく似(に)た人がいるという通報(つうほう)が相次(あいつ)いだ。
 そして、その日が訪(おとづ)れた。最後の審判の日だ。世界中の人たちが眠(ねむ)れぬ夜を過(す)ごした。朝になると、人々はテレビの前に神妙(しんみょう)な顔で座(すわ)り込んだ。そして、あの放送が始まった。
「おはようございます。これから審判を始めさせていただきます。なにも怖(こわ)がることはありません。心穏(こころおだ)やかにお待ち下さい」
<つぶやき>こんなことが起きたら…。あなたは、この三日間をどう過ごすのでしょうか?
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