みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1284「告白の行方」

2022-07-31 17:24:08 | ブログ短編

 彩花(あやか)は小百合(さゆり)に詰(つ)め寄って言った。「信じられない。何で、あなたが…」
 小百合は、「ごめんねぇ。でも、浩介(こうすけ)から告白(こくはく)してきたんだよ。もう…仕方(しかた)ないじゃない」
 彩花は「浩介のこと好きになった」と、小百合に打ち明けていた。それなのに、
「何で、付き合っちゃうのよ。私が好きだって知ってるくせに…」
「だって、浩介があたしを選(えら)んだんだよ。あたしって、自分(じぶん)から断(ことわ)るの苦手(にがて)じゃない。好きだって言われちゃったら、付き合うしかないでしょ」
 彩花は、小百合を恨(うら)みがましく見つめていた。小百合は、
「もう、そんなに怒(おこ)らないでよ。あたしは、悪(わる)くないでしょ。あたしから付き合おうって言ったわけじゃないんだから…」
「それは…そうなんだけど…。もう……」彩花は、どこにこの気持(きもち)ちをぶつければいいのか分からなくなっていた。もやもやとした感情(かんじょう)がどんどん膨(ふく)らんでいく。
 そんな彼女を見て小百合が言った。「じゃあ、彩花も告白すればいいじゃない」
 小百合の突然(とつぜん)の提案(ていあん)に彩花は戸惑(とまど)った。今まで、告白する勇気(ゆうき)がなくてうじうじしていたから…。だが、彩花は勢(いきお)いに任(まか)せて、「告白するわよ。私、あなたには負(ま)けないわ」
 小百合は余裕(よゆう)の顔で答(こた)えた。「それは、どうかしら…。恋(こい)って、好きにさせた方が強(つよ)いと思うんだけど。もう浩介は、あたしのことしか見えないと思うわ」
<つぶやき>小百合は計略(けいりゃく)をめぐらして彼を奪(うば)い取ったのかな? この勝負(しょうぶ)の行方(ゆくえ)は…。
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1283「危険信号」

2022-07-29 17:39:37 | ブログ短編

 彼が気がつくと、カヌーで川下(かわくだ)りをしていた。なぜ自分(じぶん)がこんなことをしているのか…。彼にはまったく分からない。川の流(なが)れは緩(ゆる)やかなので、彼は呆然(ぼうぜん)と流れに身(み)を任(まか)せた。
 川下(かわしも)の方から音が聞こえてきた。これは何の音なのか…。彼は前方(ぜんぽう)に目をこらした。音はどんどん大きくなっていく。これは…水の音だ。彼は思わず叫(さけ)んだ。「滝(たき)だ!」
 滝が目の前に迫(せま)っていた。彼はオールを漕(こ)いで川上(かわかみ)へカヌーを向けた。いつの間にか、川の流れが速(はや)くなっている。彼は、必死(ひっし)になってオールを動かした。彼は考えた。どうしたら助(たす)かることができるのか――。カヌーは前へ進むことなく、少しずつ流されている。
 このままでは滝に落ちてしまう。河岸(かわぎし)を見ると、なぜか遠(とお)くになっている。いつの間にか、川幅(かわはば)が広がっていたのだ。こんなことって、あるのか? 彼は必死に考えた。
「こうなったら、思い切って滝壺(たきつぼ)へ…。今まで緩やかな流れだった。とすると、標高(ひょうこう)は高くないってことだ。だとしたら、滝の高さは、せいぜい二、三メートル……」
 滝が、すぐそこまできている。だが、彼はなかなか決心(けっしん)がつかなかった。滝までの距離(きょり)がどんどん縮(ちぢ)まっていく。もう、オールを漕ぐ力もなくなってきた。もう選択(せんたく)の余地(よち)はない。彼は決心して、カヌーを滝へ向けた。そして、カヌーは川を飛び出して空中(くうちゅう)へ――。
 そこで彼は自分の過(あやま)ちを知った。滝壺までは四、五十メートルはあるだろう。カヌーとともに彼は滝壺へ落下(らっか)していく。彼は、死を覚悟(かくご)した。
<つぶやき>これは、彼が見た夢(ゆめ)なのか。だとしたら、これから起きることの暗示(あんじ)かもね。
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1282「ドジな女の子」

2022-07-27 17:39:08 | ブログ短編

 彼女は見た目はすごく可愛(かわい)いんだけど、どこか間抜(まぬ)けな感(かん)じの女の子。子供(こども)の頃(ころ)から、<残念(ざんねん)よねぇ>と言われ続(つづ)けていた。だからなのか、いつもわざと地味(じみ)なダサい服(ふく)を着て目立(めだ)たないようにしていた。見た目と違(ちが)いすぎる自分(じぶん)が嫌(きら)いだったのだ。
 大人(おとな)になってもそれは変わらなかった。彼女は何とか就職(しゅうしょく)できたのだが、仕事(しごと)がなかなか覚(おぼ)えられなくて失敗(しっぱい)ばかりしていた。その度(たび)に上司(じょうし)に怒(おこ)られ、同僚(どうりょう)からは――。
 そんな彼女に近づいてくる男がいた。仕事で知り合った人なのだが、何かにつけて話しかけてくるようになった。仕事がらみなので、彼女は当(あ)たり障(さわ)りのない会話(かいわ)でかわしていた。だが、男の方はぐいぐいと距離(きょり)を縮(ちぢ)めてくる。今日もまた男が話しかけてきて、
「ねぇ、君(きみ)はどうしてそんな地味な服を着てるのかなぁ? 君だったらもっと――」
「あの、わたしは…これが好(す)きなんです。だから…」
「この間(あいだ)、君が友だちにアドバイスしてるの見かけたんだけど、とても的確(てきかく)だったよ」
「あの…。何で、そんなこと…。まさか、わたしのこと――」
「違(ちが)う、違う。俺(おれ)は、ストーカーじゃ…。たまたまだよ。――それに、その眼鏡(めがね)…。かけない方がいいと思うよ。ぜんぜん似合(にあ)ってない。それと…」
 彼女は怒って、「もう、いい加減(かげん)にして! わたしのことはほっといて」
 男は、すっと彼女の顔から眼鏡を抜(ぬ)き取って、「やっぱり、こっちの方がいいよ」
 男の顔が、彼女の目の前に迫(せま)ってくる。彼女は思わず、男を突(つ)き飛(と)ばした。
<つぶやき>この二人のドラマはどんな展開(てんかい)を見せるのか…。それは、誰(だれ)にも分からない。
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1281「有言実行」

2022-07-25 17:38:59 | ブログ短編

 有言実行(ゆうげんじっこう)…、この言葉(ことば)は良いこととして使われている。だが、彼の場合(ばあい)はちょっと違(ちが)っているようだ。どういう訳(わけ)か、彼が言ったことがすべて現実(げんじつ)になってしまうのだ。だから、下手(へた)なことを言ってしまうと、とんでもない事態(じたい)になることも――。
 彼は、普段(ふだん)は気をつけて余計(よけい)なことは言わないようにしていた。だが今日は、ちょっと嫌(いや)なことがあったみたいで、会社(かいしゃ)の同僚(どうりょう)と飲(の)みに行って深酒(ふかざけ)をしてしまった。
 翌朝(よくあさ)、彼は出社(しゅっしゃ)すると、昨夜(ゆうべ)一緒(いっしょ)に飲んでいた同僚に恐(おそ)る恐る訊(き)いてみた。すると、その同僚は彼を隅(すみ)の方へ連(つ)れて行って小声で言った。
「どういうことだよ。お前、部長(ぶちょう)が左遷(させん)されるの知ってたのか?」
 どうやら、彼は部長を飛(と)ばしてやると口走(くちばし)っていたようだ。彼は頭(あたま)をかかえて、
「あの…。それで、他(ほか)に何か…。変(へん)なこと言わなかったか?」
 同僚はニヤニヤしながら、「お前、あずさちゃんに告白(こくはく)してやるって…。まぁ、酔(よ)っ払(ぱら)った勢(いきお)いだろうけど、見直(みなお)したぞ。ちゃんと、俺(おれ)が見とどけてやるから。がんばれっ」
 彼は絶望(ぜつぼう)したように思わず呟(つぶや)いた。「そ、そんなことまで……」
 確(たし)かに、彼は彼女の…あずさちゃんのことが好きではあった。でも、それはまだ恋(こい)というには――。そこへ、当(とう)のあずさちゃんが出社してきた。彼女は、彼を見つけると駆(か)け寄(よ)ってきて、いきなり彼の手をつかんで――。
<つぶやき>そのあとは? もしこんな能力(のうりょく)があったら、あんなことや、こんなことも…。
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1280「しずく171~盛られる」

2022-07-23 17:40:23 | ブログ連載~しずく

 どこかのレストランなのか…。並(なら)んだテーブルには客(きゃく)の姿(すがた)はなかった。ただひとつだけ、灯(あか)りがついているテーブルがあった。そこに黒岩(くろいわ)が座(すわ)っている。
 黒岩は部下(ぶか)の男に小声(こごえ)で言った。「それで、始末(しまつ)したんだろうな?」
「それが、装置(そうち)との接続(せつぞく)が途切(とぎ)れてしまって…。申(もう)し訳(わけ)ありません」
「まぁいい。あいつら、姉妹(しまい)そろって使いものにならなかったなぁ」
 そこへ、どこからともなく黒いマントを着(つ)けた女が現(あらわ)れた。その黒ずくめの女は、黒岩に向かってため口で言った。
「あの二人と遊(あそ)んできちゃった。でも、あたしより弱(よわ)くて、がっかりよ」
 黒岩は不機嫌(ふきげん)になり、「また勝手(かって)なことを…。メイサ、お前はおとなしく洞窟(どうくつ)で待(ま)っていろ。必要(ひつよう)なときは、ちゃんと呼(よ)んでやるから」
「だって、つまんないんだもん。別にいいじゃない。あなたの邪魔(じゃま)はしないわ」
 メイサと呼ばれた女はどこかへ消(き)えてしまった。黒岩は部下に言った。
「じゃあ、こいつを連(つ)れて行ってくれ。あの装置(そうち)にかけて、能力(ちから)を最大(さいだい)にさせるんだ。それが終(お)わったら、洗脳(せんのう)して、チップを埋(う)め込んでおけ」
 黒岩の向かいの席(せき)を見ると、そこには日野(ひの)あまりの姿があった。食事(しょくじ)の中に薬(くすり)でも入れられていたのか、ぐったりと椅子(いす)にもたれて眠(ねむ)り込んでいた。
<つぶやき>この女が、あの幻覚(げんかく)を作ってたんだね。あまりを救(すく)い出すことはできるのか?
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