みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0843「チョイス」

2020-03-24 18:21:37 | ブログ短編

 彼とのデートで映画(えいが)を観(み)ることにした。
 彼は入口(いりぐち)に貼(は)ってあるポスターを見て呟(つぶや)いた。「えっ、これを観るの?」
「今日封切(ふうぎ)りなのよ。あたし、一作目の観たんだけど超(ちょう)すごかったの」
「でもさ…、二作目ってけっこう駄作(ださく)が多いっていうじゃない。だから…」
「もう、なに言ってるのよ。前評判(まえひょうばん)もすごく良いし、見逃(みのが)すわけにはいかないでしょ」
 あたしは二人で観るのを楽しみにしていたので、彼がかなり引いているのに気づかなかった。お互(たが)い映画好きだし、あたしは彼もこういうの好きだと思ってしまっていた。
 館内(かんない)が暗くなり映画が始まると、彼はあたしの手をつかんできた。やだ、もうそういうのは…。でも、ちょっと嬉(うれ)しかったなぁ。
 映画が戦慄(せんりつ)のシーンになると、観ていた人の悲鳴(ひめい)がどよめきのように湧(わ)き上がった。その中で、ひときわ大声を上げたのは隣(となり)にいた彼だった。彼は、あたしの手を強く握(にぎ)りしめて、あたしの肩(かた)へ顔(かお)を押(お)し当てた。
 あたしは呆気(あっけ)にとられた。えっと…、これって、怖(こわ)がってるの?
 あたしは初めて気がついた。彼が、ホラー映画が超苦手(にがて)だということを――。思い返してみれば、あたしが怖い映画の話をすると、彼はさり気なく話題(わだい)を変えていた。あれは、こういうことだったのね。でも、何かちょっと可愛(かわい)いかも…。
<つぶやき>誰(だれ)しも苦手(にがて)なものってありますよね。彼は、これを克服(こくふく)できるのでしょうか?
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