みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1427「マラソン」

2023-10-29 17:34:57 | ブログ短編

 彼は快走(かいそう)していた。トップグループにいるわけではないのだが、沿道(えんどう)には応援(おうえん)する人たちが声援(せいえん)を送(おく)っている。その中に、なぜか彼の名前(なまえ)を叫(さけ)んでいる女性がいた。彼は思わず身体(からだ)をこわばらせた。彼にとって、その女性は訳(わけ)ありのようだ。
 彼女は、彼と併走(へいそう)しながら言った。
「なんで連絡(れんらく)してくれないのよ。あたし、ずっと待(ま)ってるのに…」
 彼は、なぜ彼女がここにいるのか分からなかった。誰(だれ)にも話していないはずなのに…。彼はちらちらと彼女を見ながら、「なんで…どうして…」を繰(く)り返した。
 彼女は息(いき)を切(き)らしながら、「あなたが…あたしのこと…無視(むし)するからでしょ」
 どうやら、彼女はそれほど体力(たいりょく)はなさそうだ。そんな彼女を見て彼は言った。
「もういいだろう。ついて来ないでくれ。君(きみ)とはもう…」
「そ、そんなわけにはいかないわよ。だって…あたし…、あなたのことが…」
 彼女は足がもつれてバタンと倒(たお)れた。彼は、思わず立ち止まってしまった。彼女の方に戻(もど)ろうかと思案(しあん)していると、彼女が声をあげた。
「いいから行って。あたしは大丈夫(だいじょうぶ)だから。ゴールで待ってるわ!」
 彼は何ともいいようのない表情(ひょうじょう)を浮(う)かべて、再(ふたた)び走り出した。彼は果(は)たしてゴールに向かうのか? それとも、途中(とちゅう)で棄権(きけん)ってこともあるかもしれませんね。
<つぶやき>この二人の関係(かんけい)は? 二人のゴールは、いったいどこにあるのでしょうか。
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1426「不条理」

2023-10-25 17:32:08 | ブログ短編

「お前は俺(おれ)のものだろ。他(ほか)の男なんかと――」
 あたしはこの言葉(ことば)にカチンときた。確(たし)かに、あたしはこの人と付き合っている。だけど、あたしはこの人のものじゃないわ。あたしははっきりと否定(ひてい)した。彼は不満(ふまん)そうに、
「なに言ってんだよ。お前は、俺と付き合ってるじゃないか」
 まったくいつの時代(じだい)よ。今は男女同権(どうけん)なのよ。あなたに従(したが)うつもりなんてないわ。
 彼はあたしを見て上から目線(めせん)で、「俺がいなきゃ何もできないくせに、よく言うよ」
 できるわよ。あなたがいなくても、あたしは何も困(こま)らない。あなたこそ、あたしがいなきゃ困るくせに…。何だかむしゃくしゃしてきたわ。そうよ。今まで、あたしが…。ずっとあなたに合わせてきたのよ。あなたのわがままをきいてね。
 何だか今日は変(へん)だわ。いつも聞き流(なが)していたことが、今日はまるで刺(とげ)のように突(つ)き刺(さ)さってくる。付き合い始めた頃(ころ)は、とっても優(やさ)しい人だったのに。今はまったく感(かん)じられない。
 彼は吐(は)き捨(す)てるように、「なら勝手(かって)にしろよ。俺と付き合いたいって女は他にも――」
 ああぁ。いつになったら、あたしのこと理解(りかい)してくれる人が現れるのよ。もう、いっそのこと…、彼氏(かれし)なんかいらないわ。その方が幸(しあわ)せになれるのかもしれない。でも、あたし一人で…いられるかしら? この先(さき)、どうすればいいのよ。
 あたしは、目の前にいる彼を見つめて、大きなため息(いき)をついた。
<つぶやき>男なんて単純(たんじゅん)だわ。手の上で転(ころ)がしてやればいいの。悪女(あくじょ)におなりなさい。
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1425「しずく200~援軍」

2023-10-21 17:33:41 | ブログ連載~しずく

 それは一瞬(いっしゅん)の出来事(できごと)だった。アキを狙(ねら)っていた棍棒(こんぼう)が何かに弾(はじ)き飛(と)ばされたのだ。下には水木涼(みずきりょう)が持っていた剣(けん)の柄(つか)が転(ころ)がっていた。エリスはバカにするように言った。
「ほんとにバカね。自分(じぶん)の武器(ぶき)を捨(す)てるなんて。もうあきらめるのか?」
 涼は思わずやってしまったのだ。アキを助(たす)けるためにはそれしか思いつかなかった。敵(てき)が一斉(いっせい)に涼に向かって行く。涼にはもう防(ふせ)ぎようがなかった。だがどういうわけか、涼に近づいた敵は次々(つぎつぎ)と弾かれ倒(たお)れていく。涼の前に、神崎(かんざき)つくねが姿(すがた)を現した。
 涼が言った。「もう、遅(おそ)いよ。何やってたんだよ」
 つくねは涼に背(せ)を向けたまま、「こっちも、いろいろあったのよ。でも、間(ま)に合ってよかったわ。あとは、あたしに任(まか)せて」
 つくねは残(のこ)っている敵に向かって行った。同時(どうじ)に、アキたちを狙っていた敵の前には、柊(ひいらぎ)あずみが現れていた。二人で敵を倒すのにそれほど時間はかからなかった。一人になったエリスに怯(ひる)んだ様子(ようす)はなかった。エリスはひとり言のように呟(つぶや)いた。
「ほんと使(つか)えないヤツらばかりだわ。まぁ、あてにはしてなかったけど…」
 突然(とつぜん)、エリスが叫(さけ)んだ。「カラス! いつまで見てるの! 手を貸(か)しなさい! まったく、どういうつもりよ。言わなきゃ何もしないなんて…」
 エリスの隣(となり)に黒い影(かげ)が現れた。そして、すぐに消(き)えてしまった。
<つぶやき>見えないヤツが現れたのか? 果(は)たして、みんなはどう戦(たたか)うのでしょうか?
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1424「ゲームの誘い」

2023-10-17 17:40:17 | ブログ短編

 彼に、まったく知らない企業(きぎょう)からメールが届(とど)いた。どうやらゲーム会社(がいしゃ)のようで、新しいオンラインゲームの参加者(さんかしゃ)を募集(ぼしゅう)をしているようだ。彼は学生(がくせい)の頃(ころ)、ゲーマーを自負(じふ)していた。でも、こんなゲームは初めてだった。俄然(がぜん)、興味(きょうみ)を持って参加を決(き)めた。
 それはサバイバルゲームのようだ。かなりのクオリティーでまるで現実(げんじつ)の世界(せかい)のようだった。それにゲーム展開(てんかい)が手に汗(あせ)握(にぎ)る感じで、久(ひさ)しぶりに彼もはまってしまった。ゲームにはいろんなアバターが登場(とうじょう)して、世界中に参加者がいるようだった。
 何度かやっているうちに、彼は知り合いの女性にそっくりなアバターを見つけた。髪型(かみがた)も目鼻立(めはなだ)ちも、顔のホクロの位置(いち)まで同じ…。これは、間違(まちが)いなく彼女をモデルに作られたアバターだ。彼女も参加しているのか?
 彼女とはもう何か月も会っていなかった。彼は彼女に電話(でんわ)をしてみた。でも、どういうわけか電話はつながらなかった。共通(きょうつう)の友人(ゆうじん)に連絡(れんらく)をとると、その友人も彼女とはまったく連絡がつかないと言った。いったいどうしてしまったのか?
 まだゲームの途中(とちゅう)だったので、彼はパソコンの画面(がめん)に目を戻(もど)した。そこには彼女のアバターがいて、彼はなぜか見つめられているように感じた。そして、そのアバターは何かを訴(うった)えるように手を振(ふ)って叫(さけ)び始めた。彼はパソコンの画面に釘付(くぎづ)けになった。ボリュームを上げてみるが、何を言っているのか聞き取れない。
 次の瞬間(しゅんかん)、パソコンの画面から強い光が放(はな)たれた。彼は思わず目を閉(と)じた。
<つぶやき>これは、ゲームの世界に取り込まれちゃったのか? 彼も消(き)えちゃうかも…。
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1423「相手しだい」

2023-10-13 17:31:53 | ブログ短編

 夏目(なつめ)は目を見開(みひら)いて言った。「あいつにコクったって…? それ、どういうことだよ」
「どういうって…」森田(もりた)は決(き)まり悪(わる)そうに、「そ、そういうことだよ」
「だって、あいつ…彼氏(かれし)がいたんじゃないのか?」
「なんか、別(わか)れたみたいだ。あいつに呼(よ)び出されたとき、聞いた」
「えっ? お前はそういう状況(じょうきょう)で…、告白(こくはく)なんかしたのか?」
「まぁ…。なんか落(お)ち込んでるあいつ見てたら、元気(げんき)づけてやりたいっていうか…」
「俺(おれ)がいない間(あいだ)に、そんな急展開(きゅうてんかい)になってたなんて…。もっと早く教(おし)えろよ。そうかぁ…。今までさんざん告白するって俺に言ってたくせに、やっとかぁ…」
「まぁ、そうだな…。でも、どうなるか…分かんないけどなぁ」
「何だよ。付き合うことになったんじゃないのか? あいつは何て言ったんだよ」
「それが…泣(な)かれた。すっごく泣かれて、返事(へんじ)どころじゃなかったんだ」
「だよな~ぁ。お前はそう言うとこあるんだよ。相手(あいて)の弱(よわ)みに付け込んで…」
「そういうつもりはないよ。ただ、あいつに…。見てられなかったんだ」
「で、どうすんだよ。ほんとにあいつと付き合うつもりか。その覚悟(かくご)、あるんだろうな?」
「もちろんあるよ。あいつがその気になってくれれば…、だけど…」
「なんだよ、それ…。まったく…。そんなんで、あいつのこと幸(しあわ)せにできるのか?」
<つぶやき>やっとコクったんだから、ここは攻(せ)めていきましょ。結果(けっか)は分かんないけど。
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