みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0395「夜更かし」

2018-11-30 18:10:02 | ブログ短編

 夏休み。子供たちもついつい夜更(よふ)かししてしまう。でも、気をつけて下さい。真夜中(まよなか)が近づくにつれて、魔界(まかい)への扉(とびら)が少しずつ開いていくのですから。
「いつまで起(お)きてるの? 早く寝(ね)なさい」ママは子供たちに声をかけた。
 でも子供たちはゲームに夢中(むちゅう)で、ママの方を見ようともしなかった。どのくらいたった頃(ころ)だろう。どこからともなく声が聞こえてきた。「こんなところに美味(うま)そうな子供がいるぞ」
 子供たちはビックリして部屋(へや)の中を見回(みまわ)した。その時、台所(だいどころ)にいたはずのママがいないことに気がついた。子供たちはママを呼(よ)んでみた。でも、返事(へんじ)が返(かえ)ってこない。
 またさっきの声が、「どっちから喰(く)ってやろうか。大きい方か、それとも小さい方か」
 子供たちはママを呼びながら部屋を飛(と)び出した。そして、両親の寝室(しんしつ)へ飛び込んだ。だが、そこにママの姿(すがた)はなかった。子供たちはベッドへ上がり、肌掛(はだか)けを頭から被(かぶ)って隠(かく)れる。声はどんどん近づいて来る。「どこに行った? 隠(かく)れてもムダだぞ」
 子供たちは震(ふる)える声でささやいた。「ママ、助(たす)けて…」
 声は、とうとう耳元(みみもと)で聞こえるくらいまで近づいた。「見つけたぞ。この中だ!」
 子供たちは肌掛けごとベッドから飛び出した。その時、ドスンと音がした。子供たちが振(ふ)り向くと、床(ゆか)に落ちた肌掛けの下で何かが動いている。子供たちは叫(さけ)び声を上げて、その場を逃(に)げ出した。
<つぶやき>真夜中はあやかしたちの時間なのです。邪魔(じゃま)しないように早く寝ましょうね。
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0394「できない」

2018-11-29 18:52:44 | ブログ短編

 賞金(しょうきん)百万円をかけたサバイバルゲーム。最短(さいたん)時間で目的(もくてき)の場所へ到達(とうたつ)しなければならない。途中(とちゅう)にはいろんな罠(わな)や刺客(しかく)がひそんでいた。ほとんどのチームが失格(しっかく)していくなか、春子(はるこ)たちは最(もっと)も早いタイムで進んでいた。
 だがこのゲーム、そんなに甘(あま)くはなかった。進につれ仲間(なかま)はどんどん脱落(だつらく)していき、残(のこ)るは春子と有紀(ゆき)の二人だけ。そして今、チームリーダーの春子も、罠にはまり身動(みうご)きが取れなくなった。春子は口惜(くや)しそうに有紀に言った。
「後(あと)はお願い! 絶対(ぜったい)、賞金を取るのよ。そのために私たち頑張(がんば)ってきたんだから」
 有紀はめちゃくちゃ戸惑(とまど)っていた。今まで自分(じぶん)から何かをしたことがないのだ。いつも誰(だれ)かの後をついて行くだけ。今回だって、春子がいたからここまで来れたのだ。
「あ、あたし、一人で? ダメだよ。あたしには無理(むり)。できないよぉ」
「そんな泣(な)き言(ごと)言わないで。大丈夫(だいじょうぶ)。あなた一人でもできる。自分を信じなさい」
「だって…。どうすればいいか、分かんないよ。絶対、できない。あたしになんか…」
 春子は語気(ごき)を荒(あら)げて、「アンタね。優勝(ゆうしょう)できなかったら絶交(ぜっこう)よ。時間が無(な)いの。走れ!」
 有紀は迷(まよ)いながらも走り出す。だが、春子は呼(よ)び止めて、
「そっちじゃない! 戻(もど)ってどうすんのよ。もう、しっかりしてよ。お願いだから」
「ごめん。あたし、頑張るから。絶交なんて言わないで」
<つぶやき>火事場(かじば)の馬鹿力(ばかぢから)じゃないですけど、ちゃんとゴールにたどり着けたのかな?
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0393「ゆとりちゃん」

2018-11-28 18:04:39 | ブログ短編

「お前は、俺(おれ)の言う通(とお)りにすればいいんだ。よけいなことすんな」
 係長(かかりちょう)の小言(こごと)がまた始まった。でも、係長の前にいたのはゆとりちゃん。こんなことではへこたれない。と言うか、むしろ面白(おもしろ)がっているのかも。彼女は平然(へいぜん)と言ってのける。
「でも、それだったら係長がやればいいじゃないですかぁ?」
 完全(かんぜん)に火に油(あぶら)を注(そそ)いだ感じだ。係長はますますヒートアップしていく。
「何だと。電話もろくにできないくせに、生意気(なまいき)なことを言うな。俺たちはな、不況(ふきょう)のなか耐(た)えに耐えてこの会社を守(まも)ってきたんだ。何の苦労(くろう)もせずに生きてきたお前らとは…」
「あの。もういいですか? ランチの時間なんで」
 彼女が行こうとするのを係長は呼(よ)び止めて、「ちょっと待て。まだ話は終わっとらん」
「え~っ。早く行かないと、ランチなくなっちゃうんですけど」
「お前は、仕事(しごと)を何だと思ってるんだ。俺たちは、昼飯(ひるめし)も食わずに仕事に邁進(まいしん)して――」
「そんなにがんばったのに、まだ係長なんですね。あたしは、そんなの…」
 係長は目を丸くして噴火寸前(ふんかすんぜん)。周(まわ)りの社員(しゃいん)たちはそそくさと部屋を出ていく。こうなったら誰(だれ)にも止められないことを知っているのだ。彼女は、この状況(じょうきょう)が把握(はあく)できていないのか、さらにとんでもないことを言い出した。「もし、あたしが本気(ほんき)出したら、すぐに社長(しゃちょう)なんだけどなぁ。そしたら、係長を課長(かちょう)にしてあげますねぇ」
<つぶやき>こんな娘(こ)いるんでしょうか? ぜひ、本気を出してるとこ、見てみたいです。
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0392「夏の彼女」

2018-11-27 18:40:03 | ブログ短編

 夏になると彼の前に現れる。彼女はまさに夏限定(げんてい)の恋人(こいびと)みたいな?
 恋人だと断言(だんげん)できないのは、彼女のことがよく分からないから。住んでいる所とか、仕事(しごと)は何をしているのか。なぜ、夏しか逢(あ)えないのか。彼女は自分のことをあまり話さない人だった。
 彼も、あえて訊(き)こうとはしなかった。今のままの彼女が好きだから。
 彼は何度か彼女に告白(こくはく)を試(こころ)みた。だが、そのたびに彼女からはぐらかされて…。そんなことを繰(く)り返しているうちに秋が来て、彼女は突然(とつぜん)彼の前からいなくなる。それが、もう二年も続いていた。今年こそは…、彼は夏を待ちかねていた。
 夏になると、彼女はごく自然(しぜん)に、いつもそこにいたように、何の違和感(いわかん)もなく彼の前に現れた。そして、「こんにちは」といつも通りの挨拶(あいさつ)を交(か)わす。去年の秋に黙(だま)っていなくなったのに、そんなことまったく気にする素振(そぶ)りもない。
 二人はいつもの喫茶店(きっさてん)に入った。海の見えるいつもの席(せき)に座(すわ)ると、彼は真剣(しんけん)な顔をして彼女に訊いた。「ねえ、君(きみ)は僕(ぼく)のことをどう思っているんだい?」
 彼女は顔を曇(くも)らせて、「あたし、あなたのことは好きよ。これからも、それは変わらない」
「じゃ、一緒(いっしょ)に暮(く)らそう。僕と、結婚(けっこん)してください」
 彼女は目に涙(なみだ)をためて、「ありがとう。でも、こんなあたしでも、いいの?」
<つぶやき>これって、夏限定の妻(つま)になるってことなのかな? 彼女はいったい何者なの?
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0391「肝試し」

2018-11-26 18:10:53 | ブログ短編

 夏の村祭(むらまつ)りのイベント。盆踊(ぼんおど)りだけではつまらないので、今年から肝試(きもだめ)しを行うことになった。その実行委員長(じっこういいんちょう)に選(えら)ばれたのは敏郎(としろう)だった。二十代の青年(せいねん)で、彼女いない歴(れき)……。
 それはさておき、村の墓地(ぼち)での肝試(きもだめ)しも盛況(せいきょう)のうちに終わった。スタッフとして集まった若者たちも、蚊(か)に刺(さ)されながら、お化(ば)けに変装(へんそう)したりして大活躍(だいかつやく)だった。
 最後の後片(あとかた)づけが終わると、敏郎は全員を集めて点呼(てんこ)をとった。1、2、3…。一人ずつ順番(じゅんばん)に声をあげていく。…11、12、13。最後までいったとき敏郎は首(くび)を傾(かし)げた。確(たし)かに全員で13人だけど、それは僕(ぼく)を含(ふく)めてで…。今、僕は数(かず)に入ってない…。
「おい、ふざけてんのは誰(だれ)だよ。一人多いだろ。もういっぺん最初から」
 敏郎の号令(ごうれい)でまた点呼を始める。だが、今度も13までいってしまった。全員が顔を見合わせる。その時、どこかでグワッっと何かの鳴(な)き声が聞こえた。女の子たちは男子の腕(うで)に一斉(いっせい)にしがみつく。その様子(ようす)を見た敏郎。「お前ら、いつの間(ま)にそういうことになってんだよ」と呟(つぶや)いた。男が一人多いんだから仕方(しかた)がない。
 敏郎は、ふと誰かが腕をつかんでいるような、そんな感じがして自分の腕を見た。そこには確かに手があった。白い女性の手だ。敏郎は驚(おどろ)いて横(よこ)を見た。そこには、青白(あおじろ)い顔をした女の子が立っている。敏郎は叫(さけ)ぼうと口をパクパクするが声にならない。
 その女の子はにっこり微笑(ほほえ)むと、音もなく静かに消(き)えて行った。
<つぶやき>この女の子も肝試しを楽しんでいたのでしょ。また、次の夏も会えるかもね。
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