みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1362「欲しいの!」

2023-02-26 17:35:49 | ブログ短編

 とある町の郊外(こうがい)に隕石(いんせき)が落下(らっか)した。幸(さいわ)いなことに、落ちた場所(ばしょ)は空(あ)き地だったので被害(ひがい)は出なかったようだ。専門家(せんもんか)たちが空き地にできた小さなクレーターを調(しら)べに来たが、隕石の破片(はへん)すら見つけることができなかった。
 それから数日後、この町で奇妙(きみょう)なことが起(お)き始めた。死(し)んだはずの人が生き返(かえ)って戻(もど)って来たのだ。町の人たちは、誰(だれ)もが動揺(どうよう)を隠(かく)せなかった。ある人は喜(よろこ)び、ある人は恐怖(きょうふ)に怯(おび)えた。これは神(かみ)の起こした奇跡(きせき)なのか、それとも――。
 彼のもとにも亡(な)くなった妻(つま)が戻って来た。彼は、妻の姿(すがた)を見つけると涙(なみだ)をこぼし彼女を抱(だ)きしめた。妻は、彼の背中(せなか)を優(やさ)しくさすりながら言った。
「もう泣かないで…。あたし、戻って来たんだから。もうどこにも行かないよ」
 彼は妻の顔(かお)を見つめて、「ごめん。――まさか、こんな日が来るなんて……」
 彼は妻と一緒(いっしょ)に家に戻ると、家の中に入るのをためらった。妻が亡くなってから、家の中はめちゃくちゃになっている。妻はきれい好きだったので、とても見せられない。でも、妻は家の中に入ってもまったく気にしなかった。妻は言った。
「あたし、お願(ねが)いがあるんだけど…。あたしの味方(みかた)になってくれない?」
 彼は、妻が何を言っているのか理解(りかい)できなかった。妻はさらに言った。
「だから、あたしと一緒にこの星(ほし)を征服(せいふく)しましょ。あたし、この星が欲(ほ)しいの!」
<つぶやき>これは異星人(いせいじん)の侵略(しんりゃく)なのか…。このままでは、簡単(かんたん)に征服されちゃうかも…。
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1361「花嫁候補」

2023-02-23 17:36:26 | ブログ短編

 彼のプロポーズを受けることにした彼女。いよいよ、彼のご両親(りょうしん)に挨拶(あいさつ)に行くことに…。彼の家は名家(めいか)とは聞いていたが、彼の実家(じっか)の前まで来て彼女は足がすくんでしまった。思ってた以上(いじょう)に立派(りっぱ)なお屋敷(やしき)…。彼女は思った。あたしで大丈夫(だいじょうぶ)なの?
 彼によると、おばあさまが気に入ってくれれば問題(もんだい)ないと。彼の家族(かぞく)が揃(そろ)っている広い座敷(ざしき)に入ると、大勢(おおぜい)の人が座(すわ)っていた。みんな、一斉(いっせい)に彼女の方を見た。彼女は思わず身体(からだ)をこわばらせた。これ、みんな家族なの? 多すぎだよ。
 彼女は、彼の方を見た。彼は、どんどん行ってしまう。彼女は慌(あわ)てて追(お)いつこうとして、足がもつれて倒(たお)れ込んでしまった。これは、痛恨(つうこん)のミスだ。周(まわ)りからクスクスと笑(わら)う声や、ひそひそと何かささやき合っている声が聞こえた。
 上座(かみざ)から声がして、一瞬(いっしゅん)で静(しず)かになった。おばあさまの一声だ。彼が助(たす)けに来てくれて、彼女はようやく座ることができた。挨拶がすむと、おばあさまが言った。
「この人が、お前の花嫁候補(はなよめこうほ)なのかい? ずいぶんと、あれだねぇ」
 彼女は思った。あれってなに? それに、花嫁候補って…。彼女は、彼の方を見て訴(うった)えた。他(ほか)にも候補がいるのかい? いったいどうなってるのよ。
 彼は首(くび)を傾(かし)げるばかり。おばあさまが声を上げた。「じゃあ、一週間後に試験(しけん)を行う。家事全般(かじぜんぱん)と礼儀作法(れいぎさほう)の試験だ。この家にふさわしい嫁(よめ)か見極(みきわ)める」
 彼女は思った。そんなのムリ…。あたし、料理(りょうり)なんてできないし、礼儀作法ってなに?
<つぶやき>これは、とんでもないことになってしまいました。彼女は結婚(けっこん)できるのか?
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1360「しずく187~援護」

2023-02-20 17:39:44 | ブログ連載~しずく

 月島(つきしま)しずくの姿(すがた)は烏山(からすやま)の登山道(とざんどう)にあった。どこへ向かっているのか、しずくには分かっているようだ。そこには、日野(ひの)あまりがいるはずだ。
 道の要所(ようしょ)には銃(じゅう)を持った男たちが見張(みは)りに立っていた。でも、なぜかしずくの姿が見えていないようだ。誰(だれ)も、彼女に気づく者はいなかった。山の中腹(ちゅうふく)ぐらいのところで、山が不自然(ふしぜん)に削(けず)られている場所(ばしょ)があった。しずくはその削られた岩肌(いわはだ)に手を触(ふ)れた。すると、一瞬(いっしゅん)、岩肌が鉄(てつ)の大きな扉(とびら)に変わった。しずくは、その扉に吸(す)い込まれるように姿を消(け)してしまった。
 ――ここは烏杜高校(からすもりこうこう)。水木涼(みずきりょう)とアキは校舎(こうしゃ)の中へ入っていた。二人は階段(かいだん)を上がり三階へ。廊下(ろうか)には誰もいない。二人は端(はし)から教室(きょうしつ)を一つずつ確認(かくにん)していく。どの教室にも異常(いじょう)はなかった。最後(さいご)に向かったのは、廊下の端にある音楽室(おんがくしつ)だ。
 涼はアキに外で待つように指示(しじ)をすると、一人で音楽室の扉を開けて入って行った。中には誰もいないようだ。涼がホッとしたとき、誰かが後から身体(からだ)に抱(だ)きついてきた。突然(とつぜん)のことに涼は為(な)す術(すべ)もなかった。そのまま押(お)された涼は窓(まど)のところに押しつけられ、身動(みうご)きができなくなった。もがく涼…。その時、急(きゅう)に相手(あいて)の力が抜(ぬ)けて、その場に倒(たお)れ込んだ。涼が振(ふ)り返ると、そこにはアキが立っていた。アキはにっこり微笑(ほほえ)んで、
「もう、油断(ゆだん)しちゃダメだよ。これは貸(か)しだからね。あとで、ちゃんと返(かえ)してもらうから」
<つぶやき>アキが能力(ちから)を使ったのかなぁ。それにしても、こいつはいったい何者なのか?
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1359「独立の時」

2023-02-17 17:32:21 | ブログ短編

 あたしは空想(くうそう)するのが好きだ。そこでは何でもできるし、自分(じぶん)の思うとおりに…。
 もし、あたしの鼻(はな)があと1センチ高かったら――。クレオパトラのように男の人にもてたりしたんだろうか? 楊貴妃(ようきひ)や小野小町(おののこまち)のように恋(こい)をすることがきっとできたはずよ。空想の翼(つばさ)を思いっ切り広げて、あたしはどこまでも…どこまでも…。
 あたしの空想は姉(あね)の一言でいつも潰(つぶ)されてしまう。現実(げんじつ)に引き戻(もど)されるのだ。
「また、妄想(もうそう)してたでしょ。今度はなに? まさか、白馬(はくば)の王子(おうじ)さまとか…」
「ち、違(ちが)うわよ」あたしは首(くび)を振って、「そんなこと、考えてないわよ」
「あんたもさ、もう大人(おとな)なんだから。将来(しょうらい)のことちゃんと考えなさいよ。――来年あたり、洋介(ようすけ)、結婚(けっこん)するかもよ。そしたら、私たち邪魔者(じゃまもの)になるんだからね」
 洋介は末(すえ)っ子の弟(おとうと)で…。あたしは驚(おどろ)いて、「あの子が結婚…!? まだ、早くない?」
「この間(あいだ)、彼女、連(つ)れて来てたでしょ。あれは、同居(どうきょ)するつもりよ。間違(まちが)いないわ」
「同居って…。それは、ないんじゃないかなぁ。だって…」
「あの甘(あま)えん坊(ぼう)の洋介が、親(おや)から離(はな)れるわけないでしょ。何でもしてもらえるんだから。それに、あの彼女…。抜(ぬ)け目がない感(かん)じだったわ」
「えっ? そんな風(ふう)には見えなかったけど…。とっても優(やさ)しそうな…」
「私、会社(かいしゃ)の近くで部屋(へや)を探(さが)してるの。見つかったら家(いえ)を出るから。あんたも考えなさい」
「そ、そんなぁ。あたしは、どうしたらいいのよ。もう…、お姉(ねえ)ちゃん」
<つぶやき>一人で生きていくのは大変(たいへん)ですよね。でも巣立(すだ)つときが来たのかも、ですよ。
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1358「初心者」

2023-02-14 17:40:56 | ブログ短編

 私は十年前に別(わか)れた彼女と再会(さいかい)した。これが大変(たいへん)なことの始まりになるなんて、この時はまったく分からなかった。彼女は私と別れてすぐ、別の男と結婚(けっこん)した。友だちからその話を聞かされたとき、私は――。まあ…、いい。もう、過去(かこ)の話だ。
 彼女は、何のためらいもなく私に話しかけてきた。昔(むかし)のようにずけずけと…。そして、私が結婚もせず、今も同じところに住んでいると分かると、にっこり微笑(ほほえ)んで、「じゃあ、またね」と…。この時は、彼女とはそれだけだった。
 そして、数日後のことだ。私のところにランドセルを背負(せお)った女の子が、突然(とつぜん)訪(たず)ねて来た。その子は、私に手紙(てがみ)を差(さ)し出して言った。「しばらくお世話(せわ)になります」と…。
 私は訳(わけ)が分からない。急(いそ)いで手紙を見た。この字(じ)は、見覚(みおぼ)えがある。女の子は部屋(へや)に上がり込んでいく。私はどうしていいのか…。白状(はくじょう)するが、私は子供(こども)は苦手(にがて)だ。やつらは何を考えているのか分からない。どう接(せっ)していいのか、皆目(かいもく)見当(けんとう)がつかないのだ。
 女の子はソファーに座(すわ)って、不安(ふあん)そうな目をしてこっちを見つめていた。私は仕方(しかた)なく飲み物でも出してやろうと…。しかし、ジュースなど置(お)いてあるはずもなく、お茶(ちゃ)を出してやった。そして私は、手紙を広げて――。手紙にはこうあった。
「しばらくこの子をお願(ねが)いします。手のかからない子だから心配(しんぱい)ないわ。仕事(しごと)が片(かた)づいたら向(む)かえに行きます。それまで、よろしくね」
<つぶやき>ちゃんと迎えに来てくれるのか? 突然、子育(こそだ)てをすることになるなんて…。
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