みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0821「幸せな夢」

2020-03-01 18:12:30 | ブログ短編

 彼女は何かに悩(なや)んでいるように見えた。友だちがやって来て彼女に尋(たず)ねた。
「ねえ、どうしたのよ? 何か心配事(しんぱいごと)でもあるのかな。あたしでよかったら聞くよ」
「いえ、そんなんじゃないの」彼女は真顔(まがお)で続けた。「実(じつ)はね、夢(ゆめ)を見たの。とっても素敵(すてき)な夢よ。今までに、こんな幸せな気持ちになれたことなんかなかったと思うわ」
「そう…。それは良かったじゃない。で、それが――」
「つまりね、幸せな夢だったはずなのに、どうしても思い出せないのよ。どんな夢で、何で幸せな気持ちになれたのか…。私、思い出したいの」
「えっと…。それは、ただの夢でしょ? そんなの、思い出しても…」
「そうよ、だたの夢よ。でもね、何にもない私にとっては、これは重要(じゅうよう)なことなの」
「いやいや、ちょっと…。なに言ってるのよ。あなた、大丈夫(だいじょうぶ)?」
「どうせ、あなたには分からないわ。今の私の気持ちなんか…」
 彼女は悲(かな)しげな顔をして、「あなたは、仕事(しごと)も順調(じゅんちょう)だし、彼氏(かれし)だっているじゃない。結婚(けっこん)も秒読(びょうよ)みだって言ってたでしょ。まるで、私に当(あ)てつけるように…」
「ちょっと待ってよ。あたし、そんなつもりなんか…。あたしは、あなたにも幸せになってもらいたいって思ってるわよ。だって、あたしたち親友(しんゆう)なんだから」
「そうね…。でも、あなた結婚したら、もう私のことなんか…」
「もう、何でそうなるのかな? あたしたちの友情(ゆうじょう)は何があっても変わるわけないでしょ」
<つぶやき>一生の友だちがいるってことは、とっても幸せなこと。何にもないなんて…。
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