みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0836「向いてる?」

2020-03-17 18:13:52 | ブログ短編

 男が櫓(やぐら)の上に縛(しば)りつけられていた。その櫓の下にいた女が叫(さけ)んだ。
「後は任(まか)せて。ちゃんと仕留(しと)めてみせるから」
「ちょっと待てよ。どうして俺(おれ)が餌(えさ)にならなきゃいけないんだ?」
「なに言ってるのよ。あなたほど向(む)いてる人いないでしょ。その、体型(たいけい)とか…。とっても美味(おい)しそうに見える、気がするわ」
「そりゃ、ガリガリよりはいいかもしれないけど…。でもな、何で縛る必要(ひつよう)がある?」
「だって、あなた臆病(おくびょう)じゃない。もしあたしが攻撃(こうげき)するより前に逃(に)げ出されたら、ドラゴンやっつけられないでしょ」
「何だと…、俺は、逃げないよ。俺は臆病なんかじゃない! 今の言葉(ことば)、撤回(てっかい)しろ。これでも俺は勇者(ゆうしゃ)なんだ。今までどれほどのドラゴンを退治(たいじ)してきたと思ってるんだ」
「あら、そうなの? あたし、あなたのことよく知らないから…。でも、大丈夫(だいじょうぶ)よ。あたし、失敗(しっぱい)しないから。この最新(さいしん)の武器(ぶき)があれば、ドラゴンなんて木っ端微塵(こっぱみじん)に――」
「ちょ、ちょっと待てよ。木っ端微塵って…。そんなことしたら、俺も…」
「そうね…。でも、ちゃんと王様(おうさま)には言っといてあげるわ。あなたは勇敢(ゆうかん)に戦(たたか)ったって。そしたら、きっとあなたの銅像(どうぞう)とか建(た)ててもらえるかもよ」
「そんなのいらないよ。俺にもやらせてくれ。俺だってまだ戦えるんだ!」
<つぶやき>勇者は、最後の力をふりしぼって…。餌ではなくて、戦ったと信じたいです。
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