みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1007「未来カメラ」

2020-12-30 17:48:48 | ブログ短編

 男は不思議(ふしぎ)なカメラを手に入れた。そのカメラで人物(じんぶつ)や風景(ふうけい)を写(うつ)すと、未来(みらい)の姿(すがた)や風景が写されるのだ。男は考えた。これを使えば一儲(ひともう)けできるのでは――。そこで男は、競馬場(けいばじょう)へ向かった。カメラを使って勝(か)ち馬(うま)に賭(か)けるのだ。男は、一日で大金(たいきん)を手にすることができた。
 夜になると、男は盛(さか)り場で上機嫌(じょうきげん)で呑(の)んでいた。何人もの女をはべらせ、自慢気(じまんげ)に自分がいかにつきまくっていたかを話して聞かせた。女たちは、男の話しなどそっちのけで飲み食いしていた。男が酔(よ)い潰(つぶ)れると、女たちは潮(しお)が引くように離(はな)れて行った。
 男が目を覚(さ)ますと、そばに変な身(み)なりの女が座(すわ)っていた。男は女の手を取ると言った。
「今夜は俺(おれ)のおごりだ。たっぷり呑んでくれ。金の心配(しんぱい)はいらないぞ。何だ? 俺のことを信用(しんよう)してないなぁ。じゃぁ、見せてやろう。ここになぁ…」
 男は、鞄(かばん)を開けて札束(さつたば)を女に見せた。女は鞄の中にあったカメラをつかみとると、
「やっぱり、あなたね。これ、返(かえ)してもらうわよ」
「な、何すんだよ。そ、それは俺のカメラだぞ。返しやがれ…」
「これは、あたしのよ。これを持って帰らないと、上司(じょうし)に怒(おこ)られるのよ。それと、過去(かこ)を変えることはできないからね」
「なに言ってんだ? 俺は、過去を変えたわけじゃないぞ」
「だから、あたしにとっては、ここは過去の世界(せかい)なの。すぐに元(もと)に戻(もど)るからね」
<つぶやき>彼女は未来からやって来たのか…。男は贅沢(ぜいたく)な夢(ゆめ)を見たのかもしれません。
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1006「悪夢」

2020-12-28 17:47:47 | ブログ短編

 妻(つま)は、夫(おっと)の呻(うめ)き声で目を覚(さ)ました。横(よこ)を見ると、夫が汗(あせ)をびっしょりかいてうなされている。突然(とつぜん)、夫が飛び起きた。妻も驚(おどろ)いて起き上がり、
「どうしたの…。大丈夫(だいじょうぶ)? 何か、悪(わる)い夢(ゆめ)でもみたの?」
 夫はしばらく放心状態(ほうしんじょうたい)だったが、妻の問(と)いかけに答(こた)えて、「ああ…。それが、何かに追(お)いかけられているような……。覚(おぼ)えてないよ。もう…、思い出せない」
 夫はベッドを抜(ぬ)け出して、「ちょっと、水を飲(の)んでくるよ」と、寝室(しんしつ)を出た。
 妻は心配(しんぱい)になって、夫が戻(もど)ってくるのを待った。しかし、いくら待っても夫は戻ってこなかった。妻は、寝室を出てキッチンへ向かった。リビングに灯(あか)りがついていた。妻は夫を呼(よ)んでみた。でも、返事(へんじ)がない。キッチンにも夫の姿(すがた)はなかった。
 妻は家中を探(さが)したが、夫はどこにもいなかった。玄関(げんかん)に向かってみると、鍵(かぎ)はかかったままだ。家のキーもいつもの所に置いてある。どこへ行ったのだろう?
 妻は寝室に戻ってみた。すると、ベッドの中で夫が寝息をたてていた。
 ――翌朝。妻が朝食の支度(したく)をしていると、夫が起(お)きてきた。妻は、昨夜(ゆうべ)のことを訊(き)いてみたが、夫は何も答えなかった。食卓(しょくたく)についた夫は、妻に言った。
「僕の分の食事(しょくじ)はいらないよ。水をくれないか。どうも、消化不良(しょうかふりょう)のようだ」
 妻は、夫のしゃべり方に違和感(いわかん)を感じた。妻が夫に背(せ)を向けたとき、夫の目が獣(けもの)のような目付(めつ)きになった。そして、夫は舌(した)なめずりをした。
<つぶやき>夢に出てきた獣が現実世界(げんじつせかい)に現れたのか? 夫は、呑(の)み込まれてしまったの?
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1005「しずく116~琴音」

2020-12-26 18:00:57 | ブログ連載~しずく

 川相初音(かわいはつね)は身構(みがま)えて言った。「あの人たちは、あたしたちを利用(りよう)しているだけよ。あなただって分かってるはずよ。もう、やめよ。琴音(ことね)…」
「うるさい。わたしは、あなたとは違(ちが)うわ」
 女は、手にした武器(ぶき)で初音に攻撃(こうげき)を仕掛(しか)けた。初音は何とかかわしていたが、刃(やいば)が初音の頬(ほお)を斬(き)りつけた。初音の頬からひとすじ血(ち)がにじみ出てきた。女は、
「忘(わす)れたの? あなた、わたしに勝(か)てたことなかったじゃない。死(し)ぬ覚悟(かくご)はできてる?」
 その時、突風(とっぷう)が砂塵(さじん)となって女を包(つつ)み込んだ。水木涼(みずきりょう)が能力(ちから)を使ったのだ。次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)、涼の前に女が現れて、涼を突(つ)き飛ばした。涼は立ち木に激突(げきとつ)し動けなくなった。
「邪魔(じゃま)しないでくれる。まだあなたの出番(でばん)じゃないから」
 女の後ろに初音が現れた。そして女を組(く)み止めて涼から引き離(はな)す。女はそれを振(ふ)り払い、初音を攻(せ)め立てた。涼は何とか身体(からだ)を動かして…。何かが手に触(ふ)れた。見ると、それは竹刀(しない)だ。涼はそれを手にすると駆(か)け出していた。二人の戦(たたか)いに涼が加(くわ)わった。
 女は不利(ふり)と考えたのか手を止めると初音に言った。
「まあ、いいわ。あなたの仲間(なかま)のところに連(つ)れて行ってもらおうと思ったけど、諦(あきら)めるわ。でも、次はないわよ。裏切(うらぎ)り者として、わたしがとどめを刺(さ)してあげる」
 女は、忽然(こつぜん)と姿(すがた)を消(け)した。初音は、その場にへたり込んでしまった。
<つぶやき>初音と琴音の関係は? もういろんな人が出てくると、分かんなくなりそう。
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1004「その記憶」

2020-12-24 17:51:17 | ブログ短編

 あなたの記憶(きおく)は本当(ほんとう)に正(ただ)しいのでしょうか? その記憶、実際(じっさい)とは違(ちが)うのかもしれません。彼女も、そんな迷宮(めいきゅう)に迷(まよ)い込んでしまったようです。
「えっ、どういうことですか? 彼が、存在(そんざい)していないって…。そんなはずありません。だって、彼とはもう、一年以上(いじょう)付き合ってるんですよ」
 彼女は悲(かな)しくなって涙(なみだ)を浮(う)かべた。「彼とは別れることになったけど、まだあたし、彼のこと愛してるし…。忘(わす)れられないんです。会いたい…。別れたくなかったのに…」
 彼女の前に座っていた白衣(はくい)の男は、困(こま)った顔をして言った。
「ですから、その記憶は作られたものなんです。あなたは、我々(われわれ)の研究(けんきゅう)に――」
「なにを言ってるんですか? 研究って…、何のことですか?」
「どうやら、記憶が混乱(こんらん)しているようですね。あなたは、我々の実験(じっけん)の被験者(ひけんしゃ)になったんです。そして、あなたの希望(きぼう)で、恋人(こいびと)との記憶をつけ足(た)して――」
「そんな…、そんなはずありません。彼は、ちゃんといるんです」
「〈君(きみ)は、僕には重(おも)すぎるんだ。別れよう〉これが、彼の最後(さいご)の言葉(ことば)ですよね」
「どうして、知ってるんですか? あたしたちしか知らないはずなのに…」
 彼女は部屋を飛(と)び出した。彼女は鞄(かばん)からスマホを取り出して、彼に電話(でんわ)を…。でも、アドレスに彼の名前(なまえ)はなかった。何度見ても…。彼女は鞄にスマホを戻(もど)した。その時だ。鞄の中に彼女は見つけた。彼からもらったネックレスを――。
<つぶやき>これは、どういうこと? 彼は存在していたのか…。謎(なぞ)は深まるばかりです。
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1003「ご指名」

2020-12-22 17:50:58 | ブログ短編

「ありさちゃん、いつまで休憩(きゅうけい)してるんだ? ご指名(しめい)だよ。ほら、行って」
 お店のマネージャーに急(せ)かされたありさは、カーテン越(ご)しに席(せき)の方を見て言った。
「え~っ、あの人なの? もっと、あたし好みのイケメンだけにしてよ」
「なに言ってるの。俺(おれ)みたいなイケメンは、女の方から寄(よ)ってくるんだぞ。こんな店に来るのは、女に相手(あいて)にされないヤツだけなんだから」
「あたしみたいな美少女(びしょうじょ)がよ。何でこんな所(ところ)で、寂(さび)しい思いをしなきゃいけないの?」
「はいはい、そんなにごねないで。いつもの常連(じょうれん)さんじゃないか。頼(たの)むよ」
「あ~ぁ。あの人さぁ、ちょっとしつこいんだよねぇ。他の娘(こ)にしてよ」
「いいのか? じゃぁ、新人(しんじん)の娘(こ)にしてみるか。あの娘(こ)だったら――」
「ちょっと待ってよ。あの娘(こ)はダメよ。絶対(ぜったい)ダメ。あたしより若(わか)いじゃない」
「ありさちゃん、最近(さいきん)、売上(うりあげ)が落ちてるんだから。頑張(がんば)らないと。ほら、あの常連さん、良い人じゃない。金払(かねばら)いもいいし。ここは、ありさちゃんじゃなきゃ、ねぇ」
「分かってるわよ。仕方(しかた)ないなぁ。じゃぁ、稼(かせ)ぎますか。あたしが本気(ほんき)出したら、売上倍増(ばいぞう)だからね。どんどん注文(ちゅうもん)させるから、よろしく」
 ありさは腕(うで)まくりをしながら、お店に出て行った。もちろん、微笑(ほほえ)みを忘(わす)れないで。
<つぶやき>これも大変(たいへん)なお仕事(しごと)なんですよね。イケメン男性が現れるといいのですが…。
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