みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1224「鬼人」

2022-03-30 17:36:11 | ブログ短編

 彼女はひょんなきっかけで、一風(いっぷう)変わった男性とお付き合いすることになった。何度か彼と会ってみて、彼女は彼の不可思議(ふかしぎ)な言動(げんどう)に気がついた。
 ある日のこと――。彼女が彼と街(まち)を歩いていると、向こうから知り合いの女性がやって来た。でもその女性は、彼女のことが目に入らないのか、そのまますれ違(ちが)って――。彼女は慌(あわ)てて声をかけた。女性は立ち止まると、彼女の方へ振(ふ)り返った。
 彼女は、その女性の生気(せいき)のない顔を見て、思わず後(あと)ずさった。不意(ふい)に恐怖(きょうふ)を感じたのだ。彼がすっと二人の間(あいだ)に入ると、女性に手をかざして何か呪文(じゅもん)のようなものをささやいた。すると、女性はそのまま何も言わずに行ってしまった。
 彼は彼女に訊(き)いた。「知り合いかい? あれは、もう助(たす)からないなぁ」
 彼女は驚(おどろ)いて、「えっ、どういうこと? あの人に何が…」
「あの女性には鬼(おに)がいる。どうやら、嫉妬(しっと)や妬(ねた)みでいっぱいになってるようだ」
「ねぇ、何とかならないの? あの人のこと助けてあげて。あなたならできるでしょ?」
「もう手遅(ておく)れだよ。それに、人の心を、そう簡単(かんたん)に変えることはできない」
「そんな…。あの人、優(やさ)しくて、とっても明(あか)るい人だったのに…」
「それは、あの女性の一面(いちめん)でしかない。本当(ほんとう)の姿(すがた)は、まるで違っていたのかもな」
<つぶやき>人の心に闇(やみ)ができると、鬼が棲(す)み着いてしまいます。気をつけてくださいね。
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1223「仲人アプリ」

2022-03-28 17:45:16 | ブログ短編

 彼女は、いま流行(はやり)の〈仲人(なこうど)アプリ〉で彼と知り合った。そして、アプリからのいろんなアドバイスを受けながら、その彼とゴールインすることができた。
 二人は誰(だれ)もが羨(うらや)む夫婦(ふうふ)になったのだが、どういう訳(わけ)か、一年後、離婚(りこん)してしまった。それを知らされた彼女の親友(しんゆう)は、心配(しんぱい)して事情(じじょう)を訊(き)いてきた。彼女はそれに答(こた)えて、
「あたしたち、とっても幸(しあわ)せだったのよ。結婚(けっこん)してからも、〈仲人アプリ〉で喧嘩(けんか)とかしないようにしてたし。あたしたちの間(あいだ)に、ずれとかないと思ってた」
「そうよね。私も、あなたたちの仲(なか)の良さに妬(や)けるぐらいだったわ」
「でもね、あたしだけじゃなかったの。あの人、他(ほか)にもいたのよ」
「他にもって…。まさか、浮気(うわき)ってこと…?」
「浮気ぐらいなら、あたしだって許(ゆる)せたかもね。でもね、あの人、本気(ほんき)だったのよ。本気で他の女に…。あたしは妻(つま)なのに、本命(ほんめい)じゃなかったのよ」
「ひどい、そんなことって…。でも、浮気するような人には見えなかったけど…」
「あの人ね、あたしと付き合う前から、〈仲人アプリ〉でその女と会ってたのよ。あたし、ぜんぜん知らなくて…。それを知ったとき、もう別れようって決めたわ」
「大変だったわね。私、ぜんぜん知らなくて…」
「いいのよ。もう終(おわ)わったことだし…。あたしね、気になる人がいるのよ。〈仲人アプリ〉で知り合った人なんだけど…。今度は慎重(しんちょう)に決めようと思って――」
<つぶやき>便利(べんり)な世の中になってもそれを使う人によって…。結局(けっきょく)、見る目がないと…。
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1222「油揚げ」

2022-03-26 17:35:23 | ブログ短編

 彩花(あやか)は親友(しんゆう)の芳恵(よしえ)を呼(よ)び出して、おどおどしながら言った。
「あのね…。うちの夫(ひと)、おかしくなっちゃたかもしれないの」
 そんなこと打ち明けられて、芳恵はいぶかしそうに訊(き)き返した。
「おかしいって…、あなたの旦那(だんな)が? いったい何があったのよ?」
「それがね…。二、三日前から変なのよ。いつもはがさつで、服(ふく)なんか脱(ぬ)ぎっぱなしにしてたのに、自分(じぶん)で洗濯(せんたく)カゴの中へ入れるのよ。それに、あたしが作った料理(りょうり)を美味(おい)しいって…。今まで、そんなこと言ったことないのに…。しかも、後片(あとかた)づけも――。お皿(さら)とか、洗(あら)ってくれるのよ。あたしが頼(たの)んでもいないのに…。これは、変でしょ? 絶対(ぜったい)、変よ」
「何が問題(もんだい)なのよ。家事(かじ)を手伝(てつだ)ってくれるなんて、良(い)い旦那じゃない」
「あたなは、うちの夫(ひと)のこと知らないからそんなことが言えるのよ。今のあの夫(ひと)は、あの夫(ひと)じゃない。まるで別人(べつじん)のようで、あたし恐(こわ)いのよ」
 芳恵は、彩花のただならぬ様子(ようす)に、「何かされたの? 暴力(ぼうりょく)とか…」
「いいえ、そういうのは…。昨夜(ゆうべ)ね、スーパーの袋(ふくろ)を下げて帰ってきて、あたしに言うのよ。美味しそうな油揚(あぶらあ)げを見つけたから買ってきたって…。何で油揚げなの? 結婚(けっこん)してから一度も、仕事(しごと)帰りにスーパーに寄(よ)るなんてことなかったのに…」
「これは、あれかもねぇ。何か、やましいことがあるんじゃない? 浮気(うわき)とか――」
 彩花は急に冷静(れいせい)になって、「いや、それはないな…。そういうんじゃないと思う」
<つぶやき>この旦那の変わりようは何を意味(いみ)しているのか? 何かの化身(けしん)なのかもね。
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1221「どこにいるの?」

2022-03-24 17:36:44 | ブログ短編

「あの娘(こ)、寿退社(ことぶきたいしゃ)するんだって。離婚(りこん)するカップルが増(ふ)えてるのに、よく決断(けつだん)したわ」
「そうか…。運命(うんめい)の人と出会(であ)えたのかもねぇ。いいな~ぁ」
「えっ、なに言ってるの。今どき、白馬(はくば)に乗った王子(おうじ)さま的(てき)なこと考えてるの?」
「私、思うのよ。離婚が多いのは、きっと運命の人と出会ってないからなんじゃないのかって。運命の人が誰(だれ)なのか、目印(めじるし)とかついてるといいのにね」
「そんなの、どこに住(す)んでるか分かんなきゃ見つけられないでしょ」
「それは、そうなんだけど…」
「恋占(こいうらな)いとかいいんじゃない? 今度、一緒(いっしょ)に行こうよ」
「私、そういうの信じてないわ。だって、確実(かくじつ)じゃないもの。誰かが決(き)めてくれればいいのになぁ。そしたら、こんなに結婚(けっこん)のことで悩(なや)むことなんかなくなるのに」
「なにバカなこと言ってるのよ。一生(いっしょう)の問題(もんだい)でしょ。相手(あいて)は自分(じぶん)で見つけなきゃ」
「いいよ、そんなの。だって、私は、ちゃんとした人なら誰だっていいもん」
「なに諦(あきら)めてんのよ。あたしたち、諦めるのはまだ早いわ。来週(らいしゅう)、合(ごう)コンしよう」
「えっ、いいよ。私、そういうノリについていけないもん」
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。今度のは、知り合いのホームパーティーなの。若(わか)い男もいっぱい来るんだって。これはチャンスよ。出会いが多ければ多いほど、運命の人にめぐり合えるわ」
<つぶやき>いろんな人と出会うのは、とってもいいかもね。人を見る目を養いましょう。
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1220「しずく159~お弁当」

2022-03-22 17:35:18 | ブログ連載~しずく

 朝の烏杜高校(からすもりこうこう)。登校(とうこう)してくる生徒(せいと)たちが校門(こうもん)を入って校舎(こうしゃ)へ向かっていた。その中に、日野(ひの)あまりの姿(すがた)があった。少し離(はな)れて、彼女の後(あと)をつけていく人影(ひとかげ)が――。彼女はそれに気づいていないようだ。
 午前中(ごぜんちゅう)の授業(じゅぎょう)が終わると、あまりはお弁当(べんとう)を手にこっそりと屋上(おくじょう)へ向かった。屋上へ出るのは禁止(きんし)されているのだが、先輩(せんぱい)の水木涼(みずきりょう)からたまに行っていることを聞かされていたのだ。それ以来(いらい)、彼女もここを利用(りよう)することがあった。ここなら、誰(だれ)にも邪魔(じゃま)されずにいられるからだ。
 あまりが景色(けしき)を見ながらのんびりお弁当を食べていると、誰かが彼女の後(うしろ)に現(あらわ)れた。それは、川相初音(かわいはつね)だ。突然(とつぜん)、初音が声をかけたので、あまりは危(あや)うくお弁当を落としそうになった。初音は、あまりの隣(となり)に座(すわ)ると言った。
「一人でお弁当を食べるなんて、淋(さび)しくないの? あたしが付き合ってあげるよ」
 初音は売店(ばいてん)で買ってきたパンを出して食べ始めた。あまりは恥(は)ずかしそうに、
「あの…、先輩…。どうして、ここに…?」
「ああ…。気にしないで。あたしも、たまに来てるのよ。これ、誰にも言わないでね」
 初音は何かを感知(かんち)したのか、あまりを突(つ)き飛(と)ばすと姿を消(け)した。次の瞬間(しゅんかん)、二人のいた場所(ばしょ)に川相琴音(ことね)が現れた。すぐに、初音は琴音の背後(はいご)に姿を見せて琴音を掴(つか)んだ。
<つぶやき>あまりを守(まも)ることができるのか? 姉妹(しまい)の戦いが再び始まろうとしています。
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