みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1180「しずく151~侵入」

2021-12-31 17:55:28 | ブログ連載~しずく

 しずくたちが研究所(けんきゅうしょ)まで来てみると、車が何台も玄関(げんかん)に横付(よこづ)けされていた。入口(いりぐち)には銃(じゅう)を持った男たちが立っている。しずくは千鶴(ちづる)とテレパシーをつなげると、
<千鶴さん、研究所の中で何が起こってるか透視(とうし)してみて>
 千鶴は能力(ちから)を発揮(はっき)させて、<ああ…、すごく慌(あわ)ただしいわね。これは特殊捜査班(とくしゅそうさはん)かも>
<そう、思ったより早(はや)かったわね。つくねは、どうしてる?>
<ベッドで眠(ねむ)ってるわよ。部屋(へや)には、他(ほか)には誰(だれ)もいないわ>
<じゃ、部屋のイメージを送(おく)って。――受(う)け取ったわ。ありがとう>
 しずくが一息吐(ひといきは)くと、「じゃあ、みんなで飛(と)ぶわよ。手をつないで」
 柊(ひいらぎ)あずみが言った。「ちょっと待(ま)って。部屋がどこにあるか分からないのに飛べるの?」
 しずくは微笑(ほほえ)むと、「心配(しんぱい)しないで、私に任(まか)せてよ。さぁ、行くわよ」
 みんなで手をつないで輪(わ)になると、アキが楽しそうに声を上げた。
「あたし、こういうの初めてよ。何か、ワクワクしちゃう」
 あずみがたしなめようとしたとき、みんなの姿(すがた)がかき消(き)えた。次の瞬間(しゅんかん)、そこは部屋の中だった。中央(ちゅうおう)にはベッドがあり、つくねが寝(ね)かされていた。あずみがドアの前まで行って聞き耳を立てた。そして、ドアを開けようとしたが鍵(かぎ)が外(そと)からかかっていた。
 水木涼(みずきりょう)がつくねを起こそうとしたが、目を覚(さ)ます気配(けはい)はなかった。川相初音(かわいはつね)は、ベッドのそばのワゴンの上に薬(くすり)の瓶(びん)と注射器(ちゅうしゃき)を見つけた。
<つぶやき>果(は)たして助(たす)け出すことができるのか? 敵(てき)はすぐそこまで迫(せま)って来てます。
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1179「もぐもぐ」

2021-12-29 17:38:20 | ブログ短編

「あっ、今、何か食べたでしょ?」
「いや…。別に…何も……」
「ほら、いま呑(の)み込んだ。ちゃんと分かるんだからね」
「もう、いいじゃないか。ちょっとぐらい間食(かんしょく)しても…」
「ダメよ。あなたも、分かってるはずよ。お腹(なか)がふくらんできたこと…」
「いや…、それほど…。変わんないと思うんだけどなぁ…」
「なに言ってるのよ。この間の健康診断(けんこうしんだん)でも引っかかったじゃない」
「あれは、たまたまだよ。ちょっと前の日に、飲(の)み過(す)ぎたのが原因(げんいん)で…」
「また、そうやって…。あなたひとりの身体(からだ)じゃないのよ。もしものことがあったらどうするのよ? 子供(こども)たちだって、これからお金(かね)かかるんだからね」
「分かってるよ。だから、僕(ぼく)だって家族(かぞく)のために頑張(がんば)って仕事(しごと)してるじゃないか…」
「そんなのダメよ。頑張り過ぎて身体(からだ)を壊(こわ)したりしたらどうするの? あなた、メンタル弱(よわ)いんだから。もし、欝(うつ)になって会社(かいしゃ)に行けなくなったら――」
「もう、止(や)めてくれよ。そんなことにはならないから。心配(しんぱい)しすぎだよ」
「じゃあ、これだけは約束(やくそく)して。仕事中に間食しないで。あたし、知ってるのよ。あなたが仕事で乗ってる車の中に、ポテトチップスとか菓子袋(かしぶくろ)がたまってるのを――」
<つぶやき>とっても心配してるんですね。でも、あんまり言い過ぎるのもストレスに…。
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1178「時の迷宮」

2021-12-27 17:51:47 | ブログ短編

 彼女は、初めて来た町で道に迷(まよ)ってしまった。しかも、スマホの充電(じゅうでん)が切れてしまって、どこにも連絡(れんらく)が取れず、最悪(さいあく)な状態(じょうたい)だ。外(そと)を歩いている人もいないし、すでに陽(ひ)が落ちて辺りは真っ暗になっている。どういうわけか、灯(あか)りがついている家は一軒(けん)も見当(みあ)たらなかった。
 小さな街灯(がいとう)を頼(たよ)りに歩いて行くと、灯りがついている家をやっと見つけることができた。彼女はその家の戸(と)を叩(たた)いた。すると、中から声がした。「どうぞ、お入り下さい」
 彼女は、そっと戸を開けると中に入った。家の中には老人(ろうじん)がひとり座(すわ)っているだけ。老人は彼女にくつろぐように勧(すす)めると、暖(あたた)かい飲み物を彼女に手渡(てわた)した。彼女は事情(じじょう)を説明(せつめい)して、電話(でんわ)を貸(か)してもらえないかと頼(たの)んだ。だが、その家には電話はなかった。
 老人は言った。「たいしたものはできないが、食事(しょくじ)でもしていきなさい」
 彼女は老人にお礼(れい)を言った。朝食(ちょうしょく)のあと、何も食べていなかったのだ。老人がキッチンに向かうのを見送(みおく)っていると、柱時計(はしらどけい)が鳴(な)った。その時計は十一時を指(さ)している。
「もうこんな時間なの? どうしよう…、終電(しゅうでん)ってまだあるのかしら…」
 彼女は、何気(なにげ)なく部屋(へや)の中を見渡(みわた)した。すると、他にも時計がいっぱいあるのを見つけた。しかも、どれもまったく違(ちが)う時間を指している。どれが本当(ほんとう)の時間なのか――。
 老人に訊(き)いてみると、「わしにも分からんよ。でも、たいしたことじゃないさ」
<つぶやき>彼女はとんでもない場所(ばしょ)に迷い込んでしまったのかも。帰れるといいけど…。
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1177「熨斗を付けて」

2021-12-25 17:42:03 | ブログ短編

 男を挟(はさ)んで女たちが言い合いをしていた。男を取り合っているのかと思ったら――。
「私、こんなだらしない男だとは思わなかったわ。あなたに返(かえ)してあげる」
「はぁ、なに言ってるの? あんたが、あたしから奪(うば)ったくせに、今さら…」
「だから、返すって言ってるでしょ。あんたも、よくこんな男と付き合ってわね」
「そんなの、いらないわよ。こっちは、あんたが引き取ってくれて感謝(かんしゃ)してるのよ」
 女の間(あいだ)で小さくなっていた男が遠慮(えんりょ)がちに言った。
「あの…、僕(ぼく)も発言(はつげん)してよろしいでしょうか? …実(じつ)はですね。僕、他に好(す)きな人ができました! あの、会社(かいしゃ)の近くにある喫茶店(きっさてん)で働(はたら)いている美代(みよ)ちゃんなんですけど。とっても優(やさ)しくて、可愛(かわい)い娘(こ)なんです。もう、一目惚(ひとめぼ)れって感じで――」
 女たちは男を睨(にら)みつけて叫(さけ)んだ。「ふざけんじゃねえぞ!!」
 男を黙(だま)らせるには充分(じゅうぶん)な迫力(はくりょく)だった。男が縮(ちぢ)こまるのを見て、女たちはどちらからともなくクスクスと笑(わら)い出した。そして、
「ああ、可笑(おか)しい。あんたも浮気(うわき)されてたんだね。これって自業自得(じごうじとく)よねぇ」
「うるさいわね。これは浮気じゃないわ。私、もうこの男とは別(わか)れたんだから…」
「強(つよ)がり言っちゃって。これで分かったでしょ。浮気されたらどんな気持ちになるか」
「私、何でこんな男のこと好きになったのか分かんないわ。――そうだ。美代ちゃんにも教えてあげなきゃ。私たちみたいになったら可哀想(かわいそう)じゃない」
<つぶやき>女の団結(だんけつ)ってヤツでしょうか。それにしても、こんなひどい男がいるとは…。
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1176「結婚以前」

2021-12-23 17:49:05 | ブログ短編

 彼女は、三年くらい付き合っている彼からプロポーズされた。今まで紆余曲折(うよきょくせつ)あったが、やっと彼が決心(けっしん)してくれたのだ。だが、結婚(けっこん)にあたって条件(じょうけん)をつけてきた。仕事(しごと)を辞(や)めて家庭(かてい)に入って欲(ほ)しいと。そんなこと今まで一度も口にしたことないのに――。
 彼女は、今の仕事に遣(や)り甲斐(がい)を感じていた。周(まわ)りからも評価(ひょうか)されて、どんどん仕事が楽しくなってきていた。それなのに、仕事を辞めなくちゃいけないなんて…。こんな理不尽(りふじん)なことがあっていいのか? でも、彼女は、彼のことを愛(あい)していた。
 彼と話し合いを続けていたとき、彼がまたとんでもない条件を出してきた。両親(りょうしん)との同居(どうきょ)だ。彼は次男(じなん)なのに、何でそんなことになるのか…。彼は言いにくそうに、長男(ちょうなん)が家を継(つ)ぐ気がないことと、同居することはプロポーズの前から決まっていたと白状(はくじょう)した。
 そんな大事(だいじ)なこと、何でもっと早く話してくれなかったのか…。彼女はいろんなことが頭の中でぐちゃぐちゃになっていた。もう何も考えられなくなってしまった。彼女にだって、思い描(えが)いていた結婚生活(せいかつ)がある。それが、根底(こんてい)から崩(くず)れ落ちてしまったのだ。
 彼女は彼の家には何度も遊(あそ)びに行って、彼の両親とも仲良(なかよ)くなっている。本当(ほんとう)の両親のようにも感じていた。だから、同居がイヤなわけじゃない。彼がいろんなことを勝手(かって)に決めてしまうことが気に入らないようだ。このままでは、結婚もどうなってしまうのか――。
<つぶやき>結婚は好きだけじゃできないのかも。いろんなことを真剣(しんけん)に話し合いましょ。
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