みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1195「しずく154~発砲」

2022-01-31 17:44:38 | ブログ連載~しずく

 女はまた不敵(ふてき)な笑(え)みを浮(う)かべて、「もちろんお金のためよ。あなたを連れて行けば、倍(ばい)になるかもね。さぁ、お遊(あそ)びはお終(しま)いよ。一緒(いっしょ)に来てもらうわ」
「それは難(むずか)しいわ」月島(つきしま)しずくは困(こま)った顔をして、「私、他(ほか)にもやることあるし…」
「なら、仕方(しかた)ないわね。死(し)んでも知らないわよ」
 狭(せま)い部屋(へや)で、二人の戦(たたか)いが再開(さいかい)した。二人の力は均衡(きんこう)しているように見えた。しずくが女のナイフを叩(たた)き落とすと、女はベッドの上の銃(じゅう)に向かった。しずくは能力(ちから)を使って銃を手の中に引き寄(よ)せると、女に向かって銃を構(かま)えた。女は悔(くや)しそうに言った。
「ふん、やるじゃない。でも、あなたにその銃が撃(う)てるかしら?」
 しずくは、銃口(じゅうこう)を壁(かべ)に向けると、銃を連射(れんしゃ)した。途端(とたん)、外(そと)が騒(さわ)がしくなった。無線(むせん)からは権藤(ごんどう)の声が響(ひび)いてきた。「何があった。報告(ほうこく)しろ! 誰(だれ)だ、発砲(はっぽう)したのは!」
 廊下(ろうか)から数人の足音(あしおと)が聞こえてきた。女は負(ま)け惜(お)しみに言った。
「まったく、運(うん)のいい娘(こ)ね。次はないわよ。必(かなら)ず仕留(しと)めてやるから。覚悟(かくご)しなさい」
 女は忽然(こつぜん)と消(き)えてしまった。しずくは一息(ひといき)つくと、銃をベッドの上に放(ほう)り投(な)げた。廊下の足音はすぐそこまで来ていた。しずくも姿(すがた)を消すと、扉(とびら)が開いて銃を構えた男たちが部屋に飛び込んできた。権藤は荒(あら)らされている部屋を見て言った。
「この部屋で何があったんだ?」権藤は部下(ぶか)に言った。「この銃の持ち主を調(しら)べるんだ」
<つぶやき>能力者(のうりょくしゃ)が相手(あいて)だと、どう戦えばいいのかな? これは難題(なんだい)かもしれないね。
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1194「災害訓練」

2022-01-29 17:52:17 | ブログ短編

 ある休日(きゅうじつ)の早朝(そうちょう)。パパが家族(かぞく)みんなを叩(たた)き起こして言った。
「今から二十四時間、特別訓練(とくべつくんれん)を始める。これは、災害(さいがい)に備(そな)えての特訓(とっくん)だ」
 娘(むすめ)が眠(ねむ)そうに、「もう、何なの…。そんなの聞いてないよ」
「いいか、まなみ。災害はいつ起こるか分からない。では、状況(じょうきょう)を説明(せつめい)する」
 ママが面倒(めんど)くさそうに、「そういうのは、前もって言っといてよ。こっちにも予定(よてい)が…」
「ママ。地震(じしん)はこっちの都合(つごう)なんて考えてくれないぞ。今、震度(しんど)7の地震が発生(はっせい)した。電気(でんき)、水道(すいどう)、ガスも使えなくなっている。さあ、二十四時間、我々(われわれ)だけで生き残(のこ)るぞ!」
 ママが不機嫌(ふきげん)になって言った。「そんなのムリよ。朝ごはんはどうするのよ?」
 娘も同調(どうちょう)して、「もう、やってられないわ。あたし、しらないから…」
 パパはしたり顔で言った。「そんなこと言ってられるかなぁ。水道は止めてあるから、トイレは使えないぞ。それに、お前のスマホはここにある」
 パパは娘のスマホを鍵(かぎ)のかかる引出(ひきだし)に入れた。こうなっては、パパの指示(しじ)に従(したが)うしかない。パパはテキパキとみんなに指示を出した。
「ママは食べられるのもを集(あつ)めてくれ。まなみは簡易(かんい)トイレの準備(じゅんび)。そして、パパは――」
 娘は口を尖(とが)らせて言った。「そんなの…どこにあるのよ?」
「ママ。前に買っといたのあったよな。あれって、どこへしまったかなぁ?」
<つぶやき>災害はいつ起こるか分かんないけど。訓練の前に準備が必要(ひつよう)だと思いますよ。
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1193「探偵の推理」

2022-01-27 17:49:38 | ブログ短編

 私はひょんなことから探偵(たんてい)を名乗(なの)る男と知り合いになった。彼とはなぜか気が合って、たびたび会うように…。私は探偵という職業(しょくぎょう)に興味(きょうみ)があった。でも彼は仕事(しごと)の話はほとんどしなかったので、私はちょっと不満(ふまん)だった。そこで私はあの事件(じけん)のことを訊(き)いてみた。
「ねえ、いま話題(わだい)になっている、あのQ邸(てい)殺人事件について、どう思いますか?」
 探偵は微(かす)かに笑(え)みを浮(う)かべて、「ああ、あれねぇ…。あれは迷宮入(めいきゅうい)りになるでしょう」
「えっ、どうしてですか? 私は、あの屋敷(やしき)にいた人間が怪(あや)しいと思いますが…」
「それは、どうでしょう。僕(ぼく)には、何とも言えませんが…」
 探偵は歯切(はぎ)れの悪(わる)い返事(へんじ)しかしなかった。そこで私は、自分の推理(すいり)を披露(ひろう)した。探偵は、私が話し終わると、コーヒーを一口飲んで言った。
「なるほど…、なかなかの推理ですね。でも、僕は違(ちが)うところに注目(ちゅうもく)しています」
「それは、どこですか? 私に教えてくださいよ」
「僕は新聞記事(しんぶんきじ)を読んだだけなんで、これが正しいと断定(だんてい)はできませんが…。あの屋敷には、他(ほか)にもう一人いたと思います。この事件の重要人物(じゅうようじんぶつ)です。そして、この事件に関係(かんけい)している人たちは、その人物のことを隠(かく)したがっている」
「どうしてそんなことが分かるんですか? もしそれが本当(ほんとう)なら、警察(けいさつ)に知らせないと」
「今となっては無理(むり)ですよ。それを証明(しょうめい)する証拠(しょうこ)は、もう無(な)くなっているでしょう」
<つぶやき>彼は名探偵なのでしょうか? この事件は、今だに解決(かいけつ)してないみたいです。
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1192「ミクロの世界」

2022-01-25 17:47:08 | ブログ短編

「君(きみ)も知っているだろ? あの未知(みち)の感染(かんせん)ウイルスのことは…」
「ああ。何か、人間(にんげん)を操(あやつ)って、大食(おおぐ)いをさせるってヤツだろ。恐(こわ)いよなぁ」
「我々(われわれ)が調(しら)べた限(かぎ)りでは、ヤツらは脳(のう)の奥(おく)に入り込んで変態(へんたい)をしているようだ。薬(くすり)も効(き)かないし、小さすぎて外科手術(げかしゅじゅつ)で取り除(のぞ)くことも難(むずか)しい。そこで、君に行ってもらいたいんだ」
「えっ? 行くって…、どこへ?」
「患者(かんじゃ)の身体(からだ)の中にだよ。我々が開発(かいはつ)した潜水艇(せんすいてい)で――」
「ちょっと待てよ。俺(おれ)は海へは潜(もぐ)るけど、人の身体の中なんて行ったことないぞ」
「心配(しんぱい)ない。医者(いしゃ)とエンジニアを同行(どうこう)させる。君は潜水艇の操縦(そうじゅう)に長(た)けているはずだ」
「そりゃ、俺はプロだけど…。もし、中で迷子(まいご)になったらどうするんだ?」
「それは外(そと)からモニターしているし、こちらから指示(しじ)をするから迷(まよ)うことはないはずだ」
「でもなぁ…。もし、ぶつかって傷(きず)つけたら…。何が起こるか分からんからなぁ」
 そこへ、二人のクルーがやって来た。美しい女性の医者(いしゃ)と、ちょっと高飛車(たかびしゃ)な女性エンジニアだ。男は二人を見て、目の色を変えた。やる気が出てきたようだ。
 エンジニアが不満(ふまん)そうに言った。「大切(たいせつ)な潜水艇を、こんな人に任(まか)せるんですかぁ?」
 男は即座(そくざ)に答(こた)えた。「俺に、操縦できないものなんて、ないんだよ」
<つぶやき>ますます心配になってきました。無事(ぶじ)に任務(にんむ)を終えて戻(もど)ってこられるのか…。
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1191「記憶消失」

2022-01-23 17:38:24 | ブログ短編

 彼は、いつものように職場(しょくば)のデスクで働(はたら)いていた。部下(ぶか)が彼に声をかけた。
 彼は顔を上げると、目の前の男性を見て思わず呟(つぶや)いた。「君(きみ)は、誰(だれ)だ?」
 部下の青年(せいねん)はからかわれたと思って、「いやだなぁ、山田(やまだ)ですよ。忘(わす)れないでください」
「ああ…、そうだったね。うん、山田くんだ。で、何か――」
 ――退社(たいしゃ)時間になって、彼は帰宅(きたく)しようと会社(かいしゃ)を出た。そこで、会社に戻(もど)ってきた人に、〈お疲(つか)れさま〉と声をかけられた。彼は、すれ違(ちが)ったその人の後ろ姿(すがた)を見て呟いた。
「今の人は…、誰だったかなぁ?」
 後にいた部下の山田が答(こた)えた。「またですか? あれは、社長(しゃちょう)じゃないですか」
 ――自宅(じたく)に帰った彼は、そこに見たこともない女性がいるのに驚(おどろ)いた。
「君は、誰だ? どうして、俺(おれ)の家に入り込んでるんだ」
 女性はきょとんとして言った。「なに言ってるのよ。あなた、大丈夫(だいじょうぶ)?」
 そこへ、娘(むすめ)が帰ってきた。「ただいま。パパ、どうしたの? 今日は早いじゃない」
 彼は、急(きゅう)に不安(ふあん)に襲(おそ)われた。怯(おび)えるように彼は言った。
「どうなってるんだ? ここは俺の家だ。何で、知らない奴(やつ)らがいるんだ」
 彼は頭をかかえてしゃがみ込んだ。娘が母親を見て言った。
「ねぇ、パパどうしちゃったの? おかしいよ。いつものパパじゃないわ」
 母親は娘を抱(だ)きよせて、「心配(しんぱい)ないわよ。もう買(か)い替(か)えないとダメかもね」
<つぶやき>これは未来(みらい)の話なの? でも、パパを買い替えるなんて、ちょっといいかも。
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