みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0066「パワースーツ」

2017-08-29 19:19:40 | ブログ短編

 とある研究所(けんきゅうじょ)。ここで世(よ)にも恐(おそ)ろしい実験(じっけん)が行われようとしていた。
「立花(たちばな)君。とうとう完成(かんせい)したぞ」等々力(とどろき)博士は助手(じょしゅ)にスーツを手渡(てわた)した。
「先生…」助手は尻込(しりご)みしながら、「これは、まさか…」
「わしが開発(かいはつ)したパワースーツだ。これを着ると超能力(ちょうのうりょく)が使えるようになるんだ」
 博士が手渡したのは、どう見ても普通(ふつう)の背広(せびろ)にしか見えなかった。
「いいから、着たまえ。これからテストを始めるぞ」
「先生、僕が実験台(じっけんだい)になるんですか?」
「当たり前じゃないか。君は私の片腕(かたうで)なんだぞ」
「でも…。電気(でんき)がビリビリっとか、気分(きぶん)が悪くなったりとか、そんなことに…」
「立花君、何を言ってるんだね。そのための実験じゃないか。安全性(あんぜんせい)を確認(かくにん)するんだ」
「そうなんですけど…。この前のときだって、もう少しで命(いのち)を落とすところ――」
「君は大げさだな。ちょっとした配線(はいせん)のミスじゃないか。たいしたことじゃない」
 助手は気が進(すす)まなかったが、仕方(しかた)なく背広を着ることにした。博士(はかせ)はリモコンのスイッチを入れて、「どうだね? 何か、こう、変化(へんか)は感じられないか?」
 突然(とつぜん)、洋服掛(ようふくか)けに掛けてあったパワースーツが火花(ひばな)を散(ち)らして燃(も)えあがった。それを見た博士は驚いた様子もまったくなく、一人でうなずくと呟(つぶや)いた。
「なるほど…。これはちょっとした配線のミスだ。立花君、次は完璧(かんぺき)なものにするぞ」
<つぶやき>実験は、成功しそうにありませんよね。立花君には、転職(てんしょく)を勧(すす)めたいです。
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0065「大掃除」

2017-08-26 19:29:55 | ブログ短編

 年末(ねんまつ)の休日。私は部屋の大掃除(おおそうじ)にとりかかった。ずぼらな私にとっては、一大決心(いちだいけっしん)だった。今年は仕事(しごと)もうまくいかず、付き合っていた彼にはふられて…。さんざんな年だったから、来年こそはと気分(きぶん)を新(あら)たにしたかったのだ。
 押(お)し入れに入っているものを全部引っぱり出しみて驚(おどろ)いた。こんなにいろんなものが詰(つ)め込んであったんだ。もう忘(わす)れてしまった思い出もびっくり箱のように飛び出してきた。
 ほこりをかぶったせんべいの箱。そこには子供の頃(ころ)のへたな字で、<だいじなもの>と書かれていた。蓋(ふた)を開けてみると、懐(なつ)かしいものがいっぱい入っていた。ひとつずつ手にとって…。あの頃の楽しかった思い出や、いろんなことが泉(いずみ)のようにわいてきた。
 きらきら輝(かがや)くスーパーボール。ここに入ってたんだ。これをくれた男の子。名前…、なんだったかな…。同級生(どうきゅうせい)の子だったけど、あんまり遊(あそ)んだ記憶(きおく)がない。でも、これをもらったときのことは憶(おぼ)えている。<これを持ってると、良いことがあるんだぞ>そう言って、突然(とつぜん)渡されて…。あっ、たしかその子、転校(てんこう)したんだ。今、どうしてるのかな?
 私はスーパーボールを陽(ひ)にかざしてみた。ちょっと汚(よご)れてしまっているけど、今でもきらきら輝いている。私は、なんだか嬉(うれ)しくなった。これを持ってると、きっと良いことがありそうな、そんな気がした。私って、ほんと単純(たんじゅん)なんだから…。
<つぶやき>大掃除は大発見のチャンス。でも、早くやっつけないと年を越しちゃうよ。
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0064「祖父の財宝」

2017-08-23 19:37:55 | ブログ短編

 探偵(たんてい)は知人(ちじん)の紹介(しょうかい)で依頼(いらい)を受け、とある豪邸(ごうてい)を訪(おとず)れた。
「探してもらいたいのは祖父(そふ)が残した財宝(ざいほう)です」依頼人は一枚の絵(え)を見せ、「この絵の下に別の絵がありました。それが、どうも地図(ちず)のようなのです」
「しかし、どうしてそれが財宝の地図だと…」
「これは祖父が描(か)いた絵です。祖父は生前(せいぜん)、命(いのち)よりも大切(たいせつ)な宝(たから)があると言っていました」
 X線で撮影(さつえい)された絵を見ると、三角の記号(きごう)や線が描(えが)かれていて、地図のようにも見えた。
「この三つ並(なら)んだ三角は山ですかね。それでこの線は川か道。それでこの記号は…」
 探偵は考え込んでしまった。場所(ばしょ)が特定(とくてい)できるような文字(もじ)が書かれていないのだ。本当にこれが宝の地図なのか、それすら判断(はんだん)できなかった。探偵は窓(まど)の外(そと)に目をやった。そこには立派(りっぱ)な日本庭園(ていえん)が造(つく)られていた。大きな岩(いわ)が三つ並んでいて、砂利(じゃり)が敷(し)かれ――。
「これだ!」探偵はそう叫(さけ)ぶと、庭(にわ)と絵を見比(みくら)べた。三つの三角と三つの岩。そして…。
「あれはなんですか?」探偵は庭園の一角(いっかく)を指(ゆび)さした。
「空井戸(からいど)です。祖父が掘(ほ)らせたんですが、結局(けっきょく)、水は出なかったと聞いていますが…」
 探偵は井戸の上にのせてある岩の蓋(ふた)をどけさせた。中を覗(のぞ)くと掘られた跡(あと)はなく、頑丈(がんじょう)な箱(はこ)が入れられていた。箱を開けてみると、子供が描(か)いた絵が納(おさ)められていた。
「これは…」依頼人はその絵を見て、「私が、小学生の時に描いた絵です!」
<つぶやき>どんなものにもかえられないもの。それが、その人にとってのお宝なんです。
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0063「早とちり」

2017-08-20 19:13:34 | ブログ短編

 みそらはサークルの先輩(せんぱい)の佐々木(ささき)君が好きだった。彼女の片思(かたおも)いなのだが――。今夜はそのサークル仲間(なかま)が忘年会(ぼうねんかい)ということで居酒屋(いざかや)に集まり、いつものように大騒(おおさわ)ぎになっていた。でも、みそらは佐々木君がまだ来ていないので、少ししょげて一人で飲んでいた。
 みそらはいつの間に眠(ねむ)ってしまったのか、気がついたときには誰(だれ)もいなくなっていた。
「あれ、どうして…」みそらがきょろきょろしていると、佐々木君がやって来てみそらの前に座(すわ)り、「みそらちゃん、僕(ぼく)は君のことが…」佐々木君の熱(あつ)い眼差(まなざ)し…。みそらは直感(ちょっかん)で、告白(こくはく)されると感じた。そして、彼の顔が近づいてきて――。
「ちょっと。しっかりしなさいよ」声をかけたのは、みそらの親友(しんゆう)の沙織(さおり)だった。
「あれ、みんな帰ったんじゃ…」みそらは夢(ゆめ)だと気づき、恥(は)ずかしくなって顔を赤らめた。
「ウソ。もしかして、酔(よ)っぱらってるの」沙織はみそらの顔を覗(のぞ)き込み、「信じられない」
 そこへサークル仲間が駆(か)け込んできて、「おい、佐々木が事故(じこ)にあったって…」
 忘年会はすぐにお開きになり、みんなで病院に駆けつけた。みそらは、いても立ってもいられなかった。病院に入ってみると、佐々木君は待合室(まちあいしつ)に座っていた。
「佐々木先輩!」まっ先に駆け寄ったのはみそらだった。腕(うで)に包帯(ほうたい)を巻いた佐々木君は驚(おどろ)いた顔をして、「みんな、どうしたんだ。忘年会、終わったのか?」
 佐々木君は自転車(じてんしゃ)とぶつかっただけだった。みそらは引っ込みがつかなくなっていた。
<つぶやき>誰かさんの早とちりこんなことに…。でもね、これで距離(きょり)が縮(ちぢ)まるかもよ。
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0062「若返りクリーム」

2017-08-17 19:43:01 | ブログ短編

「また新しい化粧品(けしょうひん)買ったのか?」夫(おっと)は鏡(かがみ)の前でお肌(はだ)の手入(てい)れをしている妻(つま)に言った。
「商店街(しょうてんがい)にね、小さな化粧品のお店が開店(かいてん)したの。安かったのよ」
「いくら安いからって、こんなに買わなくても…」
「だって、まとめて買った方がお得(とく)だったのよ」
 深夜(しんや)、妻の叫(さけ)び声で夫は目を覚(さ)ました。妻はおびえた顔で、
「義父(おとう)さん! いつ来たんですか? ここは、私たちの寝室(しんしつ)ですよ」
「なに言ってるんだよ。俺(おれ)だよ」夫は妻を見て驚(おどろ)いた。若(わか)い頃(ころ)の妻がそこにいたのだ。
「出てって下さい!」妻は夫を寝室から追(お)い出してしまった。夫は扉(とびら)を叩(たた)きながら、
「おい。いくら親父(おやじ)に似(に)てきたからって、なに考えてんだよ」
 何を言っても、妻は開(あ)けようとはしなかった。あきらめた夫は、ふと、妻が使っていたクリームの瓶(びん)に目をとめた。そこには、<これを塗(ぬ)るとあなたも若返(わかがえ)る>と書いてあった。
「まさか…」夫はさっきの妻の顔を思い出して、「これで若返ったのか?」
 夫はクリームを顔に塗ってみたが、なんの変化(へんか)もなかった。「くそっ。もっと塗ってやれ」
 夫はメタボなお腹(なか)と薄(うす)くなってきた頭(あたま)にも塗りたくり、すべての瓶を空(から)にしてしまった。
 朝になって、妻はそっと寝室から出てきた。床には夫のパジャマが脱(ぬ)ぎ捨(す)てられていて、その中で赤ちゃんがすやすやと寝息(ねいき)をたてていた。
<つぶやき>使用上の注意はよく読んで、ちゃんと正しく使いましょうね。さもないと…。
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