みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1448「日記」

2024-02-28 18:11:54 | ブログ短編

 僕(ぼく)は毎晩(まいばん)日記(にっき)を書いていた。その日の出来事(できごと)や感(かん)じたことなど思いつくままに…。
 ある日、僕は今まで書きためていた日記を最初(さいしょ)から読み返してみることにした。
 二年ほど前まできたとき…。ちょうどこの頃(ころ)は彼女がいて幸(しあわ)せを感じてたときだ。彼女とはいろんなところへ遊(あそ)びに行った。彼女の顔(かお)が浮(う)かんでくる。何で別れちゃったのか? 今となってはよく思い出せない。日記には彼女と遊園地(ゆうえんち)へ行ったと書いてあった。
 僕はそこで首(くび)を傾(かし)げた。遊園地に行った記憶(きおく)がない。それに、ジェットコースターに二人で乗(の)ったと…。でも、そんなはずはない。僕は、子供(こども)のときから高い所(ところ)はダメなのだ。だから絶対(ぜったい)に乗るはずがない。何でこんなことを書いたんだ?
 僕は読み飛(と)ばしていく。彼女と別(わか)れた理由(りゆう)が書いてあるはずだ。でも、いつの間にか彼女のことが出てこなくなった。あんなに好(す)きだったのに、何で別れたときのことを書かなかったんだろう。僕は、もやもやとした気持(きも)ちがわき上がってきた。
 読み進めていくと、知らない女性(じょせい)の名前(なまえ)が出てきた。日付(ひづけ)は、十日前だ!?
 何でだ? 何で覚(おぼ)えてないんだよ。日記には、その女性と食事(しょくじ)をして、二人で一晩(ひとばん)を過(す)ごしたと…。これは、おかしいだろ? こんなこと僕が書くはずは…。
 その時、玄関(げんかん)のチャイムが鳴(な)った。のぞき窓(まど)からそっと見てみると、見たことのない若(わか)い女性が立っている。いったい誰(だれ)だ。もしかして、僕と一晩過ごした女なのか?
<つぶやき>あなたなら扉(とびら)を開けちゃいますか? ここはとっても悩(なや)ましいところかも。
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0003「いつか、あの場所で…」

2024-02-24 18:04:45 | 連載物語

 「初めの一歩(いーっぽ)」3
 彼女が僕の家の前を通り過ぎたとき、彼女との距離十メートル。僕の頭の中はどう呼び止めようか、それしかなかった。
 声をかけようとしたその瞬間、彼女は僕の視界から……消えた? 僕はその場に立ちつくした。彼女の消えた先は…、隣の家!? 僕は急いで家に飛び込んで…、
「ねえ、母さん! 隣に引っ越してきた人ってさぁ…」
「ただいまでしょう。なに慌ててるの?」
「あっ、ただいま。だから、隣の人って…」
「上野さんよ。娘さんがあんたと同じクラスになったんだって?」
「そんな…」
「あれ、知らなかったの?」
「だって、会ったことないし…」
「いつもぎりぎりじゃない家を出るの。隣の子なんか余裕で出かけてるわよ」
「なんで教えてくれなかったんだよ」
「仲良くしてあげなさい。お隣さんなんだから。そうだ。呼びに来てもらおうか?」
「止めてくれよ。そんな…」
「あんな可愛い子が来てくれたら、あんたの遅刻もなくなるかもね」
「絶対だめ! そんなこと…」
「なにむきになってるの?」
 僕はそれ以上なにも言えなかった。階段を駆け上がり自分の部屋へ。なんで今まで気づかなかったんだろう。ゆかりは知ってたんだ。あの笑顔はこういうことだったんだ。明日、笑いのネタにされる。みんなの笑いものだ。僕は腹立ち紛れにカーテンを開ける。
 えっ…! 彼女だ。彼女がこっちを見ていた?
 僕は慌てて隠れる。なんで隠れるんだよ。…あそこが彼女の部屋なんだ。…そっと外を見る。彼女のいた窓には、カーテンが…。
 僕はこの偶然を手放しで喜べなかった。あんなことがなかったら…。僕はまたしても落ち込んだ。
 …ちょっと待てよ。隣に彼女がいるってことは、ひょっとするとチャンスかも。学校で駄目なら、ここがあるじゃない。ここだったらゆっくり話が出来るし、僕のこと分かってもらえるかも…。そう思ったら、なんだか心が軽くなった。
 僕は彼女の窓をいつまでも見つめていた。カーテンが開きますように、彼女が出て来ますように。そう心の中でつぶやきながら…。
<つぶやき>灯台下暗しってやつですか。よくあること(?)ですよね。ははは…。
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1447「とりこになる」

2024-02-20 18:15:44 | ブログ短編

 僕(ぼく)はひとりで喫茶店(きっさてん)にいた。仕事(しごと)が思いのほか早く片(かた)づいて、次(つぎ)の約束(やくそく)まで時間(じかん)が空(あ)いてしまったからだ。僕はコーヒーを飲みながら思索(しさく)にふけっていた。
 その時だ。見知(みし)らぬ娘(むすめ)が声をかけてきた。「あなた、あたしに恋(こい)をしましたね」
 僕は思わず答(こた)えた。「何を言ってるんだ? 君(きみ)は――」
 娘は僕の言葉(ことば)をさえぎって、「さっきから、あたしのことチラチラ見てたでしょ」
「いや…。見てないよ。君のことなんか…」
 娘は僕の顔をまじまじ眺(なが)め、「もう、そんなに恥(は)ずかしがることないよ」
「だから、そういうことじゃなくて…」
 僕は思わず次の言葉を呑(の)み込んだ。おかしい。さっきまで店(みせ)にいた客(きゃく)が一人もいない。ウエイトレスの女の子も…。いったいどこへ行ったんだ?
 娘は僕の顔の前で可愛(かわい)く手を振(ふ)ってみせて、「どうしちゃったんですか?」
「いや…。他(ほか)の客はどこへ行ったんだ。さっきまで座(すわ)ってたじゃないか…」
 娘はにっこり微笑(ほほえ)むと、「いやだ。それは、あたしに恋をしたからですよ」
「いや、違(ちが)う。そんなこと…あるはずないんだ。僕には、付き合ってる彼女が…」
「大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。みなさん、ちゃんとそこにいますから。ただ…、あなたがあたしに夢中(むちゅう)になってしまったから、目に入らなくなっちゃったんだよ」
<つぶやき>この娘は、もしかしたら妖怪(ようかい)のたぐいかもしれません。くれぐれもご用心(ようじん)を。
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0002「食いしん坊のルームメイト」

2024-02-16 18:23:06 | 超短編戯曲

  とあるアパート。越してきたばかりなのか、段ボール箱などが積み上げられている。真一が段ボール箱を一つずつ開けながら、
真一「これは、台所用品と…。あれ…、これ捨てようと思ってたのに、何でこんなところにあるんだ。ああ…、もうぐちゃぐちゃだな。どこに何が入ってるのか分かんないよ」
    真一が積み上げてある段ボール箱をどかすと、部屋の隅に女が座っていた。
真一「(驚いて)わぁ! えっ…、だれ? 何でこんなところに…」
幽子「初めまして。私、幽子って言います。どうぞよろしく」(三つ指ついておじぎをする)
真一「ゆうこ? えっ…。どっから入ってきたんだよ」
幽子「私は、ずっとここに居たよ。今日から、ルームメイトだね」
真一「はぁ、なに言ってるの? ここは俺の部屋だから。早く、出てけよ」
幽子「それは、ちょっと無理かなぁ。だって、ここから出られないし」
真一「えっ、なに言ってんだよ。いいから、出てけよ」
    真一は幽子を外に追い出し、玄関の扉を閉める。閉めてすぐに、扉を叩く音がする。
真一「まったく、いい加減にしろよ!」
    扉を開ける真一。外には別の女が立っていた。
希美「なに…。おどかさないでよ」
真一「のぞみ…。えっ、どうして…」
希美「一人じゃ大変だと思って、手伝いに来たんじゃない。それに、これ。引っ越しといえば、蕎麦でしょう。そこのコンビニで買って来ちゃった」
真一「あっ、ありがとう。あの…、いまさ、誰かに会わなかった?」
希美「誰かって?」
真一「いや…、別にいいんだ。さあ、入って。どうぞ」
希美「はい、おじゃましまーす。なんだ、全然片付いてないじゃない」
真一「だって、さっき始めたばかりだからさ」
希美「よし。じゃあ、やっつけちゃうわよ」
    希美はコンビニの袋をそのまま冷蔵庫にしまう。二人は、片付けを始める。
    しばらくすると、冷蔵庫の方で蕎麦をすする音がする。希美がそれに気づいて、
希美「だれ?(近づいて)何してるのよ。それ、私が買ってきたやつじゃない!」
幽子「初めまして。私、幽子って言います。どうぞよろしく」(三つ指ついておじぎをする)
希美「よろしくって? 真一! 誰よ、この人。何でここにいるのよ」
真一「えっ? あっ!(希美に)いや、あの…。俺にもよく分かんないんだけど…」
幽子「あの…。私のことは気にしないで。邪魔とかしませんから」
希美「そう言うことじゃなくて。(怒って)真一、ちゃんと説明してよね」
幽子「すいません。これ、もう一つ食べてもいいですか? もう半年も何も食べてなくて。前にいた人は、料理とか全然しない人だったんです。だから、追い出しちゃった。真一は、ちゃんと料理作ってね」
    幽子は冷蔵庫のなかに消えていく。茫然と立ちつくす二人。
<つぶやき>引っ越しする時は気をつけましょう。先住者がいるかもしれません。
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1446「縁結び」

2024-02-12 18:13:32 | ブログ短編

 神様(かみさま)が集まって年一回の会議(かいぎ)が開かれていた。そこで、最近(さいきん)の結婚(けっこん)しない問題(もんだい)が議題(ぎだい)に上がった。神様たちの言うことには、これは縁結(えんむす)びの神の怠慢(たいまん)ではないかと。
 実(じつ)のところ、この神様、怠(なま)けることが多いようでノルマをこなせていないようだ。でも、縁結びの神はこう反論(はんろん)した。
「俺(おれ)はちゃんとやってるぞ。俺が縁を結んでやっても、それをぶち切るのは人間(にんげん)の方だ。これは、人間たちがいけないんだ。こっちは、そこまで責任(せきにん)なんか持てない」
 他(ほか)の神様たちは険(けわ)しい顔をした。確(たし)かにそれは否(いな)めないことだ。昔(むかし)と違(ちが)って、今は縁の結び方が難(むずか)しいのかもしれない。このまま人間たちが減少(げんしょう)すれば、お供(そな)え物が減(へ)ってしまったり、全国(ぜんこく)の社(やしろ)が荒(あ)れ果(は)ててしまうかもしれない。これは大問題だ。
 そこで、まだ見習(みなら)いの神様を降臨(こうりん)させることにした。人間たちを結びつけ子孫繁栄(しそんはんえい)を促(うなが)すのだ。これは重大(じゅうだい)な任務(にんむ)である。
 人間の世界(せかい)に降(お)りた神様は、そこに結婚相談所(そうだんしょ)があるとこを知って驚(おどろ)いた。これは人間の実情(じつじょう)を知るのに最適(さいてき)な場所(ばしょ)だ。神様は、とりあえず近くに見つけた小さな結婚相談所に就職(しゅうしょく)することにした。履歴書(りれきしょ)とか面接(めんせつ)は…、神様の能力(ちから)を使えば簡単(かんたん)にクリアできた。
 でも、就職初日(しょにち)で、神様は縁を結ぶのがどれだけ難しいのか実感(じっかん)した。さて、この見習いの神様は任務を果たすことができるのか? その苦難(くなん)の日々はいつまで続(つづ)くのだろう。
<つぶやき>人の縁とは、なかなかに大変(たいへん)なものなのです。結ばれた縁は大切(たいせつ)にしましょ。
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