みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1353「夢を見たい」

2023-01-30 17:29:17 | ブログ短編

 ここでは夢(ゆめ)の実験(じっけん)が行われていた。人間(にんげん)は、どんな時にどんな夢を見るのか調(しら)べる実験だ。今日もまた被験者(ひけんしゃ)に選(えら)ばれた人が眠(ねむ)りに入ろうとしていた。隣(となり)の部屋(へや)では、教授(きょうじゅ)や助手(じょしゅ)たちがモニターを見つめている。教授が言った。
「さて、今日はどんな夢かな? 被験者にはちゃんと伝(つた)えてくれたよな」
 助手がそれに答(こた)え、「はい。幸(しあわ)せなことを想像(そうぞう)しながら寝(ね)てくださいと伝えてあります」
 モニターを見ていた別の助手が声を上げた。「教授、眠りに入ったようです」
 教授は波形(はけい)を確認(かくにん)して、「うん。寝つきの良い人だと助(たす)かるねぇ」
 しばらくすると波形が変化(へんか)して、夢に入ったようだ。教授がモニターで被験者を見ると、気持(きも)ちよさそうな寝顔(ねがお)だった。だが、どうも様子(ようす)がおかしい。何とも苦(くる)しげな顔になり、うなされているようだ。教授は首(くび)を傾(かし)げて言った。
「どういうことだ。まるで、悪夢(あくむ)でも見ているようだ。君(きみ)、すぐ起(お)こして聞(き)き取りを…」
 助手が聞き取りをすると、被験者はびくびくした様子で答えた。
「実(じつ)は、ここへ来る途中(とちゅう)で奇麗(きれい)な女性と出くわしたんです。幸せなことを想像して下さいと言われたので、その人のことを思い浮(う)かべながら寝たんです」
 助手は肯(うなず)きながら、「そんなに綺麗な人だったんですか? 羨(うらや)ましいなぁ」
「ええ。その人が夢に出てきたんです。でも、なぜかその顔が…妻(つま)の怒(おこ)った顔になって…」
<つぶやき>これは、よくあることかも…。男は美しいものに惹(ひ)かれちゃうものなのかも?
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1352「いつもの電車」

2023-01-27 17:28:08 | ブログ短編

 彼は、駅(えき)の改札口(かいさつぐち)を出たところで、見覚(みおぼ)えのある女に声をかけられた。その人はいつも電車(でんしゃ)で見かける若(わか)い女――。女はちょっと恥(は)ずかしそうに、でも目には決意(けつい)が表(あらわ)れている。
「あの…」女は控(ひか)え目な声で言った。「また、お会いしましたね。あたしのこと…」
 女は目で訴(うった)えるように男を見つめた。あたしのこと分かりますよね…と。男は、
「ああ…、いつも同じ車輛(しゃりょう)で…。そうですよね。それで、何か…?」
 女はホッとしたように表情(ひょうじょう)が和(やわ)らいだ。そして満面(まんめん)の笑(え)みを浮(う)かべて、
「また会えるなんて……。これは運命(うんめい)ですよね。きっとそうだわ」
 男はちょっと困(こま)った顔(かお)をして、「それは、どうかな…」
 女は男の言っていることが耳(みみ)に入らないのか、「明日も会ったら、これは奇跡(きせき)だわ」
「だから、僕(ぼく)はいつもあの電車で通勤(つうきん)してるんで…。そういうことには…」
「もし、明日も会えたら…。これはもう、あたしたち付き合うしかないと思うんです」
「いや…、どうしてそういうことになるのかなぁ?」
「明日が楽しみだわ。あら、ごめんなさい。あたし、何か嬉(うれ)しくて…。で、どうします?」
「えっ…? えっと…、どうします…とは?」
「どこで待(ま)ち合わせしましょうか? 今夜でも、あたしはぜんぜんかまわないですけど…」
「それは…、ちょっと…。あの、急(きゅう)にそんなこと言われても…」
「ああ…、そうですよね。ごめんなさい。明日ですよね。明日、がんばります」
 女は頭を下げると、駆(か)け出して行った。男は、乗る電車を早(はや)めようかと思い始めた。
<つぶやき>通勤・通学(つうがく)でいつもの乗(の)り物ってありますよね。気になる人、いませんか?
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1351「小さなおじさん」

2023-01-24 17:27:31 | ブログ短編

 彼女は念願(ねんがん)の高校(こうこう)に入学(にゅうがく)した。これから楽しい学生生活(がくせいせいかつ)が始まると、彼女は思っていたはずだ。ところが、入学してしばらくたった頃(ころ)、彼女に異変(いへん)が起(お)きた。見えるはずのないものが見えてしまうのだ。最初(さいしょ)は、目の錯覚(さっかく)かと思った。しかし、たびたび目の前に現れるようになって…。もう、無視(むし)できなくなってしまった。
 それは…、可愛(かわい)い妖精(ようせい)とは似(に)ても似つかない、小さなおじさん。しかもそのおじさんは、どうやらいたずら好きのようだった。彼女の周(まわ)りにいる人にいたずらをしては楽しんでいる。彼女は止(や)めさせようとするのだが、どうにも上手(うま)くいかない。
 小さなおじさんは彼女にしか見えないので、下手(へた)に止めようとするとおかしなことに――。せっかく仲良(なかよ)くなった友だちに変(へん)な目で見られてしまうかも…。そう考えると、何もできなくなってしまった。
 小さなおじさんのいたずらは、日を追(お)うごとにエスカレートしていった。このままだと怪我(けが)をする人がでかねない。彼女は意(い)を決して、一番仲良しになった友だちに打ち明けた。その友だちは、なぜか目を輝(かがや)かせて彼女の話を聞いてくれた。そして、二人で小さなおじさんを捕(つか)まえようと話がまとまった。二人で始めた捕獲作戦(ほかくさくせん)の噂(うわさ)は学校中に広まった。先生(せんせい)や生徒会(せいとかい)を巻(ま)き込んで、今や学校行事(ぎょうじ)にまでなってしまった。
<つぶやき>おじさんは、かまってもらいたかったんだよ。これで学校が楽しくなるかも。
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1350「しずく185~潜入」

2023-01-21 17:24:17 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)とアキは烏杜高校(からすもりこうこう)に到着(とうちゃく)した。正門(せいもん)は閉(し)まっているので休校(きゅうこう)なのだろう。
 アキは高い門を見て言った。「ねぇ、どうやって中に入るの?」
 とても乗(の)り越(こ)えることはできそうにない。それに、二人には飛(と)ぶ能力(ちから)はない。
 涼はにっこり微笑(ほほえ)んで、「こっちよ。抜(ぬ)け道を使いましょ」
 学校の裏(うら)は林になっていた。二人は歩道(ほどう)から低いフェンスを乗り越えて、その林に入っていった。道があるわけではないので、木の間(あいだ)をぬうように進んで行く。しばらく行くと、学校の境(さかい)の塀(へい)に突(つ)き当(あ)たった。塀に沿(そ)っていくと土が盛(も)り上がっているところが見えてきた。そこからだと楽(らく)に塀を乗り越えることができそうだ。アキは涼に訊(き)いた。
「どうして知ってるの? こんなところがあるのを…」
「それは、まあ…、いろいろとあるわけよ」涼は曖昧(あいまい)に返事(へんじ)を返して、「さあ、行きましょ」
 二人は塀を乗り越えて学校の敷地(しきち)に入った。校舎(こうしゃ)の裏手(うらて)にたどり着くと、開いている窓(まど)がないか確認(かくにん)していく。さすがに戸締(とじ)まりのしていない窓はなかった。
 校舎の玄関(げんかん)まで来て涼が呟(つぶや)いた。「ここは開いてるはずないよね」
 涼が扉(とびら)を引くと開いてしまった。涼は驚(おどろ)いて、「何だよ。無用心(ぶようじん)だなぁ」
 二人はゆっくり校舎の中へ入って行った。その時、千鶴(ちづる)からのテレパシーが届(とど)いた。
「三階の教室(きょうしつ)にいるわ。彼の他には誰(だれ)もいないみたい。気をつけてね」
<つぶやき>男の正体はいったい。これ以上(いじょう)人を増(ふ)やすと、もう分かんなくなっちゃうよ。
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1349「電池切れ」

2023-01-18 17:21:22 | ブログ短編

 今日はめちゃくちゃ忙(いそが)しくて、残業(ざんぎょう)までしてしまった。会社(かいしゃ)を出ると外(そと)は冷(ひ)え込んでいて、あたしは思わず身震(みぶる)いした。明日は休みだし、今夜はお酒(さけ)でも飲みながら、たまっている録画(ろくが)を片(かた)づけよう。あたしは早(はや)る気持ちを抑(おさ)えて、家路(いえじ)を急(いそ)いだ。
 家に着くと、エアコンのスイッチを入れた。先(ま)ず冷えてる部屋(へや)を暖(あたた)めなくちゃ。しかし、どういう訳(わけ)かリモコンのスイッチを入れても動かない。何度やってもダメだった。
 仕方(しかた)がないから、今度はテレビをつけようと――。あたしは愕然(がくぜん)とした。テレビのリモコンも使えなくなっている。あたしは思わず呟(つぶや)いた。
「こ、これは電池(でんち)切れってこと…。何で二つともなのよ。信じられない」
 あたしは乾電池(かんでんち)を探(さが)した。探しながら、あたしは気づいてしまった。あたしは一人暮(ひとりぐ)らしよ。実家(じっか)なら買(か)い置(お)きがあったけど、ここにあるとは思えない。
「買ってこなきゃ…。この時間だと、コンビニしか開いてないよね。外は寒(さむ)いのに、出かけなきゃいけないなんて、ほんと最悪(さいあく)……」
 出かけようとして、あたしは思い出した。近くのコンビニ、いま改装中(かいそうちゅう)で閉店(へいてん)してた。
「どうするのよ。今は真冬(まふゆ)よ。このままじゃ凍(こご)えちゃうわ。他(ほか)のコンビニだと…。ああ、駅前(えきまえ)まで行かないとないじゃない。どうしよう。ここはあきらめて…」
 あたしは寒い玄関(げんかん)でさんざん迷(まよ)って、精根尽(せいこんつ)き果(は)て寝(ね)ることにした。
<つぶやき>こんなことありませんか? 困(こま)らないように、転(ころ)ばぬ先(さき)の買い置きですよね。
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