みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0791「隠しごと」

2020-01-31 18:13:13 | ブログ短編

 僕(ぼく)は、妻(つま)に隠(かく)しごとがある。話さなきゃいけないとずっと思っているのだが、話すタイミングというか…、話を切り出す勇気(ゆうき)が出ないのだ。そのせいで…、辻褄(つじつま)を合わせるために、僕は妻に嘘(うそ)までついてしまった。
 もう、最悪(さいあく)だ。僕は、何でも話せる夫婦(ふうふ)になろうと妻と約束(やくそく)した。約束したはずなのに、こんな些細(ささい)なことでダメにしてしまうなんて。今日こそは、打ち明けなければ――。
 ちょうど今、妻は毎週(まいしゅう)楽しみにしているテレビ番組(ばんぐみ)を見て笑(わら)っている。今なら、この番組を見終わったときに話せば、きっと妻は笑って許(ゆる)してくれるだろう。きっとそうだ。
 僕は、そのタイミングで、妻に話があると伝(つた)えた。妻は、ちょっと驚(おどろ)いた顔をして、
「なに?…何かあったの? まさか…、お義母(かあ)さまから…」
 お袋(ふくろ)…、何でここでお袋が出て来るんだ? 僕が首(くび)をかしげていると、妻は突然(とつぜん)、手を合わせて謝(あやま)りだした。
「ごめんなさい。今まで内緒(ないしょ)にしてたことがあるの。実(じつ)はね、商店街(しょうてんがい)の福引(ふくび)きで、ホテルのランチの招待券(しょうたいけん)が当たったの。平日(へいじつ)しか使えないやつだったから、あなたに黙(だま)って、お義母さまと…。ほんとに、ごめんなさい」
「ああ……、そうなんだ。いいよ、そんなこと。別に、気にすることじゃ…」
 僕は気が抜(ぬ)けてしまった。妻は、ほっとしたのか僕に抱(だ)きついてきて、
「ありがとう、許してくれて…。もう、そういうところ、大好き!」
<つぶやき>で、結局(けっきょく)、夫(おっと)さんは、何を隠しているのかな? ちょっと気になりますね。
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0790「しずく73~戦場」

2020-01-30 18:26:26 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)は、神崎(かんざき)つくねの後から屋上(おくじょう)へ出た。そして、彼女は薄暗(うすぐら)い中に人影(ひとかげ)を見つけた。よく見ると、それは柊(ひいらぎ)あずみだった。あずみは涼に言った。
「こんな時間に呼(よ)び出してごめんなさい。ちょっと確(たし)かめたいことがあって」
 涼はつくねに呟(つぶや)いた。「どういうことだよ? 話があるって…」
「だって、先生が待ってるって言ったら、来てくれなかったでしょ。ごめんね」
 つくねはそう言うと、あずみの方へ駆(か)け寄った。涼は戸惑(とまど)いの表情(ひょうじょう)を浮(う)かべた。
「簡単(かんたん)なことよ」あずみは指(ゆび)さして、「あそこに竹刀(しない)が置いてあるでしょ。それを取って」
 少し離(はな)れた所に竹刀が置かれていた。涼は面倒(めんど)くさそうにそちらへ取りに行こうと歩き出した。あずみはそれを止めるように言った。
「動かないで! その場所(ばしょ)で取りなさい。あなたならできるはずよ」
「そんなのムリでしょ。ここから手が届(とど)くわけないじゃん」
「そうかしら? 確かめてみましょ」
 あずみが手を上げると、突然(とつぜん)、間近(まぢか)で雷(かみなり)の音が鳴(な)り響(ひび)いた。涼は驚(おどろ)いてしゃがみ込んでしまった。しばらくして涼が顔を上げると、そこは戦場(せんじょう)の真っただ中に変わっていた。
 鎧(よろい)を着た武士(ぶし)たちが刀(かたな)を交(まじ)え、弓矢(ゆみや)が飛び交(か)い、足下には息絶(いきた)えた者たちが地面(じめん)を覆(おお)いつくしている。大勢(おおぜい)の人の叫(さけ)び声や、刀や鎧のぶつかる音が耳に飛び込んで来た。涼は足がすくんでしまった。その時だ。涼の目の前に大男の武士がものすごい形相(ぎょうそう)で現れた。
<つぶやき>幻覚(げんかく)の世界へようこそ。現実(げんじつ)じゃないとしても、こんな怖(こわ)いことはないです。
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0789「なれそめ」

2020-01-29 18:12:00 | ブログ短編

「へぇ、そんななれそめだったなんて…。とっても良いお話じゃない」
 凜子(りんこ)はそう言うと、まるで少女のように微笑(ほほえ)んだ。志保(しほ)は恥(は)ずかしそうに、
「そんな、たいしたことないですよ。どこにでもあるような話なんですから」
 志保は隣(となり)で所在(しょざい)なげに座っている直樹(なおき)に目線(めせん)をおくった。直樹はここぞとばかりに口を開いた。「あの、僕(ぼく)たちが出会うことができたのは凛子さんご夫婦(ふうふ)のおかげなんです。結婚(けっこん)が決まったら、まっ先に報告(ほうこく)に行こうって話し合ってたんです」
「あら、そうなの?」凜子は顔を曇(くも)らせて、「ごめんなさいね。うちの人、昨日から出かけてしまって…。せっかく来ていただいたのにね」
「あの、あたしも訊(き)いてもいいですか? お二人の、なれそめを…」
「わたし達の?」凜子は暫(しばら)く考えてから、「聞かない方がいいかもしれないわ。暗い気持ちになっちゃうから…。最初(さいしょ)の出会いから最悪(さいあく)だったのよ。いつも喧嘩(けんか)ばっかりでね」
 凜子はそれ以上(いじょう)のことは言わなかった。帰り道で直樹がぽつりと呟(つぶや)いた。
「凛子さん達って謎(なぞ)だよね。どうして結婚したんだろう? 本当(ほんとう)に夫婦なのかなぁ」
「なに言ってるのよ。あたし、子供の写真(しゃしん)見せてもらったことあるわよ」
「ほんとに? 子供がいるなんて知らなかったなぁ。俺(おれ)、一度も会ったことなよ」
「でも、凛子さんってとっても素敵(すてき)よね。あたし、憧(あこが)れちゃうなぁ」
<つぶやき>謎はますます深まるのでした。でも、謎は謎のままにしてしておいた方が…。
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0788「作戦会議」

2020-01-28 18:12:40 | ブログ短編

 合コン真っ最中(さいちゅう)の三人娘。化粧直(けしょうなお)しで席(せき)を外して作戦会議(さくせんかいぎ)を開いていた。
「ねえ、今日のあの三人ってどういう関係(かんけい)なの? 全然(ぜんぜん)違うのが一人混(ま)じってるじゃない」
「えっと…、何かね、小学校の同級生(どうきゅうせい)だって聞いたけど…」
「何それ。それにしたってダサくない? イケメンってわけでもないし、声が小さすぎでなに言ってるのか全然(ぜんぜん)わかんない。貴子(たかこ)、どうしてあんなのがいるわけ?」
「そんなこと言ったって、私はちゃんと伝(つた)えたわよ。独身(どくしん)で生活力(せいかつりょく)があって…」
「あなたの従兄(いとこ)ってお金持ちなんでしょ。何で同級生を集めるかな?」
 さっきからずっと黙(だま)っていたもう一人が言った。「これってフェイクじゃねえ? わざとダサく見せといて実(じつ)は超(ちょう)お金持ちだったりして」
「ないない、そんなことあるわけ無(な)いでしょ。あのセンスのなさは生まれつきよ、絶対(ぜったい)」
「分かんないわよ。金目当(めあ)てに寄(よ)って来る女を警戒(けいかい)しているのかも」
「…なに? あたしは違(ちが)うわよ。あたしは純粋(じゅんすい)に愛を求めてるの。お金は…、その愛を長続きさせるために必要(ひつよう)なものにすぎないわ」
「あの…、そろそろ戻(もど)らないと。みんな、待ってるんじゃ…」
「そうね。じゃあ、かぶらないように決めちゃいましょ。貴子は、幹事(かんじ)なんだから最後(さいご)ね」
「えっ、私があの人の相手(あいて)をするの? そんなの、ムリよ」
<つぶやき>人は見た目では分からないもの。とは言うけど、やっぱり気になりますよね。
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0787「無意味じゃねえ?」

2020-01-27 18:11:04 | ブログ短編

 友だちが自宅(じたく)を新築(しんちく)したので遊(あそ)びに行くことにした。さすがに自慢(じまん)するだけあって、立派(りっぱ)というか…、何とも形容(けいよう)しがたい斬新(ざんしん)な外観(がいかん)の家が建っていた。
 友だちの案内(あんない)で二階(かい)へ上がると、そこはまるで船(ふね)の中のような内装(ないそう)になっていた。友だちいわく、「二階の部分(ぶぶん)は切り離(はな)すことができて、船として使えるようになってるんだ」
 私が唖然(あぜん)としていると、さらに友だちは続けた。「ほら、最近(さいきん)、異常気象(いじょうきしょう)とか騒(さわ)がれてるじゃない。もし洪水(こうずい)が起きた時に、船があると安心(あんしん)だと思ってね」
 でも、この場所は海のそばでもないし、近くに大きな川があるわけでも…。どうして洪水が起きると言うのか? 私が首(くび)をかしげていると、友だちはまるで当然(とうぜん)のことのように、
「温暖化(おんだんか)の影響(えいきょう)で、どうなるか分かんないじゃない。豪雨(ごうう)が何日も続いて、大洪水になることもあると思うんだ。だから、ノアの箱舟(はこぶね)的なの必要(ひつよう)になるかもしれないでしょ」
 私はさり気なく訊(き)いてみた。「家族(かぞく)とか、何も言わなかったの?」
「全然(ぜんぜん)、好きなようにしていいよって。ほら、俺(おれ)の金で建てるんだからさ。そこは、父親としての権限(けんげん)で…」
「で、いくらかかったの? ずいぶんしたんじゃない?」
「…ほら、見てよ。ここからの眺(なが)め、最高(さいこう)だろ。この土地(とち)を見つけるの、苦労(くろう)したんだ」
 結局(けっきょく)、友だちの家族とは会うこともなく、私は帰ることになった。きっと、家族ともめて、離婚(りこん)なんてことになったんじゃないかと…。さすがに、そこまでは訊(き)けなかった。
<つぶやき>家を建てるとき、家族の意見(いけん)をまとめるのは大変(たいへん)よね。強引(ごういん)なのはダメだよ。
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