みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0027「我ら探検隊」

2017-04-29 20:09:12 | ブログ短編

 UMA(ユーマ)探検隊(たんけんたい)は深い森の中に分け入った。今回の目的はツチノコ捜索(そうさく)である。先日、この森の中でツチノコの目撃情報(もくげきじょうほう)があったのだ。はたして、彼らはツチノコを発見できるのか?
「野元(のもと)隊長。目撃されたのは、この辺りだと思われます」
「いよいよ、我々の活動(かつどう)が報(むく)われる時が来た。身を引き締(し)めて、捜索にあたってくれ」
 隊長の檄(げき)が飛び、隊員たちは散開(さんかい)し、辺りをくまなく探し回った。だが、いっこうに見つかる気配(けはい)はなかった。時間だけが、虚(むな)しく過ぎていく。
「隊長、もう無理(むり)ですよ。あきらめましょうよぉ」
「何を言ってるんだね。明子(あきこ)隊員、最後まであきらめちゃだめだ」
「隊長、あれを見て下さい!」松村(まつむら)隊員が、森の先を指さした。そこには街(まち)の明かりが…。
「はーい! もうやめましょう」明子は覚(さ)めた口調(くちょう)で、「みなさーん、撤収(てっしゅう)しますよーぉ。集めたゴミは、車のところまで運んで、分別(ふんべつ)して下さーい。お願いしまーす」
「明子君、次はもっとやり甲斐(がい)のある所へ行きたいね。ヒマラヤで雪男(ゆきおとこ)の捜索とか…」
「社長、わが社にそんな余裕(よゆう)はありません。ボランティア活動もいいですけど、社員を探検ごっこに付き合わせるのは、もう止めて下さい」
「いいじゃないか。楽しまなきゃ。それに、このビデオでCMを作れば、一石二鳥(いっせきにちょう)だよ」
<つぶやき>この会社の行く末(すえ)は大丈夫(だいじょうぶ)なの? でも、遊び心は大切です。忘れないでね。
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0026「プレゼント」

2017-04-26 19:33:53 | ブログ短編

 今日は彼の誕生日(たんじょうび)。彼といっても、私の片思(かたおも)いなんだけど…。彼は、私のことをたくさんいる友達の一人としか思っていない。今度の誕生パーティだって、特別(とくべつ)に招待(しょうたい)されたわけじゃない。なのに私ったら、彼へのプレゼントを真剣(しんけん)に探して、何を着ていくかで悩(なや)んでいる。ほんと、バカみたいだよね。私にもう少し勇気(ゆうき)があったら、彼に告白(こくはく)して…。
 誕生パーティはレストランを貸(か)し切って盛大(せいだい)に始まった。彼の周(まわ)りには奇麗(きれい)な女の子がいっぱいいて、私は足がすくんでしまった。大きなバースデーケーキの横には、たくさんのプレゼントが積(つ)み上げられていて。私のプレゼントより、大きくて豪華(ごうか)なものばかり。
 私はパーティとか華(はな)やかな場所はほんとは苦手(にがて)なんだ。だから、隅(すみ)の方で小さくなっていた。彼へのプレゼントを握(にぎ)りしめて…。私がぼんやり座っていると、
「やあ、来てくれたんだ」彼がすぐ横に座って話しかけてきた。私はドキドキして、
「あの…、おめでとう…」彼の顔をまともに見ることができなかった。でも、少しだけ勇気を出して、「これ、あなたにと思って…」プレゼントを渡すことができた。
「君からプレゼントをもらえるなんて…。ありがとう」
 彼は嬉(うれ)しそうに受け取ってくれた。そして、「ねえ、誰か、付き合ってる人とか…、いるのかな?」私が首(くび)を振ると、「だったら、僕と付き合って下さい。ああッ…、やっと言えた」
 彼はほっとした顔をして、私に微笑(ほほえ)んだ。
<つぶやき>気持ちはちゃんと伝えないと、なにも始まりませんから。はじめの一歩です。
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0025「エリカちゃん」

2017-04-23 19:34:38 | ブログ短編

 由佳(ゆか)は、お手伝(てつだ)いロボ<エリカちゃん>を手に入れて上機嫌(じょうきげん)だった。これで家事(かじ)から解放(かいほう)され、自分だけの時間を楽しむことができる。エリカちゃんは最新式(さいしんしき)だけあって人間とそっくりで、ロボットとは思えないほどだ。由佳と同じ二十代の女性をモデルに作られていた。
 由佳は分厚(ぶあつ)いマニュアルを見て、「こんなに読めないわ。まっ、いいか」と言ってロボットの起動(きどう)スイッチを入れた。動き出したエリカちゃんに、由佳は掃除(そうじ)、洗濯(せんたく)、炊事(すいじ)と次々に家事を言いつけた。由佳は大満足(だいまんぞく)だった。いつどこへ出かけても、時間を気にしなくてもいい。すべてエリカちゃんがやってくれるから――。
 今日も遅(おそ)くまで友達と遊んで帰ってみると、エリカちゃんは夫(おっと)とソファーでくつろいでいた。肩(かた)を抱(だ)いたりして、夫もまんざらでもない様子(ようす)。それを見た由佳は、
「エリカ、何してるの? ちゃんと仕事をしなさい!」
「あなたこそ、いつまで遊んでるのよ」エリカは命令口調(めいれいくちょう)になり、「早く部屋を片づけなさい。洗濯物(せんたくもの)だってたまってるのよ。さっさとやりなさい!」
「えっ…」由佳は怖(こわ)くなりトイレに逃げ込み、携帯(けいたい)でメーカーに電話をかけた。メーカーの担当者(たんとうしゃ)は、「ありがとうって言いました? 人間と同じで、感謝(かんしゃ)の言葉(ことば)をかけないと暴走(ぼうそう)するんです。マニュアルの注意書(ちゅういが)きにも書いてあるんですがね。よく、読んでみて下さい。対処法(たいしょほう)としましては、しばらくエリカの言う通りにしてれば、もとに戻(もど)ると思います」
<つぶやき>近日、お助けロボ<タクヤくん>発売決定! 予約(よやく)はお早めにお願いします。
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0024「運命の出会い」

2017-04-20 19:32:26 | ブログ短編

 窓(まど)から気持ちのいい朝日(あさひ)が射(さ)し込み、良太(りょうた)は目を覚ました。だが、昨夜(ゆうべ)、飲みすぎた良太は最悪(さいあく)の状態(じょうたい)だった。頭はガンガンするし、何となく気分もよくないのだ。どうせ今日は休みだし、このまま寝ていようと良太は決め込んだ。
 寝返(ねがえ)りを打って、ふっと目を開けたとき、良太は驚(おどろ)いて飛び起きた。そこに、女の子が寝ていたのだ。それも、かなり可愛(かわい)い…。良太は目をぱちくりさせて、何でこうなったのか必死(ひっし)に思い出そうとした。でも、昨夜、友達と店を出てからの記憶(きおく)がないのだ。どうやって家に帰って来たのかも…。
 良太があたふたしていると女の子が目を覚まし、「おはようございます」と言って可愛い笑顔で起き上がり、良太の顔を見つめた。良太はあまりの美しさに、身体(からだ)が震(ふる)えた。
「あの…、おはようございます」良太は思わず挨拶(あいさつ)を返したが、「えっと、どなたですか?」
「忘れちゃったんですか? 昨夜、会ったじゃないですか」
「あの、どこで会ったんですかね? よく覚えてなくて…。すいません!」
「別にいいんですよ、そんなこと。これから、よろしくお願いします。今日から、あなたにつくことにしました。だって、私と気が合いそうだから」
「えっ、これからって? つくってなに?」良太には何のことかまったく分からなかった。
「たまにいるんですよ。私たちのことが見えてしまう人って。ふふふふ……」
<つぶやき>記憶(きおく)をなくすほど飲まないようにして下さい。何が起こるか分かりませんよ。
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0023「いちご症候群」

2017-04-17 19:23:10 | ブログ短編

 ここは心療内科(しんりょうないか)の診察室(しんさつしつ)。今日もちょっと変わった患者(かんじゃ)がやって来た。
「どうされました?」美人(びじん)の先生は優しく微笑(ほほえ)んた。
「あの…」患者はそわそわして周(まわ)りを気にしながら小さな声で言った。
「実は、見えてしまうんです」
「えっ?」先生は患者を落ち着かせようと、「大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。何が見えるんですか?」
 患者は震(ふる)える手を押さえながら、「僕、食べ物に見えてしまうんです。いろんなものが…。あれ、先生のくちびる…」患者は先生の口元(くちもと)をじっと見つめた。
「吉田(よしだ)さん、大丈夫ですか? 私のくちびるが、何かに見えるんですか?」
「ああああ…」患者は何とか理性(りせい)を保(たも)とうと踏(ふ)みとどまって、
「イチゴ…。みずみずしいイチゴに見えます。ああああああ…、食べたい!」
「吉田さん。落ち着きましょう。深呼吸(しんこきゅう)して下さい、ほら」先生は深呼吸をして見せた。
 だが、これは逆効果(ぎゃくこうか)だった。患者はつばを飲み込み、目を血走(ちばし)らせ、くちびるを奪(うば)おうと先生に抱(だ)きついた。驚いた先生は悲鳴(ひめい)をあげて、患者を思いっ切りひっぱたいて、
「何すんのよ。この変態(へんたい)おやじ!」と叫(さけ)んでから、先生ははっと我(われ)に返った。
「あらっ、私ったら…」先生は慌(あわ)てて患者に駆(か)け寄り、「すいません、大丈夫ですか?」
 患者は先生の顔を覗(のぞ)き込み、「あれ、治(なお)ってる。先生、もうイチゴに見えません!」
<つぶやき>とても不思議な病気ですよね。でも、あなたの一撃(いちげき)で治るかもしれません。
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