みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1299「振り」

2022-08-30 17:32:36 | ブログ短編

 会社(かいしゃ)で取引先(とりひきさき)の人から突然(とつぜん)声をかけられた。その人とは挨拶(あいさつ)をする程度(ていど)なのに――。
「君(きみ)、付(つ)き合ってる奴(やつ)とかいる? いないだろ。なら、問題(もんだい)ないよな」
 何の話しかと思ったら、恋人(こいびと)になってくれと。あたしは断(ことわ)ろうとしたけど、口を挟(はさ)む隙(すき)もなくどんどん話しを進(すす)めていく。そして、とうとう――。
「付き合ってる振(ふ)りでいいんだよ。じゃあ、今度(こんど)の土曜日、待ってるから」
 あたしの返事(へんじ)も聞かずに、その人は行ってしまった。あたしたちのやり取りを見ていた同僚(どうりょう)は、「そんなのほっとけばいいのよ」と言ってくれたけど…。そういうわけにも――。
 土曜日。待ち合わせの場所(ばしょ)に着くと、その人は<来て当然(とうぜん)>という顔(かお)をしてさっさと先(さき)を歩いて行く。どこへ行くのかも教(おし)えてくれない。
 着いた場所は、どうやらその人の祖父母(そふぼ)の家のようだ。さっきまで偉(えら)そうにしてたのに、二人の前だとまるで借(か)りてきた猫(ねこ)のようにおとなしくなっている。その人は、ぼそぼそとあたしとの馴(な)れ初(そ)めを話して聞かせた。よくこんな嘘(うそ)が言えるなと、あたしは感心(かんしん)した。
 お祖母(ばあ)さんが言った。「久(ひさ)しぶりなんだから、ゆっくりしてってよね」
 お祖父(じい)さんは難(むずか)しい顔をして、「今夜は泊(と)まっていけ。どうせ明日は休(やす)みだろ?」
 その人は断ることもできずに、泊まっていくことになってしまった。いよいよ寝(ね)る時間(じかん)になって、部屋(へや)に案内(あんない)されると。そこには二組(くみ)の布団(ふとん)が並(なら)べられていた。
<つぶやき>さぁ、大変(たいへん)。どうして彼は恋人が必要(ひつよう)だったのか? これからの展開(てんかい)は…。
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1298「花嫁役」

2022-08-28 17:37:20 | ブログ短編

 突然(とつぜん)、友だちに呼(よ)び出されて、有無(うむ)を言わせず披露宴(ひろうえん)に出席(しゅっせき)することに――。会場(かいじょう)は大きなお屋敷(やしき)で、立食(りっしょく)パーティーのようだ。
 私は、ふと違和感(いわかん)を感じた。どこを見ても花嫁(はなよめ)がいないのだ。友だちに訊(き)いてみたが、誰(だれ)の披露宴なのか知らないということだ。「そんなんでいいのか?」と、私は思った。じゃあ、花婿(はなむこ)はどこにいるのよ。見回(みまわ)しても、それらしい人は…。
 そこへ花婿らしい人が現(あらわ)れた。そして私たちを見つけると、駆(か)け寄って来て言った。
「何をしてたんだよ。遅(おそ)いじゃないか…。早く着替(きが)えてくれないと――」
 友だちはその人に引っ張(ぱ)られるように別室(べっしつ)へ。そこには、ウエディングドレスが――。
 友だちが戸惑(とまど)っていると、その人は言った。「君(きみ)は、花嫁役(やく)の人じゃないのか?」
 友だちは首(くび)を振(ふ)って、「違(ちが)うわよ。あたしは、親(おや)の代(か)わりに来ただけで…」
 その人は頭をかかえて呟(つぶや)いた。「ああ、もうダメだ。もう、お終(しま)いだ」
 事情(じじょう)を訊くと、直前(ちょくぜん)に花嫁に逃(に)げられたそうだ。今さら体裁(ていさい)が悪(わる)くて、披露宴を中止(ちゅうし)するわけにも――。そこで、代役(だいやく)を立てることに。でも、やってくれる人が見つからず…。
 それを聞いた友だちはマスクを取り出すと、「じゃあ、あたしがやってあげてもいいわよ。でも、顔出(かおだ)しと、誓(ちか)いのキスはNGだからね。そこんとこ、よろしく」
 友だちに何で引き受けたのか訊いてみると、「だって、ウエディングドレスよ。それもタダで着られるなんて…。今のあたしには、とても実現(じつげん)できないことでしょ」
<つぶやき>こんなことって、本当にあるんでしょうか? とても信じられないですよね。
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1297「彼氏狩り」

2022-08-26 17:45:58 | ブログ短編

 突然(とつぜん)、彼の前に見知(みし)らぬ女が現(あらわ)れた。女は彼に詰(つ)め寄(よ)って言った。
「あたしは、あなたの妻(つま)になるはずでした。どうしてあなたは、いつもの道を通らなかったんですか? あたし、ずっと待ってたのに…」
 彼は訳(わけ)が分からず、「何なんですか…? 僕(ぼく)は、君(きみ)のことなんか――」
 女は、彼を逃(に)がさないように腕(うで)をつかむと、「一週間前です。あたしは、あなたと出会(であ)うはずだったんです。そして、あたしたち、恋(こい)に落(お)ちることになってたのよ」
「何を言ってるんですか? 僕には付き合ってる彼女がいるんだ。君はいったい…」
「今からでも遅(おそ)くないわ。二人で、未来(みらい)を元(もと)に戻(もど)しましょう。そしたら、あたしたち幸(しあわ)せになれるはずよ。あたしと、結婚(けっこん)しましょう」
「バカなこと言わないでくれ。僕には好(す)きな人がいるんだ。変(へん)なこと言わないでくれ」
「あの女は、あなたの妻にはなれないわ。あたししか、いないのよ。あなたの妻は…」
 彼は、女の異常(いじょう)なほどの執念(しゅうねん)を感(かん)じて恐(おそ)ろしくなった。女を押(お)しのけると、彼は逃げ出した。走りながら後ろを振(ふ)り返ると、女が追(お)いかけて来る。それも、ものすごい早(はや)さで…。彼も必死(ひっし)に走った。だが、彼は足がもつれて転(ころ)んでしまった。
 追いついた女は、彼の上に股(また)がると、彼の胸(むな)ぐらをつかんで言った。
「あたしからは逃げられないわよ。これは運命(うんめい)なの。運命に逆(さか)らうことなんかムリよ」
<つぶやき>これは新手(あらて)の彼氏狩(かれしが)りなの? それとも、結(むす)ばれる運命だったのでしょうか。
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1296「飛ばし過ぎ」

2022-08-24 17:38:03 | ブログ短編

 彼は今まで恋(こい)というものを知らなかった。女性と出会う機会(きかい)がなかったわけではないのだか――。彼はどういう訳(わけ)か、女性というものに興味(きょうみ)がもてなかったようだ。そんな彼が、たまたま偶然(ぐうぜん)出会った彼女に惹(ひ)かれてしまった。彼女から目を離(はな)すことができなくなったのだ。
 彼は仕事以外(しごといがい)で女性と会話(かいわ)をしたことがない。ということは、初対面(しょたいめん)の女性とどう会話をすればいいのか分かるはずもなく…。彼女を呼(よ)び止めてしまった手前(てまえ)、彼は何かを話さなければならないことに陥(おちい)った。彼は支離滅裂(しりめつれつ)な、意味(いみ)のない話しを続(つづ)けるしかなかった。でも、彼の面白(おもしろ)くもない話しに、彼女は愛想笑(あいそわら)いをしながらうなずいてくれた。
 これは、脈(みゃく)があるのか? と、彼は勘違(かんちが)いをしたのかもしれない。彼の話しは、ますます専門用語(せんもんようご)の羅列(られつ)へと突入(とつにゅう)していく。これには、彼女も訳が分からなくなったようで、顔を曇(くも)らせた。さすがの彼も、自分(じぶん)が暴走(ぼうそう)していることに気づいたようだ。
 彼の話しが止(と)まると、彼女は彼から離れて行こうとした。彼は何とか引き止めて、連絡先(れんらくさき)を交換(こうかん)しませんかと持ちかけた。すると彼女は、やんわりとそれを断(ことわ)った。それでも彼は、諦(あきら)めるとこができなかった。またあなたに会いたいと懇願(こんがん)した。
 彼女が引いているのは、誰(だれ)が見ても明(あき)らかだ。それでも彼は、思い切った行動(こうどう)に出た。彼女にプロポーズをしてしまったのだ。彼女は、呆(あき)れてこう答(こた)えた。
「そんなの無理(むり)です。まったく知らない人と、結婚(けっこん)だなんて……」
<つぶやき>やっちゃったね。どんな時も、手順(てじゅん)を踏(ふ)んでいかないと上手(うまく)く行きませんよ。
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1295「しずく174~襲撃」

2022-08-22 17:33:43 | ブログ連載~しずく

 川相姉妹(かわいしまい)は、初音(はつね)の怪我(けが)が良くなるとみんなから離(はな)れて行った。アパートにも戻(もど)ることはなかった。水木涼(みずきりょう)とアキは、毎晩(まいばん)のようにあずみ先生(せんせい)から特訓(とっくん)を受けることになった。しずくとつくねは、交替(こうたい)で神崎(かんざき)の動きを探(さぐ)ることにした。
 一ヶ月近く、何事(なにごと)もなく過(す)ぎて行く。黒岩(くろいわ)たちも姿(すがた)を見せることはなかったので、しずくたちは学校(がっこう)の勉強(べんきょう)に励(はげ)んでいた。だが、心の中には緊張感(きんちょうかん)を絶(た)えずもっているようだ。
 ――それは、何の前触(まえぶ)れもなく訪(おとず)れた。いつものようにあずみ先生の特訓を終(お)えて、涼は夜道をひとりで自分のアパートへ向かっていた。アキは用(よう)があるからと先(さき)に帰ってしまったからだ。本当(ほんとう)に用事(ようじ)があるのかどうかは疑(うたが)わしい限(かぎ)りだ。アキは、特訓をするのを嫌(いや)がっていた。アキには戦闘(せんとう)に使える能力(ちから)はそれほどなかったからだ。
 もうすぐアパートに到着(とうちゃく)するところで、涼は背後(はいご)に何かの気配(けはい)を感じた。それは、だんだん近づいて来るようだ。涼は後ろを振(ふ)り返った。だが、そこには誰(だれ)もいなかった。気のせいだったのかと、また歩き出そうとしたとき、目の前の暗(くら)がりに人の姿を見つけた。
 涼は思わず身構(みがま)えた。その姿は突然(とつぜん)消えると、涼の目の前に現れて横を駆(か)け抜(ぬ)けた。涼の腕(うで)に痛(いた)みが走った。涼は思わず腕を押(お)さえた。腕から赤い血が滲(にじ)んでいた。涼は周(まわ)りを見回した。だが誰も見つけることができない。涼は、近くの塀(へい)を背(せ)にして立った。
<つぶやき>どうして涼が狙(ねら)われたのでしょう。川相姉妹はどこへ行ってしまったのか?
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