「初(はじ)めての女は特別(とくべつ)だって、パパが電話(でんわ)で言ってたわ」
彼女は自慢(じまん)げに彼に言った。彼には何のことか分からないようで、首(くび)をかしげながら彼女に訊(き)いた。「だから? 僕(ぼく)には、君(きみ)が何を言ってるのか分かんないよ」
彼女は、〈そんなことも分からないの?〉という顔をしてため息(いき)をついた。そして、
「ちゃんとお聞きなさい。つまり、あたしは、あなたの、初めての女なの」
彼はそこまで言われても、どうもピンとこないようで…。彼女はちょっと不機嫌(ふきげん)になり、
「あたしに最後(さいご)まで言わせるつもり? いいわ、じゃあ言ってあげる。あなたが付き合った最初(さいしょ)の彼女は、あたしなの。だから、あたしは特別な――」
「ちょっと待ってよ」彼は彼女の言葉(ことば)をさえぎり、「僕…、君と付き合ってるの?」
「そうでしょ。どう見たって、あたしたち付き合ってるじゃない。何よ今さら…」
「いや…、こういうのを付き合ってるって言うんだったら、君が最初じゃないよ」
「えっ…。ウソよ、そんなはずないわ。あたしの言うことを聞きたくないからって、そんないい加減(かげん)なこと言わないで。あたしちゃんと知ってるんだからね。あなた誰(だれ)とも――」
「一年生のとき、同じクラスになったクミちゃんが最初に話しかけてくれたんだ。だから、一番はじめの友だちはクミちゃんだよ。君とは――」
「やめてよ、そんなの付き合ってるって言わないわ。まだ子供(こども)じゃない」
「でも、僕たち、五年生だよね。まだ子供だと思うんだけどなぁ」
<つぶやき>いつから始まるんだろ…。付き合うって、どうなった時から言うんでしょ?
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