「結婚(けっこん)? 僕(ぼく)が…。いや、そんな予定(よてい)はないですけど…。だいいち、相手(あいて)、いませんから」
「お前、それでいいのか? 何時(いつ)までも一人ってわけにいかんだろ」
「僕は一人でいるのが好きなんです。誰(だれ)かに邪魔(じゃま)されたくないし、気を使って誰かと一緒(いっしょ)になろうなんて。そもそも、人を好きになるってどういうことなのか…」
「ウソだろ…。人を好きになったことないのか? 綺麗(きれい)な娘(こ)をみて、こんな娘(こ)と付き合いたいなぁとか、何時(いつ)も一緒にいたいなぁとか、普通(ふつう)あるだろ?」
「そりゃ…。でも、何時も一緒にいたいとかは…。週に三日ぐらいなら、なんとか…」
「お前、ひねくれてるなぁ。そんなんで老後(ろうご)はどうすんだよ? 一人暮(ぐ)らしは寂(さび)しいぞ。もし、何かったら…。孤独死(こどくし)ってこともあるんだからな」
「まあ、その時は、妹(いもうと)がいるんで…。あいつの方がずっと長生(ながい)きしそうですから」
「そうとは限(かぎ)らんだろ? 何時どうなるかなんて、誰にも分からんぞ。なあ、家族(かぞく)を作ろうよ。今からあきらめてどうすんだ。相手、見つけよう。何なら、うちのかみさんに頼(たの)んでやろうか? うちの奴(やつ)は顔が広いから、独身(どくしん)女性なんかゴロゴロだぞ…。そんでさ、子供ができてみろ、人生(じんせい)変わっちゃうから。で、俺(おれ)たち、家族同士(どうし)のつき合いができるだろ。そうなったらさ、二人して愚痴(ぐち)を言い合おうよ。なあ、俺(おれ)も、いろいろたまってんだよ」
<つぶやき>誰しも、はけ口は必要(ひつよう)かも知れませんね。でも、無理強(むりじ)いはしないように。
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