それは、ある日突然(とつぜん)起こった。朝、彼女との待(ま)ち合わせ場所(ばしよ)へ行くと、いつもいるはずの彼女は来ていなかった。病気(びようき)にでもなったのか? 僕(ぼく)は彼女と連絡(れんらく)をとろうとスマホを取り出した。でも、どういうわけか彼女の名前(なまえ)が見当(みあ)たらない。これじゃ電話(でんわ)もできない。
僕は学校(がつこう)へ急(いそ)いだ。なんか変(へん)な胸騒(むなさわ)ぎがした。教室(きようしつ)に入ると彼女を探(さが)した。でも、どこにもいない。彼女の席(せき)には他(ほか)の生徒(せいと)が座(すわ)っていた。僕はその生徒に駆(か)け寄(よ)って言った。
「どうしてここに座ってるんだ。ここは吉永(よしなが)さんの席だろ」
その生徒は答(こた)えて、「吉永ってだれ? ここは、あたしの席ですけど」
僕は何を言っているのか理解(りかい)できなかった。その生徒はさらに続(つづ)けた。
「ねぇ、昨夜(ゆうべ)はどうして連絡くれなかったの? 待ってたんだからね」
「えっ、なんのことだよ。どうして僕が…」
「ほんとむかつくわね。あなたが、あたしと付(つ)き合いたいって言ったんでしょ」
僕は言葉(ことば)が出なかった。どうしてそんなことになってるんだ? 僕がこいつと付き合うって…。あり得(え)ないだろ。だって、全然(ぜんぜん)、まったく、僕のタイプじゃない!
「ああ…、そういうことね。その、吉永って娘(こ)と付き合うことにしたんだ」
「それは…。そもそも僕は、吉永さんと付き合ってたんで…。なんで君(きみ)と…」
「二股(ふたまた)かよ。じゃあ、放課後(ほうかご)、吉永って娘(こ)、連(つ)れてきな。話(はな)しをつけようじゃない」
<つぶやき>吉永さん、本当(ほんとう)にいたのか? 夢(ゆめ)を見ていただけだったのかもしれません。
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