初音(はつね)と涼(りょう)が言い合っているとき、急につくねが口を挟(はさ)んで言った。
「あたし、忘(わす)れ物をしちゃったみたい。学校(がっこう)へ戻(もど)らなきゃ。じゃあ、さようなら」
つくねはすぐに駆(か)け出した。それをキョトンとして見送(みおく)る二人。しばらくして、二人は顔を見合わせる。そこで、初音が笑(え)みを浮(う)かべて、
「あたし、塾(じゅく)があるから先に行くね」
初音が歩き出すのを追(お)いかけて涼が言った。「ちょっと待ってよ。そんなに勉強(べんきょう)してどうするんだよ。たまには遊(あそ)びに行こうよ。なあ、いいだろ」
「ダメよ。塾は休めないの。あなたは部活(ぶかつ)に行けばいいじゃない。サボってていいの?」
二人はそんなやり取りをしながら行ってしまった。――つくねの方は、走るのを止めて浮(う)かない顔をして歩いていた。一つため息(いき)をつく。その時だ。急に腕(うで)をつかまれて脇道(わきみち)へ引っぱられた。そこにいたのは柊(ひいらぎ)あずみだった。あずみは怒(おこ)った顔で言った。
「もう、勝手(かって)に動かないで。もしものことがあったらどうするのよ」
つくねは平気(へいき)な感じで答(こた)えた。「あたしなら大丈夫(だいじょうぶ)です。でも…」つくねは間(ま)をおいて言った。「初音が能力者(のうりょくしゃ)だと思ってたのに、石が反応(はんのう)しなくて…。その代(か)わり、涼に反応したんです。これって、どういうことなのかな…」
「水木涼(みずきりょう)か…。つくねを襲(おそ)ったときは、彼女から能力(ちから)は感じなかったわ。あれだけの能力(ちから)を使った後だったら分かるはずなのに…。いいわ、今度は私が確(たし)かめてみる」
<つぶやき>あずみはどうやって確かめるのでしょうか? しずくは目覚(めざ)めたのかな…。
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