未来(みらい)の世界(せかい)――。度重(たびかさ)なる戦争(せんそう)により人類(じんるい)はその数を減(へ)らしてしまった。それでも各国の指導者(しどうしゃ)や王族(おうぞく)たちは戦(たたか)いを止めようとはせず、領土(りょうど)と資源(しげん)の獲得(かくとく)にしのぎを削(けず)っていた。国々は疲弊(ひへい)し、兵士(へいし)や労働力(ろうどうりょく)の不足(ふそく)は深刻(しんこく)だった。
そこで有力(ゆうりょく)な国の代表者(だいひょうしゃ)が集まり会議(かいぎ)が開かれ、そこで画期的(かっきてき)な提案(ていあん)がなされた。それは仮想空間(かそうくうかん)を利用(りよう)すること。要(よう)するに、ゲームを使って戦争をしようということだ。そうすれば、誰(だれ)も死(し)なないし、街(まち)も壊(こわ)されることはない。
各国の利害(りがい)が一致(いっち)したのか、その話はすぐにまとまった。よりリアルな戦争ゲームが開発(かいはつ)され、厳密(げんみつ)なルールが決(き)められた。それによると、ゲームの管理運営機関(かんりうんえいきかん)に定(さだ)められた金額(きんがく)を支払(しはら)えば、誰でも参加(さんか)できることになった。例(たと)えば、一般企業(いっぱんきぎょう)でも、サラリーマンや主婦(しゅふ)でも参加可能(さんかかのう)ということだ。そしてゲームで領土を獲得(かくとく)すれば、それが現実(げんじつ)の世界に反映(はんえい)され、国境(こっきょう)が自動的(じどうてき)に移動(いどう)することになる。
市民(しみん)たちは複雑(ふくざつ)な思いでこれを受け入れた。国境が変わる度(たび)に土地(とち)を離(はな)れたくない人は、その場に留(とど)まることが許(ゆる)された。税(ぜい)などの徴収(ちょうしゅう)は世界機関で一括(いっかつ)して行われ、世界共通(きょうつう)の課税(かぜい)制度が施行(しこう)された。これにより、市民たちは国が変わっても同じ額の税金(ぜいきん)を支払うことになる。徴収された税金は、月末の時点(じてん)での領土の所有者(しょゆうしゃ)へ振(ふ)り込まれた。もちろん、その土地のインフラ整備(せいび)にかかる費用(ひよう)は差(さ)し引かれるが――。
これにより世界は二分(にぶん)され、現実の世界に平和(へいわ)と繁栄(はんえい)がもたらされた。
<つぶやき>欲望(よくぼう)はどこまでも際限(さいげん)がないものかも。あなたはどんな未来を望(のぞ)みますか?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。